今回は、小説の男女集団入れ替わりを10作品紹介していきます。
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もくじ
見た目レンタルショップ 化けの皮
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『見た目レンタルショップ 化けの皮』 著者:石川 宏千花 | 望み通りの容姿に化けた狐と中身を入れ替えることにより見た目をレンタルできる店の話。 | 小学館 『見た目レンタルショップ 化けの皮』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
祖父の園路から狐使いの能力を引き継いだ大学生の吾妻庵路は、4匹の狐と共に「見た目レンタルショップ 化けの皮」を営んでいた。
庵路が依頼人の望み通りの容姿に化けた狐と依頼人の中身を入れ替えることにより、見た目をレンタルするのだ。
店には、様々な用途で見た目のレンタルを望む依頼人がやってくるのだった。
庵路は、狐と依頼人の中身を入れ替える能力持ちです。
作中では、「見た目が入れ替わっている」と「中身を入れ替える」の両方で表現されていてわかりにくいですが、相互変身ではなく精神が入れ替わります。
狐の化ける能力は高く、狐の性別から見て異性の人間に化けたり、声も身体に合わせた声になっていたりする描写がありました。
入れ替わった狐と依頼人は、近くにいなければならないという制約があり、依頼人は嫌でも元の自分の身体と一緒に行動しなければなりませんw
ちなみに距離が離れると、元に戻ってしまうようです。
全10話で構成されていて、そのうちの第9話以外の全てで1対1の入れ替わりが発生します。(同時に2組以上の入れ替わりは起こりません。)
男女間・女同士・男同士の入れ替わりだけでなく、中年女性に化けた狐♂と女の子の入れ替わりや、若い女性に化けた狐♂と男性の入れ替わりもあります。
第1話:柴田五月(女性)十七歳
地味顔のため、知り合う男性にそれなりの態度でしか接してもらえないことに不満を持っていた女子高生の柴田五月。
ある日、ネットで見かけた「見た目レンタルショップ 化けの皮」に興味本位で予約をした五月は、美少女の帆ノ香(狐♀)と入れ替わることになった。
↓美少女メイクをしてもらうだけだと思っていた五月は、中身を入れ替えると聞いて混乱w
「この〈見た目〉じゃだめでしたか?」
「いえ、そういう意味ではなく、わたしがそんな美しいお嬢さんになれるわけが……」
吾妻さんが、へらっと笑っていう。
「なれますなれます。逆に簡単です。中身を入れ替えるだけですから」
逆に?逆にってなんの逆?五月は完全にパニックに陥りながら、頭を抱えた。
↓帆ノ香になった五月は、さっそく外出。もちろん、五月になった帆ノ香も同行します。
二ヶ月分のおこづかいでまあまあのおつりが出る料金で絶世の美女になった五月はいま、駅前のメインストリートを歩いている。地方ながら、なかなかのおしゃれな通りだ。そして、すぐ横には見慣れた地味顔が、びくびくしながらくっついてくるのだった。
↓誰もが振り返る美少女である帆ノ香の身体で五月は注目を集め、お目当てのヴィンテージショップの店員からも普段とは異なる態度で接されます。
それにしても、さっきから視線が痛くてしょうがない、通りすぎる女の子たちがみんな、自分を見ているのがわかる。なにあのかわいい子!とあからさまに騒いでいる子たちもいるくらいだ。すごい。美少女、すごい。
五月(身体は帆ノ香)はもっと店員から声をかけてもらえると期待しますが、店員が声をかけたのは帆ノ香(身体は五月)の方。
↓見た目で卑屈になったことがない帆ノ香は、地味な五月の顔で屈託のない笑顔を浮かべ、店員に褒められてしまいました。
その様子を見ていた五月(身体は帆ノ香)は愕然する一方で、元の自分の顔ながら思わず見とれてしまいます。
帆ノ香ちゃんは、その地味顔には不似合いな、無邪気で屈託のない笑顔を浮かべた。
あーっ、だめだよ、帆ノ香ちゃん!その顔でそんなかわいい笑い方したって――
「お客さん、笑うと印象変わりますね。そのワンピース、めちゃくちゃ似合ってます」
うそでしょ?と五月は愕然とした。自分の見た目でお褒めの言葉をもらっている帆ノ香ちゃんを凝視する。
レンタルを終えて元に戻った五月は、見た目で人を判断していた自分を反省し、内面からかわいくなろうと決心するのでした。
第2話:太田誠(男性)三十二歳
レンタルショップに、「女装に耐えられる見た目を持つ男性をレンタルしたい」という依頼が来た。
依頼主は太田誠という男性で、美少年の真問(狐♂)が入れ替わることになったのだが…
太田の容姿は大柄で、女装が似合う容姿ではないので、美少年の見た目をレンタルしたいということでした。
↓さっそく、女装した真問と入れ替わった太田ですが、肝心の太田は何故か微妙な反応。
元の自分の身体(中身は真問)を目の前にする太田(身体は真問)の反応が好きです。
「真問くんのルックスでも、こうなるかー」
うっかり声に出してしまった誠のつぶやきに、となりにいた真問少年が、「いまいちってこと?」と即座に反応する。のぞきこんできたその顔は、我ながらくまさんっぽい。
太田はネットで知り合った女性とオフ会をする約束をしており、女装した真問の身体で声をかけます。
女装少年を見た女性は、訝しんですぐにその場から立ち去ってしまい…
弟から女装好きだとカミングアウトされた太田は、困惑しつつも弟の気持ちや世間の目を知るために、わざわざ女装少年の身体を借りた…というわけでした。
女装に対する世間の目を知った太田は、弟の今後を心配しますが、庵路から「こんなにも弟思いの兄がいる弟さんなら絶対大丈夫だ」と言われ、少しだけ安心して店を立ち去るのでした。
第3話:小野哲也(男性)十六歳
高校生の小野哲也は、「かっこいい大人の男の人」の見た目を借りるためにレンタルショップを訪れた。
呉波(狐♂)と入れ替わった哲哉は、ファーストフード店で騒ぐ女子高生グループを注意しようと向かうが…
↓入れ替わり前後の描写が良かったですね。
うながされるがまま、黒ずくめの店員と背中合わせになる。目を閉じるよう指示されたあと、呪文のようなものを唱える声が聞こえてきた。「はい」と軽く肩をたたかれ、目を開ける。いつのまにか目の前に、姿見が置かれていた。ついさっきまで背中合わせになっていたはずの相手が、そこには映っている。そのとなりには、見なれた自分の顔だ。小さくて白目の少ない、魅力なんてものはまるでない地味な目。鏡越しに、その目と目が合う。
思わず、わ、と声をあげそうになった。
以前に「かっこいい人の話だったら聞く」と話していた煩い女子高生グループに、イケメンの呉波の身体で注意しようとする哲哉ですが、緊張して何も言えず…
↓見かねた呉波が哲哉の身体で女子高生グループに注意をします。
「あのさ」
本来の哲哉の見た目をした《化けの皮》の店員――呉波が、いきなり哲哉のとなりにやってきて、やつらに向かっていった。
「もう少し静かにしゃべったほうがいいんじゃないかな。迷惑に思っている人が店中にいるみたいだから」
見た目も声も自分そのものなのに、話し方がやけにかっこいい。すっと背筋の伸びた姿勢のせいか、心なしかスタイルもよく見えた。
同じくらいの年齢の哲哉(中身は呉波)に注意された女子高生グループは素直に謝り、元に戻った哲哉も見た目で人を判断していたと反省するのでした。
第4話:沢口友梨(女性)十一歳
高校生だと偽ってレンタルショップにやってきた小学生の沢口友梨。
「ちゃんとした大人の女の人」を希望した友梨は、おばさんの姿に化けた砂羽哉(狐♂)と入れ替わることになった。
友梨は、自分と同じように虐待を受けている近所の男の子を、大人のフリをして通報して助けたいという理由でレンタルしたようです。
↓狐たちには戸籍がないので、警察に身元を尋ねられてひと悶着ありましたが、何とか目的は達成。
「あの……それは……」
口ごもり出した友梨を、おまわりさんはまた、じいっと見ている。もうだめだ、これ以上は大人のふりなんてできない。走って逃げてしまおうか――そう思いかけたとき、うしろから、ぐいっと手首を引っぱられた。
「お母さん」
ふり返ると、本来の友梨――の姿をしたあのおばさん――が、こちらを見上げていた。
「もういこうよ、ねえ、いこう」
瞬時に状況を理解して話を合わせるレンタルショップの店員たちが優しすぎました。
友梨が「おばさん」の正体が狐♂だと知らないところが良かったですね。
第5話:中島文子(女性)二十歳
高校時代の後輩である吾妻庵路が、レンタルショップを営んでいると聞いて店に訪れた中島文子。
庵路には一度告白を振られているが、気持ちを諦めきれない文子は、見た目のレンタルの話を聞いて庵路の見た目を希望するのだった。
実際に文子が入れ替わるのは、庵路に化けた呉波(狐♂)です。
↓庵路の見た目になった文子は、文子の身体(中身は呉波)を抱きしめます。切ない上に大変エッチですねこれは。
自分の身体が文子を抱きしめる図を見せられる庵路本人も最高でした。
望みをかなえた中島先輩が、そのあとにしたこと。それは、庵路にとって予想外なことだったらしい。あっけに取られて、声も出ない様子だったから。
庵路の見た目になった中島先輩は、呉波に入れ替わっている自分の体を、思いきり強く抱きしめたのだ。それはもう情熱的に、庵路の見た目には不似合いなくらい、かっこよく。
そして、抱きしめている自分にいい聞かせるように、その耳もとでささやいた。
『……これで、気は済んだでしょ?』
第6話:山下悠太(男性)三十八歳
レンタルショップに、「がりがりに痩せた身体つきの男子高校生をレンタルしたい」という依頼が来た。
依頼人は山下悠太という男性で、拒食症で万引きを繰り返す男子高校生の小畑蓮を助けたいらしい。
山下はがりがりに痩せた身体つきに化けた真問(狐♂)と入れ替わることに。
山下も若い頃に拒食症で苦しんだ経験があり、蓮と同じように今現在拒食症で苦しんでいる男子高校生の姿なら、話を聞いてもらえるかもしれない…ということでレンタルしたようです。
「拒食症の真問は、かつて同じ経験をした山下のアドバイスのおかげで克服しつつある」という方向に話を合わせるレンタルショップの店員たちが優しかったですw
第7話:加藤美織(女性)二十六歳
ただ年を重ねるだけの退屈な毎日を送っていた加藤美織は、ある日ネットで見つけたレンタルショップを訪れた。
「ハーフっぽい顔立ちの背の高い20代の男性」に化けた呉波(狐♂)と入れ替わった美織は、同僚の紗英子と食事へ行くことに。
↓イケメンの容姿になった美織は、紗英子と仲良くなったところでこっぴどく振ります。
「ごめんね、遅くなって」
いまは美織の見た目をしている呉波が、準備していたセリフをいいながら席につく。いいのいいの、といいながら、紗英子が満面の笑みを呉波に向ける。そちらが自分の同僚の美織だと思っているからだ。それでいて、初対面の美織の同行者――こちらが本当の美織だと思いもしないで――の視線を意識しているのがわかる。
他にも、美織は「清楚でかわいい女子高生」をレンタルして男子高校生たちをたぶらかして遊んだり、「アイドル風な男子高校生」や「小悪魔風な美女」の見た目で気に食わない女子高生集団や会社の先輩を痛めつけたり…
そして、「見た目のレンタルを犯罪行為に利用してはならない」という規約に反したことが庵路にバレてしまい…
第8話:及川紘一(男性)五十四歳
結婚願望がなく独身を貫いている及川紘一は、最近同じ会社で一人で過ごしているOLの荻野のことが気になっていた。
独りぼっちを苦にして不登校になった妹に何もしてあげられなかったと悔やんでいた紘一は、荻野に何かしてあげたいと思い、レンタルショップを訪れるのだった。
紘一が入れ替わったのは、「面倒見が良さそうな二十代の女性」に化けた砂羽哉(狐♂)です。
↓二十代の女性になった紘一は、さっそく荻野に声をかけます。
「おとなり、いいですか?」
声までしっかり二十代半ばの女性のそれだ。声をかけられた荻野さんが、軽く目を見開きながら顔をあげる。
荻野は一人でいるのが好きなタイプで、一人で過ごす現状を苦に思っておらず、同じように一人で過ごす紘一に親近感を覚えていたらしい。
それを聞いた紘一は、荻野に何もできることはないと悟り、何も伝えずにいつも通りの日常を送り続けることにしたのでした。
第9話:吾妻春妃(女性)四十二歳
レンタルショップを営む庵路の元に、海外に住む母親の吾妻春妃が訪ねてきた。
自分の出生について母親から聞いた庵路は、亡くなった父親のことを思い続ける母親に、父親の見た目をレンタルしないかと申し出るが…
母親は、父親の外見ではなく中身が大事と言い、庵路の申し出を断ります。
入れ替わりの話題が出るものの、結局入れ替わらないのも個人的には好きなので、結構お気に入りの話ですw
第10話:遠野澄佳(女性)十五歳
モテることを生きがいにしている中学生の遠野澄佳だが、最近成長期を迎えて格好良くなった児玉総司に告白するも、振られてしまう。
総司が自分よりもかわいい女の子に告白されたらどうするのか気になった澄佳は、レンタルショップで帆ノ香(狐♀)と入れ替わることに。
美少女の見た目をレンタルした理由について、澄佳(身体は帆ノ香)は帆ノ香(身体は澄佳)に話をします。
帆ノ香(身体は澄佳)の意見に思うところがあった澄佳(身体は帆ノ香)は、総司に会う予定を取りやめて、ファミレスでガールズトークをしただけで返却したのでした。
猫は頭にきた
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『猫は頭にきた』 著者:式 貴士 | 男女が入れ替わり体質の猫と入れ替わる。 | ●角川書店 角川文庫 『連想トンネル』 ●CBS・ソニー出版 『連想トンネル』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
平凡な男・大友一樹は、勤めている会社の社長令嬢・朝比奈美麗の婿候補に選ばれた。
最初は乗り気でなかったが、一樹は美麗に一目惚れ。
何とか結婚しようとアピールするも、敵視した美麗の飼い猫・ロリーが襲い掛かってきた瞬間、電撃が走って一樹はロリーと入れ替わってしまう。
ということでまずは、一樹とロリーの入れ替わり。ロリーはオスです。
↓入れ替わった直後に、元の自分の身体(中身はロリー)を見上げる一樹(身体はロリー)が最高です。
巨人は、なんと、おれ自身だったのだ!
床に這いつくばったまま、おれは自分の体を見まわした。灰色の毛に覆われたシャム猫の手が見えた。悲鳴をあげた。
「ミャーオッ!」
しわがれた、ロリー特有の鳴き声が、おれののどから絞りだされた。ふたたび見上げると、おれの顔をした巨人が、冷酷そうな眼で、おれをじっと見おろしている。
自分の、怒りと憎しみに満ちた顔を見るのははじめてであった。
ロリー(身体は一樹)は人語を喋れて、一樹(身体はロリー)は猫語しか喋れません。
一樹(身体はロリー)を容赦なく蹴飛ばすロリー(身体は一樹)がヤバいです。
一樹(身体はロリー)は、会社に行かなくても良く、美麗とずっと一緒にいられる猫の生活を気に入ります。
猫になったことを良いことに、一樹(身体はロリー)は美麗にエッチな悪戯。
↓また、ロリーは美麗のバター猫だったようです。
な、なんと彼女の乳房がおれの鼻先に!おれは目もくらむような恍惚感に酔いつつ、猫になった図々しさでペロペロと美麗さんの乳首を舐め始めた。人間、大友一樹では想像もできないいけ図々しさであった。
「まあ、くすぐったい!でもいい気持……」
美麗さんはうっとりと眼を閉じ、おれに乳房を好きなように舐めさせている。おれのザラザラした舌の先で、可愛らしい小さな乳首が、みるみる硬く膨ふくらんでくる。
なんと、なんと……あの清楚の化身のような美麗さんに、あんな悪癖があろうとは!いや、おれにとっては悪癖というより悦楽というべきか。なんと、バターを塗って、おれに舐めさせるのである。
↓ロリー(身体は一樹)の方は、一樹本人ではありえないくらい美麗に猛アピールし、結婚まで漕ぎつけてしまいました。
あんなに内気だったおれが、やけに自信満々で頼もしく、鷹揚にかまえているではないか。自分でもう一人の自分を見るのは奇妙なものだ。決して気持ちいいものではない。自分の声をはじめてテープで聴いた時のショックと不快感は誰でも経験したことがあるだろう。ちょうどそんな感じだった。しかも悪いことに、おれの姿をした大友一樹は、本物のおれじゃなく、仇敵のシャム猫野郎なのである。これはキツい。ヘドが出そうな嫌悪感以外の何物でもない。
↓美麗と結婚したロリー(身体は一樹)は、一樹(身体はロリー)に見せつけるように美麗とセ○クス。
元の自分に美麗を寝取られる一樹(身体はロリー)が最高。
美しい新妻の美麗さんを、ロリー大友は野獣のように蹂躙し、色魔のように凌辱し、あらゆる恥しいポーズをとらせてその欲情を満たしたのだった。しかも哀しいことに、美麗さんは、それに喜々として従い、恍惚の呻きを洩らし、乱れに乱れたのである。
(中略)
どうも、ロリー大友は、わざとおれに見せつけるために、ことさら烈しく淫らに攻めたてているように思えた。
おれは口惜しさと嫉妬と哀しさでポロポロ涙をこぼした。こんな拷問が、この世にあってよいのだろうか?おれの愛する女主人を、夫のおれが、ペットのおれの前で犯しているなんて!
「おい、見ろよ!ロリーが泣いてるぜ」
「ロリーちゃんなんかよくってよ。ねえ、あなた、もっときつく……唇をください……」
その後、ロリー(身体は一樹)が一樹(身体はロリー)の去勢を提案したことで怒った一樹(身体はロリー)は、飛び掛かったら誤って噛みついた美麗と入れ替わってしまいました。
(一樹→美麗→ロリーの入れ替わり。)
↓美麗の身体を手に入れた一樹(身体は美麗)は、さっそく鏡の前でオ○ニー。
その様子を見て呆然とする美麗(身体はロリー)が堪りません。
美麗さんの素晴らしい肉体を手に入れたおれは、想像以上に幸せな自分に気がついた。美麗さんのそばにいられるだけでも幸福だったのに、一日二十四時間フルに、一秒のロスもなく、おれは美麗さんと共にいる!
最初におれがやったことは何だと思う?
寝室の大きな姿見の前で全裸になると、自分の裸身を映したことである。シミ一つない、あくまでも白く、しっとり濡れたようなすべやかな肌を、両の掌でゆっくり撫で回し、柔らかく、弾力にとんだ胸乳を思うさま抱きしめた。どれほど、こうしたかったことか!ゆっくりと絞るように揉みあげては、淡い桜色に上気してゆく肌の変化をあかずに眺め、指先を下に滑らせてゆくのだった。おれは指先で美麗さんの肉体を犯しながら、何度、きわまったことか!美麗さんの声で恍惚のすすり啼きをもらしながら、ベッドの上で転々と悶え、裸身を蛇のようにくねらせて喘いだ……。その様を、シャム猫姿の美麗さんが呆然と青い眼で眺めてくるのだった。
↓一樹(身体は美麗)はロリー(身体は一樹)に入れ替わったことを伏せ、「美麗がロリーと一樹の入れ替わりに気がついた」フリをして、美麗(身体はロリー)の目の前でロリー(身体は一樹)に犯されます。
彼は突然ニヤリと笑うと、野獣の本性をむきだしにして、おれの、いや、美麗さんのたおやかな体につかみかかってきた。
「あっ、おやめになって!」
「なにをいう!おまえは、おれの肉体の奴隷になったくせに!生意気な口をきいた罪に、思いきりこらしめてやるぞ。いまにヒーヒー鳴き声をたてて、おれに謝ることになる……」
「いけません!」
おれは必死に抵抗したが、美麗さんのほっそりした深窓育ちの肉体ではとてもかなわない。みるみるネグリジェをひき裂かれ、薄いスキャンティーもむしりとられて、強姦されるように凌辱されていく……。
悲鳴に似たエクスタシーの叫びをあげ、喜悦の涙にぬれたうつろな眼に、ベッドの下の床にうずくまっているシャム猫の姿が映った。
↓一樹(身体は美麗)が美麗(身体はロリー)をバター猫にする場面が一番興奮しました。
バターを塗りこめたおれの体を、美麗さんのロリーに舐めさせる時の、嗜虐感にも似た倒錯した悦び。あんなに憧れ、焦がれ、崇拝した女神に、おれの一番はずかしい部分、しかも、それは美麗さん自身の肉体のその部分を念入りに舐めさせるのである。それは、とても表現の枠をこえた異様な興奮としかいいようがないものであった。美麗さんは、それにも耐えてくれた。おれがひまさえあれば語りつづけるおれの愛の告白を、終日きかされていたからかもしれない。
一樹(身体は美麗)は、しばらく美麗の身体でオ○ニーを楽しみ、美麗(身体はロリー)をバター猫にし、ロリー(身体は一樹)とセ○クスをするという楽しい毎日を送ります。
美麗(身体はロリー)がかわいそうになった?一樹(身体は美麗)は、隙をついてロリー(身体は一樹)と美麗(身体はロリー)を入れ替えます。
つまり、ロリーは元の身体に戻り、今度は一樹と美麗の入れ替わりに…
↓一樹(身体は美麗)と美麗(身体は一樹)は、入れ替わり体質のロリーを介して元に戻ることにリスクを感じ、元に戻らずにロリーを殺処分する選択を…
美麗(身体は一樹)は相変わらず女言葉のようですが、一樹(身体は美麗)は女言葉が板についています。
二人とも女言葉で話しているのがシュールです。
「どうなさいますの、ロリーちゃんは?」
おれの声で美麗さんが女言葉で言う。
「やっぱり殺した方がよろしいと思いますわ」
すっかり板についた美麗さんの喋り方でおれが答える。
「でも、殺してしまうと、もう二度と、私たち、もとの体に戻れないわけでしょう?」
「ええ、そうですわ。だからといって、また三人がもとの体に戻るには、あと二回も、出たり入ったりしなけりゃなりませんもの。もし万一、その間に、手違いが起こったら……。それならいっそ、一生このままの方が」
↓美麗(身体は一樹)は一樹本人より仕事の能力があるようで、一樹(身体は美麗)に見送られながら出社します。
一樹(身体は美麗)の方も、昔の美麗の話を聞いて美麗になりすまして家族とうまくやり、家事も切り盛りしているようです。
おれたち夫婦に天国の生活が戻ってきた。大友一樹の肉体に入った美麗さんは、毎朝、自分の容姿をもったおれに見送られて会社に出社する。
おれも、おれなりに家政をきりもりし、母親ともうまくやっている。毎夜のように口うつしに、美麗さんから家族のことや昔の思い出など聞いているので、まずまずの化けぶりであった。
↓もちろん、入れ替わった二人のセ○クスシーンもあります。
美麗のことが大好きな一樹(身体は美麗)は、倒錯的な入れ替わりセ○クスの虜になっているようです。
美しい美麗さんの肉体と性感で、おれの肉体に犯され、官能をゆさぶられる快感は、なんといってよいのか。それがしかも、おれの肉体が美麗さん自身であり、眼をつむると、あの優雅で優しい美麗さんが、男の体でおれの肉体を裂き、体内に侵入し、暴れ回るのである。
↓一樹(身体は美麗)は今の生活にこの上ない幸せを感じており、元の自分となった美麗に愛情を感じるようです。
最後の一言が良かったですね。
とにかく、おれは、いま最高に幸わせだ。夫がいない時でも体が火照ってくると、おれは美麗さんの美しい体をいつくしみ、快よい自慰にふける。そして、夫の、大友一樹を、いま、熱烈に愛し始めているのだ。
(中略)
もう、狂おしいくらいに一樹さんが大好き!これはやっぱり、ナルシズムと呼ぶべきなのだろうか?
チェンジ(君が代は千代に八千代に)
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『チェンジ』 著者:高橋源一郎 | 男女3人が入れ替わる。 | ●文芸春秋 『君が代は千代に八千代に』 ●文芸春秋 文春文庫 『君が代は千代に八千代に』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
小説家としていつか芽が出ると思ってきた男性だが、ついに中年となってしまった。
ある日、男性が変な夢から醒めると、一緒に住んでいる妻?のアリサと入れ替わっていた。
醜い元の自分を見ていられなくなった男性は、アリサの身体で外へ出かけていくと、とある作家と知り合った。
まずは、男性とアリサの入れ替わり。
↓アリサの身体になった男性が、胸に違和感を覚えるシーンが良かったです。
俺の胸の上に乗っかっていたのはピラミッドじゃなくて大きな肉の塊だった。
それはおれが動くにつれてゆるやかに震えた。おれは左に寝返りをうった。すると、そいつも左に動いた。おれは右に寝返りをうってみた。やっぱり、そいつはおれの動きについてきた。可愛いやつだ。だが、その動きには少しタイムラグがあるようだった。おれは、意を決して手を下に伸ばしてみた。
あるべきものがなかった。いくら捜しても、逆に、ないものがあった。ないものがある……この日本語、正しいのかな?わからん。おれは起き上がると、バスルームに行った。そして、鏡を見た。
男性の容姿は自分から見ても非常に悪いようで、アリサは男性の身体を非常に嫌がります。
↓男性(身体はアリサ)がアリサ(身体は男性)を起こすシーンも良かったです。
それから、おれはベッドに戻った。そこには、この世のものとも思えぬ、汚らしい、中年の男性が鼾をかいて眠っていた。つまり、「おれ」が鼾をかいて眠っていた。
おれは電気をつけた。おれは、そのみっともない、フケだらけのデブにいった。つまり、「おれ」にいった。
「ちょっと起きてくれないか」
そういって、おれは自分の声にギョッとした。なんだか、喉のところに縦笛が入ってるみたいだった。
(中略)
「黙れってば!それ以上騒ぐと、殺すぞ」
おれの声はぜんぜんドスが利いてなかった。舌ったらずで、しかも鼻にかかった声だった。だいたい、おれに「おれ」が果たして殺せるものなのか、おれにもよくわからなかった。しばらくすると、「おれ」はメソメソ泣きはじめた。どうやら、叫ぶのは諦めたようだった。
(中略)
「お願いだから元に戻して!」
「興奮すんなって!おれだって元に戻りたいんだから」
「気持ち悪い……この身体……」
「おい、おい、喧嘩売る気なのか?それ、元々おれの身体なんだぜ」
(中略)
「でも、この身体いやあああ!」
「おれ」は泣きじゃくっていた。見られたもんじゃなかった。おれは「おれ」がこんなに醜い人間だとは思っていなかった。もう少しまともだと思っていた。ところが、ほんとはそうじゃなかった。
↓トイレの話題も良かったです。結局トイレは一人で行った様子。
アリサ(身体は男性)のテンションが高くて面白いですね。
「あんた……どこ、行くの?」
「おしっこ」
「いやああああ、そんなのダメえええ!」
泣き叫ぶ「おれ」を無視して、おれはトイレへ入った。非常事態だ、遠慮なんかしていられるもんか。
その後、醜い元の自分の姿(中身はアリサ)を見ていられなくなった男性(身体はアリサ)は、いつもアリサがキャバクラへ来ていく黒いミニのワンピースを着て飲みに出かけます。
↓アリサ(身体は男性)は出かける男性(身体はアリサ)を止めようとしますが、男性の身体の使い方を分からず止められませんでした。
「一杯飲みに行くんだよ」
「絶対ダメえええええ!」
おれは外出するのに少してまどった。「おれ」がものすごい力で引き止めようとしたからだ。あやうく、おれは監禁されるところだった。だが、悲しいかな、「おれ」は力の使い方がよくわかっていなかった。「おれ」はおれの脚に摑まって泣いてるだけだった。おれは「おれ」を思いきり蹴飛ばすと外へ出た。
男性(身体はアリサ)は、タクシーの運転手の視線に気づき、足を組み替えてサービスしてあげます。
バーに入店した男性(身体はアリサ)は、周囲の客の視線を集め、面白がってパンツを見せてあげるのでした。
↓今の自分の身体を見て興奮する男性(身体はアリサ)が最高です。
おれはママの後ろの鏡を見た。おれが座っていた。ワンピースの胸がはちきれそうだった。剥き出しの脚は真っ白で、その奥に紫色のパンティが見えていた。なんてこったい!おれは思わず舌打ちしていた。自分に欲情してきちまったじゃないか!
一人で飲む男性(身体はアリサ)に、とある作家が声をかけて口説いてきます。
男性(身体はアリサ)はアリサの身体だと、すぐに酔ってしまったようです。
↓そして男性は、気がついたらアリサ(中身は作家)と一緒にベッドの上にいて、作家の身体になっていました。
男性(身体はアリサ)は、作家とセ○クスしたら、今度は作家と入れ替わってしまったようです。
(男性→作家→アリサの入れ替わり。)
隣には裸の女が寝ていた。俺は反射的に胸を触ってみた。ない。それから、おれはおもむろに下半身に手を伸ばした。ある。さてと。おれは隣の女の顔をそっと覗いてみた。アリサだった。いや、「おれ」だった。いや、正確には、さっきまでのおれというべきなのかな。
(中略)
「アリサちゃん」隣に寝ている女が寝言をいった。
↓男性(身体は作家)は、ア○ルセ○クスを一度やってみたかったといい、作家(身体はアリサ)を容赦なく縛り上げて、猿轡を噛ませて、首を絞めて挿入します。
おれはまずタオルで裸のアリサを後ろ手に縛った。すると、アリサが、というかアリサの恰好をした作家のやつが目を覚ました。
「なに……どうした?アリサちゃん?」
やつが完全に正気づく前に、おれはもう一本のタオルで猿ぐつわをかませた。
(中略)
ものすごい勃起だった。おれはアリサ、というかアリサの恰好をした作家のやつを裏返すと、たっぷりリンスを塗った。やつは手足をばたばたさせておれから逃れようとした。だが、男の力にはかなわない。
アリサになった作家は、激しいア○ルセ○クスに白目を剥いて泡を吹いて失神…
↓そんな作家(身体はアリサ)を放置して、男性(身体は作家)は作家の服を着てホテルから出ていきます。
元に戻る案は、面白くないという理由で却下w
おれはやつのパンツをはき、ワイシャツを着た。やつのアルマーニも。身体にぴたりだ。当たり前か。
作家は知名度があるようで、男性(身体は作家)は女性から声をかけられたり、タクシーの運転手にサインをねだられたりします。
この後は、作家は執筆が送れていたようで、男性(身体は作家)は作家の家に連れ戻され、小説の案として入れ替わりの話題を出しますw
↓そこに作家(身体はアリサ)がやってきて、男性(身体は作家)に身体を盗まれたと騒ぎ立てますが、男性(身体は作家)が作家のフリをして作家(身体はアリサ)を頭のおかしい人扱いをしたので、信じてもらえませんでした。
「こいつだよ」わなわな震えながらアリサがおれを指さした。
「どうしたの?」おれは素知らぬ顔でいった。
(中略)
「こいつがおれの身体を盗んだんだ!」アリサはほとんど悲鳴に近い声でいった。
「おれがお前の身体を盗んだって?」おれはとぼけていった。
↓作家(身体はアリサ)は、女性と入れ替わったと思っていて、元の自分である作家の中身は女性だと思っているところが面白いですね。
騒いで暴れた作家(身体はアリサ)は、部屋から追い出されてしまいました。かわいそう…
アリサはほとんど半狂乱になっていった。「先生の!だから、こいつはほんとは女なんだ!」
男性(身体は作家)が作家の妻とセ○クスするシーンでおしまい。
最後まで全員元に戻りませんが、オチはよくわかりませんでした…
ココロコネクト ヒトランダム
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『ココロコネクト ヒトランダム』 著者:庵田定夏 | 文化研究部の高校生5人が人格入れ替わり現象に襲われる。 | エンターブレイン ファミ通文庫 『ココロコネクト ヒトランダム』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
私立山星高校の文化研究部に所属する高校生の八重樫太一、永瀬伊織、稲葉姫子、桐山唯、青木義文。
ある日、5人は時間も組み合わせもランダムに入れ替わるようになってしまう。
この入れ替わり現象は、謎の存在「ふうせんかずら」による実験で、実験が終わるまで5人は入れ替わりながら過ごすことになった。
最初に、青木と唯が夜に入れ替わってすぐに戻ったようですが、唯が青木を裏切ったため、誰も信じずにおしまい。
その後、教室に忘れ物を取りに行った伊織と部室にいた太一が入れ替わります。
↓伊織の身体になった太一の描写がおいしいです。
混乱しながら胸を揉んでいたら、クラスの女子生徒・藤島がやってきて、襲われかけてしまいました。
助けに来た伊織(身体は太一)とのやりとりも良かったですね。
喉仏の隆起がほとんど感じられない、まるで女の子みたいになめらかな首だった。先ほど自らの口から発し、聞こえてきたその声を、聞き間違いだろうと、太一は心の中で否定しようと試みる。
腰から膝にかけてが筒状の衣服、通常ならばほぼ間違いなく女性しか穿かないはずのもの、つまりは、――スカートで覆われている。
そして、スカートから下には白くほっそりとした足が少し覗き、さらにそこから下は黒のハイソックスがしなやかな足を包んでいた。
やがて意を決すると、太一は、自分の両手を胸の前に持ってきて、右手で右の山を、左手で左の山を摑み、揉んだ。
もにゅ、もにゅ、もにゅ、もにゅ……。
とろけるようなやわらかさでありながら、それでいてしっかりとした弾力を併せ持ち、指の間からこぼれ落ちそうなのに、それでも決してこぼれ落ちない、不思議な、なんとも例えようのない感触だった。
(中略)
そして、「お」から始まる『アレ』を揉むたびに、こそばゆい感覚が自分に伝わってきている。つまりこれは、ただくっついているだけの飾りではなく――
伊織と太一が入れ替わったことで、文化研究部一同は入れ替わりを信じざるを得なくなりました。
本人しか分からない質問で、太一が伊織の声でエロ単語を発するところが好きw
入れ替わる時間や人物はランダムなようで、この後も5人は入れ替わり現象に巻き込まれていくことになります。
翌朝は姫子→唯→青木、昼休みには太一←→唯で入れ替わります。
唯(身体は青木)が伊織と入れ替わりたがっていたところがお気に入り。
伊織は、以前太一が入っていた時に藤島と色々あったせいで、関係が変わってしまったらしい…
放課後、文化研究部の5人で騒いでいたら、そこに顧問教師の後藤が。
後藤は謎の存在「ふうせんかずら」に乗っ取られていて、入れ替わり現象も「ふうせんかずら」が面白い5人組を観察するために起こしたらしい。
いつ入れ替わり現象が終わるかもわからないので、とりあえず入れ替わり中は本人になり切ることになりました。
「ふうせんかずら」が立ち去るときに、太一→青木→唯、伊織←→姫子で入れ替わります。
第4章は、5人がトイレの相談をしたり、姫子・伊織・唯が太一と青木に身体を見られていないか心配したり、テストの成績ネタだったり…
全員入るトイレを間違えたことがあったり、唯が男子の身体のトイレを嫌がったり、伊織が立ちションできるようになっていたりと色々とおいしいです。
その後、帰り道で青木←→伊織の入れ替わりが起こり、伊織と唯が何やら悩みを抱えていそうな雰囲気を醸し出します。
他にも、授業中に青木←→姫子、清掃ボランティア決め中に太一←→姫子で入れ替わり、両方とも「姫子」が酷い目にあっていてかわいそうでしたw
「太一」を敵視する藤島の前で、姫子(身体は太一)が「俺と伊織は付き合う手前だ」と宣言するところも良かったです。
第6章は、太一→姫子→青木→唯で入れ替わり、太一(身体は姫子)と青木(身体は唯)が、姫子本人と唯本人が絶対に言わない告白セリフを録画するシーンから始まります。
もちろん本人たちに見つかって怒られ、姫子(身体は青木)が全裸で校内を走り回ろうとして、青木(身体は唯)が跪いて謝る絵面になるのですがw
元に戻った青木が「唯の身体に男性が近づくと怯えたようになる」と発したことで、雲行きが怪しくなり…
↓その夜、タイミング良く?太一←→唯で入れ替わり、太一(身体は唯)は唯(身体は太一)の股間を蹴り上げることで、唯の男性恐怖症を荒療治w
直後に元に戻るところもおいしいです。
自分の【身体】を痛めつけることになるが、そんなものは関係ない。
やってやろうじゃねえか。
太一【桐山】は、桐山【太一】の『大事な部分』に、――強烈な膝蹴りを叩きこんだ。
膝の上で柔らかな『ブツ』が潰れる。
「いっっった!」と何故か太一【桐山】が叫んでしまった。
(中略)
桐山【太一】はウグァ~とか、グォア~とか、ガワァ~とか、ウボォ~とか、今まで太一が人生の中で余り聞いたことのない(また発したこともない)声で唸りながら、両膝と額を地面につけ、左手で大地を掻きむしる。吐き気もきたのか、右手は口元を抑えるために使用されている。
図らずも太一【桐山】の顔が歪む。太一にとっても、【自分の身体】がこれほど壮絶に苦しんでいるのを見るのは、なかなかキツイものがあった。
後は、入れ替わり現象により人格が崩壊しそうになっている伊織のトラウマを太一が解決。
伊織が姫子と入れ替わったフリをして、太一を試したところが好きですね。
そして姫子の悩みも太一が解決。
↓太一が体調が悪い姫子と突然入れ替わってトイレに駆け込むシーンや、入れ替わりの怖さを語る姫子のシーンが良かったです。
もう、『いつものこと』と言えるようになってしまった、ほんの一瞬の暗転の後――太一は急激な吐き気を感じた。
「うぐっ!?」
とっさに片手で口を押さえ、せり上げてきたものを口内に押し止める。
【誰】になっているか確認している暇もなく、即刻、立ち上がって教室を飛び出した。
(中略)
足下に見えるのは黒のハイソックスとスカート。目的地は女子トイレに定まった。
(中略)
「アタシになってるのは、やっぱり太一か?あ~ったく、それくらい我慢しやがれ。根性ねえなあ」
「人と人の中身が入れ替わる、つまりそれは【自分の身体】を――同時に【社会的人格】をも、他人に乗っ取られるってことだ。この意味、わかるか?」
(中略)
「その間は犯罪やろうがなにしようが、責任は全部、『元の身体の持ち主』にいくんだ。責任を全部他人に押しつけて、やりたい放題できる。それこそ殺したい奴がいれば、殺せばいい。盗みたいものがあれば、盗めばいい。犯したい奴がいれば、犯せばいい」
(中略)
「アタシは、そんなことをお前らがするんじゃないかと、【自分の身体】が乗っ取られている間になにかされるんじゃないかと、想像してしまう。そう思うと、怖くて夜も、眠れない」
突然、伊織が「ふうせんかずら」に身体を乗っ取られ、「ふうせんかずら」は伊織の身体で川へ身投げ。
伊織の身体が意識不明になってしまい、5人は「伊織の身体と共に死ぬ人格」を選ばなければならなくなりました。
急に伊織の人格が「ふうせんかずら」の人格に変わるシーンが不気味で良かったです。
「ふうせんかずら」は、ただ面白いから入れ替えているだけらしい…
怒った姫子が「ふうせんかずら」に殴り掛かった瞬間に伊織と入れ替えられ、話が終わってから戻されるところが最高でした。
↓死ぬ人間を選ぶときのやりとりが、太一が犠牲になろうとしたり、伊織が誰かの人生を奪う罪悪感を覚えたり、4人が別人の身体の伊織と最後の会話をしたり、熱かったですね。
「それに、誰かの人格を殺して、その【身体】を乗っ取って生きるなんて罪、わたしには重くて背負いきれないよ」
青木←→伊織、唯←→伊織、姫子←→伊織の入れ替わりがありました。
伊織(身体は姫子)は、最後だからと姫子の身体で勝手に太一とキスをしてしまいます。
伊織は伊織として死ぬことを決めますが、結局「ふうせんかずら」の力で伊織は助かり、5人に平穏な毎日が戻るのでした。
太一は、「姫子の身体」のファーストキスを奪ったことで、姫子から怒られます(笑)
↓アニメ版はこちら!
↓続きでは陸上部の女子5人の入れ替わりも発生します。
人格転移の殺人
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『人格転移の殺人』 著者:西澤保彦 | 入れ替わり空間で男女6人が入れ替わり体質になる。 | ●講談社 講談社ノベルス 『人格転移の殺人』 ●講談社 講談社文庫 『人格転移の殺人』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
1970年代のカリフォルニアには、入れ替わりの環(スイッチ・サークル)という複数の人間が入ると入れ替わり体質になる人知を超えた存在が作った空間があった。
施設は封鎖されたが、20年後にショッピングモールの一部として残っていた空間に、地震から逃れるために6人の男女が入りこんでしまった。
入れ替わり体質となった6人は、軍の秘密事項に触れたということで寮に隔離されるが、入れ替わった者同士で殺人が起きてしまう。
↓冒頭で、20年前にスイッチ・サークルを調査していたダニエル・アクロイド博士と助手のジンジャー・ピンホルスターが誤って入れ替わり体質になるシーンがありました。
16歳の青年と89歳の男性が入れ替わって、老人ボディの青年が死亡して元に戻れなくなった例もありました。
ようやくアクロイド博士が、そう口にできた時、既に眼の前に彼女の姿はなかった。聞き慣れた自分の声ではない。妙に甲高い、この声は――
そして眼の前にあるのは、人口の階段をバックにした、砂色の髪の大男の姿だけ。あれは――
「ド……ドクター・アクロイド?」
大男は痰にからんだような呻きとともに、ぺたりと尻餅をついていた。内股で。まるで若い女性がするように。
その声は、アクロイド博士が生まれて初めて、他人の耳を通して聴く、自分自身の肉声だった。
一度空間に入って入れ替わった人間は、一生不規則に入れ替わる体質になってしまうようです。
入れ替わった片方が死ねば、もう片方は一生その身体で過ごすことになるらしい…
3人以上で入れ替わり体質になった場合は、時計回りで順番に入れ替わるという規則があります。
苫江利夫(33歳日本人男性)
↓
ランディ・カークブライド(52歳アメリカ人男性)
↓
ジャクリーン・ターケル(24歳白人女性)
↓
アラン・パナール(20歳白人男性)
↓
ハニ・シャディード(28歳アラビア人男性)
↓
ボビイ・ウエッブ(16歳黒人男性)
↓江利夫(身体はランディ)が、入れ替わる前に肋骨を折っていたのに治っていることを訝しがったり、鏡を見たり、元の自分の顔を見て驚いたりとおいしいです。
確かに"彼"は、そこに立ってはいた。
ただし、鏡の中に、である。洗面台の。
僕は思わず自分の頬桁を、ぴしゃんと両手で張ってしまった。すると、鏡の中の南部男も、自分の顔を両手で覆っている。
まじまじと鏡を凝視した。南部男も、妙に柄にもなく怯えの滲んだ表情で僕の方を睨んでくる。
番号で言えば『2』に当たる椅子に腰を下ろしているその東洋人は、どこかで見たことのある顔をしている。
うげっ、とか何とか、食道を胃の内容物が逆流しているかのような、余り上品とは言えない呻きを思わず洩らしてしまった。見たことがあるも、へったくれもない。それは、この"僕"だった。そこに座って今僕を見上げているその顔は間違いなく、"苫江利夫"そのひとなのである。
↓それぞれ、身体には似合わない言語を話しているという描写が非常に多くて興奮しました。
そう悲嘆混じりに叫んだのは、何と"僕"であった。しかしその口から出てきたのは英語で、しかも語尾に独特のアクセントが付く黒人特有のイントネーションだ。典型的な東洋人の顔をした"僕"が、まるで黒人のような英語を喋っている。それは何とも、シュール極まりない光景であった。
確かに声は彼女のものなのだが、それが紡ぎ出しているのはブリティッシュ・イングリッシュとは似てもにつかない、何とも濃い、サザン・アクセントである。
どう見ても白人の初老の男にしか見えない"ランディ"(=僕)の口から、すらすら日本語が流れ出てきたものだから、たまげたらしい。"ハニ"(=アラン)は口を半開きにして、ぽかんとなった。
もちろん英語には、日本語と違って厳密な意味での男言葉や女言葉というものは無い。だが、アメリカ英語に親しんでいる身としては、男性が喋るブリティッシュ・イングリッシュというのは、ただでさえ女性的に響く。その上、"アラン"(=ジャクリーン)は、それが元の本人(つまり彼女の人格)の怒った時の癖なのだろう、内股をぴったりと閉じて腰をくねらせながら腕を大きく旋回させるものだから、どうしてもヒステリーを起こしたオカマという感じになってしまう。
↑アクロイド博士は、6人に入れ替わりを説明している途中でジンジャーと入れ替わり、そのままジンジャーの身体で説明を続けます。
↓20年間入れ替わり生活を続けたアクロイド博士とジンジャーは、運命共同体のような絆で結ばれているようで非常に尊いです。
博士の護衛役のデイヴ・ウィルスンが、すっかり二人の入れ替わりに慣れているリアクションなのも最高。
赤毛の女性は、まるで”ドクター”の影武者のように、黙ったまま彼に寄り添っていた。いったい彼とは、どういう関係なのだろう?どこか、他人同士には到底成熟し得ない、極めて近しい雰囲気がふたりの間には滲み出ているように僕には思えるのだが、年齢的に言うと彼女が”ドクター”の娘といったところか。
↓アクロイド博士がジンジャーの身体で出産していたことが衝撃でしたw
「きみも経験してみてはどうかね?どうせなら。女性の人生の全てを。出産など、きみ、なかなか壮絶な"体験"だよ」
――陣痛が始まった時に、入れ替わってしまってな。そのまま、ずっと私が肩代わりだ。息子が生まれてくるまで。これは、なかなか貴重な体験だぞ。
↑唯一の女性ボディ、しかも女優のジャクリーンの身体を手に入れたスケベ男性のランディの行動が見どころですねw
おっさんムーブをした後、ニヤニヤしながら胸を揉みまくります。
↑ランディ(身体はジャクリーン)は、ジャクリーン(身体はアラン)の目の前でもジャクリーンの身体を見せびらかします。
ランディ(身体はジャクリーン)が調子に乗って煽りまくったり、アルコールに弱いジャクリーンの身体で酔いつぶれてしまったりするのも最高でした。
ということで、6人は現実世界では地震で死んだことにされ、寮で共同生活を送ることに。
ジャクリーン(身体はアラン)はランディ(身体はジャクリーン)を見張ろうとしますが、もしその間に入れ替わりが起こったら、ジャクリーンの身体に入った江利夫がアランの身体に入ったランディに犯されることになるため、一同は頭を悩ませます(笑)
6人は非常に仲が悪く、協力などできない一触即発の状況で、非常にヒヤヒヤしますw
逃げ遅れて死亡した窪田綾子が殺された可能性があるということで、江利夫はこの中にいる犯人を推理しますが…
翌日、二度目の入れ替わりが起こり、江利夫はジャクリーンの身体、ジャクリーンはハニの身体にスライドします。
↓江利夫(身体はジャクリーン)が身体を確かめるところが良かったですね。
それにしても……慣れない身には、女性の乳房というのも、なかなか重く感じるものだ。ちょっぴり好奇心にかられて、そっと上着の襟を引っ張って中を覗き込んでみようとした。
他にも、二日酔いや寝不足や怪我を負っている身体に入ってしまったネタや、昨晩ナルシストのハニ(身体はボビイ)が元の自分であるハニの身体(中身はアラン)と行為をしたネタが良かったです。
↑行為の結果、お尻の穴を痛めたハニの身体に入ってしまったジャクリーンがかわいそうでしたw
この後、「誰かの人格」が次々に殺人を犯し、6人のうち残るは江利夫とジャクリーンの二人だけになってしまいました。
江利夫とジャクリーンと犯人が揉み合いになる中、何度も入れ替わりが起きていてややこしかったですw
英語のアクセントで中身が誰だか識別できるのは、滅多にないシチュエーションで興奮しました。
江利夫とジャクリーンは、二人だけで入れ替わりを繰り返します。
入れ替わるのは二人だけになったため、江利夫とジャクリーンは日本で入れ替わり生活を送ることになりました。
入れ替わり生活に慣れてくる描写が良いです。
↓過去の出来事から女性不振気味になっていた江利夫が、入れ替わり運命共同体のジャクリーンに特別な感情を抱くところが好き。
代わりに自分の中で、何か変な余裕みたいなものが生じているのに気づく。つまり、たとえ日本とイギリスとに離れ離れになったとしても、僕はジャクリーンと無関係には絶対になれない、という事実に拠る精神的余裕だ。
そして、推理が進み、真犯人と犯行の動機が判明。
ネタバレになってしまうので詳しくは書けませんが、上記に書いた感想の内容の多くは覆されています(笑)
一応ネタバレなので真相は伏字です。
犯人の性別は××で、間違えて××××の身体を×してしまい、××××身体がなくなってしまったため、同じ××である××××××の身体を狙って殺人を犯していたというのが真相でした。
実は犯人の××が××として××に犯されていたとか、×××××××と×××××が××を契機に既に入れ替わり体質が×××いたとか、色々と衝撃が(笑)
人格の入れ替わりという混乱する状況下でのミスリードが上手だったと思います。
入れ替わりものとしてもミステリーとしても面白かったのでぜひ読んでみてください。
鏡原れぼりゅーしょん
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『鏡原れぼりゅーしょん』 著者:林 直孝 | 男子高校生が同級生の女の子二人と呪いで入れ替わる。 | 一迅社 一迅社文庫 『鏡原れぼりゅーしょん』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
高校生の来摩久司は、ひょんなことから美人の同級生・鏡原奈結と一緒にラクロスの試合を観戦することになった。
その帰り道、気を失った二人は、偶然近くにいた転校生・津吹あいらを交えて三人で入れ替わってしまう。
入れ替わったのは鏡原家の呪いが原因で、ある特定の日にキスをすれば元に戻れるようだが…
来摩久司→鏡原奈結
鏡原奈結→津吹あいら
津吹あいら→来摩久司
来摩久司は貧乳好きの普通の男子高校生、鏡原奈結は巨乳美少女でお嬢様、津吹あいらは貧乳でボクっ娘。
入れ替わったのは鏡原家の長女に代々伝わる「八津当輪の呪い」で、一週間以内に訪れる「人魂鳴動の触」の日に入れ替わった三人のうち二人がキスをすれば元に戻れるようです。
↓三人は突然入れ替わります。久司(身体は奈結)の身体探索描写が良かったです。
胸とスカートと髪の毛と足と声について言及がありました。
貧乳派の久司が貧乳のあいらの身体ではなく、巨乳の奈結の身体に入るところがポイントが高いw
最初に違和感を覚えたのは、胸だ。
たゆんと揺れる柔らかいものの存在を認めて、自分に起きた異変に気づいた。
混乱した俺は、その豊かなふくらみにそーっと両手を添えてみる。
おおー、これはすごい。これが女の子のおっぱい。初めて触るけど、こんな感触なんだなー、柔らかいなー、手の平からこぼれだしそうだ、俺は貧乳派だけどこのボリュームや柔らかさを味わうと巨乳派に転向しちゃいそうだぜ……って感心してる場合かよ俺!
次の違和感は、足。
足下がスースーするから、気になってそーっと下を見た。
胸のふくらみが邪魔で、その姿勢では自分の下半身が視界に入らない。
やむなく前傾姿勢になってみると、さらさらとした長い髪の毛が顔の前に垂れてきた。それを指で耳の上に引っかける。すごく細くてキレイな指だった。
で、胸越しに下を見ると、俺はスカートを穿いていた。しかもかなり短い。
↓奈結(身体はあいら)の方も、貧乳ネタが美味。
それから、戸惑った表情で自らの胸を見下ろした。さらに制服の胸元を浮かせて、なぜかその中をのぞき見る。
ブラの肩紐が見えそうだったので、俺は慌てて目をそらした。
「あわわ、私の胸が、小さくなっちゃってます……。この歳で、縮むことってあるんでしょうか?」
「その小さい胸は、ボクのものよ」
↓あいら(身体は久司)の描写も少しだけあります。
男子の身体は、かなり歩きにくい。特に、股間にあるモノが、とても邪魔。
なぜ男子にはこんなヘンテコなものが付いているんだろう。
とりあえず、三人はそれぞれになりすまして生活することに…元に戻るまで一週間程度の入れ替わり生活を送ります。
久司(身体は奈結)も奈結(身体はあいら)もあいら(身体は久司)も、それぞれ秘密を抱えていて、入れ替わったことで秘密が暴かれてしまいます。
↓久司(身体は奈結)が女の子の身体で恥ずかしがる描写がいくつかあって興奮しました。
「ぐえっへっへ、おい、下着が丸見えだぜ嬢ちゃん」
人形に下品に指摘された。
嬢ちゃん?俺が?
「ああっ、来摩くん、そんなはしたない格好は、やめてください~っ」
鏡原さんが手を顔で覆い、耐えきれないという感じでへたり込む。
それで思い出した。俺は今、鏡原奈結の身体だったんだ。
大きく足を振り上げたこの姿勢だと、スカートが豪快にめくれて中が丸見えだ。
無性に恥ずかしくなった。
下着を見られたことと、鏡原さんの身体にあられもない格好をさせてしまったこと。
その二つに対して恥ずかしかった。
そーっと足を下ろし、神妙にスカートの裾を手で押さえる。
↓久司(身体は奈結)は、ほぼ赤の他人だった奈結(身体はあいら)と女の子同士になったことで、急速に仲を深めます。
と、電車が急停車し、ぐらりと揺れた。
俺はとっさに踏ん張ろうとした。毎日電車通学をしているから、その程度の揺れには慣れているはずだった。
でも思った以上に今の身体は踏ん張りが効かない。遠心力で持って行かれ、激しくよろける。
(中略)
今の俺は体力的にか弱い、鏡原さんの身体である。その認識は常に心の片隅に持っておかないと、意識に身体が付いてきてくれなくなるかも。
――俺は今、女子なんだ。
自分に言い聞かせる。だから鏡原さんと抱き合っちゃった今のアクシデントも、女同士っていうことで、特に変な目で見られることはないんだ。
三人は身体の家に帰りますが、奈結とあいらの家族が特にキャラが濃いw
久司(身体は奈結)は、奈結の超シスコン妹に、激しめのスキンシップをされます。
↓奈結の身体を見るかどうか葛藤するシーンも良かったです。
「なにをしたっていいんじゃねえの?奈結嬢ちゃんの身体は、少なくとも今は、オメーのものなんだからよ。自分の身体を自分でイジったって、誰にも文句は言われねえよ」
「……イジる、とか言うなよ、このヘンタイ人形め」
「オメーも健全な男ならよ、見てぇだろ?奈結嬢ちゃんの生まれたままの姿ってのをよぉ。ひひひ」
鏡原さんの、生まれたままの姿……だと……?
(中略)
ぷちっ、というボタンが外れる音がして、手で押さえる間もなくアントニオごとスカートが床に落ちる。
「あ……」
見てしまった。
スカートに隠れていた、神秘の領域を。聖なる布を。
↓そして、久司(身体は奈結)のトイレイベント。一応ちゃんと済ませたようです。
「足をもぞもぞさせちまって、オメー、まるで女みてぇだぞ」
「……も、漏れそうなんだよ」
そう、この生理現象にどう対処するのか。
爆発までのタイムリミットは刻一刻と迫っている。ここで俺が漏らすことはすなわち鏡原さんが漏らしたことになってしまうわけで。間違っても、彼女の人生に”十七歳でおもらししちゃいました”という黒歴史を残すわけにはいかない。
でも、だからといってトイレに行くのはまずいだろ。絶対まずいって!
↓久司(身体は奈結)は女子更衣室イベントもあります。
恥ずかしがっていたら、クラスメイトの璃野に脱がされて着替えさせられてしまいました。
「それより早く着替えないと。それとも、あたしが着替えさせてあげよっか?おりゃー!」
いたずらげな言葉とともに、璃野がいきなり俺のセーラー服をたくし上げた。
「うおわっ!やめてっ!」
「あはは、照れる奈結ってかわいいねえ」
(中略)
ついに上着の裾が、胸の上で服が引っかかっているような状態。それはつまり、ブ、ブラジャーが丸出しになっているということで……!
ダメだ!下を見たら視界にそれが入ってしまう!
慌てて顔を上げたら――
「お、おおお…」
他の女子たちの、あられもない姿がそこにあった。
↓あいら(身体は久司)は久司の身体でも淡々としているキャラで、「久司」はどんどんと学校内で変態になっていきますw
な、なにをやってるんだ、津吹さんは。男の俺の身体でありながら、なぜ女子更衣室の前にいる!?もしかして入ろうとしてた!?
「……ブラ、丸見え」
津吹さんは顔色一つ変えず、俺の胸を指差してそう指摘した。
言われるままについ下を見てしまった俺の目に、比類なき双丘を包む白い布が目に入った。
(中略)
「ひゃあっ!」
いかん、つい反射的にかわいらしい悲鳴をあげちゃったじゃないか!
↓久司(身体は奈結)が奈結(身体はあいら)に身だしなみを整えてもらうシーンも良いです。
自分の頭を背後から見たことなんてなかったから、すごく変な気分だった。
「変な気分だなあ」と来摩くん。
「あ」
まるで心がシンクロしたみたいで、ドキッとする。
「男って、こういう風に髪を梳いてもらうことなんて、ほとんどないからさ」
「うふふ、そうですね。感想は、いかがですか?」
「なんだろう……気持ちいいかな。いつまでもこうして、奈結に身を委ねていたいっていうか」
この後は、元に戻るためにも三人一緒にいた方が良いということで、「奈結」の家で三人が止まることに。
男性の「久司」がいたことで、奈結の家族は大騒ぎw
昨日入浴していなかった久司(身体は奈結)は、奈結(身体はあいら)と一緒にお風呂に入ることに。
二人がお風呂に入ることについて、あいら(身体は久司)は気にしていないようです。
↓久司(身体は奈結)が目隠しをされて奈結(身体はあいら)に脱がされるシーンが、見えない分感覚が研ぎ澄まされている描写が多くて最高でした。
「で、では…次に下着を脱がしますね」
俺と奈結は、同時にゴクリと息を呑んだ。
すごい緊張感。服を脱ぐだけでなんでこんなに張り詰めた雰囲気になってるんだか……。奈結が俺の背後に回る気配がした。すぐに、背中のあたりに冷たい指の感触。その瞬間、俺は全身に電撃が走ったかのような感覚に襲われた。
「はうぅんっ」
たまらずビクンと身震いして、変な声を出してしまった。
「ど、どど、どうしたんですか!?」
「あ、いや……いきなり背中を触られたんで」
「すいません……」
視界は真っ暗。なにも見えない。それでも奈結の指の動きは肌を通して伝わってくる。
ブラのホックに手がかかった。パチン、という音がして、すぐに胸を締め付けていた圧迫感が消える。たゆんと、自分の(?)おっぱいが揺れた。
い、意外と、感触だけでも胸の動きって分かるものなんだな……。
あと、ブラってけっこうきついものなんだ。外されたことでこんなに楽になるなんて。女子はいつもこれを身に着けているわけだから、けっこう大変なんだなあ。
奈結の指が、パンティーのサイドにかかった。これまたそろそろと下げられていく。パンティの柔らかな布地と、奈結の指が、俺の太ももの表面をゆっくり這っていく感触。
それと、下腹部を無防備に人目に晒してしまってることへの心許なさ。
それらのせいで、なぜか身体の奥に、ゾクゾクとうずくまるような切なさを覚える。
「…………ぅ」
(中略)
自分では見ることができないが、今の俺は――鏡原奈結の身体は――生まれたままの姿である。
↓久司(身体は奈結)が胸を洗われるシーンもおいしいです。
色々あって、久司(身体は奈結)と奈結(身体はあいら)は、石鹸でヌルヌルの状態で身体が触れ合ってしまいます。
むにゅんむにゅん……。
「はぅぅぅ……」
「ど、どうしました!?」
いやっ、揉まないでーっ!
とは言えない。まかり間違っても言えない。奈結にそんなつもりはないんだ。これは洗ってくれているんだ!そう自分に言い聞かせる。
また胸の奥から切ない気分が溢れ出してきて、俺はたまらず自分の身体を抱きしめた。そうすると必然的に、自分の二の腕がナマおっぱいに触れてしまうことになり――
「あ……」
乗った。腕の上に、柔らかいものがずっしりと乗ったよ……。
あいら(身体は久司)は、中性的な顔立ちの久司の身体でネグリジェを着ますw
あいら(身体は久司)は、心が女性なので女装ではないと言い張ります(笑)
夜に、久司(身体は奈結)と奈結(身体はあいら)が同じベッドで寝るシーンが尊かったです。
↓翌日、久司(身体は奈結)はうっかりノーブラで登校してしまいました。
「お前、ノーブラじゃねえええかぁぁぁぁ!むっひょぉぉぉぉ!」
「……はい?」
ノーブラ?
ざわ……ざわ……
海野の歓喜の絶叫は当然ながら教室中に響き渡り、男子の間から驚きと興奮のざわめきが上がり始める。
俺は戸惑いつつ、自分の胸を見下ろしてみた。それから、試しにちょっとだけジャンプ。
ばいんばいんばいん。
おおおお!?い、いつもより激しく揺れております!
そこでようやく事態を把握した。確かに俺は今日の朝、ブラを身に着けた記憶がない。当たり前だ、俺は今日の今日まで、女子としての身支度なんてしたことすらなかったんだから!男の場合、下着はパンツ穿くだけだし!しかも今日は明け方までお父さんたちを説得していたせいか、着替えの時は半分寝ぼけていたわけだし!
「…っ」
慌てて両手で胸を隠した。すると腕に、おっぱいの柔らかさがダイレクトに伝わってきた。ブラを着けていた昨日や一昨日と感触が明らかに違う。しかもセーラー服を手で押さえ付けたせいで胸の形がより強調され、胸の先端の突起が服越しにぷっくらと浮き出てしまう。
ヤバい、猛烈に恥ずかしくなってきた!奈結に申し訳ないことしたのと、奈結の身体がノーブラで学校の制服を着ているということへの淫靡さで、猛烈に顔が熱くなり、意識していないのに涙が溢れてくる。
↓あいら(身体は久司)は相変わらずマイペースで、久司(身体は奈結)と奈結(身体はあいら)の胸を揉んだり、久司の身体で何故かブラジャーを身に着けたりします。
「ボクは別にノーブラになっても構わない。ただ――」
そう言って、いきなり俺と奈結――つまり奈結と津吹さんの胸を同時にわしづかみにした。
「ひゃあ!」「きゃあ!」
「明らかにサイズが違うわ。鏡原奈結にはキツすぎると思う。ボクのブラは」
そりゃ津吹さんは貧乳だからな、分かりきってることだよ!っていうかなんで揉むんだよ!
(中略)
「女の子の胸に興味はないわ、ボクは」
津吹さん、余計なこと言わないでくれ!いや、もうじゅうぶん手遅れかも……。璃野の目には確実にこう見えたはずだ。
”来摩久司が、鏡原奈結と津吹あいらの胸を揉んだ”
いやまあ事実なんだけども!でも違うんだよぉ!
(中略)
「心配ないわ。ボクが、替えを持ってる。それを貸すから」
「替えを持ってるって、ブラの替え!?久司、あんたまさか下着泥棒を!?」と璃野。
「いいえ、元々ボクのよ」
そして胸元をはだける。
念のために言っておくが、今の津吹さんは俺――来摩久司の身体だ。
来摩久司の胸に、なぜか、紺色のスポーツブラが見えた。しっかりと身に着けていた。
津吹さんは無表情のまま少し頬を朱色に染めて――何度も言うが今の身体は来摩久司だ――ブラを脱ぎ捨てると、まだ体温が残るそれを俺に差し出してきた。
「使って。スポーツブラなら、サイズは多少融通が利くわ」
↓入れ替わって数日が立つと、久司(身体は奈結)も随分と女の子生活に慣れてきます。
かなり強い海風が下から拭き上がってきていて、俺――つまり奈結の身体――のサラサラとして髪をはためかせる。スカートがめくれそうになって、片手で髪を、もう片方の手でスカートの裾を押さえなければならなかった。
なんか今の俺、すごく女の子っぽい仕草をしてるかも……。奈結の口調を真似るのにも少しずつ慣れてきていて、このまま呪いが解けないと心まで女の子に近づいてしまうんじゃないか、なんていう漠然とした不安を抱き始めていた。
↓色々あって、久司(身体は奈結)はあいら(身体は久司)に殺されそうになります。
逃げるシーンが良かったですね。
奈結の身体は、さっき言った通り足が遅い。特に、激しく揺れる胸がすごく邪魔。
俺の方が先に走り出したにもかかわらず、どんどん距離を詰められる。
ひいい、奈結、なんでもっと身体を鍛えておいてくれないんだぁぁ!
二回目のお風呂イベントもありました。
久司(身体は奈結)を信用した奈結(身体はあいら)は、目隠しをしなくていいと許可を出します。
久司(身体は奈結)と奈結(身体はあいら)の距離がだいぶ縮まっていて尊いです。
↓そして、ついに奈結の身体(中身は久司)に「人魂鳴動の触」が訪れたので、久司(身体は奈結)と奈結(身体はあいら)が見た目が女の子同士のキスをして三人は元に戻ります。
と、唐突に吐き気というか気持ち悪さに襲われた。
「う、うぅ……」
なんだろう、この違和感は……。
俺はついつい、お腹のあたりを手で押さえた。
「来摩くん、まさか……≪人魂鳴動の触≫が……!?」
「わ、分かんないけど……腰のあたりが、すごくだるくなってきたっていうか……」
腹の内部に素手を突っ込まれて、胃やら腸やらをねちゃくちゃとかき回されているかのような。あるいは巨大な万力で、腰をゆっくりと、少しずつ締め付けられていくかのような。
「間違いないです。つ、ついに来たんですよ……っ」
さっきから、ちっとも立ち上がる気力が湧かなかったり、なんとなくぼんやりした感覚だったのは、これが原因なのかも。
女子は、大変なんだな……。こんな苦しみを毎月味わってるのか……。
オチで、久司→璃野→奈結が入れ替わります。
猫色ケミストリー
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『猫色ケミストリー』 著者:喜多喜久 | 大学院生の男女と猫が落雷で入れ替わる。 | 宝島社文庫 『猫色ケミストリー』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
人間嫌いの大学院生・菊池明斗は、学内での唯一の友達であるオス猫と一緒に中庭にいたところ、声をかけてきた同級生の辻森スバルと共に落雷に遭ってしまう。
病院で気がついたら、明斗はスバルの身体、スバルはオス猫の身体になっていた。
明斗の身体は意識不明だったので、二人は大学生活を送りながら元に戻る方法を探すことになったが…
スバルの身体を手に入れた明斗ですが、猫になりたかったと話すところが面白いですねw
明斗はほとんど人とは話さないので、社交的なスバルの身体がツラいようです。
↓入れ替わり直後の明斗(身体はスバル)の反応がおいしいです。胸を触るシーン有り。
明斗(身体はスバル)は、意識のない明斗の身体にスバルが入っていると考えますが、スバルはオス猫の身体に…
意識不明の明斗の身体は、病院に運ばれていきました。
僕は深呼吸をしてから、「つじもりさーん」と、控えめに彼女の名前を呼んでみた。
同時に、あれ?と強い違和感を覚えた。
――僕の声、こんな感じだったっけ?
首をかしげていると、『どうして……あたしが?』と、辻森さんが返事をしてくれた。僕は急いで左右を見回した。しかし、彼女の姿はどこにもない。
「……あの、どこにいらっしゃるんでしょうか」
『ここだよお』
声の方向に目を向けると、さっきの猫と視線がバッチリぶつかった。いないじゃないか。
僕は今、和泉を見上げるような形で会話をしている。果たしてこんなに身長差があっただろうか?確か、彼は僕と同じくらいの身長だったはずなのに。
そうか、たまたま僕が低いところにいるのだな、と足元を確認して、今度は自分が見覚えのない靴を履いていることに気づく。ついでに言えば、服装も全然違っている。さっきまでカーキ色のダウンジャケットを着ていたはずなのに、なぜか今はベージュ色のトレンチコート姿になっている。一体全体、誰がいつ着替えさせたのだろうか?一流マジシャンも裸足で逃げ出す早着替えだ。
……いや、ちょっと待て。
僕はそこで、決定的に見覚えのないものが存在していることに気づいてしまった。
――この控えめな胸の膨らみはなんなのだ?
僕は服の上からそれをそっと押さえ、あまりにも非現実的な、ある推論を導き出した。
↓他にも、明斗(身体はスバル)がスバルの身体を確かめるシーンがありました。
明斗(身体はスバル)はだいぶ冷めていて理論的な性格です。
ふと思いついて、自分の手を見てみた。見慣れた自分の手とは明らかに形が違う。ごつごつした節が消え、すべすべした柔らかい手になっている。指の毛も消えているし、爪もきちんと丸く磨かれている。紛れもない女性の手だ。
鏡の中には、当然のように辻森さんの顔があった。
顎を触ろうとすれば顎に手が行く。耳を触ろうとすれば耳に手が行く。
普段の倍の長さになった髪が、強い風にさわさわと揺れる。試しに手で梳いてみると、髪の毛は滑らかに指の間をすり抜けていった。女性の髪は滑らかで手触りがいい――僕が抱いていたイメージ通りだ。
↓スバル(身体は猫)は、強気な性格です。
明斗(身体はスバル)とスバル(身体は猫)は、20mの範囲内であればテレパシーで会話ができます。
「猫と会話するスバル」が他人に見られる心配は一切ありませんw
「……あの、本当に、辻森さんですか」
『そうだよ!』彼女は大声で叫んで、『最初からそう言ってるでしょ!』と、すねを目がけて猫パンチを放ってきた。結構痛い。
さんざん殴ってから、『あ、これあたしの体だった』と前足を殴ったところを撫でる。全く忙しい人だ。いや猫だ。
気絶している明斗の身体は検査をしても異常がありませんでした。
明斗の母親と明斗(身体はスバル)のやりとりが好きですね。
↓明斗(身体はスバル)のトイレネタが気まずくて良いです。結局トイレは行きます。
『あの……トイレに行きたくなってきたんですが』
(中略)
『小さい方です。行ってきていいですか?』
『そ、そんなのダメだよ』
(中略)
『だ、だって菊池くんの身体はあたしの体なんだよ。トイレに行くってことは、その……色々とまずいよ』
(中略)
『拭いたりするのが……困る』
『困ると言われましても』
こうして話している間にも、刻々と限界が近づきつつあった。こみ上げてくるこの感覚は、男も女も変わりがないようだ。必然的に内股にならざるを得ない。
とりあえず、色々と試しても元に戻れなかったため、明斗(身体はスバル)はスバルとして実験をすることになってしまいました。
何とか周囲を説得し、研究室にスバル(身体は猫)を置いてもらい、指示をすることで何とか実験ができます。
明斗(身体はスバル)が頑張って一人称の「あたし」を使うシーンに興奮しました。
明斗(身体はスバル)とスバル(身体は猫)はスバルの家に泊まります。
一日目は、スバル(身体は猫)が許可を出さなかったためお風呂には入りません。
明斗(身体はスバル)は、スバル(身体は猫)に教えてもらい、メイクをします。
スバル(身体は猫)の猫ボディネタもおいしいです。
↓視力や色彩感覚、動くものを追ってしまう猫としての本能などのネタがありました。
『いや、別に大したことでは――』と油断させておいて、いきなり猫じゃらしを辻森さんの目の前に差し出した。
『ほわっ!』と声を上げて、辻森さんがそれに飛びつく。僕が先端を揺らすと、辻森さんが慌てて手を伸ばす。思った通りだ。猫の本能は辻森さんの理性を上回る。
↓猫ボディだと、キャットフードもおいしく感じるようです。
『むしろ逆って言うか……ハマっちゃいそうってことなの』
『えっと。つまり、もっと食べたい、ってことですか』
『うん』と頷くや否や、辻森さんは再びキャットフードを食べ始めた。
今度はさっきと違い、無心で口元を動かしている。まるで、というか実際そうなのだが、本当に猫が食事をしているように見えた。
↓途中で、一瞬だけ元に戻りますが、すぐにまた入れ替わり状態になります。
元に戻ったのはキャットフードに混入した神経を興奮させる物質が原因のようで、二人は研究室で覚醒剤を合成した犯人探しをすることに…
闇を映すガラスの中から、一人の男性がこちらをじっと見つめている。
見慣れた無表情。それは紛れもなく、僕自身の顔だった。
↓猫の精神は明斗の身体には入っておらず、猫の身体の中で眠り続けている状態で、明斗の身体は空です。
この完全に入れ替わっていない状態が、元に戻る鍵になります。
明斗の身体の中には魂が入っていないせいで、徐々に衰弱していき、死にそうな状態になってしまいます。
猫の魂はどこにも行っていなかった。落雷のショックで神経の中に魂が封じられ、そのままずっと眠り続けていた――。
そう考えれば、僕の肉体が空っぽになっていたことも理解できる。
覚醒剤で猫が自分を取り戻したはずみで、その体を間借りしていた辻森さんの魂が立ち退きを余儀なくされ、空間を越えて彼女の肉体に舞い戻った。そして僕も、ドミノ倒しのように辻森さんの体を脱出し、病院のベッドで目を覚ました。
こうして、精神の入れ替わり状態は一時的に解消された。
↓二日目には、明斗(身体はスバル)はお風呂に入ります。
スバル(身体は猫)は、いつ戻れるかわからないので色々と諦めたようです。
ちなみに、入れ替わり生活は一週間以上続きます。
『あの、辻森さん。ずいぶん体が冷えたので、お風呂に入ろうかと思うのですが』
『え、今から?まあ別にいいけど』
(中略)
『はい。全身くまなく洗っても問題ありませんか』
『……も、問題ないわけないでしょ』
『支障がある、ということですか。具体的にはどの辺りですか』
『具体的にって……そんなの、だいたい分かるでしょーが!』
(中略)
『うーん、ちょっとよく分からないです。なにぶん、女性の体の作りには疎いもので』
『作りとか言わないでよ!こっちが恥ずかしくなるじゃない!』
『すいません。じゃあ、こちらできちんと確認してみます。姿見はありますか』
『きちんととか言うなあっ!』
無事に犯人探しが終わり、再び覚醒剤を使用して全員元の身体に戻ります。
↓明斗(身体はスバル)が犯人に襲われたり、スバル(身体は猫)が犯人に刺されて死にそうになったりとハラハラしました。
意外なほど短時間のうちに意識が遠ざかってくる。それとも、僕が知覚できないだけで、すでに何分も首を絞められ続けているのかもしれない。
僕は朦朧としながら、自分が女性になっていて、力が足りないから反撃できないのだな、と死に近づいている自分の現状を分析していた。
――そうだ。
暗く沈んだ意識の底で、僕は思い出す。僕は今、辻森スバルになっている。このまま死んだりしたら、辻森さんは――。
(中略)
『あたしがおとりになる。その隙に逃げて、誰かを呼んできて』
『…男として情けないですが、その方がまだリスクが少なそうです』
『急に甲斐性なんて見せなくてもいいよ。今は女性でしょ。むしろあたしの方がオスなんだから、頼ればいいんだよ、頼れば』
ソウル・オブ・サラマンドラ
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『ソウル・オブ・サラマンドラ』 著者:此花咲耶 | 魔道で剣士が巫女に、巫女が猫の身体に入る。 | ベストセラーズ プレリュード文庫 『ソウル・オブ・サラマンドラ』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
剣士のイリヤーは、魔導師ラオルジに襲われている巫女のユイミィを助けようとした。
しかし、発動した離魂の魔法に巻き込まれ、イリヤーはユイミィの身体に、ユイミィは猫の身体に入ってしまう。
イリヤー(身体はユイミィ)は、ユイミィ(身体は猫)と一緒に、ラオルジと共に行方不明になったイリヤーの身体を探すことに。
作中の世界では、魂が抜けた人間の身体はケダモノの性欲が剥き出しになってしまうようです。
イリヤーの身体は空っぽで、ラオルジの命令に従う人形のような状態になっています。
(猫の精神は行方不明です。)
イリヤー(身体はユイミィ)が「イリヤーの身体」を探し、自らを「ユイミィ」と名乗るのが良いですね。
↓ユイミィ(身体は猫)は、猫の声帯で喋ることができます。
気の強いユイミィ(身体は猫)は、イリヤー(身体はユイミィ)の行動に口を挟みます。
「オレが何食おうと、オレの勝手だろうが!」
「あたしの身体よ!あなたの勝手にされてたまるもんですか!!」
真っ白い仔猫は、ふううーっとうなって、全身の毛を逆立てる。
「忘れないでよ、イリヤー!それはあなたの身体じゃない、あたしのよ!」
ふたたびテーブルの上に飛び乗って、少女をにらむ。
「あたしが――ほんとは、あたしがユイミィなんだから!!」
脚開いて座るなだの、馬に乗る時は横座りになって女乗りしろだの、うるせえったらありゃしねえ。あげくのはてには、人のメシにまでケチつけて……。
↓全体的に、美少女のユイミィの身体になったイリヤーの描写が非常に美味しくオススメです。
イリヤーが使っていた斬馬刀が、ユイミィの身体では持てないのが最高。
下を見れば、シルクのローブのすそをはねあげ、可愛い両脚がぱかっと開いてあぐらをかいている。その目を射るような肌の白さといい、きゅっと引き締まった足首といい、こんな時でなければ、つい指先で撫でてみたくなるような魅力的な脚だ。
そして、薄紅色のシルクをふんわり持ち上げている。ふたつのまろやかなふくらみ。
両手でつかみ、揉んでみるまでもなく、視線の位置は、まぎれもなくそれが自分の身体だと示していた。
「う……うそ――」
↓イリヤー(身体はユイミィ)は、綺麗好きのユイミィ(身体は猫)に言われてお風呂イベント。おいしいです。
チョーカーを外し、ローブを脱ぎ落とす。
雪のように白い、なめらかな肌があらわになった。
ほっそりとして華奢な、肩から背中へのライン。ウエストはひらたく引き締まり、その下のまだ蒼い腰へ続いている。両足も腕も、少し乱暴に扱えばたやすく折れてしまいそうなはかなさだ。
けれど、服の上からではほとんど目立たなかった胸のふくらみは、女としての成長をたしかに示しはじめている。ちょうど男の手にすっぽりとおさまるほどだ。つんと上向いたその頂点には、淡い色彩の飾りが揺れている。
ごく。と思わず、息を呑む。
イリヤーはまじまじと自分の身体を見下ろした。
こんな間近に、こんな美しい若い身体を見つめることなど、生まれて初めてだ。
(中略)
真下で揺れている、はんなりと紅い胸の飾りに、視線が釘づけになってしまう。
息がうわずる。見ているだけで、目玉が飛び出しそうだ。
さ、さわってみても……いいかな。
とりあえず今は、これはオレの身体なんだし、自分で自分の身体にさわるんだから、別に悪いこともないよな。
↓ユイミィの身体でいつもの調子で飲んでしまったイリヤー(身体はユイミィ)は、飢えた荒くれもの達に襲われそうになります。
ごくり……と、誰かが喉を鳴らす音が、生々しく響く。
女がひとり、床にひっくり返っている。
酔いでほんのり桜色に染まった肌が、見る者をどきりとさせる。わずかに開かれた口元、しどけなく投げ出された脚。ロープの裾がまくれあがり、大理石を刻んだようなまばゆい脚線美が、惜し気もなくさらされていた。
誰もがその、夢のような光景に視線を釘づけにされていた。
ここにいる男どもは、実は女にあぶれた者ばかりなのだ。
(中略)
――その竜の巫女が、今、目の前にいる。
それも酔いつぶれ、両足をでーんと投げ出した、あられもない格好で。
今なら、触れられるかもしれない。幻の竜の巫女に。人の世の女の中で、もっとも高貴で神秘的な、禁断の存在を、欲望のままに蹂躙できるかもしれないのだ。
男たちは息をつめ、少女を見つめた。呼吸が乱れ、心臓が早鐘を打つ。
↓宿のヴァノッサとの絡みも良かったです。
イリヤー(身体はユイミィ)がユイミィ本人も使わないようなわざとらしい女言葉を使うのが好きw
「イリヤー」の行方を捜して欲しいと言われたヴァノッサがダウジング占いをしたら、「イリヤーはここにいる」と出て焦るシーンも最高ですね。
ユイミィは先に目を覚まし、テーブルの上で、猫の作法に従って洗顔の真っ最中だった。
イリヤーは、もそもそとベッドから這い出そうとした。
が、そのとたん、ぷるんと揺れる可愛いバストが目に飛び込む。
(中略)
「起きてるかい?巫女のお嬢ちゃん」
ややかすれてセクシーな響きのその声は、間違いなく、昨夜の救い主だった。
「ヴァノッサさん!?」
「えっ!?ヴァノッサって、あのきれーなねーちゃんかよ!?わっ、うわ、やべえ!オレ、こんなカッコだぜーっ!!」
イリヤーは泡食ってベッドから飛び降りた。が、すぐに、
「あ、そっか。女同士なんだ、別にかまわねえか」
「あっ、そ、それより、ヴァノッサ……さん。ヴァノッサさんは、どーしてこんなとこにいるんだ――い、いるんです、の?」
↓一人きりになったイリヤー(身体はユイミィ)がユイミィの身体でオ○ニー(途中まで)するシーンは必見。
約5ページと短いですが十二分に美味しいです。
廊下の外をそうっとうかがい、何の気配もないことを確かめる。
やがてイリヤーは、着ているものを1枚1枚脱ぎはじめた。
なにせ、ユイミィがそばにいては、この身をじっくり見ることすら許されないのだ。今はこれが自分の身体だというのに。
「い、いいよな。自分で自分の身体見るわけだし、このくらい……」
(中略)
こくり――と喉が鳴る。
さ、さ、さわってみても……いいよな。
だってこれ、今はオレの身体なんだし。
たしかにユイミィは、知らない男に身体をさわられたりするのは、死にたいくらいイヤなんだって言ってたけど。つまり今は、自分で自分をさわるわけだから――。
そろそろと両手があがり、胸のふくらみにかかる。
「わ……。けっこう、重いかも……」
下から支えるように持ち上げると、手のひらの中でたぷんと揺れる。その溶けるようなやわらかさは、人間の身体とも思えない。まるで果実のつまった革袋みたいだ。
(中略)
だが、その頂点の飾りを指で摘んだ時、ぞくっとする感覚が、背筋を走り抜けた。そのまま、同じところをいじってみる。すると、うずくようなむず痒いような、痺れにも似たものが、そこから背中の方へじわじわ広がっていく。
――女って、こういうのを気持ちいいって、思うのかな……。
「あ、あひゃっ!?」
それは、イリヤーが、14、5歳の頃に覚えた手遊びの感覚と、よく似ていた。
「い、今の――こ、これって……」
思わず、そこに指先を集中させる。中指の腹で引っかくようにすると、今までのじりじりした中途半端な感覚ではなく、明確な心地よさが、生まれてくる。
(中略)
やがてくちゅ――と、小さな湿った音がこぼれた。指がかかる部分の下に、ぬめるものがこぼれ出していた。
「あ……や、やば――」
やばいかも……と、思う。けれど、もう指がとまらない。ようやくたどりついた気持ち良さを、身体が勝手に追いかけはじめてしまう。
↓ラオルジは、イリヤーの身体に入ろうとしているようです。
イラストを見る限り、イリヤーの身体は黒髪短髪の筋肉ムキムキボディでした。
「オレの身体、勝手に使いやがって……。返せ!オレの身体を返せッ!!」
「それはできん。この身体は、まもなくわしの肉体となるのだ」
(中略)
「安心せい、剣士よ。きさまの身体は、わしが有意義に使ってやる。この斬馬刀を背負ったわしの雄姿を見せてやれんのが、ちと残念だがな」
「ふざけんなッ!!誰がてめえなんかに――!!」
↓イリヤー(身体はユイミィ)がケダモノと化したイリヤーの身体に襲われるシーンもあります。
イリヤーの身体は、暴れるイリヤー(身体はユイミィ)の首を絞めます。
魔導師の言葉が終わるや否や、イリヤーの身体は、少女の身体に飛びついた。
「うわあああッ!?な、なにすんだ、てめえッ!!」
重たい鉄のような身体が、足元からのしかかってくる。剣士の腕は少女の両足をつかみ、左右に大きく開かせた。ローブが裾から引き裂かれ、真っ白い肌の脚線美があらわになる。
「ばッ、ばか、やめろッ!!なに考えてんだッ!!オレはお前だってぇのッ!!」
イリヤーはどなる。
けれど彼の身体には、そんな悲鳴はまるで聞こえないらしい。少女のほっそりとした肢体を軽々と押さえつけ、丸い乳房をわしづかみにする。
「痛てえッ!ばか、はなせッ!!はなしやがれッ!!」
必死の抵抗も、何の役にもたたなかった。
冗談じゃない、このまま犯されてたまるか。オレは男なんだ。しかも相手が、自分の身体だなんて、笑い話にもなりゃしない――!!
(中略)
目の前に迫る、真っ赤に濁った眼。欲望にぎらぎらしたけだものの眼。そのすさまじさに、背筋が凍る。これが自分の顔だとは、とうてい信じられない。自分が、こんな醜い、悪鬼の表情を浮かべるとは。
開かされた両脚の間に、ひた、と熱いものが押しあてられた。
「げッ!!こ、これって――」
気色悪いッ!馴染んだ自分のものであるはずだが、外部から触れると、吐き気がするほどおぞましい。
(中略)
のしかかってくる男は、だがこっちの様子など一切おかまいなし、自分の欲望だけをごりごり押しつけてくる。それが自分だと思うと、腹がたつより、もう情けない。
「痛てえッ!なにしやがんだ、咬みつくなッ!」
顔を舐められ――キス、なんてしろものではない。犬が舐めるのと一緒――下肢を密着させられる。
そんなもん、寄せるな、すりすりするな、腰振るなーッ!!
騎士のサーヴィルに女の子扱いされるイリヤー(身体はユイミィ)も良かったです。
↓無事に元に戻ったものの、サーヴィルに敵扱いされてしまうイリヤーも熱い。
「サーヴィル――」
「きさまごときに、親しげに名を呼ばれる筋合いはないッ!!」
白銀の剣が、イリヤーの目の前に突きつけられた。
「お、おいっ!オレだよ、サーヴィル!オレだ――」
戻ってからラブラブセ○クスするイリヤーとユイミィも尊かったですね。
物語も正統派ファンタジーという感じで、楽しく読み進めることができました。
死者ノ棘
※この項目には作品に関するネタバレが含まれています。
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『死者ノ棘』 著者:日野草 | 謎の男性・玉緒は、死ぬ間際の人間の魂を別の人間に移す力を授けてくれる。 | 祥伝社 祥伝社文庫 『死者ノ棘』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
第1話「恋の最果て」
結婚を考えていた宗太に振られ、駅のホームに立ち尽くしていた理子。
そこに声を掛けてきた謎の男・玉緒は、死ぬ運命にある人間がわかり、「生き延びたいなら他人と魂を交換する方法がある」と言うのだ。
死者ノ棘シリーズは全体的に入れ替わり前に主眼が置かれており、死ぬ直前の入れ替わりということもあり片方がほぼ即死するため、入れ替わった後の描写は少なめです。
入れ替え能力を授けてくれる玉緒は、「奪う奪われるの人間ドラマが面白いから」的な理由で入れ替えているので、せっかく入れ替わったのにバッドエンドみたいなことも多いですw
ストーリーは捻りが加えられていて、なるほどという感じでサクサク読み進めることができました。
ということで、第1話は理子がフラれた相手の身体を奪う話です。
↓玉緒は理子に入れ替わりを信じさせるために、男性が若い女性の身体を奪う現場を見せます。
男性は若い女性に痴漢冤罪をかけられ、家庭が崩壊してしまった復讐に身体を奪ったらしい…
女性は遠目にはケガを負っているようには見えないが、体の状態を気にしている。足踏みをしたり腕に触れたり、長い髪に指を通したりと、せわしなく動いていた。
(中略)
「やりました!タマオさん、やりましたよ!」
女性の声は周囲の空気を切り裂いて響き、こちらの歩道にいた人々も、向かいの歩道で流れる血に釘付けになっていた人々も、彼女に注目した。
それに気づいた女性は大仰な動作で口を塞ぎ、にやりと笑うと、素早く近くの路地に駆け込んだ。
入れ替わりは、玉緒が授けてくれた「舌の棘」で入れ替わりたい相手を突き刺すと起こります。
↓身体の中を通って入れ替わる描写がおいしいですね。
理子の視界が掻き消え、意識が収縮してどこかに吸い寄せられる。すさまじい力だった。手足を縛られたまま激流に流されるようだ。吸い寄せられる途中、自分自身の骨や肉、血管の感触があった。自分の肉体内部の感触だと思うや否や、理子はそれらに素早く別れを告げた。肉の感触はすぐに消え、すさまじい速さで細いトンネルの内部を通り抜けた。トンネルの中は刃物のように冷たかった。そしてその冷たさの中で、理子はもうひとつの魂とすれ違うのを感じた。温かく、大きな感触は、すぐに宗太の魂だとわかるものだった。腕があれば咄嗟に引き留めて、あるいは体があれば全身で抱き留めていたかもしれない。けれど意識だけでは叶わず、悲鳴さえ交換できないまま、一瞬のぬくもりを最後に擦れ違った。
そしてまた、肉体に飛び込む感触がした。
視界が戻る。
↓大好きな宗太の身体を手に入れた理子の描写が大変エッチでした。
手を動かしてみる。視界に、たくましい腕と、大きな両手が映った。何度もわたしの頭を撫で、頬に触れ、肩を抱き、そして素肌に触れた手だ。しかしそれを動かしているのはまぎれもない、理子の意思である。
そのまま胸に触れた。
固く、自分とはまるで違う感触の下で、心臓が脈打っている。
微笑みが自然と頬に広がった。この体はわたしのもの。宗太はもう誰も抱かないし、愛さないし、微笑みかけたりしない。これこそ究極の独占だ。
↓宗太は新しい彼女を連れていて、理子の目には最低な男性に映っていましたが、宗太の記憶を読むとそうではなかったことがわかります。
疑問を抱いたときだった。まるで意識に穴をあけられたように、記憶が理子の中に流れ込んできた。無理やりに映像を見せられているような感覚だった。防ぎようもなく流れ込んでくる、宗太の記憶。宗太の脳に刻まれた――。
「え……?」いつもより薄く感じられる唇が震えた。「ま、待って、な、なに、これ……」
両手で記憶の侵入を防ごうとするが、叶わない。流れ込んでくる記憶は容赦なく理子に真実を伝える。
↓全てを知った理子(身体は宗太)は後悔しますが時すでに遅く、宗太(身体は理子)は死亡。
元に戻りたがる理子(身体は宗太)を置いて、玉緒はその場を立ち去るのでした。
「宗太……」
声をかける。出てきた声は当然、宗太のものだった。
指先は動かない。目は開いたままだ。
死んでいる。
「そんな、宗太。やめて、なんで、こんなのひどい――」
第2話「通り魔志望」
由人は弟の圭人とどちらが先にダメな人間から脱出できるかを競っていた。
ある日、自暴自棄になって刺した玉緒からアドバイスを受け、自分を変えようと新しいアルバイトを始めるも、由人は気になっていた女性にフラれてまた引きこもり生活になってしまう。
由人は玉緒から授けてもらった棘で、圭人と入れ替わることにするが…
↓圭人が兄の由人の身体に入れられた直後の描写がおいしいです。
瞬きをする。何か、見え方がおかしかった。かすかに視力が落ちたようだ。手を見る。自分の手よりもずんぐりした指が見え、何だろうと思うのと同時に、目を前髪の毛先が突いた。
痛みを感じて顔を背けたそこに、圭人自身が立っていた。
自分はこんなに嫌な顔をしていただろうか。瞬間的に嫌悪を覚える薄笑いを浮かべてこちらを見ている。
弟の圭人の身体になった由人は、入れ替わり直後にトラックに轢かれて即死。
死ぬ予定だったのは圭人の身体の方で、由人が同類のクズだと思っていた圭人は実は親孝行な息子でした。
↓玉緒は圭人(身体は由人)に入れ替わりのことを話し、その場を立ち去るのでした。
「それは由人の体だ。おれが入れ替えてやった。あんたはこれから由人として生きるんだ」
「……何を……言っているんですか。あなたは誰……」
第3話「八月、少年」
小学生の健司は、好きな女の子が父親から虐待を受けていると聞いて、己の無力さを感じていた。
ある日、目の前に現れた玉緒から、もうすぐ死ぬと告げられた健司は、玉緒に入れ替え能力を授けてもらうのだった。
ということで、小学生男子と好きな女の子の父親との入れ替わりです。
↓父親は醜悪な性格で、記憶を読んだ男の子(身体は父親)が気分を害するシーンが最高でした。
父親(身体は男の子)は、靴箱の角に頭をぶつけて即死です。
捻じれる。流される。冷たい。激流。確かな力を持って。擦れ違う。ひどく醜い魂と。そして。
肉体の感覚が戻った。
ケンジは素早く息を吸い込んだ。肺に空気が満ち、新しい記憶が流れ込んでくる。その醜悪さに、ケンジは顔を歪めた。固まった頬に手をやると、なめらかだが固い感触がした。
↓男の子(身体は父親)は、父親として女の子に優しく語りかけます。
玉緒は、男の子(身体は父親)の未来も、男の子を愛している両親の未来も明るくないと思いつつ、その場を立ち去るのでした。
「ぼくだよ」口から出た声は太く、喉の動きは鈍かった。「ぼくだ、ケンジ。覚えてるだろ」
この声はあまり好きじゃないと思いながらも、ケンジは女の子の前に跪いた。
(中略)
「もう大丈夫。友達と遊んでも君をぶったりしないよ。今日からぼくが君のお父さんになるんだ。ちゃんと働くよ。ほんとだよ」
第4話「この手の焔」
充は放火魔という性癖を隠して、恵まれた社会生活・家庭生活を送っていた。
充は誰にも被害が及ばない放火を行っていたつもりだったが、充のせいで不幸になった女性・沖野が復讐のために近づいてきた。
沖野は充の妻・美帆の人生を奪おうとするが…
結局、最後は沖野が「他人の人生は奪えない」と自らの死を受け入れるので入れ替わりは発生しません。
第5話「探偵と助手」
公彦は、大人になっても学生時代からの親友の悠とつるんでいた。
悠はサイコパスだが頭が良く、公彦は憧れに思っていた。
ある日、玉緒から死期が近いと告げられた公彦は、悠と入れ替わるが…
↓公彦(身体は悠)が身体を確かめるシーンが好きですね。
悠(身体は公彦)は入れ替わり直後に即死します。
公彦は手を目の高さに持ち上げた。
普段しているおなじ動作と比べると、なんだか体が重い。スポーツジムに通って運動を欠かさない公彦と違い、いつも家でごろごろして、気が向いたときに散歩をする程度の悠の体だからだろう。
悠の手はふっくらとなめらかだった。絵を描いたりアプリを作成したりするときにさんざんパソコンを使うが、指は細く爪は小さく、まるで少年の手である。しかし不思議なほど違和感はない。他人の腕を接合されたからではなく、脳そのものが悠のものであるためだろう。
↓公彦(身体は悠)は悠の記憶を読むことができます。体質ネタもおいしいです。
天才肌な悠は興味がないことはすぐに忘れてしまうらしく、悠本人が覚えていないことは公彦(身体は悠)も思い出すことはできません。
公彦は体を起こした。目に入るもの、肉体の感覚、それらすべてが普段とまるで違うのはもちろんだが、それ以上に奇妙なのが記憶の流入だった。公彦は今まで知りもしなかったアプリの制作方法やパソコンを使った絵の描き方を熟知していた。通ったこともない悠の家の近所にある公園の土地勘もある。しかし、公彦としての記憶はちゃんと残っている、悠の相手だった多くの女性たちの顔はこちらの記憶からは欠落していた。自分自身の記憶と悠の記憶、その両方が混在し、にもかかわらず両者の区別がつくというのは実におかしかった。
悠の体は動かすのに何の支障もない。ずいぶんワインを飲んでいたはずだが、ほとんど酔いも感じない。これからは苦手だった酒をいくらでも飲めるのだなと思うと、それもまた楽しみだった。
悠は元々自殺する予定だったらしく、悠の遺書が見つかります。
↓遺書には悠が殺人を犯したことが書いてあり、つまり公彦(身体は悠)は殺人者と入れ替わってしまったということに…
悠は殺人さえもどうでもいいと思っていて、公彦(身体は悠)は悠が殺人を犯した記憶を思い出すことができません(笑)
ベッドの下の暗闇でもわかる、生気のない顔。喉元にはくっきりと手の痕がついている。
思わず自分の両手を見た。悠の手。女を絞殺した手だ。
おとなしく部屋で待った公彦だが、すぐに気分が悪くなってきた。なにしろ室内には二体の死体があり、そのうちひとつは自分自身なのだ。悪夢以外のなにものでもない。
公彦(身体は悠)はベッドの下から出てきた女性の死体を必死に埋めている途中で、心臓発作で死亡。
悠が殺害した女性は、第1話に登場した男性(身体は若い女性)のようでした。
↓玉緒は悠にも接触していて、その時の悠のセリフが良かったです。
これは僕の願望なんですけど。もし公彦が僕になりたいと思って、僕の体で死んでくれたらすごく嬉しいなって思うんです。他に何をしても退屈なのに、公彦のことだけは、こんなに胸が躍るんですよ。だから、公彦には僕も死ぬってことは言わないでください。
そう言って自分の胸に手をあてがい、微笑んだ悠の顔は溶けてしまいそうにやわらかだった。
死者ノ棘・黎
※この項目には作品に関するネタバレが含まれています。
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『死者ノ棘・黎』 著者:日野草 | 謎の男性・玉緒は、死ぬ間際の人間の魂を別の人間に移す力を持っていた。 | 祥伝社 祥伝社文庫 『死者ノ棘・黎』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
第1話「最後の旅」
浮気した妻・美雪と一緒に心中しようとした雄吾に、謎の男性・玉緒が声を掛ける。
玉緒は入れ替わり能力を他人に授けることができると言い、雄吾は妻を殺した後に誰かと入れ替わろうとするが…
↓雄吾に入れ替わりを信じさせるために、玉緒は知り合い同士の中年女性二人が入れ替わる現場を見せます。
入れ替わりは、玉緒が授けてくれた「舌の棘」で入れ替わりたい相手を突き刺すと起こります。
直後、入れ替わった片方は交通事故に遭って即死。
呼び止めたほうの女が、カワサキという名前であるらしいもう一人の女の腕を摑むと、その手首にいきなり口をつけたのだ。
さりげない動きだった。
はじめから二人に注目していなければ見止めることはできなかっただろう。女たちは一瞬の接触のあと、すぐに離れた。
パンツ姿の女は呆然と硬直し、カワサキという名前であるらしい女はいそいそと自転車で走り去った。残された女のほうは自分の顔に触れ、口を開けると、せわしなく自分の体を撫で始めた。
乗り手がいないバイクだとわかった瞬間、バイクは歩道で立ち尽くしていたパンツ姿の女を撥ねた。
「あっ……!」
雄吾が声をあげたときには、女の体は放物線を描いて跳ね飛び、歩道の電柱に腰から激しく激突してくの字にひしゃげた。
↓新しい身体を手に入れた女性は、玉緒にお礼を言いに来ます。
独身女性だった女性は、玉緒から死期が近いと聞いて、幸せな家庭を持っている同僚女性の人生を一方的に奪ったようです。
記憶を読んで走り去るのが無常で好きですね。
「私、やりましたよ!ほんとに新しい体が手に入るなんて――あっ」
転ぶかに見えたがなんとか体勢を保ち、女は恥ずかしそうに苦笑する。
「なんだかまだ、変な感じがして」
「魂が新しい体に慣れていないのさ」玉緒は和やかに返した。「なに、すぐに馴染む」
女はスカートの裾を払い、ブラウスの袖から伸びる腕を撫でた。
「カワサキさんの膚は肌理が細かいわ。ほんとに良かった」
(中略)
「それはそうよね。簡単に信じられることじゃない。でも本当よ。わたしは今、欲しかった昔の同僚の体を手に入れたの。カワサキさんはわたしの体と一緒に死んだわ」
見えない拳に殴られたように視界が揺れた。
「し、死んだ?あんたはそのカワサキとかいう人に恨みでもあったのか」
玉緒が鼻で笑い、女は真顔になった。
「ないわ。ただ羨ましかっただけ。この人のご主人はやさしくて、子供は優秀で、家も裕福。わたしは一人ぼっちでろくに個性もない。そのうえもう死ぬなんて。どうせ他人の人生を奪えるのなら、恵まれた人の人生が欲しかった。それだけよ」
「今はあんたがカワサキマサコだろう」玉緒は喉を震わせた。
「ええ、そうね。わたしがカワサキマサコ。今日から人に羨まれる素晴らしい人生を送るのよ」女はうっとりと目を細めた。「あなたも頑張ってね。玉緒さんに出会えることは、宝くじに当たるよりもラッキーなことよ。じゃあ、そろそろ子供が学校から帰ってくる時間だから行かなきゃ」
「ああ。せいぜい新しい人生を大事にな」
「もちろんよ。本当にありがとう、玉緒さん」
男性は妻と離婚した後、美雪の若さに目がくらんで再婚しましたが、美雪は魔性の女で浮気を繰り返していた様子。
そのため、不貞を見て見ぬフリをしたり、もう一度離婚したりして生き地獄を味わうくらいなら、美雪と心中しよう…ということらしいです。
しかし、男性は美雪からの手紙を読んで美雪の気持ちを知り、美雪と共に死ぬ道を選びます。
男性は美雪が浮気をした写真を持っていましたが、それは美雪の元夫で、美雪は脅されていたようです。
↓…男性が死亡した後、若い女性の身体を奪った美雪が玉緒の目の前に現れます。
美雪が浮気していたのは本当で、写真は元夫ではなく本当に浮気相手だったらしい…
美雪の策略に嵌まった男性と若い女性(身体は美雪)は、上手く死んでくれたようです。
美雪の一人勝ちでかなりダークでした。
「よう。美雪ちゃん」
玉緒が呼び掛けると、女はそっと微笑んだ。
「もう美雪じゃない。今の名前は……」女は肩に掛けていたバッグを漁り、運転免許証を取り出した。「イイヌマアヤナ、二十三歳。ホテル従業員。どう、悪くはないでしょう」
玉緒の前へ来ると、女は体のラインを強調するようにショートコートの腰に手をあてがった。
玉緒はその姿をじっくりと眺めた。
「いいね。化粧して明るい色の服を着れば、もっと良くなる」
「そうでしょう」女は華やかに笑った。「この子、素材の使い方が下手だったみたいね。自分がきれいだってことにも気づいていないし。真面目な子で、廊下で呼び止めて部屋まで来てもらったら呆気なく仕留められたわ」女は自分の口を差した。「この体も、私のものになったほうが幸せよ」
第2話「修理屋X」
玉緒は愛用している万年筆が壊れたので、文具屋を営んでいる牧野の元を訪れた。
牧野は元々文具屋になることを夢見ていた男性で、文具屋の息子だった牧野の人生を奪っていたのだ。
牧野の身体の寿命が近いと知った玉緒は、牧野にまた入れ替わって生き延びないかと持ち掛ける。
牧野が新しい肉体として女子生徒の西田真湖に目をつけ、無害な人間の演技をするところが良かったですね。
男性は人生が二回目なので、周囲の人間が何を考えて動いているのか手に取るようにわかるようです。
元々の高校生だった牧野は酷い素行不良で、中身が男性に入れ替わってからは、優しくなった牧野に牧野の親族は全員喜んだ様子。
引き戸を閉めると、ガラスに自分の顔が映った。
何度見ても不思議な感じがする。
ガラスに映る牧野の顔は年相応の三十五歳だと思う。だが、金と教養に恵まれた人間らしい穏やかさと余裕を持ち合わせていて、魅力的に見えなくもない。身長は平均より高く、体型もスリムだ。悪くない容姿だろう。
実は真湖は貴重な文具を盗もうとしている窃盗犯で、同じ教室の加納悠人は止めようとしていたのでした。
真湖との入れ替わりは失敗に終わり、牧野は代わりに悠人と入れ替わろうとしますが、実は悠人は元々の男性の息子だとわかり、情が移って入れ替われず牧野はそのまま死亡。
男性と牧野のスケッチが同じだと気が付いた悠人が良かったです。
第3話「氷の王子」
アパレルブランドを立ち上げた樹は、新店舗のオープンと頼れる仲間たちに囲まれて前途洋々だった。
しかしある日、以前に酷いことをした挙句振った元彼女・菜々美に拉致されてしまう。
死にたくない樹は、自分は樹と入れ替わった中年男性・伸一だと話し始め…
↓樹(中身は伸一)が入れ替わりを告白して命乞いをするシーンが好きですね。
伸一の妻は樹に惚れて入れあげてしまい、樹と別れてからも思い続けていたため、伸一は妻が愛している樹と入れ替わったらしい…
ガンに侵された伸一の身体に入った樹は、大量の睡眠薬を飲まされてうわ言を呟きながら、妻に看取られて死んだようです。
「人が。……人が、違ってるんだ」
樹は菜々美を見上げた。込み上げてきたものが喉に詰まり、いったん息を吐かないと続けられなかった。
「おれは樹じゃない、元々の名前は佐藤伸一。樹の体を奪って生き延びた男だ」
菜々美は動きを止めた。
その隙に樹は、樹の肉体で生きている男は一気に喋った。
「本当のおれは五十過ぎのおじさんだよ。妻は年下の、かわいい女でね。わかるかい、樹が出世の道具に使った女だ」
言い切った樹の両目から涙が溢れ出した。
脳に刻まれている樹自身の記憶よりも濃く、愛おしい、佐藤伸一だった頃の思い出。なかでももっとも大切な妻のことを、そんなふうに表現したくなかった。
菜々美も玉緒に能力を授かっていたため、菜々美が樹(中身は伸一)と入れ替わるというオチです。
菜々美の身体になった伸一は、突き飛ばされて後頭部を打ち、即死します。
↓樹の身体を手に入れた菜々美がエロティックで好きです。
瀬名樹の静かな声が、菜々美の口調を包んでいる。聞いていた玉緒はそれを似合いの組み合わせだと感じた。
(中略)
「おれが言うのもなんだが、いい男だね。その体は」
「そうでしょう。でも見た目だけじゃない」しなやかな指をこめかみにあてがい、そっと微笑んだ。「すごいな。これが樹くんの世界……樹くんはこんなふうに他人を見ていたんだ」
噛み締めるように目を閉じ、しばらくそうしてから倒れている女を振り向いた。
「これがさっきまでの自分だったなんて、ちょっと信じられない。こんな顔してたんだね。なんか、自分で見ていた顔と違う感じがする」
樹が最後に見せた笑顔。
あれは佐藤伸一が入っていた頃の樹には、そしておそらく本当の瀬名樹も持っていなかった、とても魅惑的な笑顔だと思った。
女の遺体を一瞥し、佐藤伸一だった男の魂が蒸発したことを確認する。
↓「樹の身体に残っているのは樹の記憶だけ」で、伸一の記憶は削除されるらしい。
菜々美は、菜々美の身体だと負け続ける人生にしかならないので、食う側の人間である樹の身体を手に入れたかったようです。
だがすぐに、突然の頭痛に苛まれたように顔を顰めた。
「これって……」
「ああ、佐藤伸一の記憶が、樹の記憶と一緒に流れ込んできたんだな。気持ちが悪いだろうが、すぐに佐藤伸一の記憶は消える」
「そう、なの」
「そうさ。樹の脳に刻まれている記憶は樹のぶんだけだ。佐藤伸一が樹になるまえの記憶は、少しすれば消去される」
「そうなんだ。でもなんか、これ……すごく、変な感じ」
第4話「散りぎわ」
亜美は、ずっと絶縁状態だった伯母・都美子と初めて会うことになった。
店の借金を背負っている父親に頼まれて、渋々金持ちの都美子に近づく亜美。
そこに玉緒が現れて、死期が近い亜美に入れ替わり能力を授けてくれると言う。
亜美には都美子があまり印象の良くない人物に映っています。
亜美のプライベートを根掘り葉掘り聞くシーンも、自由奔放に生きる都美子が亜美の身体を狙っていると思わせるように書いてありました。
事前に玉緒に声を掛けられていた都美子は、亜美と入れ替わります。
↓入れ替えられた亜美(身体は都美子)は絶望し、都美子(身体は亜美)は亜美になりすまします。
「……そんな……」独り言が漏れる。自分の喉から漏れた声なのに、自分の声ではない。その事実にどうしようもなく打ちのめされたとき、染み込むように記憶が流れ込んできた。
亜美は頭を抱えた。指に絡まる髪も、頭の形も、本当の自分のものではない。でもそれよりも。
「なに、これ……なんで……玉緒――」
呻いたとき、自分の声が頭上から聞こえた。
「伯母さんっ。大丈夫!?」大げさな声は、マイクを通して聞いたときのように違和感があったが、間違いなく亜美の声だ。
見上げると、自分自身がこちらを見下ろしていた。自分の目に映っていたときより、何倍も魅力的な姿に見える。
「姉さん!手を!」
「ほら、立てる?おばさん」
囁いた亜美自身を、都美子の肉体の中から亜美は見上げた。美しい若い顔に薄氷のような微笑が浮かぶ。
その表情が亜美にすべてを悟らせた。
「大丈夫かな、痛いところはない?」薄氷の微笑を消して、心配そうに覗き込んでくる。その顔は完全にかつての亜美の表情を模倣していた。
「亜美の寿命は数日で、都美子の寿命はあと一年」と玉緒から聞かされていた都美子は、悩んでいるように見えた亜美を救うために入れ替わったようです。
実は、亜美の悩みはシスコンの父親が殺してしまった母親の遺体隠蔽処理に関わらされたことでした。
都美子(身体は亜美)が、警察への告発文を書いて亜美の身体で自殺しよう…というところでおしまいです。
↓シリーズの中で一番入れ替わった両者が関わるシーンが多いのがこの話でした。
見ると、自分自身の顔が、亜美だったら決して浮かべないだろう深い表情を宿してこちらを覗き込んでいた。
「伯母さん……」呼びかけたが、その『伯母さん』の声なのだから不思議で仕方がない。
第5話「最初の旅」
バーでバイトをしている男性は、アキと名乗る謎の女性と知り合った。
男性はアキと話しているうちに惹かれていき、死にたがっているアキと入れ替わりたいと思うようになった。
そこに玉緒が現れて、棘の能力を授けてくれると言う。
↓アキの身体を欲しがる男性のセリフが最高です。まぁ、演技なのですが。
「ぼくは彼女とひとつになりたい」黒い服を着た後ろ姿は、タクシーに乗り込んだ。ぼくはマスクの位置を直した。「アキは、ぼくが女性だったらそうなっていたかもしれない姿です。彼女は死にたがってる。ぼくは、死にたくない。でもこの体が嫌いで、彼女の体を愛してる。だからちょうどいいんだ」
アキは玉緒と同じ人外の仲間で、「暁」や「黎明」という名も持っているようです。しかも、アキは女装少年でした。
アキは男性の心をもてあそんでおり、男性に「玉緒の身体を奪ったらずっと一緒にいられる」と言って玉緒と入れ替わるようにそそのかしていました。
しかし、玉緒と入れ替わるには玉緒が授けた棘でないと入れ替われないので、アキの思惑通り入れ替わりは失敗に終わり、男性は絶望しながら死亡。
アキは唯一存在する仲間の玉緒に意地悪をするのが大好きなようで、また悪戯をしにやってくると玉緒に告げて立ち去るのでした。
今回は、小説の男女集団入れ替わりを10作品紹介しました。
読んでいただいてありがとうございました!