男女入れ替わり

小説の男女入れ替わり①【4作品】

男女入れ替わり2

今回は、小説の男女入れ替わりを4作品紹介していきます。

 

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入れ替わりジュース

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『入れ替わりジュース』
著者:桐谷直
男子高生が入れ替わりジュースで母親と入れ替わる。 PHP研究所
『3分間ノンストップショートストーリー ラストで君は「まさか! 」と言う 時のはざま』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

高校二年生の田崎亮太は、友人・木村のマッドサイエンティストの祖父が遺した「入れ替わりジュース」を使って、クラス一の美少女・春野さんと入れ替わろうとするが…

 

祖父も女の子と入れ替わったようですが、祖父の顔を見てヒステリーを起こした女の子(身体は祖父)に殴られて気絶している間に元に戻ったらしい…

↓田崎と木村が「どの女の子と入れ替わりたいか」をドキドキしながら話すシーンが好きですね。

「で、だれと入れ替わりたい?」
木村に聞かれ、俺は思わず顔を赤くして言った。
「一組の…春野さんと…」

 

異性としか入れ替われないルールがあるらしく、田崎は結局同じクラスの吉川と入れ替わることに。

入れ替わりジュースを飲んだところに、田崎の母親が声をかけてきて…

 

入れ替わった二人の反応が面白かったですね。

薬の効果は三日間なので、そのまま過ごしたのでしょう(笑)

 

あばよ!明日の由紀

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『あばよ!明日の由紀』
著者:光瀬 龍
高校生の男女は気がついたら入れ替わっていた。 ●朝日ソノラマ
ソノラマ文庫
『あばよ!明日の由紀』
●岩崎書店
SFロマン文庫
『日本のSF短編集 超世界への旅』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

あばよ!明日の由紀2

男子高校生の戸沢章二は、美人の同級生・白川麗子に告白するも振られてしまう。

麗子に噂を立てられた章二は、自分も綺麗な女の子に生まれ代わって、告白してくる男子達を振りたいと思いつつ眠りについたら、気がつくと逢坂由紀という少女になっていた。

 

章二(身体は由紀)は、いつの間にかディスコにいて知らない踊りを踊っていました。

↓由紀になった章二は、勝手に口調や一人称や喋る内容が由紀のものになってしまうようです。

「どいてください」章二はもう一度静かにいった。
「なかなか大きな口をきくじゃないの!あんたの名は?」
「私?由紀」

 

↓周囲から「おねえさん」と呼ばれて違和感を覚えた章二(身体は由紀)は、元の自分の名前を名乗ってみますが、余計に違和感が増しただけでした。

おねえさんだって!おれがおねえさん?からだの軸を、何かえたいの知れぬ恐ろしいものが走りぬけた。そんなばかな!そんなことがあってたまるものか!章二は絶叫した。しかし、それは声にはならず、ただ歯がかちかちと鳴っただけだった。
「お、おれは戸沢章二だ!」
三度も四度も口にだしていってみた。しかし、それはひどくいいにくかった。まるで初めて聞く他人のようにしかいえない。章二の心はひがついたようにあせった。
「おれは、おれは戸沢章二だ!」

 

↓章二(身体は由紀)は、逆に由紀の名前を口にすると、しっくりくるようです。

章二自身は初めて由紀の名前を知るという描写が良かったです。

章二は思い切ってそれを口にした。くちびるはまったくなめらかに、きままに動いた
「私は逢坂由紀!」逢坂?由紀だって?「私は逢坂由紀よ!」それがおれの名まえなのか?すると、おれは、やっぱり!
(中略)
しかし、自分で感ずる自分の肉体は、あきらかに戸沢章二のものではなかった。章二は走って、小さな花屋のショーウインドウのガラスに自分をうつした。
髪の長い、前髪のよくにあうほっそりとした美しい少女がそこにいた!
「私は逢坂由紀よ」
なんのよどみもなく自然にいえる。しかし、戸沢章二というにはひどい心の作業が必要だった。
ああ、おれは女になってしまったんだ!女に!

 

↓章二(身体は由紀)は、男言葉は喋りにくいと感じるようです。

「へん!わりといい線いってるじゃねえか」口にだしてみると、まるで借り物のことばのようにいいにくかった。
「あごの骨まで女ことばをしゃべるのにつごうよくなっていやがる」

 

とりあえず章二(身体は由紀)は、由紀の脳に記憶されている由紀の自宅の住所を読み取り、家に帰ってみることに。

↓由紀の家に帰った章二(身体は由紀)が、由紀の記憶を読んで情報を得るシーンが良かったです。

由紀は――高校一年生、姉弟はいない。
「ふうん。ひとりっ子か」
章二の由紀は、この部屋のあるじの由紀の周囲を観察した。由紀の全ての記憶は、そのまま章二の記憶でもあった。章二には、それがまるで他人の頭の中をのぞくような妙な気持ちになった。
「いとこがいるぞ」
いとこの名は?島田鉄夫。今年大学一年にはいった。由紀の父親の故郷の出身だった。

 

章二(身体は由紀)は入れ替わりの原因を探るために、由紀の記憶を必死に読み取ったり、部屋を漁ったりして日記を見つけます。

最近の由紀は、幻聴に苦しんでいて、いとこの鉄夫に打ち明けたら、襲われかけてしまったらしい。

 

その後、章二(身体は由紀)が章二の家に家に行くと、そこには由紀(身体は章二)が。

↓章二(身体は由紀)の着替えシーンや、章二(身体は由紀)が由紀の母親や章二の母親と絡むシーンが良かったですね。

章二は汚れたジャンパーを脱ぎすてた。なれた由紀の手つきでスラックスを脱ぎ、黒と白の横じまのセーターを頭から脱いだ。洋服ダンスのとびらを開いた。
「あっ!」
章二は思わず目をつぶった。知っているはずなのに、強烈な衝撃が脳天につき上がってきた。章二はがくがくするひざに全身の力をこめ、勇気をふるいおこして目を開いた。
真珠色の美しい裸のからだがそこにあった。胸の二つのふくらみ、細くしまった腰。なめらかな腹。すらりとのびたもも。それは見てはならないものを目にした驚きと、それが自分のからだであるという二重の恐怖と打撃だった。
――ああ、おれはなにかのばちがあたって、こんなからだになってしまったんだ!
――おれが女になってしまっただなんて、人にはいえない!絶対いえない!

 

↓章二(身体は由紀)と由紀(身体は章二)が自己紹介して仲良くなるシーンが好きです。

章二(身体は由紀)は女言葉になってしまうようですが、由紀(身体は章二)は女言葉のままのようです。

由紀の幻聴の原因だと鉄夫から聞いていた降霊術師のルイ・オサリバンが入れ替わりの原因ではないかと考えた二人は、オサリバンの家へ行ってみることに。

「逢坂由紀さん、ですね。ぼく、戸沢章二です」
男のことばを使おうとしても、どうしても思うようにならない。かえって妙なアクセントになる。由紀の章二の血の気のうせたほほに、かすかにかげりのような微笑がうかんだ。
「私、由紀です。章二さんとははじめてお会いしたっていう感じがしないわね」
それも無理もない。お互いに相手のからだにはいりこんでいるのだから……。
「それはおれだってそうだよ。なにしろ着ているものはすべてきみのものなんだからな」
章二である由紀の顔に、はげしい恥とろうばいがみなぎった。
「いや!そんな」
章二はしまったと思った。つい、いい過ぎたようだった。
「ごめん、ごめん。でも、お互いだからいいじゃないか」
「いやです!そんなこという人」
章二はすなおに頭をさげた。しかたがない。由紀にとっては、章二に自分のからだのすみずみまで知られているなどということは、死ぬほど耐えがたいことにちがいない。

 

↓途中で章二を振った麗子に会い、麗子が美人の由紀(中身は章二)に嫉妬して、由紀(身体は章二)と仲良くするシーンが最高でした。由紀は、由紀が美人だということを理解しているようです。

由紀(身体は章二)が章二のフリをするところも良いですね。由紀(身体は章二)が章二の記憶を読めるかどうかはわかりません。

「あの人が好きなのね。でも、ふられた。そうでしょう」
おそろしいかんのよさで由紀はいってのけた。
「好きじゃねえよ。あんなやつ。もう」
少し苦しい語調だった。
「だったらもっとしゃんとして!私のほうがよっぽどきれいなんですからね」
けろりとしてもとの章二にもどった。
「あ、白川さん」
麗子は学校にいるときとはちがって、やや親しみのこもったまなざしを章二にむけた。
「きみ、ゴルフをやるの」
章二の姿の由紀は明るく麗子にいった。
「ううん、おとうさまについてきただけ」
そういってから麗子は、由紀にちら、と視線を走らせた。その目に、由紀の美しさに対する驚きとかすかなしっとが走った。
「お友だち?」
「ああ、逢坂由紀さん」
「ほかの学校のかたね」
章二はまだ、由紀がどこの学校に行っているのかを知らなかった。
「桜川高校だよ。由紀ちゃん、ぼくの同級生の白川麗子さんだ」
章二は麗子に軽く会釈をした。
「戸沢さん。来週の火曜日、私の誕生日なのよ。来てくださるわね」
麗子は花のように笑った。まるでいぜんから親友だったような態度だ。章二はその麗子の急変ぶりに驚いた。
「戸沢さん。あの手紙のこと。ごめんなさい。ああしないと皆がとてもうるさいの。私、家へ帰ってあなたに悪くて泣いちゃったわ」
「なあに、いいんだよ。それじゃきみの誕生日のこと、考えておくよ」
章二の姿の由紀は、まだ何かいいそうにしている麗子をあとに、歩きだした。章二はすっかり考えこんでしまった。
(中略)
「なにさ!あの子にちょっといい顔されたからって、すぐに本気になって考えこんだりして。いいこと、あの子は私がきれいなものだから、やきもちをやいただけなのよ。私に刺激されたから、それで対抗意識をもやしただけなの。しっかりして!」
「そうかなあ。誕生日にさそってくれたぜ」
「あなたって人がいいのねえ!そう、それならどうぞ。だけど、私が行くのかしら?それともあなたが行くのかしら?」

 

そして、オサリバンの家に忍び込んだ二人。

↓力仕事を由紀(身体は章二)に頼む章二(身体は由紀)のシーンが良いです。

ここで力がつきて章二はどさりとおちた。
「ああ、いてえ。だけどこれはおれがやることはないじゃないか。由紀ちゃん、きみがおれの体力でやることだよ」
「あ、そうか」
気持ちは章二でもからだは由紀だ。やはり行動は章二の姿をした由紀が先頭をきらなければならない。章二にはそれがしゃくだった。

 

オサリバンは人間ではないようで、突然二人に襲い掛かります。

揉み合っている途中に機械の爆発?があり、二人は元に戻ります。

何故二人は入れ替わったのか、謎は解明されないままおしまいです。

 

おれと和幸の一夜

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『おれと和幸の一夜』
著者:三浦俊彦
男女が宇宙人の人体実験で身体と精神を入れ替えられる。 岩波書店
『たましいの生まれかた』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

大島和幸とその彼女の墨田貴子は、相手よりも自分自身のことが好きだったが、うまく付き合っていた。

ある日、宇宙人に連れ去られた二人は、人体実験により肉体を交換されて入れ替わってしまう。

混乱して抗議する二人を見た宇宙人は、一旦肉体を元に戻し、今度は記憶と性格を書き換えて心の方を入れ替えてしまった。

 

↓まず、部分交換で徐々に肉体が入れ替えられていく描写がじっくり書かれていて良かったです。

おれの耳を削り取って貴子のも削り取って、それを素早く交換してペタッとくっつけてきやがるのよ。ものすげえ早業だぜ。おれの手がもぎ取られて貴子の肩にくっつけられる。貴子のおっぱいがひとつずつはぎ取られておれの胸にひっつけられる。その根もとがまたほじくられる。おれの頬がゴッソリこそぎとられて貴子の頬の穴に埋め込まれる。貴子のケツがむしり取られておれの腰に植え付けられる。血も出やしねえんだぜ。全部コントロールされちまってるわけよ。

貴子の二重瞼のアーモンド形の内斜視のきれいな目が二つとも、おれの一重のドングリまなこに置き換えられたときゃ、もう怖さ通り越して不思議な感じがしたよ。貴子のチャーミングで上品な八重歯がおれの口ん中に押し込まれたときゃ、思いっきり舌なめずりしたくなったよ。(中略)心臓もとっかえ、腸もずるずる引きずり出してとっかえ、背骨もとっかえ、血管の一本一本もゴッソリとっかえ。(中略)でさ、髪の毛ごとばさっと頭ひっこ抜かれてさ、貴子の頭とすげ替えられたときにゃ、てっきり視点がむこうに移って、向こうの体ん中から部屋の様子を見るようになるのかと思ったんだ。だって髪の毛や額の皮ん中にゴッソリぬらぬらした脳味噌が見えてやがったんでな。でもさ、脳味噌交換しちまってもおれの視点はこっちのままでさ。どういうことなのかわかんないけど、心はこっちに残ったままなんだ。(中略)さっきおれが立ってたこの同じ場所に、そっくりの貴子が立ってる。さっき貴子が立ってたあの場所に、おれの体が立ってやがるんだな。からだがそっくり交換されちまったんだな。

 

↓貴子のナイスバディを手に入れた和幸は、性格の悪い貴子の精神が入った醜い容姿の和幸と付き合い続ける意味がないと思い始めます。

視力は断然よくなってるし肩は軽くなってるし胸は重くなってるしぴったり体にフィットした下着の感触は心地よいし蓄膿症の鼻づまりがきれいに消え失せてるし口ん中の味っつうか舌が歯に触れる抵抗感っつうか全然違うしで、なんか心地よかったぜ。

向かいに立ってるもとのおれ自身の体をつくづく見たね。あ~あ、みっともねえ体。あのがに股、あの太鼓腹、あのあばた面。せいせいしたぞ。ちょっと待てよ、おれはあれとつきあいつづけるのか?もうセックスはできないよな。あのおれの体と絡むなんてな、ぞっとすらあ。てことはだ、もう貴子とはつきあわねえと。

もう貴子とセックスする必要なんかないぞ。存分オナニーしてやる。もらったこの体で。むふ、むふふふふふふ!もうあんな醜いきたないペニス見ながらやらなくていいんだ、ほんっとーに楽しいオナニーができるんだ、この愛情度一〇〇点の貴子のすばらしい体で!

 

↓貴子(身体は和幸)はもちろん、醜い和幸の身体を嫌がり、宇宙人に抗議します。

「ひどーい、なにこれーっ!もどして、もどしてよーっ!」
そりゃ当たり前だよな、あいつにしてみりゃ実に一五〇点の損失なんだからな。五〇点の体がマイナス一〇〇点に置き換えられちまったんだから。そりゃ悲鳴をあげて抗議したくもならあ。
「ひどーい、ひどーい、ひどーい、ひどーい」
身もだえしていつまでも叫んでやがるんだよ。おれのがらがら声でな。おれの短足を踏み鳴らしてド近眼のドングリまなこから涙ほとばしらせて団子っ鼻から鼻水振り散らしてな。ほんっと見てらんねえ光景だっつの。

 

↓貴子(身体は和幸)の抗議にびっくりした宇宙人は、一旦肉体を元に戻します

また金縛りさ。服脱がされて、ずばすばと手足首胴内臓肉皮骨毛脂肪、アッというまに逆戻しよ。こっちにはまたもとの冴えねえ醜男が突っ立ってたってわけだ。そいであっちには貴子の体、今さらながら輝くばかりの美女が。

 

↓そして宇宙人は、今度は二人から魂を取り出して、徐々に記憶を交換していきます。

肉体を元に戻した状態で記憶を書き換えられていくので、和幸は和幸の身体のまま貴子の記憶を植え付けられ、貴子は貴子の身体のまま和幸の記憶を植え付けられるというややこしいことにw

なんと今度は、おれと貴子の頭ん中に手ぇ片っぽずつ突っ込んできやがった。深く、深あく手ぇ突っ込んで、こねくり回して、ズボッと引き抜いてだ、右手と左手いれかえて、ふたりの頭ん中に突っ込みなおすんだ。なんにも握ってねえように見えるんだが、なんか物質的じゃない魂みたいなもんを交換してんだとぼんやり思ったね。っていうのもさ、一回突っ込まれるごとに、たとえば突然家族のことを思い出すわけよ。親父、お袋、姉貴の顔とか声とかな。で、ズボッと引き抜かれたとたんに映像がすっと消えて真っ白に記憶喪失みたくなって、で次にズボッと突っ込まれた瞬間、見知らぬオッさんとおばさんとガキの顔が浮かび上がって、ああこれって会ったことねえけど貴子の家族だな、って思って、次の瞬間には自分の家族、って気になって、声とか年齢とか昔話したこととか家族旅行のこととか思い出せちゃうわけ。

 

↓虫が好きだった和幸の記憶が、貴子の記憶に上書きされて一瞬のうちに虫嫌いになるところが最高でした。

ツクツクボウシの啼き続ける柿の木の幹に登ってきたオオゾウムシの前に立ちはだかったヒゲコメツキだのそのすぐ背後から太陽に向かって飛び立ったアカスジカメムシだののとんだりはねたり歩いたりしてる草むらが思い浮かんでアア六本脚って好きだなあ可愛いなあとしみじみしたところへだ、ズボッ、と虫大っ嫌い、気持ち悪イッに置き換わっちゃうわけ。つまり宇宙人めの一すくいごとに、おれの記憶とか趣味とか性格とかが一個ずつ浮上しては貴子の記憶や趣味や性格に置き換わっていっちまってるわけだよ。(中略)もう命令されたみたいにあることを思い出しては忘れ、別のイメージがブチ込まれ、ってなふうでさ、自分で考えたり感じたりする内容をコントロールできないんだな。で、アア、おれの心はだんだん貴子の心に置き換えられてゆく、どんどん記憶を失って、別人の、貴子の記憶を植え込まれてゆく、ってぼんやり感じるには感じるんだけどな。で宇宙人の手が加速度的に早く動いて、目にも留まらぬ早さでおれの頭と貴子の頭を往復してさ、ついに記憶から性格から趣味から自意識から、全部丸ごとスリかわっちまったんだよ。

 

和幸の身体のまま記憶や性格を貴子のものに書き換えられた和幸は、元々和幸だった自覚はあるみたいですが、その自覚すら信じられず、元々貴子であると思えてくるようです。

和幸のことを思い出そうとしても、貴子が知っている範囲でしか情報が出てこないところが最高。

体の部品は何一つとっかえられてない。かわりに心の部分部分が一個ずつ、しまいに全部交換されちまったんだ。さっきの逆だよね、アア、心が入れ換わってしまったんだー。
不思議な感じだったよ。さっきまで自分が大島和幸のつもりで、当然本人だから当たり前なんだが、ほんのさっきまでずーっと二十年間、大島和幸として色々考えたり怒ったり悩んだり(中略)覚悟したつもりでくさったり虚勢を張ったりしてたはずだけどさ、それはあくまで大島和幸の記憶と性格の中でそうしていたわけだ。それがどうだい。今や、墨田貴子の記憶と性格の中でしかそれができてないんだぜ。大島和幸としての過去の実感がまるっきりないでやんの。何も覚えてねえでやんの。大島和幸のことで知ってることっつったら、墨田貴子とつきあった範囲で墨田貴子が知ってるはずのことに限られてやがんのよ、まったく。(中略)自分が大島和幸だとは信じらんねえ、墨田貴子だとしか思えねえくれーに完っ璧に。

 

↓今度は、和幸の醜い身体のまま、性格の悪い貴子の精神に強制的に変化させられた和幸の方が宇宙人に文句を言う番w

美人の貴子のまま、そこまで性格は悪くない和幸の精神に強制的に変化させられた貴子は、逆にこのままでも良いようです。

「何すんのよひどーい、ひどいひどい、もどしてよーっ!」
貴子の口調なんだよな、声は和幸でも。なんせ心が貴子になっちまってるからさ。
(中略)
「もどして、もどして、もどしてよーっ」
おれは叫んだね。さっきは貴子が損して抗議して、今度はおれが損して抗議してるわけだが、さっき体とっかえられたときに抗議した貴子の記憶も今こっちに移ってきてるからさ、おれなんだか、さっきと今と立て続けに二度とも自分ばっかり抗議してるみたいな変な気分だったよ。おれが抗議してんのは今度だけなのに。
「もどして、もどして、もどしてよねーッ!」
おれは叫び続けた。とにかくこういうやり方されちゃ必ずどっちかひとりが一方的に損をするわけだからな。貴子のやつは涼しい顔ですましてやがる。当然だよな、マイナス一〇点の心を失ってプラス一〇〇点のおれの心をもらって、一一〇点アップしたんだからな。もう貴子からみてマイナス一一〇点になっちまったおれなんかとつきあう理由はない、セックスする必要はない、する気もない、なんて思ってるに違いないんだわーっ!ておれは思って怒り狂ったね。

 

↓困った宇宙人は、記憶を書き換えた二人の肉体を交換してしまいました。

つまり、和幸の身体のまま貴子の記憶に書き換えられた和幸は貴子の身体になり、貴子の身体のまま和幸の記憶に書き換えられた貴子は和幸の身体に…

で、心はそのまんま手つかずのまんま、また初めんときみたいに、おれの体と貴子の体をぐさぐさともぎ取ってはどんどんとっかえはじめたんだよ。目ん玉に唇に胸に肋骨に腕に肩に胃に腸に足に服に……。瞬く間に体もすっぽり交換さっ。
しーん。どうなっちまったんだよおれたち……って、おれと貴子は顔を見合わせたよ。心が交換されて、今度は体まで。おれの心と体が両方ともこっちのおれのいたところに移動してしまったんだ。どういうことだと思う先輩?
どういうことなの?
おれと貴子は、何がなんだかもう混乱して、二人していっしょに抗議を叫んだよ。
「どーしてくれんだよーっ、どうしてくれんのよーっ、どーしてくれんだよーっ、どうしてくれんのよーっ、どーしてくれんだよーっ、どうしてくれんのよーっ、……!」

 

困った宇宙人は、元に戻さずに立ち去ってしまいました。

残されたのは、「元々は貴子だという意識のある肉体的にも精神的にも100%和幸」と、「元々は和幸だという意識のある肉体的にも精神的にも100%貴子」という元に戻ったのか戻ってないのかよくわからない二人…

 

↓ということで、今までの話を先輩に語っていた「おれ」は、「身も心も和幸になってしまった貴子」でした。

貴子(身体は和幸)は、記憶も性格も何もかも「和幸」になってしまっており、和幸の過去を自分のことのように話します。

てなわけでさ、ここまでずっと「おれと貴子」なんて、いま先輩に喋ってるこのおれが大島和幸であるかのような喋り方してきたけどさ、もちろんおれぁ、墨田貴子なんだよ。あれからあの宇宙人は出てきやがらないし、二度と現われないんじゃないかって気がするし。先輩にいきなり言っても信じてもらえないと思ってな、そもそも理解してもらえねえんじゃないかと思ってな、大島和幸のふりをしてたんだよ。なんせ体も記憶も性格も全部大島和幸なんだからさ。でも本当は、おれが墨田貴子で、あすこに座ってるあの女が大島和幸ってわけなんだな。どうだい。驚いただろう。

 

↓冒頭に、意味深なセリフを言っているのが好きですね。

あのさ、話し始める前に聞いときたいんだけど、おれ、前とどっか違ってるとこあるかな?どう先輩。おれ、前と変わった?

 

↓入れ替わってしまった?二人は、元の自分の記憶がないので元の自分としての生活はできず、入れ替わった相手の人生をそのまま引き継いで暮らしているらしい…

もちろん、お互いのことは身体の名前呼びで呼んでいます。

二人とも相手よりも自分自身のことが好きでしたが、今は自分自身よりも相手のことが好きになり、結婚して幸せに暮らす予定のようです。

しょうがねえからもう、おれは大島和幸の家で、あいつは墨田貴子の家で生活してるよ。そうしないと家族とか友人とかに、適応できねえもんな。(中略)だけどおれたちときた日にゃ心も入れ換わってんだからな、それこそ本当の自分の家族とかに固執し続けたんじゃまるっきり適応できないわな。互いに相手の家で今までどおりの相手の生活を引き継いでいかなくちゃ。

 

↓オチでいつの間にか「身も心も和幸になってしまった貴子」と「先輩」の位置が入れ替わっていたようですが、入れ替わったことすら忘れて入れ替わったのかは不明です。

あの宇宙人もしかして、隠れてひそかにいろんなとこでいろんなやつの心と体をとっかえたりしてやがんじゃねえのかなとかって。あんときゃ見習いかなんかでちょこっとヘマこきやがっただけで、いつもおれたちの気づかねえうちに巧みに、きっと……つうか、あれっ先輩、ずっとそっちで飲んでたっけか?こっちがお気に入りの指定席じゃなかった?えーとなんでおれ、こっちにいたっけ、いつっから?なんか知らねえうちに場所交替しちまったような……

 

2999年のゲーム・キッズ

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『2999年のゲーム・キッズ』より
第95話『自分の体』
著者:渡辺浩弐
女の子がおじさんと身体交換所で入れ替わる。 講談社
講談社BOX
『2999年のゲーム・キッズ 完全版 DX』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

女の子は自分に自信がなく、極度の恥ずかしがり屋で外でまともに話すことができなかった。

ネットの悩み相談会議室に相談すると、身体を売れば良いと言われ、「身体交換所」を勧められた。

見ず知らずの人と入れ替わるのを躊躇った女の子は、知り合いのおじさんと入れ替わることにしたが…

 

↓「売る」のではなく「貸す」と言われて安心した女の子は、さっそく機械で入れ替わります。

「身体交換所」は、若い身体で楽しみたい年寄りや容姿が醜い男性と、小遣い稼ぎ目的の若者がマッチングして利用されるシステムのようです。

「それに、本当は"売る"わけじゃない。しばらく"貸す"だけ。その間だけ我慢していれば、体はちゃんとまた自分に戻ってくる。」
私は決心した。お客は普通、ネットで見つけるものらしいが、最初に見ず知らずの人と……というのは怖いから、私は、知りあいのオジサンに話をつけた。相手はとても驚いたが、思った通り、鼻の下を長くしてついてきた。

密かに開業している『身体交換所』。ここで、体の売り買い、いや正しくは交換ができるのだ。特殊な機械に接続されたゴーグルを頭に被って処置を受けるだけで、二人の人間が、意識はそのままで体を取り替えっこできる。

 

↓女の子の身体になったおじさんは、喜んで町へ出かけたようです。

そうして私は、汚い中年男になった。相手のオジサンは、若い女……私の姿になって、とてもうれしそうだった。いそいそと街に出かけていった。

 

醜い身体を手に入れた人間は普通出歩かないようですが、女の子はおじさんの身体で出かけます。

↓人目を気にしすぎていた女の子は、おじさんの身体で堂々と町を闊歩します。

醜いおじさんになれて喜ぶ女の子がレアで良いですね。

他人になって、それも醜くなってみたかったのだ。それは成功した。私はでっぷりと太り、目や口は脂ぎった顔の肉のたるみにすっかり押しつぶされている。そして自分の姿形の拘束から自由になることができた。のびのびと、堂々と、街を闊歩した。服が乱れても、足ががに股でも、平気だった。私はじろじろと遠慮なく見つめて若い女性の眉を顰めさせた。ホットドッグを買ってむしゃむしゃ食べちらかしながら歩いた。鼻をほじろうが、お尻をぼりぼりかこうが、ちっとも恥ずかしくはない。すばらしい気分。

 

↓約束の時間になってもおじさん(身体は女の子)は現れず、不安になった女の子(身体はおじさん)が怪しいクラブに行くと、おじさん(身体は女の子)は存分に楽しんでいました。

際限なく飲み、笑い、踊り、体をまさぐりあう。そんな人々の中に私……私の姿をしたその男はいた。
思わず駆け寄った。「何やっているの」と女口調で言いかけ、それが男のだみ声だと気づいて慌てて言い直した。
「な、何をやっているのだ」
「あら、こんなところまで何しにきたの」
相手は頭を隣の青年に預けたままで面倒くさそうにそう言った。目がどんよりと濁っている。酒か、クスリをやっているのかもしれない。

 

↓女の子(身体はおじさん)が頑張って男口調で注意すると、おじさん(身体は女の子)はとんでもない返答を…

元の自分の使用方法をあらかじめ確認しなかった女の子(身体はおじさん)に非が…二人とも楽しんでいるので良いのではないでしょうか。

「だ、大事な体が汚れてしまうじゃないか!」
するとその少女は不敵な笑みを浮かべ、こう言った。
「私の体をどう使おうが私の勝手じゃない。ふふ、嫁入り前のきれいな体が台無しになっちゃうって、気が気じゃないのはわかりますけどね、いつまでも私のことを自分の所有物だと思わないでちょうだい、お父さん」

 

元に戻る描写はなく、おじさんが本当の父親かどうかはわかりません。

女口調で喋るおじさん(身体は女の子)がダークで良かったです。

 

 

今回は、小説の男女入れ替わりを4作品紹介しました。

読んでいただいてありがとうございました!

 

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