今回は、小説の男同士入れ替わりを6作品紹介していきます。
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地獄工場
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『地獄(ヘル)工場』 著者:岩城裕明 | 男性が地獄勤務の男性と変身で入れ替わる。 | KADOKAWA 角川ホラー文庫 『三丁目の地獄工場』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
男性は多数の引き抜きをして会社を独立させ、初めは順風満帆だったが、次第に上手くいかなくなってしまう。
人生に疲れた男性は、とある居酒屋で地獄勤務の獄卒の男性に「代わりましょうか?」と声を掛けられ、入れ替わることになった。
その後、男性は毎日ブラック企業の地獄に出勤する羽目に…
獄卒ボディになった男性が過去を語っているという設定のようでした。
二人が入れ替わる前に「お互いが羨ましい」と話すところが好きですね。
男性は、地獄勤務のことをよく知らないまま、酔った勢いで入れ替わってしまいます。
実は主人公の性別は明言されていませんが、恐らく男性だと思います。
↓謎の機械で変身して入れ替わります。変身シークエンス有りです。
一瞬だけ男性ボディが二人いる状態になります。
ブンと壁の中からモーラー音が響きだし、その振動がホースを伝って、彼の体を波立たせたように見えた。
男の顔がぐにゃんと歪む。
顎が引っ込み、後頭部が突きだし、鼻がねじれ、口が縦になる。
同時に体の中から大量の卵を握り潰したような音が鳴り、肋骨が皮膚を突き破ると、上から順番に胸の中へ戻っていく。体の部品がすべてずれていた。その姿はジェンガの後半戦に似ており、今にも崩れてしまいそうだった。
ボロボロと歯が抜け落ちたそばから、新しく生えていく。それからも複雑な工程を経て、ようやく人としてまともな形に戻ると、男は別人に変わっていた。
目の前に、私が立っていた。
(中略)
私が笑う。部品は同じでも表情の作り方が違うのか、いきなり知らない顔があらわれた。「今度はあなたが私になるのです」
地獄勤務の描写は、かなりシュールに書かれていました。理不尽に叱責される会社であることは間違いないですがw
他人の汗の染みついた制服を着るところが良かったです。
男性ボディになった獄卒のその後はわかりませんが、男性の人生も良いものではないので、恐らくハッピーになってはいないと思います。
↓色々あって、男性(身体は獄卒)は「ヒトガタ」と呼ばれる乳房と男性器と女性器のついたふたなりのような身体に改造され、罪人の魂と共に罰を受ける係になってしまうのでした。
痛いぐらいに早くなった鼓動をしずめるために、手を胸に当てた。何故かそこに乳房があった。
「目覚めましたか」
背後から声がした。
振り返ると、壁際に一匹の獄卒が立っていた。
「あの」とだした声が異様に高くて驚く。
放課後に死者は戻る
※この項目には、物語に関するネタバレが含まれています。
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『放課後に死者は戻る』 著者:秋吉理香子 | 鉄オタとイケメンの男子高校生同士が崖から転落して入れ替わる。 | ●双葉社 『放課後に死者は戻る』 ●双葉社 双葉文庫 『放課後に死者は戻る』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
何者かに崖から突き落とされて死んだはずの冴えない鉄オタ・小山のぶおは、目が覚めたら一緒に崖から落ちたハーフイケメン・高橋真治の身体になっていた。
元の自分を殺害した犯人を見つけるため、のぶおは真治の身体で元々通っていた学校に潜入し、聞き込み調査をするが…
冒頭で、今日転入してきたはずの「高橋真治」が学校のことに異常に詳しいという描写が良かったです。
↓「小山のぶお」の席には枯れかけの白い花が飾られており、のぶお(身体は真治)はクラスメイトの誰も「のぶおの死」を悼んでいないとショックを受けます。
「のぶおの葬式」について尋ねるシーンが最高ですね。
自分が死んだ後に、その死がクラスの中でどのように扱われているのかを、自分の目で見ることのできる人間はいないだろう。しかし、僕は実際にそれを目の当たりにしている。そして傷ついている。
イケメンの真治の身体だと、のぶお時代よりも周囲から好意的に見られ、感じの悪かったクラスメイトを見直す…という場面が多くて良かったです。
逆に、イケメンなら何でも好意的に見られると、嫌になるような場面もあります。
真治の両親はとても良い人で、記憶喪失になった真治(中身はのぶお)を戸惑いつつも受け入れてくれます。
真治にはエッチな彼女もいて、正反対の性格の他人として生きる大変さも書かれていてポイントが高いです。
後は、のぶお(身体は真治)がお風呂で股間を洗うシーンや、真治のバンド仲間に入れ替わりを冗談で疑われるシーンが良かったですね。
↓あまりにも真治の人生が恵まれていて、また犯人探しも難航していたので、のぶお(身体は真治)は真治として生きる人生も良いかもと思い始めます。
一瞬で、頭の中に渦巻いていたもやもやが弾け飛んでいく。もう、全てがどうでもいいように思われた。
殺されかけたことも、高橋真治と入れ替わったことも、犯人を見つけ出すという任務も、全てが頭のかなたに飛ばされていった。このままでも、僕は幸せに生きていける。恵まれた容姿で、優しい家族がいて、綺麗な彼女がいて、何の不足もない人生が送れる。しみったれた小山のぶおの人生なんて、捨ててしまえばいいんじゃないか。
もうこのまま、高橋真治の人生を受け入れてしまおうか――
話が進むにつれて、クラスメイト達も、担任も、母親も、親友も全員怪しい!とのぶお(身体は真治)は疑心暗鬼に。
↓しかし、のぶお(身体は真治)が「小山のぶおが死んだ」と思っていたのが勘違いだとわかり、終盤で真治(身体はのぶお)が登場。
のぶお(身体は真治)が真治(身体はのぶお)のことを「小山のぶお」と肉体名で呼ぶのが珍しくて良いですね。
「そうか……お前は知らなかったのか」
小山のぶおにも、やっと状況が呑み込めたようだった。
「お前と一緒に病院に運ばれたが、俺は二週間入院しただけで退院したんだ」
僕は生きていた?
小山のぶおは生きていた?
ああ、ちょっと待って。
高橋真治の体の中に、僕が今、こうして息づいている。
ということは、今、目の前の小山のぶおの中にいるのは――?
「もしかして……きみは……高橋真治?」
震える声でそう問うと、小山のぶおは少し頬の緊張をゆるめ、
「ああ、そうだ」
と頷いた。
怪しい人物は全員、「のぶおが生きている」前提で話していて、誰一人悪い人間はいませんでした。
入れ替わりを知っていて、真治(身体はのぶお)に協力している親友が好きですね。
親友は、のぶお本人ではありえない、英語ペラペラでギターを弾くのぶお(中身は真治)を見て入れ替わりを信じたようですw
実は二人を崖から突き落とした犯人は真治のストーカーで、ストーカー本人も崖から落ちて亡くなってしまったらしい…
↓真治(身体はのぶお)は、真治の身体にストーカーが入り、ストーカーの身体にのぶおが入ったと思っていたため、行方を眩ませていたようです。
入れ替わった二人の会話が美味しくて最高でした。
「三人で入れ替わったんじゃなく、俺とお前の二人だけが入れ替わっていたとはな」
煙草の煙を大きく吐き、そしてふと気づいたように、優しげな目を細めた。
「てことは、あいつはあいつのまま、ひとりで死んじまったってことか……」
(中略)
「でも……お前が生きていてくれて嬉しいぜ、小山のぶお」
小山のぶおが顔を上げて、ニッと歯を見せる。自分に笑いかけられるなんて、なんだかとても非現実な感覚だった。僕も笑い返す。張りつめていた気持ちがやっと、お互いに完全に解けたのがわかった。
「僕の方こそ、高橋君が生きててくれて嬉しいよ。助けてくれようとしたきみが亡くなって、僕が生き残るなんて、すごく申し訳ない気持ちだったんだ。そんなこととも知らず、きみのご両親は本当に僕に優しくしてくれてね――だから本当に良かった。きみのお父さんもお母さんも、とても温かい人だね。僕、大好きだよ」
「うちの親、なかなかユニークだろ?お前んちのおふくろさんも面白いけどな」
「シゲキと多茂津にも会ったよ。楽しかった。美夏ちゃんは、とびきりの美人だしね」
「だろ?……って、手ぇ出してねえだろうな」
「まさか」
↓真治(身体はのぶお)は、のぶおの身体で煙草を吸ったことを謝ったり、のぶおの不細工な身体を気に入っていたり、性格まで超イケメンです(笑)
のぶお(身体は真治)は、周囲に溶け込むのぶお(中身は真治)の姿を見て、元の自分を見直します。
戻るときは意外とあっさりめでした。ストーカーの正体も意外で良かったです。
小山のぶおは不細工なのに。
不細工で、暗くて、いかにもオタクで、キモイはずなのに。
余裕がなくて気がつかなかったが、髪型も変わっている。人と視線が合うのが嫌で、つねに長くのばしていた前髪は無造作にかきあげられ、後ろに流されている。背筋もピッと伸びて、胸が堂々と反っている。
目は一重で細くて、鼻もだんごっぱなで、唇はぽってりと厚くて、ニキビもある。けれども、こうして夕陽を全身に浴び、スピーカーからの音楽に合わせて体を揺らしている小山のぶおは、本当に男前だった。
「でも、戻れなかったら……きみは、嫌じゃないの?」
僕が聞くと、彼は「何が?」と首をかしげた。
「その……僕ってさ、外見がさ、アレだろ」
「そうかあ?俺、別に嫌いじゃないけどな、お前の顔」
「そうなの?」
「ぶっちゃけ、イケメンじゃねーけどな。でも別に悪くないぜ?」
彼は、まんざらでもないように、片手で顎を撫でた。
パパは大変!
※BLです。
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『パパは大変!』 著者:剛しいら | ノンケの父親がゲイの息子と階段落ちで入れ替わる。 | プランタン出版 プラチナ文庫 『パパは大変!』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
バツイチサラリーマンの香園寺(34歳)は、高校一年生の息子・睦実と二人暮らし。
会社ではハーフの副社長に迫られて困る毎日を送っていたある日、会社から帰宅すると睦実が学校の工藤先輩と行為の真っ最中。
二人の仲を心配した香園寺は睦実と言い争いになって階段を転げ落ち、入れ替わってしまう。
↓二人とも自分が死んで幽体離脱したと思っているのが良いですねw
「まさか……死ぬなんて。睦実はまだ十六なのに、これから一人で生きていかないといけないのか。そんなの可哀想だ」
私は自分の遺体を見ながら、思わず涙を流していた。
↓頬を叩くあたりも入れ替わり的においしいです。
睦実の身体は直前まで工藤先輩に挿入されていたので、香園寺(身体は睦実)にはお尻の痛みがあるようです。
お返しに私は、自分の顔をぱしっと平手で叩いた。
「いてぇだろがっ。ひっどーい。十六年間、一度もパパには叩かれたことなかったのに」
「いや、叩かれてるのは私だ。叩いてるのも私だけど」
↓年齢差のある入れ替わりネタが良いです。朝立ちネタもありました。
すぐには元に戻れず、二人はお互いの生活を交換することに。
香園寺(身体は睦実)は、睦実(身体は香園寺)に頼まれて、しぶしぶ工藤先輩と仲良くさせられます(笑)
二人で睦実が用意したパーティセットを食べた。これまでは苦手だった唐揚げとかフライドポテトがおいしく感じられるのが不思議だ。
「パパ、目が悪すぎ。眼鏡しないと何も見えないじゃん」
睦実は眼鏡をかけたり外したりしながら、文句を言っていた。
(中略)
なんか自分相手に話してるのもおかしな感じだ。しかも声は私の声なのに、話し方は睦実だ。睦実もきっと同じような違和感に苦しんでいるに違いない。
(中略)
睦実はケーキを半分も食べられなくて、困惑した様子をしている。
会社を休んだ睦実(身体は香園寺)の元には、イケメン副社長がお見舞いに。
↓ゲイの睦実(身体は香園寺)はその場の雰囲気に流されて、父親の身体で副社長とイチャイチャし始めます。
睦実の方が、香円寺よりも股間は大きいらしいw
「失礼だったかな…その、もう、限界だ。許してくれ」
眼鏡が外されて、そのままキスされてしまった。
親父、ごめんな。勝手に体使ってますから。
(中略)
あれ、親父の体、昂奮してるみたいだけど。心臓もどきどきしてるし、かっと全身が熱くなってるのが分かる。
俺が昂奮してるのかな。
それともこれは親父の反応なの。
どっちがどっちか、もう訳が分からない。
入れ替わり生活に耐えられなくなった睦実(身体は香園寺)は、親子が似ていることを利用して、変装して工藤先輩に接触。
↓工藤先輩は信じてくれず、キスを気持ち悪がるのがかわいそうで好きです。
「そんなに息子が心配なのかよ!嘘つくんなら、もう少し普通のにしたら。そりゃ暗かったし、話し方が似てたからさ、騙された俺も悪かったけど」
一成はごしごしと唇を拭い、うぇーっと気持ち悪そうな声を出して、地面に唾を吐いていた。
「ひでぇ、なんで睦実の親父とキスしないといけないんだよ。うわーっ、もう最低」
「中身がおれでも、外側が親父だと駄目?」
「ありえねぇって、そんなの」
↓結局、工藤先輩は香園寺(身体は睦実)とも話して入れ替わりを信じてくれます。
睦実はまたもや父親の身体を勝手に使い、工藤先輩にフ○ラ…ごっくんまでしてます(笑)
「睦実…もしこのままでも、俺、いいよ。おまえと付き合う」
「えっ?」
聞き間違えたかと思った。だってそんなのありえないし。
三十五歳の俺と、マジで付き合うっての。
親父、ごめんね。勝手に口、使うから。
あんなものを私の口でしゃぶったのかって、あとで気絶しないでね。
「父親」を好きな副社長がイチャつく睦実(身体は香園寺)と工藤先輩を見て怒るシーンが好きですね。
↓副社長は香園寺(身体は睦実)に対しても敵視していておいしいです。
ちなみに、香園寺自身は副社長のことが好きになっていて、相思相愛です。
「安心していい。私は君のお父さんと違って、年下の尻の青いガキになんか、興味はないんでね」
副社長は私を振り向くことはせずに、さっさと歩き始めてしまう。
色々あって、工藤先輩の協力により親子は元に戻ります。
睦実は工藤先輩、香園寺は副社長と上手くいってハッピーエンドでした。
↓オチで香園寺と飼い猫のクジラがぶつかって入れ替わります。
新しいパパの膝から飛び降りた親父、いや、クジラは、床を這って俺に近づいてくると、俺の足下に顔をすりつけた。
素敵な入れ替わり
※BLです。
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『素敵な入れ替わり』 著者:小林典雅 絵:木下けい子 | 父親が息子と入れ替わる。 | 新書館 ディアプラス文庫 『素敵な入れ替わり』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
妻に先立たれた島影広海(38歳)は、義母と総菜屋を営みながら高校生の息子・緑野を育てていた。
広海は父親のいない緑野の友達・倫己も我が子同然にかわいがっていたのだが、最近倫己の態度が冷たいことを気にしていた。
そんなある日、広海ははしかにかかって危篤になった緑野を助けたいと願ったら入れ替わってしまう。
↓入れ替わり前後の視点の変化が好きです。
目を覚ました緑野(身体は広海)が医師に「お父さん」扱いされるのも好きです。
はしかにかかっていた「緑野の身体」は、入れ替わりのせいか急速に治り、すぐに退院。
眩暈を起こしたのかと思いながら目を開いた瞬間、洋海は驚愕のあまり悲鳴をあげかけた。
緑野に覆いかぶさって抱いていたはずの自分の視点がなぜか仰向けで天井を見上げており、泣き顔で目を閉じた自分自身に抱きしめられていたのである。
↓空腹ネタがおいしいです。
すぐにはしかにかかることはできず、元に戻れないため、しばらく二人は生活を交換することに。
息子の緑野(身体は広海)の方が落ち着いている感じです。
それよりさ、お父さん今日なんにも食べてなくない?俺いま超おなかすいてるんだけど、と空腹を訴えられ、広海は息子ののんきさと状況適応能力の高さに唖然とする。
「…そりゃ、だっておまえのことが心配で食事どころじゃなかったから朝からなにも食べてないけど。…よくおまえ腹減ったなんてこの状況で言えるな。平成生まれってこうなのかな、もう。…あ、そこに倫くんからもらった差し入れがあるよ、シュークリーム」
広海(身体は緑野)は、元に戻ったときに緑野が困らないようにと勉強をする決意を固めますが難航…
嫌われていると思っていた倫己が、実は広海のことが好きで、広海のことをあだ名で呼んでいることが分かります(笑)
↓頑張って緑野の演技をする広海(身体は緑野)が最高です。
緑野らしく話さなくては、と緊張しながら答えつつ、広海は自分の姿のときと見上げる角度が違うことに驚いて、
「…あれ倫くん、また背伸びた?いつもよりおっきいよね?」
と思わず素で聞いてしまい、倫己は一瞬眉を寄せた。
「……別に伸びてねえと思うけど。会うの十日ぶりくらいだからそう見えたのかな。…ていうかさ、なんでおまえまでヒロリンみたいに小学生のときの呼び方してんの?」
広海(身体は緑野)が心身共に人生初の痴漢に遭ってしまうシーンや、「緑野」の得意なダンスを強要されて困るシーン、バスケ部主将に告白されるシーンもあります。
広海(身体は緑野)はガードが緩い雰囲気を出しているようです。
倫己は、様子がおかしい「緑野」を見て別人だと見抜き、入れ替わりがバレます。
緑野本人にしかわからない質問をされるのがかわいそうで好きです。
またはしかにかかるには最低でも10年はかかるらしく、二人は絶望…
緑野(身体は広海)は入れ替わったまま人生を送ることを考え始め、父親の身体で受験をすると言います。
倫己が広海(身体は緑野)に告白するシーンが見た目がシュールで最高です。
緑野自身は倫己には興味がなく、倫己の広海への思いを応援している様子。
色々あって、今度は広海ボディの緑野がはしかにかかり、元に戻ったのでした。
広海と倫己はハッピーエンド、緑野も医師と良い感じになります。
続きでは、緑野が幽体離脱をします。
民王
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『民王』 著者:池井戸潤 | 総理大臣と大学生の息子が同時にショックを受けて入れ替わる。 | ●ポプラ社 『民王』 ●文春文庫 『民王』 ●角川文庫 『民王』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
首相に任命されたばかりの武藤泰山とその大学生の息子・翔は、ある日突然同時刻にショックを受けて入れ替わってしまう。
何故入れ替わったのかもわからないため、二人はお互いの役割を交換して生活することになった。
↓泰山は国会答弁中、翔は喧嘩のトラブル中に入れ替わります。
その蔵本がなぜか、俺の前にいる。
いったい俺は……。
自分を見下ろしてみる。着てきたはずの細身のパンツも、派手な開襟シャツも、そしてサントーニのスニーカーもなかった。代わりに身にまとっているのは、ピカピカに磨き上げられた革靴とペールトーンの上等なスーツじゃないか。
なんだこの趣味。ありえねえ。
(中略)
「なんだ」
口を開いてみた。出てきたのはしわがれた太い声だ。聞き覚えがある。そう、翔の父親、武藤泰山その人のものだ。
↓入れ替わった二人の視点が両方描写されるため、対比がおいしいです。
思わず、薄いはずの頭に手をやった泰山は、指先に伝わるふさふさした髪の感触に驚き、やおら立ち上がった。
自分を見下ろしてみる。
身に纏っているはずのゼニアのオーダースーツではなく、代わりに着ているのは細身のパンツと派手な開襟シャツだ。
泰山の妻・綾は入れ替わりを信じてくれません。
翔(身体は泰山)が、勝手に綾に一億円をあげると約束してしまうのがヤバいです(笑)
↓翔(身体は泰山)が老いた身体を確かめるシーンが悲惨ですw
裸になって、脱衣所の鏡の前にゆっくりと立つ。
「マジかよ」
そこには、自分のものとは似ても似つかぬ体が映っていた。いや、もしかしたら四十年も経つと、翔の体もこんなふうになるのかも知れない。
筋肉の衰えた胸、皺のよった首、醜くでっぱった腹、その下に隠れるように力なく垂れ下がるペニス――。それから、改めて鏡の中に映った顔を凝視した翔は、愕然として立ち尽くした。
↓二人の対面シーンもおいしいです。
「俺……?マジ?」
そこに立っているのは紛れもない翔自身なのであった。すると――
「誰だ、お前は」
鋭い誰何が飛んだ。翔は体を硬くしてドア口に立った自分を凝視する。
まさか――。
声は違う。だが、このなんとも偉そうな口調にはたしかに聞き覚えがあった。
「もしかして、オヤジ?」
相手はぎょっとした顔で、翔を見た。
「――翔……?翔、なのか?」
「そうだよ。オヤジなのか?」
こたえる代わり、相手は真っ直ぐに歩いてくると翔を思いきり平手で張り飛ばした。
人類の歴史の中で、自分自身にぶん殴られたことがあるのは、翔ひとりに違いない。
↓内閣官房長官の狩屋孝司と秘書の貝原茂平には入れ替わりを話し、協力してもらうことに。
「泰山にしかわからない話」が…w
「それは俺から話そう、カリヤン」
その時、泰山が割って入り、狩屋はぽかんとした顔を向けた。「翔ちゃんが?」
「翔ちゃんじゃない、カリヤン」
泰山はいい、威厳を込めた目で――翔は自分の顔でもこんなふうに見えることがあるのかと初めて知った――狩屋を見据えた。
「俺が泰山だ」
「――は?」
吐き捨てた翔のことなど無視した泰山は、狩屋を振り返るとその手を取った。
「カリヤン、ここはお前だけが頼りだ。頼むぞ」
「泰さん!なんとか乗り切りましょう!」
翔は目を逸らした。キモイ。どうでもいいから、俺の体でそんなことしないでくれ。
戻る方法がわからないので、翔(身体は泰山)は総理大臣としての仕事、泰山(身体は翔)は大学通いと就活をすることになりました。
しかし、翔(身体は泰山)は簡単な漢字すら読めずに大失態を晒してバッシングに遭い、泰山(身体は翔)は面接で高圧的な態度を取り落とされてしまいました。
↓元の自分の失態をテレビで見る泰山(身体は翔)のシーンはかわいそうです…
泰山(身体は翔)が大学の授業で元の自分の悪口を言われて怒るシーンもかわいそうです。
「こうして見ると武藤泰山は、なかなかの男前だな、貝原。いつもこんなにカッコいいのかな」
「さあ。たぶん、そうじゃないでしょうか」
ばかばかしいと思ったか貝原の答えはなおざりだ。
カッコいい武藤泰山が、いま颯爽と答弁を読み始めた――はずであった。
(中略)
「――ミゾユーの危機にジカメンいたしており、景気は著しくその、テイマイしておるところでございます」
「ミ、ミゾユー?どんな原稿書いてるんだ、貝原」
「未曾有ですよ、未曾有!」
(中略)
「た、助けてくれ、貝原。俺はもう死にそうだ」泰山は、いまにも断末魔の叫びをあげそうであった。
入れ替わった原因は、歯医者で埋められたチップのようですが、犯人は不明…
泰山と翔と同時刻に、経済産業大臣の鶴田洋輔と息子の航、憲民党の蔵本志郎と娘の村野エリカも入れ替わっていました。
航も翔と同じくバカ息子で、記者会見で醜態を晒してしまいます。
冒頭のパーティー内のエリカは、エリカ本人のようでした。
↓洋輔(身体は航)と航(身体は洋輔)が登場するのは、主に第2章終盤~第3章序盤です。
「やっぱり、鶴さんなんだな」
泰山はいった。「俺だ、泰山だよ。武藤泰山だ」
「た、た、泰さん……?」
信じられないのも無理もない。「ほんとに、泰さんなのかい?」
「ああ、俺だ。俺もウチの息子と入れ替わっちまったんだ。あんたもだろう、鶴さん」
いま鶴田の唇がわなわなと震えたかと思うと、「泰さん!」とそういってしがみついてきた。
元来が政治家にしては線が細いというか、生真面目な男である。おいおいと泰山の肩で泣きだした鶴田を、道行く者たちが訝しげな眼差しで眺めていく。
それに構わず、盟友同士、抱き合った。
「おい、早く迎えに来てくれ。ゲイと間違えられそうだ」
↓基本的には女好きの泰山(身体は翔)は、女子大生がいるという理由で大学に行ったり、パーティーに参加したりします(笑)
名前がわからない際に、貝原が機転を利かせて聞き出すシーンがお気に入りです。
階段を下りかけた泰山は、足を止めると、「おい、貝原。この俺が還暦に見えるか?」そういってニヤリとした。
「いまの俺は二十代の若者なんだ。しかも俺の若い頃に似てなかなかの男前ときている。そしてこの扉の向こうには、女子大生たちがたくさん俺のことを待っているんだ。いくぞ!」
↓第4章では、蔵本(身体はエリカ)が登場。
すっかりエリカになりきっている蔵本が最高ですね。
女の武器を使っているのも高ポイントです。
「もう一度、お互いに自己紹介しないか。ぼくは君に興味がある」
オヤジがいえば鳥肌ものだが、同じセリフでも二十四歳の若い男の口から出るとやけに自然に聞こえるから不思議だった。
「いいよ。私もあなたに興味、あるし」
(中略)
「俺はこれからこの女を落とす。バカ息子と入れ替わったんだ、このぐらいご利益がないとな!いいか、女房には内緒だぞ」
泰山はエリカに近寄ると、両手をその腰に添え、囁いた。「ワインより、君のインナーの銘柄が知りたい。いますぐ」
「残念ね。下着は着けてないのよ」
「あ、鼻血が……」
(中略)
「オヤジ流の口説き文句だな、泰山」
そのひと言がエリカの口から洩れ、華奢な肩に手を伸ばしかけた泰山がはっと凍りついた。
「いまなんていった?」まじまじとエリカを眺める。
「オヤジだなっていったんだよ」
その口調はいままでのエリカのそれではなかった。
「だ、誰だ、お前は!」
エリカの目に、いままでとはまるで違う表情が浮かび上がっている。まるで泰山の慌てぶりをおもしろがっているかのようだ。
(中略)
「ま、まさかそのせこさは――」
泰山は両目を見開いて、改めてエリカの美しい顔をまじまじと見た。「く、蔵本!貴様か!」
エリカから不敵な嗤いが洩れた。
それはたしかに、見覚えのある嗤いだった。代表質問で、重箱の隅を楊枝でほじくるようなつまらん質問をいまにも発しようとする時、蔵本が浮かべる表情である。
エリカ(身体は蔵本)は、意識が高いこともあり、蔵本の演技はとても上手です。
↓蔵本(身体はエリカ)の胸を触ろうとする泰山(身体は翔)が最高w
「すると、いま国会で底意地の悪い質問をしているのは――」
驚いて泰山は聞いた。
「あっちがエリカだ」
「気の毒に」
泰山はいった。「根性の曲がったオヤジの醜悪な体と入れ替わるなんて。それがテロの尊い犠牲といわずして、なんだ。ただ、お前の方はいい思いをしてそうだがな。ちょっとおさわりしていいか」
胸に伸ばした泰山の手を、蔵本はぴしゃりと叩いた。「軽々しくさわるな。――おい、真鍋」
↓巨乳ネタも、泰山(身体は翔)がエリカボディを欲しがるのも、全部良いです。
「お前の息子が相当のバカだって話はエリカから聞いていたんでな。これはもしやと思ったわけだ。それに引き替え、俺の娘は優秀なんでな、お前のような心配はしなくて済む」
「そらよかったな。いっそ、このままずっとお前の代わりをやってもらったほうがいいんじゃないか。お前も娘のナイスバディを拝めてそのほうがうれしいだろ」
泰山は嫌みをいった。
「娘の体なんて見て喜ぶ親がいたら、そいつは変態だな。まあ、俺が娘をやっている限り、余計な虫がつかなくて済む程度のことさ」
蔵本はいった。「それより、胸が重たくてな。肩が凝ってかなわんよ」
そういって蔵本が肩を回してみせるとカクテルドレスの胸が揺れ、泰山の視線を釘付けにした。
「く、蔵本、お前の脳波と俺の脳波を交換するっていうのはどうだ」
「お前は猿とでも交換してろ」
後半では、翔(身体は泰山)が狩屋をバッシングするマスコミを一蹴したり、泰山(身体は翔)が翔の考えを知って見直したり、おいしいです。
↓エリカ(身体は蔵本)は、父親の身体でセ○クス未遂したらしく、ヤバいです。興奮しました。
今度は、「はい」、という太く嗄れた声が出た。
「エリカか?」
翔は聞いた。
「なんだ、武藤君?」
声は同じなのに、言葉の調子はいきなり軽くなるのであった。
「なんだじゃねえよ。どうだ、調子は」
「最悪よ」
エリカはこたえた。「この前なんか、いいとこまで行ったのに肝心な時にダメになっちゃって。ふにゃちんなんだ」
「お前いったいなにやってんだ!そういうキャラか」
「だって。どうせなら楽しみたいじゃない」エリカは悔しそうにいった。
「そんなことしてる場合か!」
↓泰山(身体は翔)と蔵本(身体はエリカ)の絡みは何度かあり、おいしいです。
「やっ、蔵本!」
思わず振り返った泰山はいった。「お前まで来たのか」
「まあいいじゃないか、この際」
にやにやしながら下りてきた蔵本は、泰山の腕に腕を絡ませた。中味は蔵本だが、外見はセクシーなイブニングドレスだ。
「バカ、よせ。気持ち悪い」
そういいつつ、まんざらでもなさそうな泰山は、店のドアを押した。
色々あって、全員元に戻ります。
泰山は翔の身体で歌っている途中で入れ替わり、元に戻った泰山の身体でも歌ってしまうところが良かったです。
ナルシス同盟
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『ナルシス同盟』 著者:日向唯稀 | 正反対の男子高生同士がエレベーター事故で入れ替わる。 | プランタン出版 ラピス文庫 『ナルシス同盟』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
お調子者の飛鷹龍平と真面目な生徒会長の瀬戸内仁は、同じ学校だったが接点が無かった。
ある日、二人は自宅マンションのエレベーターの落下事故に巻き込まれて入れ替わってしまった。
入れ替わり直後に、喧嘩をする二人がおいしいです。
飛鷹は、自分には全く覚えのない”華奢な指先”を眺めながら、両手を揃えてグー・チョキ・パーを何度か繰り返す。
「まぁ…奇跡と言えば嘘じゃないだろうけど、こんな奇跡なら手足の一本二本折れてくれた方が全然いい」
瀬戸内も同様に、なぜ自分の意志でこんな”骨太くてゴッツイ指”がワキワキと動くのだろうと考えると、『これは夢なのかもしれない』と考え始めていた。
飛鷹(身体は瀬戸内)が美人ナースと入れ替わりたかったと話すところも好きですね。
その美人ナースは腐女子で、イケメンの二人が取っ組み合いをするシーンに喜ぶのですが(笑)
瀬戸内(身体は飛鷹)の方は、大真面目に大統領などと入れ替わって世の中を良くしたかったと言います。
瀬戸内ボディは卵アレルギーで、知らずに飛鷹(身体は瀬戸内)が食べてしまうシーンが悲惨でした。
↓「瀬戸内」として怒られる飛鷹(身体は瀬戸内)がかわいそうです。
「瀬戸内くん。君自分が卵白アレルギーだってことをわかってて、なんでまた一番強力な生卵なんか食べちゃったの!?ジンマシンですんだからまだよかったけど、場合によったらショック症状起こすって専門の担当医に聞いたことないのかい?」
だが、医者に問い質され今度は飛鷹が追い詰められた。
「…………いや…あの」
「もう高校生なんだからね」
「事故のショックで、ついうっかり」
「そう言われると何も責められないけど……。でも自分の体なんだから、ちゃんと管理しなきゃ駄目だよ」
だからこれは”自分の体”ではないのだが。
「………はーい」
↓同性同士の入れ替わりですが、異常にトイレを意識します(笑)
結局、割り箸を使ったようですw
「あのな…簡単に言うなよ。僕はお前のモノなんか見たくもないし、持ちたくない!」
こういう時に男の肉体は難儀である。女と違ってパンツを下ろせばことがすむ……というモノばかりではない。飛鷹も『なんだ、そういうことか』とようやく察した。
「んじゃ一緒に行って俺が自分で持つか!?」
「自分じゃなくて、それは”僕の手”じゃないか!だから僕が”どうしよう”って言ってるのが、わからないのかお前には!!」
(中略)
「考える前に目つぶってしてこいよ。手は俺の手なんだから支障ねぇだろうが」
「手はお前のものでも感触は僕自身が味わうんだよ。絶対にイ・ヤ・ダ!」
(中略)
瀬戸内は食事のドタバタで下げ忘れていた割り箸を握りしめると、追い詰められた体をヨロヨロとさせながらトイレに向かった。
「…………割り箸!?」
まさかそれでつまむつもりじゃねぇだろうな!と飛鷹は血相を変えて追いかける。
「おい!いくらなんでもそりゃないだろうに!テメェ、俺の大事な息子様をなんだと思ってるんだよ!」
↓瀬戸内(身体は飛鷹)もやり返し、トイレで飛鷹の股間を観察です。
瀬戸内は足取りも軽やかに、手を洗いながらウキウキとしている。
『なーんだ。体が大きいからって、こっちまで特別に大きいわけでもないんじゃないか。飛鷹がコレなら、僕がアノ程度でも気にする必要ないじゃないか』
クスクスクス…クスクスクス…。
(中略)
立ち並んだ時に、視線を下げることはあっても上げたことなどない飛鷹には、それだけで自分が小物になったような錯覚。
加えて瀬戸内の眩しい笑顔に、”ナニに笑われている”のか、なんとなくだが想像できるだけに、飛鷹はどんどん追い詰められていった。
↓飛鷹(身体は瀬戸内)の方もさらにやり返し、瀬戸内の股間をじっくり観察。
同性同士の肉体の違いの描写が好きですね。
『へへんだ。まともに女と一発もやったことがないような優等生の坊ちゃんに、俺様のナニをコケにさせたままでおくもんか!』
飛鷹は自分のモノもあまり気にする方ではないらしく、ファスナーを下ろすなり、きっちりとしまい込まれていた瀬戸内のモノを引っ張り出した。
(中略)
何がどう違うのか、飛鷹の国語能力では思い表せない。
だが、それなりに使用し逞しく育った自分の持ち物とはひと味違う。
これを、記憶の彼方に飛ばしてしまった”青さ”と言うのか、”純潔さ”と言うのかは定かではないが、何か”初々しい”モノを見た気がしたのだ。
『ピンク……って言うより、皮を剥いた桃の実色って…感じ!?』
またエレベーター事故に遭うわけにもいかず、二人はお互いのフリをして過ごすことになりました。
二人とも家庭環境も正反対で、ギャップを感じる描写が良かったです。
瀬戸内が眼鏡を外した素顔は、女性と間違えるほど美人なようです。
↓興奮した飛鷹(身体は瀬戸内)は、オ○ニーを始めますが、瀬戸内ボディは刺激に敏感なようで…
むっくりと頭をもたげ始めた桃の実色の瀬戸内くんを握り締めると、飛鷹は自分でいつもやっているような調子でギュギュと扱き始めた。
「痛っ!なんだよ…やわいなぁ。これじゃ駄目だってか!?」
(中略)
「………っ!」
微かに撫でるだけで、ビクンと背筋に震えが走った。
やはり優しく扱われることが”好み”のようだ。
『……こんなんで…こんなに感じていいのか瀬戸内!?」
↓飛鷹(身体は瀬戸内)が一人芝居で瀬戸内に恥ずかしいことを言わせていて最高でした。
事後の現場を瀬戸内ママに見られ、男の子の性処理事情に理解を示されたのも良かったです。
『イキたいんだろう?今すぐにでも俺にイカされたいんだろう?だったら…イカせて下さいって…言ってみな』
残虐な征服欲に支配される。こんな性癖を示す自分には覚えがない。
イ・カ・セ・テ……ク・ダ・サ・イ――――――――。
流石に声に出すことはためらわれたが、その言葉をこの唇で語らせただけで、飛鷹は心臓が破れそうなほどの法悦を得た。
↓元に戻る条件がエレベーター事故と厳しめのため、二人は元に戻れないことを考えて喧嘩に。
「わかるよ!そんなの考えるまもなく、無茶に決まってるだろう!できっこない!たとえ飛鷹が僕になれても、僕は飛鷹龍平になんかなれないよ!」
飛鷹を知れば知るほど、瀬戸内には体型以上に気持ちが萎縮されることが増えてくる。
多少頭がいいと言われ、成績がいいぐらい”へ”でもないことなのだと言われているようで……。
「だったらならなきゃいいだろう!顔の好みは別にしても、デカくて頑丈なボディが欲しがったのはお前の方だろが!少なくとも俺の体は他人に見劣りするようなやわなモンじゃねぇんだから、その体でコンプレックスのない、飛鷹龍平って名前の”新たな瀬戸内くん”になって、今後の人生うまくやってけよ!人格がガラっと変ったところで、世間には事故のショックでまかり通るだろう」
「まかり通るわけないだろう!僕たちはたった独りずつで生きてるわけじゃないんだよ!僕らを育てた家族はどうする!?友人をどうする!?学校は、今後の進路は!?未来は!?」
↓頭のいい瀬戸内(身体は飛鷹)ですが、飛鷹の脳では頭が悪くなってしまうようで戸惑います。
瀬戸内(身体は飛鷹)の方も、体力の無い飛鷹ボディで体育は散々。
『これは…どういう現象なんだろう!?問題は理解できてる筈なのに…数式もなんとなくは浮かんでくるのに……。どうしてか解き終えると”合っているとは思えない”答えばかり並んでいる気がする』
瀬戸内は、故意に点数操作をするにしても、今後のこともあるので四~五十点ぐらいは取っておこうと問題を解き始めた。
なのに、導かれる答えがどうしても正しいとは思えない。思えないので何度も結局やり直す。それでも”これだ!”と直感できる答えには辿り着かない。
式や答えを確かめようにもテストなので教科書を開くわけにもいかない。
『これって…やっぱり入れ替わってることが原因なんだろうか!?意識としては完全に入れ替わっている気がするのに…肝心な知力や強要は肉体に、あっちの脳の中に置き去りにしてきてるってことなのか!?』
記憶はあるのに。今の自分の意識が持ち合わせている記憶が、”総て”ではなかったということなのだろうか!?
発想も思想も物事への理解も確かに自分のものなのに、そこから関連して引き出され、必要とされる”データそのもの”はゴッソリとなくなっているような感じだった。
後は、飛鷹(身体は瀬戸内)が瀬戸内の親友・三河に襲われかけたり、飛鷹(身体は瀬戸内)と瀬戸内(身体は飛鷹)が両想いなのにすれ違ったり…
瀬戸内(身体は飛鷹)が鏡に映る飛鷹にキスするところが最高でした。
↓瀬戸内(身体は飛鷹)は、オ○ニーをするも飛鷹の身体でイクことができず、飛鷹(身体は瀬戸内)に処理を頼みます。
「え!?聞こえねぇよ!今更なんだからはっきり言え!」
「僕じゃ…SEXの経験のない僕じゃ、お前の遊び慣れた不良な体はどうも扱いきれないんだよ!だから、今ここで、自分で自分の体の処理をしてくれ!」
(中略)
『本当か、おい!?この美しく楚々とした手で…俺のを握って擦って撫で回してもいいってか!?』
考えただけでも、飛鷹の方が妖しい気分になってくる。
「どうせ…その体も手も、もう僕のものじゃないし」
↓入れ替わり状態での告白シーンがなかなか良かったです。
「だって…そうでなければ…僕はこの肉体と精神の関係に対して…バランスが保てないんだ。一方的に飛鷹を好きだって思ったら……僕は飛鷹を閉じ込めてる自分の肉体さえ妬ましくなる。お前には…こういうジレンマはないのか!?もう一人の自分に…大事なものを束縛されているような…独り占めされているような…そんな変なジレンマは」
(中略)
「俺にはねぇな!そんな嫉妬」
「え?だって……」
「俺はお前を好きだと言った。お前も俺を好きだと言った。俺はお前の体だけじゃなくて、心もきっちり手に入れることができた。しかも…その心は、どんなに揺れ動こうが気が変わろうが…まず”浮気”なんてできないような…飛鷹龍平って金庫の中に、独占してんだぜ」
↓そして、飛鷹(身体は瀬戸内)が攻め、瀬戸内(身体は飛鷹)が受けの形での入れ替わりセ○クス。
入れた瞬間に元に戻り、飛鷹本人が自業自得でア○ルを負傷w
痛がる飛鷹に、瀬戸内は元に戻って良かったと安堵します(笑)
「頼むっ!俺の処女をお前に贈呈から、お前の童貞俺にくれ!」
「――――――――は!?」
飛鷹は、”こんなに早く元に戻るなら、間違ったって自分で自分なんかヤラなかったのにっっっ!”と、後悔の嵐。
だが、自分でヤッたわけでもないのに、”この結果”になった瀬戸内にしてみれば、泣くにも泣けなかった。
ヤッてないのに脱・童貞。
ヤラれた筈なのに処女のまま。
(中略)
洗ってやるには抵抗があるが、薬ぐらいは塗ってやろう。
半月間とは言え、自分の体だったことだし。
↓元に戻ったのに慣れない描写も良かったです。
「なんか…まだ鏡にでもしてるような気がしないか!?」
「んーっ…やっぱあれか。半月間の記憶を忘れきるまでは、この妙~な気分は抜けきらねぇのかもな」
飛鷹と瀬戸内がカップルになりハッピーエンド。
最後は、飛鷹が攻めで瀬戸内が受けのセ○クスをしようとしたらまた入れ替わり、飛鷹(身体は瀬戸内)がア○ルを負傷して痛がるという可哀想な終わり方でしたw
今回は、小説の男同士入れ替わり回を6作品紹介しました。
読んでいただいてありがとうございました!