今回は、児童書の男同士入れ替わりを6作品紹介していきます。
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かえだま
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『かえだま』 著者:小森香折 | 男子小学生が明治時代の先祖と入れ替わる。 | 朝日学生新聞社 あさがく創作児童文学シリーズ8 『かえだま』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
小学生六年生の梅枝大和は、曾祖母の法事中に、謎の顔が浮かんだお茶を飲んだところ、気がついたら明治時代の高祖父・梅枝勇二郎と入れ替わっていた。
↓食いしん坊で太っている大和の身体に比べて、勇二郎はイケメンで筋肉質な身体のようです。
声を訝しんだり、鏡を見たりするシーンもありました。
大和はいつのまにか、自分が着物を着ているのに気がついた。
それはまだしも、ぞっとしたのは、自分の手だった。
いくらおっちょこちょいの大和でも、自分の手には見覚えがある。いま自分が見つめているのは、ふっくらした、いつもの手ではなかった。もっと大きくて、かたいたこがある。
着物の袖をまくってみると、つけた覚えのない筋肉もついていた。
鏡にうつっていたのは、自分の顔ではない。見たこともない、りりしい少年の顔だった。
(中略)
「こ、これっ、ぼくじゃない!」
「おぼっちゃま、どうかお気をたしかに!」
そう言われても、正気をたもつのは、むずかしい状況である。
「なんなんだよこれ。うそだろうそだろ。声もちがうし顔もちがう。やっぱ、あんなお茶、飲んだからだ。茶碗に、へんなイケメンの顔がうつってた。飲んだら、くらっとして、こんなんなっちゃった」
ちなみに、大和(身体は勇二郎)は、未来のことを喋ろうとすると息が詰まって喋れなくなります。
冷静な勇二郎に対して、大和は抜けている性格なので、大和(身体は勇二郎)は何度も霊が憑いていると疑われます(笑)
「大和魂の持ち主」と誤魔化すシーンが面白かったです。
勇二郎の誕生日を聞かれたり、勇二郎の部屋がわからなかったりしてピンチになりますが、非常に上手に切り抜ける大和(身体は勇二郎)が良かったですね。
勇二郎のブラコン妹・新子のキャラが好きですw
↓大和(身体は勇二郎)は色々と問題を解決し、元の身体に戻ります。
勇二郎の身体に慣れてくる描写が良かったです。
「ぼくは、梅枝大和」
声を聞いても、最初にあった違和感は、もう消えている。
(もしかして、このままずっと、勇二郎の体で生きていくことになるのかな。そしていつか、自分がほんとうは大和だった記憶も、うすれていってしまうんだろうか)
↓元に戻った大和は、自分自身をセルフハグw
大和の身体になった勇二郎は、大和の家族の証言にのみ登場します。
「大和、大和なの?」
「うん」
「ああ、正気にもどったのね!よかった」
母親は大和を手荒く抱きしめ、おいおいと泣きだした。
大和はふらふらとトイレへ行き、鏡に顔をうつした。
やつれて顔色は悪いが、鼻の丸い、なじみの顔である。
(ああ、やっぱり、自分が一番だ。体って、ありがたいもんだなあ)
大和は、われとわが身を、しっかりと抱きしめた。
腕に包帯を巻いて入ってきた男の子は、そんな大和を見て「きっしょい」とつぶやいた。
ゲンタ!
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『ゲンタ!』 著者:風野 潮 | 男子小学生とミュージシャンが同時に事故に遭って入れ替わる。 | ほるぷ出版 『ゲンタ!』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
小学5年生の蓮見ゲンタは、林間学校で友達と喧嘩して崖から転落してしまう。
ちょうどその時、ミュージシャンの源太一(通称ゲンタ)もライブ中にステージから落下してしまった。
病院で気がつくと入れ替わっていた二人は、何とか連絡を取ろうとするも上手くいかない。
ミュージシャンとして生活することになったゲンタ(身体は太一)側の話と、小学生として生活することになった太一(身体はゲンタ)側の話が交互に語られます。
遠距離入れ替わりで、二人は何とか連絡は取れるようになるものの、実際に再会するのは最後の最後です。
↓ということで、目がさめたら成人男性になっていた小学生のゲンタ。
ゲンタはしっかりしている性格で、太一本人よりも大人っぽいらしいw
前髪を引っぱられ苦しそうに顔をしかめているのは、全然知らない男の人だった。オッサンというには若すぎるけれど、どう見ても小学生じゃない。
ぼくはエイジさんの手を振りはらい、ついでに点滴の針も引き抜き、鏡の中の顔をまじまじと見た。
よく女の子とまちがえられる元凶だったまっすぐな黒い髪が、金色っぽくてふわふわした髪に変わっている。色白で「雛人形みたい」と言われる顔も、眉があがったやんちゃそうな顔に変わっていた。エイジさんたちよりは年下の高校生ぐらいに見えるけど、絶対に小学生には見えない、ものすごくカッコいい男の人がそこにいた。
鏡の中のその人の顔に手をのばすと、鏡の中からのびてきた手と重なって、どうしようもなく困った表情が、ぼくを見つめていた。
ゲンタ(身体は太一)は記憶喪失だと誤魔化しながら、ミュージシャンの太一として生活することに…
記憶が戻るかもと言われてライブ映像を見せられ、客観的にコメントしてしまうところが好きです。
「太一」の声は美声で、歌うのが苦手なゲンタ(身体は太一)が歌う楽しさを覚える感じですね。
↓無理やり歌わせられるシーンは見ていられませんがw
「何度言ったらわかるんだよ!ぼくは記憶喪失なんかじゃない。ぼくはゲンタさんじゃなくて小学五年生のゲンタなんだって、言ってるじゃないか!……歌えるわけないのに。音楽のテスト以外で、人前で歌ったことなんかないのに。こんな難しい歌、歌えるわけないって、わかんないの!」
いつのまにかぼくは、幼稚園児みたいに足をドンドン踏みならして叫んでいた。
サトシさんもシゲさんも、驚いて目を丸くしている。自分でも子どもっぽいと思う言い方、これが本当のゲンタさんだと思っている人には、悪夢でも見てるような光景にちがいない。
でも、ゲンタさんが他人にどう思われたって、ぼくには関係ない。もう、たくさんだ。
すごく不思議な気がした。心の中で歌詞を思いうかべている時はぼくの声なのに、口から流れ出てくるのは、まぎれもなくゲンタさんの声になるんだ。その声があまりにもきれいすぎて、胸がドキドキした。
涙はあとからあとから、頬にこぼれ落ちているのに、ゲンタさんのノドはしゃくりあげることもなく、いつもどおりの声を響かせている。これはぼくの力じゃなくて、きっとゲンタさんが「なにがあっても歌い続けられるように」と日頃から訓練していたからだと思う。
↓ゲンタ(身体は太一)は、バンドメンバーの妹のミサキに入れ替わりを信じてもらいます。
ゲンタは標準語を喋り、太一は関西弁を喋るところもおいしいです。
後は、ゲンタ(身体は太一)がビールを飲んでみるところが良かったです。
「ミサキのこと、『キミ』とか呼ばんといてくれる?気色悪いから」
「き、きしょく、わる……?」
「そや、ゲンタくんが標準語しゃべるなんて、めっちゃ気色悪いねんって。そんなんな、いくら記憶喪失になってても、急にこんな気色悪いしゃべり方になるわけないやん。絶対ゲンタくんの中におるん、別人に決まってるわ」
↓太一の方も、目がさめたら小学生の身体に…
太一ボディはイケメンで、ゲンタボディはかわいいようです。
え?なんや今の?おれが叫んだはずなのに、聞こえてきたのはおれのとは似ても似つかない声だ。カンペキに子ども、それも女の子の声みたいだった。
(中略)
サトシの声とともに、目の前に差し出されたのは、小さな手鏡。ゆっくりとのぞいてみたその中にいたのは……日本人形みたいなおかっぱ黒髪の、かぼそくて弱々しい男の子だった。小学五年、にしても幼く見えるその少年は、すうっと弧を描いている眉を必死につりあげて、こっちをにらみつけていた。
「お、おまえ……だ、だれやねん!」
部屋にひびき渡ったのは、女の子みたいにカン高い叫び声だった。
「ゲンタ」の両親は離婚寸前で、太一(身体はゲンタ)は父親と暮らすことになりました。
↓太一(身体はゲンタ)は、病院では子供っぽく振る舞って、子供の特権を享受した様子w
「太一」の好物が「ゲンタ」の嫌いなものだったり、子供の立場を利用してお子様セットを買ったりと、細かいですが萌えました。
他人の前で子どもとしてふるまうのはイヤだった。病院では、思いっきり子どものフリして、かわいい看護師さんに甘えまくったりしてたんやけど、今はコウジさんもいっしょなんで、そういう作戦は使われへんしな。
↓太一(身体はゲンタ)の方も、ゲンタの友達のサトシに入れ替わりを信じてもらいます。
「おまえ、言葉づかいは乱暴だけど、なんか素直なんだよな。あいつみたいに、ひねくれてない気がする」
「えーっ、このゲンタって、そんなにひねくれとんの?」
思わず自分の顔をゆびさしながらたずねると、サトシは強面の顔をクシャッとくずして笑った。
↓太一(身体はゲンタ)がゲンタ(身体は太一)の下手な歌を聞かされるところはかわいそうで良いですね。
あかん……もうあかん……やめてくれぇ。声質はたしかにおれのやけど、発生も音程もリズム感も、てんでなってない。ああ~、サビの一番ええところの高音が、なんでそんなにフラフラしてんねん。ちゃうちゃう、アクセントつけるとこが全然ちゃうって。こんなドヘタな歌を、おれが歌ってると思われるくらいなら、もう、いっそだれかおれを殺してくれぇ~。
二人とも何度も連絡を取ろうとしますが、色々あって全然コンタクトが取れませんw
太一(身体はゲンタ)は携帯の電話番号を忘れていたり、ゲンタの所持金が無かったり…
ゲンタ(身体は太一)は仕事のスケジュールが詰まっていて身動きができなかったり、太一のお金の隠し場所がわからなかったり…
二人とも連絡を寄越さない相手に対して「戻りたくないと思っている」と邪推してしまうところとか、バンドの掲示板に二人にしか分からないことを書き込んで連絡を取るところが良かったですね。
会えないことに痺れを切らした太一(身体はゲンタ)は、サトシと一緒に自転車でゲンタ(身体は太一)のところまで行く予定を立てます。
太一(身体はゲンタ)と入れ替わりを知っているサトシとの会話が最高でした。
そして、太一(身体はゲンタ)は道中で交通事故に遭ってしまい…
太一(身体はゲンタ)がゲンタの保険証で診察を受けるところが細かすぎますが良かったです。
↓最後は元に戻り、二人とも自分自身の良いところを再発見してハッピーエンドでした。
太一がボロボロにしたゲンタボディに戻ったゲンタが少し可哀想でしたが…(笑)
ぼくは、とりあえず、自分の両手を見てみた。
ここ数日ずっと見ていた、がっちりした大人の手のひらじゃなかった。ちいさくて指の短い手。じっと見つめていると、見慣れないタコみたいなのが指にできている。どう見ても子どもの手だけれど、まだ確信が持てない。
(中略)
鏡の中に映し出されたのは、黒目がちの大きな目でぼくを不思議そうに見つめている、おかっぱ黒髪で女の子みたいなやつ……蓮見ゲンタにまちがいなかった。記憶の中にある顔よりも、日に焼けて大人っぽく見えたけど。
暗黒チョコレート
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『暗黒チョコレート』 著者:藤野恵美 | 日本の肥満男児と、アフリカの少年労働者が入れ替わる。 | 偕成社 『迷宮ヶ丘八丁目 風を一ダース』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
日本の小学五年生の男の子「ぼく」は、肥満体型でダイエットをしなければならないことに不満を抱いていた。
ある日、男の子はお菓子の移動販売をしているお兄さんから買った安いチョコレートを食べると…
男の子は、移動販売のお兄さんから「味は変わらないが値段が異なるチョコレート」を売りつけられ、安い方のチョコレートを買って食べたら視界が暗転してしまいます。
男の子がアフリカの少年労働者に入ったシーンはありませんが、「後に安すぎるチョコレートが作られる理由を知った」というような内容の記述があるので入れ替わりの可能性が高いでしょう。
一方、アフリカの少年労働者「ボク」は、わずかな食料のためにカカオプランテーションでタダ働きをさせられていた。
ある日、妹を病気で亡くした少年は、魔術師のオババに「運命を取りかえる方法がある」と言われ…
オババは「同じ年月日に生まれた子供となら運命を入れ替えられる」と言って魔術で入れ替えてくれます。
↓少年労働者(身体は男の子)は、男の子の記憶を読むことができるため、日本語も理解できるようです。
見知らぬ場所だ。
遠くから、声が、聞こえた。
だれかの、声。
自分を呼んでいるようだ。
はじめは、言葉の意味が、わからなかった。
いったい、なにが……?
だが、だんだんと、わかってきた。
ママの声、だ。
「ごはんよー。はやく来なさーい」
聞きなれない言葉も、すぐに理解できるようになった。
ここは、自分の家、だ。
白い壁にかこまれた、安全な家。
(中略)
どこからか、あたらしい記憶が流れこんでくる。
その一方で、古い記憶がどんどん遠ざかっていくような……。
↓男の子本人が嫌がっていた野菜ばかりの食事を、少年(身体は男の子)が喜んでいるのが最高ですね。
男の子(身体は少年)にとってはかなりダークな入れ替わりで良かったです。
そこには、あふれんばかりに、食べものがならんでいた。
ありふれた、いつもの食事。
ダイエット中だから、肉は少なくて野菜ばかり。
そのことはわかっているのに、感動がとまらない。
パパあべこべぼく
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『パパあべこべぼく』 著者:メアリー・ロジャーズ 訳:斉藤健一 | 小学生の息子が父親と入れ替わる。 | 福武書店 Best choice 『パパあべこべぼく』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
夏休み、サマーキャンプへ行くのを嫌がった12歳のベンは、「入れ替わりたい」と願ったら44歳の父親と入れ替わってしまう。
すぐには元に戻れず、父親はキャンプへ、ベンは出張でロサンゼルスに行くことになった。
父親の方も、「入れ替わりたい」と願ったようです。
↓いきなりトイレで放尿中の父親に入れ替わるというシチュがエッチでした。
とにかく、ふと気がつくと、このぼくが男子トイレのなかにいたんだ。
しかも、パパの体のなかに入ってね。
ぼくは便器の前に立って、何気なく下を見ていて……
うわあ、すっごい!!!
↓憧れの父親の身体になれて喜ぶベンがかわいいです。
さっそく成りすましているところも良いですね。
「どうしたって?いや、別にどうもしないよ」とぼくは返事をした。低音の、響きのいい声がでてきた。自分の声にうっとりし、ぼくはいわなくてもいいことまでいった。「だいじょうぶだよ、ぼく……あの……うん、ありがとう、船長」うれしくなって、思わずクスクスと笑ってしまった。クスクスと笑ったはずなのに、じつにいい低音のクックッという声になった。
だって、身長は百八十センチ以上あるし、たくましく日焼けしていて、ハンサムだし、胸やいろんなとこに毛がはえているし、低音の迫力ある声はしているしね。おまけに、ポケットのなかにはお金まであるんだもの
↓父親の方は、ベンの身体のせいで子供扱いされてしまいます。
常識人の父親(身体はベン)の方がかわいそうな入れ替わりです。
船長はあっけにとられてそのようすをながめていた。「いったい何やってんだ、ありゃあ?」
ぼくはおちつきはらって答えた。「鏡に全身を映してみたいんじゃないのかな、たぶん」
「そうか、それならお安いごようだ」船長はそういうと、「そうら、たかいたかい!」ときげんのいい声を出しながら、ぼくのパパを空中高く持ち上げた。パパは度肝を抜かれた顔をした。「どうだ、よく見えるだろ」船長はいった。
↓ベン(身体は父親)と父親(身体はベン)の視点が交互に繰り返されながら話が展開します。
「ベン」の足癖のネタは何度か出てきます。
「おい、おい、ベン、だめじゃないか、あんな失礼なことしちゃあ」と注意した人物は、わたしの……父さん?……むすこ?……それとも、このわたし?だれなんだ、いったい、こいつは!
ふざけている「父親」が大人な「息子」に注意をされている図が好きですね。
ベン(身体は父親)はキャンプに行きたくないので、戻りたがりません。
振り回される父親(身体はベン)が不憫です。
↓元に戻れるはずはなく、父親(身体はベン)は泣きまねを始めますが無駄で、担がれてキャンプに連れていかれてしまいました。
とっさに決断を下した。だだをこねるのだ。泣いて、泣いて、泣きわめくのだ。
わたしは、妖精のルンペルシュティルツキンみたいにドタドタドタドタと地団駄をふむと、大声でわめいた。「いやだ、いやだ、いやだ、行きたくないよう!行くのいやだ、いやだよう!頭がハレツして、死んだほうがましだよう!」――みっともないが、きき目はじゅうぶんにあるはずだ。わたしは、はげしくすすり泣きながら妻のエレンのうでのなかに飛びこんだ。「おねがい、ママ、おねがい、やさしい、やさしいママ、行かせないで、ママあー!」
この後は、手紙や電話で連絡を取れるものの、基本的に二人は別行動。
↓空港から家に帰れないベン(身体は父親)が良かったです。
父親に成り切って母親のことを「お人形さん」と呼ぶのも萌えますね。
案内係の男の人のところに行き、こうたずねる。ぼくのママを見かけませんでしたか?中ぐらいの身長で、目と髪が茶色で、きれいな人なんですけど……年齢は三十九歳です。(自分が三十九歳以上に見えるということは、すっかり忘れてしまう)
上手く機転を利かし、準備を済ませてベン(身体は父親)は出張へ。
↓父親のサインの練習をしたり、子供的な言動をして周囲を困らせたり、会社をクビ(左遷?)になったり、勝手に引っ越し先の家を買ってしまったり、勝手に髭を剃ったり…
憧れていた父親が普通の人間だと知るあたりも良いですね。
父親(身体はベン)の方も、ベンの友達のダックと共にキャンプへ。
↓子供の頃にキャンプへ行った思い出を話してしまったり、ひ弱なベンの身体でガキ大将と喧嘩をしたり、娘のアナベルとボーイフレンドの仲を引き裂こうとしたり、脱走しようとして失敗したり、キャンプで活躍したり、ダックと喧嘩したり…
クロスカントリーのチームを決めるレースに出場する。これに選ばれれば、土曜日に開かれる、南メイン州キャンプ対抗陸上競技大会に、代表選手として出られるのだ。タバコなどすったことのない、むすこの若々しいきれいな肺と、ときたまセントラル・パークでジョギングをしているわたし自身の経験がものをいうことだろう。
三位に食いこむ。ダックが、こんなに足が速かったなんて、とびっくりしている。本気で走るのこれが初めてだから、といってやる。(あながちうそとはいえない。むすこのエイプの体に入ってから、競争をするのはこれが初めてなのだから)
↓元に戻らないまま時間が過ぎ、父親(身体はベン)がずっとこのままなのかと考えるあたりが熱いです。
ベン(身体は父親)は、元担任のムーン先生に入れ替わりを信じてもらいます。
ママかあ……もう、妻のエレンとはさようならで、これからはずうっとママなのか!?このさき永遠に?!そんなばかな。あんまりばかばかしいので、今まではそんなことは考えないようにしてきたのだが。
それでも、やっぱりエレンがいいな。結婚して、いっしょに夕食のテーブルにつき、さまざまなよろこびや、ちょっとした悲しみをともに分けあって暮らす。ともに愛し、愛される。だが、今度はそうはいかないんだ。
娘の結婚式には、父親として花嫁につきそってやりたい。だが、わたしは花嫁の父親にはなれないのだ。今度は、花嫁の弟になってしまうのだ。
むすこのベンには、もっと賢明な、やさしい父親になってやりたい。だが、もうおそいんだ。人気者のビル、もうおそいんだよ……
(中略)
これから先のつらい三十年と、二度と取りもどせない失われた三十年のことを思い、わたしは、いつまでもいつまでもワアワア泣き続けた。
↓父親(身体はベン)の方が先に戻れない現実を受け入れています。
それでも、わたしとしてはつらかった。二週間もべつべつに暮らしていたというのに、ただギュッとだきしめられて、額にチュッとキスをしてもらっただけでは物足りないのだ。それに、まあ、大きくなったわね、とか、ほんとに元気そうね、などと自分の妻にいわれても、ありふれた男であるわたしとしてはさほどうれしくはない。
「元気そうだね……」慣れなくてはいけない、この呼びかけ方に。「ママも」やっとのことでそういった。
「わたしの顔に何をしたんだ?ひどい顔してるぞ。自分の顔だってわからなかったぐらいだ!ヒゲはどうした?」
「またのびるよ」エイプはすましていった。
わたしのまねをしているのだ。エイプが髪を短く切られてグズグズこぼしているとき、「またのびるよ」というのがわたしの口ぐせだった。
「まあ、いいや。ぼくの顔じゃないんだから」わたしはいった。
「おかえりなさい、あなた」エレンが遠くから声をかけた。
エイプはためらいながら「やあ」というと、近づいていって妻のほおにそっとキスをした。
↓二人が今後について相談するシーンも最高です。
途中で二人同時に「元に戻りたい」と願い、元に戻ります。
色々とあった問題は丸く収まり、ベンが成長してハッピーエンドでした。
エイプのやつ、あごのかさぶたをひっかいている。
「わたしの顔、いじくりまわさないでくれよ」なんて気のきかないいい方なんだろう。自分でもあきれるよ。これじゃあ、まるでけんか腰じゃないか。軽いじょうだんのつもりだったのに――
「もう、パパの顔じゃないんでしょう?さっき、自分でそういったくせに」
(中略)
「ぼくは、この顔好きなようにできるんだよ」とベンは上からわたしをにらみつけた。「整形手術だってできるんだからね!」
(中略)
「もうそれはお前のズボンだよ。それに、ズボンなんかどうだっていいじゃないか。わたしは、ここでいいよ。でも、お前のいいようにするがいいよ。どうしたいんだね?」
ぼくの行方
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『ぼくの行方』 著者:ココロ直 | 男の子が未来の自分と入れ替わる。 | PHP研究所 『スイッチ もしも今日、あの子と入れ替わったら』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
中学生になったばかりの照樹は、4年前から入院している妹の雛美のせいで、自分の時間が持てないことを不満に思っていた。
我慢の限界がきて雛美と喧嘩してしまったある日、照樹は急に視界が歪んで見知らぬ部屋に移動していた。
部屋の中には照樹の苦労をねぎらう手紙と、欲しかった漫画とゲームが。
↓しばらく経ち、部屋から出られないことに疑問を持った照樹は、とある手紙を見つけます。
実は、照樹は30歳の未来の照樹と入れ替わっていました。
『キミがそこにいるってことは、僕の試みた方法のうちのどれかがうまくいったってことなんだろう。つまり、僕の精神と、キミの精神を、一時的に入れ替えることができたってことだ。実は、僕は未来のキミ。三十歳の照樹なんだ』
「はぁっ?な、何言って……えっ!」
思わず声が出た。それでさらにおどろいた。
僕の口から出たのは、僕の声じゃなかった。いや、正確には、僕の声だけど僕よりずっと低い声だった。
あわてて自分の手を見た。両手のひらは、たしかにいつもより大きくて、指は少しごつごつしていた。最近は急に背が伸びてきて、成長期だと言われていたから、あまり気にならなかった。でも、よく見たら、全然ちがう。大きな手だ。
雛美に不満を抱いていた照樹は、30歳の照樹が雛美に手をかけると思って不安になり…
↓母親からの電話で、今日が「雛美の命日」だと知らされます。
「雛美の命日」を知らない照樹に、母親が訝しがるシーンが好きですね。
「お父さんも待ってるわよ?まさか、今日が雛美の命日だってこと、忘れたの?」
「だから、その……雛美は、いつ死んだの……?」
電話の向こうの母さんは、何か考えているようで、しばらく黙った。やがて、「照樹、今日は休んでなさい。疲れてるのね」という悲しそうな声が返ってきた。
30歳の照樹は雛美の命を救い、照樹は元に戻りハッピーエンドです。
入れ替わりを信じてくれていた神田先生のタイムパラドックス発言が良かったです。
怪盗スイッチ
※この項目には物語に関するネタバレが含まれています。
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『怪盗スイッチ』 著者:櫻井とりお | 入れ替え能力を持つ怪盗が警備員と入れ替わる。 | PHP研究所 『スイッチ もしも今日、あの子と入れ替わったら』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
他人と一分間入れ替わる能力を持つ「怪盗スイッチ」は、その能力を活かしてお宝を盗み、貧しい人々に寄付を行っていた。
私立探偵のスニッチは、犯行予告のあった美術館を訪れ、怪盗スイッチを捕まえようとするが…
怪盗スイッチは、警備員・警察官・お宝のオーナーなどと入れ替わって盗みを働く怪盗です。
スニッチはその場にいた人々を二人一組にし、怪しい行動をしたら気絶させる作戦に出ます。
一般人の身体を狙撃することができないもどかしい状況が好きですね。
↓厳重な警備をものともせず、スイッチは警察官と入れ替わり、お宝を盗み出します。
その場にいた人々がパニックになる様子が最高です。
「ふっふっふ、諸君、怪盗スイッチのショーへようこそ!」
不気味な、しかし明瞭な声が部屋じゅうにとどろいた。
展示室内の全員が火をつけられたように動き出す。おたがいがおたがいをにらみつけたり、ほっぺたをつねったり、部屋じゅうをきょろきょろ見渡したりした。するとひとりの警察官が大きく手を振っている。彼は自分の相方、隣の警察官を激しく指さす。
指さされた警察官は駆け出し、宝石のケースから遠く離れた壁際に立った。彼は狂気に満ちた表情で、みんなをあざ笑った。
「ぼくはここだよ、諸君!」
「そ、そいつがスイッチだ!捕まえろー!」
スニッチがあわてふためいた様子で指さし叫ぶ。しかし、その警察官はニヤリと笑って壁の電灯のスイッチを切った。
怪盗スイッチの正体は探偵のスニッチで、一人二役の怪盗でした。
本物のスイッチは今のスイッチの姉で、彼は姉の娘・リルを育てているようです。
今のスイッチは入れ替わり能力を上手に使えず、数秒間のみで非常に疲れるようでした。
オチを知ってから読み直すと、「そ、そいつがスイッチだ!捕まえろー!」と叫んでいるのはスニッチの身体に入った警察官だとわかります。
今回は、児童書の男同士入れ替わりを6作品紹介しました。
読んでいただいてありがとうございました!