男女入れ替わり

小説の男女集団入れ替わり②【6作品】

男女入れ替わり2

今回は、小説の男女集団入れ替わりを6作品紹介していきます。

 

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事故の結末

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『事故の結末』
著者:岬 兄悟
瞬間転移装置で乗客がバラバラに入れ替わる。 角川書店
角川文庫
『リモコン・パパ』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

瞬間転移装置が実現した世界では、人々は瞬間転移便を使って移動をしていた。

男性とその妻・レミは、新婚旅行の帰りにハワイから日本へ転移したところ、事故を起こしてその便に乗っていた人々がバラバラに入れ替わってしまったのだ。

 

↓冒頭の入れ替わった夫婦が途方に暮れるシーンが好きですね。

レミの身体は妊娠二ヶ月で、元に戻れなければ男性が産むことになるようです。

「子供はどうするの?わたしの、いえ、あなたのおなかの中には二か月になる赤ちゃんがいるのよ。――生まれてくる子供に、なんて説明したらいいの?」
「そうか、そうだったなあ……」
おれは溜息をつき、自分の腹をなでながら、あの事故のことを思いだした。

 

乗客40人中、20人が入れ替わってしまったようです。

↓入れ替わり直後の阿鼻叫喚がカオスで良いです。

「うわっ!なんだこりゃ?」
「きゃああっ。あたしの体はどうなったの!?」
「こ、これは誰だ!?」
「あそこにおれがいる!?」
これは皆いったいどうしたのだろう?と首をひねり、左横にいるはずの妻を見た。
すぐ左に顔を向け、おれは眼を丸くした。
そこには両眼を見開いて口を開けてこちらを見ているおれがいた。
「な、なんでおれがそこに……」
おれは声をだして思わず自分の口を両手で押さえた。やけに甲高い声が出てしまったのだ。――そして口を押さえ、初めて自分の体の異常に気づいた。
おれは肩よりも髪が長く、真白のワンピースを着ていた。胸はふくらみ、下は……。
「わたしがいるわ!」
と、眼前に立っているスーツ姿のおれが、野太い声でこちらを見て言った。
(中略)
がっしりした体つきのおれが、ガバと抱きついてきた。おれはよろけた。
「あなた、どうしましょう……」
「ううむ……」
レミは涙を流しながら、少し髭が伸びた頬をじょりじょりとおれの頬に押しつけてきたのだった。

 

↓入れ替わった乗客たちのパニックは続きます。

他の人たちは、他人同士で入れ替わったケースが多いようです。老若男女がバラバラに入れ替わっていて、まさにカオス。

日本人留学生♂老婆少女筋肉隆々の男性太った男性痩せた男性の入れ替わりがありました。

「私は誰だ!?なんでこんなデブでハゲ頭の男に!?」
痩せた男が、アロハシャツ姿の太った男につかみかかってゆく。つかみかかられた太った男はまわりをキョロキョロ見回す。
「私の体はどこだ!?あっ、いたぞっ」
太った男は痩せた男をはじきとばし、体の大きなプロレスラーのような男に近づいて行った。
「ボディビルできたえた私の体を返せ!」
「きゃああ、なにするの。チカン!触らないでっ」
プロレスラーのような男は身をくねらせ、少女みたいにおびえた。少女の人格が入ってしまったのだろう。
「私の体に触れてなにが悪い!」
部屋の隅では十四、五歳に見える少女が自分の体に触れ、感動していた。
「わたしゃ若返ったのじゃ!こんなに若くてピチピチした孫のような体に若返ったのじゃ!また人生をやりなおせるわい。けけけけ」
少し離れた場所に、腰の曲がった老婆が、歯のない口を動かして呟いている。
「ぼ、ぼくはハワイへ留学に行って帰ってきたばかりなのに、なんでこんなウラシマ太郎みたいな老人にならなくてはならないんだ?」

 

何度も転移装置を使うことで、入れ替わった人々は元に戻っていきますが、何故か夫婦だけは元に戻らないまま…

↓最後は男性は元に戻ったものの、妻のレミ胎児(性別不明)と入れ替わってしまうというホラーなオチ。

胎児(身体はレミ)がレミ(身体は胎児)を産んだようです。

「やった!もとに戻ったぞ!おれの体だっ!」
おれはとびあがって喜んだ。レミを見た。
レミは装置の床の上で、胎児のように体を丸めてころがっていた。

 

パパママムスメの10日間

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『パパママムスメの10日間』
著者:五十嵐貴久
両親と娘が落雷で入れ替わる。 ●朝日新聞社
『パパママムスメの10日間』
●幻冬舎
幻冬舎文庫
『パパママムスメの10日間』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

入れ替わり事件から2年が経ち、大学生となった小梅。

大学の入学式の帰りに、川原一家は落雷に遭って気を失ってしまう。

病院で目覚めると、小梅は恭一郎、恭一郎は理恵子、理恵子は小梅の身体になっていた。

 

『パパママムスメの10日間』では、ドラマの設定が多く含まれています。

原作小説では付き合う気配が全くなかった中嶋と西野がカップルになっていたり、ドラマの主題歌が着メロに使われていたり、入れ替わり桃が登場したりなどです。

また、今回も入れ替わった三人の視点で交互にストーリーが進みます。

 

ということで、今回は父親母親の入れ替わりです。

入れ替わり桃を食べてから落雷に遭い、入れ替わります。

桃の木は火事で焼失してしまい、すぐに戻ることはできません。

 

↓入れ替わる前に、理恵子が「2年前の恭一郎と小梅はおかしかった」と述べる部分が興奮しましたね。

入れ替わってから、理恵子(身体は小梅)は「実は恭一郎と小梅は入れ替わり経験者だった」と聞かされて怒ります(笑)

どういう理由があってのことかわからないが、しばらく前から恭一郎はメールの使い方がうまくなっていた。前は単語の羅列だけで、暗号文を解読するつもりでなければ読めなかったが、最近はきちんとした文章になっている。

 

↓恭一郎(身体は理恵子)は、入れ替わったことにすぐに気がつくものの、理恵子も交えて入れ替わっているとは知らず、病院で「小梅の名前」と「恭一郎の名前」を答えて大変なことにw

間違いなく、二年前に起きたことが再現されている。そうであるならば、こう答えるしかない。
「……川原……小梅……十八歳。大学生」
田村という医者の顔色が変わった。意識混濁でしょうか、と看護師が囁いた。そうなのか。私は間違えていたのか。二年前のあの事件が、再び起こったわけではないのか。
「すいません、ちょっと混乱しておりまして……私は川原恭一郎、四十九歳です」
あっと言う間に病室の中が大混乱に陥った。

 

↓小梅(身体は恭一郎)は恭一郎の身体になるのは二回目で、入れ替わり慣れしている様子が最高です。

小梅(身体は恭一郎)の方も、小梅の身体の中身は恭一郎だと勘違いしていて、すれ違い会話が面白いですw

ああ、とため息が漏れた。目を開けば、現実が待っている。またパパの体になってしまっているのだろう。何となく体も重いし、変な匂いもする。加齢臭ってやつだ。つまり、二年前と同じことが起きてしまったというわけだ。

 

入れ替わりが二回目で落ち着いている小梅(身体は恭一郎)と恭一郎(身体は理恵子)に対し、理恵子(身体は小梅)はヒステリックに騒ぎます。

↓「小梅(中身は理恵子)」を「お騒がせな娘」として扱いながら、妻のフリをする恭一郎(身体は理恵子)が美味しいです。

今回も、口調は意識していれば矯正可能なようです。

私の姿をした小梅を見ると、同じことを考えているのが表情からわかった。ただ、どうすればいいのかはわからないようだ。ここは一家の主である私が動くしかないだろう。
「まあまあ、小梅ったら、変なことばかり言って」
本当にもう、いつまでも子供で、と取り囲んでいる医者たちに微笑みかけながら、私は理恵子に近づいた。
これは前回の時もそうだったが、自分自身が、今、理恵子の姿になっているということを意識していれば、口調や態度は自然と理恵子のものになった。精神、というよりも肉体的な記憶によるものなのだろう。

 

↓小梅(身体は恭一郎)と恭一郎(身体は理恵子)が夫婦のフリをするのも萌えますね。

「小梅」を悪く言う小梅(身体は恭一郎)が良いです。

「もう、ホントにねえ、小梅は冗談が好きなんですよ、ええ、ホントに」
「いや、まったくだ」私の姿をした小梅が援護に回ってくれた。「小梅はあれだぞ、変なお笑い番組とかばかり見てるから、そんな妙なギャグばかり言って。あまりよくない癖だと思うな、パパは」
(中略)
「いやいやいや、ゼンゼン病院の責任とかじゃないし」言いかけた小梅が、慌てたように言い直した。「皆さんのご迷惑になるようなことはしませんので、ご心配なく。ほら、小梅。ママと一緒に、とりあえずパパの病室に行こうね。そこが一番近いから」

 

↓理恵子(身体は小梅)はようやく入れ替わりを信じてくれ、3人はしばらく入れ替わり生活を送ります。

わたしは剥き出しになった自分の白く細い腕に触れてみた。それは決して中年女の肌ではなく、若々しい艶を持った女の子の腕だった。要するに、小梅の腕ということだ。
そして、わたしはもう一度思い出していた。わたしの顔、わたしの体をしていたあの女。あれは明らかにわたしだった。いや、わたしそのものと言うべきだろう。
決して変装とか特殊メイクなどではない。なのに、話している口調、語彙、話す時のそぶり、それはすべて夫の恭一郎のものだった。

 

「恭一郎」は小梅の活躍により大成功をしたにもかかわらず、相変わらず窓際社員だったため、小梅(身体は恭一郎)の方は大きな問題はありません。

会社では汚染野菜の問題が起こり、小梅(身体は恭一郎)や恭一郎(身体は理恵子)が解決に向かう展開です。

 

小梅(身体は恭一郎)は、すっかりトイレにも慣れている様子でした。

小梅(身体は恭一郎)がケンタ先輩に恭一郎として接触し、真剣な気持ちを聞くシーンが最高でした。

 

元々上昇志向のない恭一郎(身体は理恵子)は、専業主婦になれて喜びます。

↓しかし家事スキルが低いため、家じゅうの家電を壊したり、ママ友に張り合って高い食料を買ってきたりして怒られることに…w

そんなことを考えながら家に帰って、玄関のドアを開けたら、ママが――つまり、ママの姿をしたパパが――正座していたのでマジでビックリした。そしてそのパパに、あたしが――つまりあたしの姿をしたママがメチャメチャに怒っていた。
(中略)
そしてパパはその掃除においても、何をどうしたのかわからないけど、掃除機の吸い込み口かどこかを壊してしまったらしい。ママが怒るのも無理のないことだろう。ただ、あたしの顔をしたママが、ママの顔をしたパパを怒っている姿は結構笑えた。
(中略)
パパの姿をしたあたしがそう言うと、娘の姿をしたママがうつむいて押し黙った。外から見れば、娘に説教をしている父親ということになって、それはよくある光景だろう。でも、実際には母親が娘に叱られているのだ。これってシュールだなあって思った。

 

↓恭一郎(身体は理恵子)が妻の身体についてコメントするシーンがありました。

ふと我に返ると、私はブラジャーにジーンズというとんでもない格好をしていることに気づいた。四十歳を超えた妻の体について、私はあまりコメントしたくない。理恵子は年齢の割にスタイルがいい方だと思うが、それ以上の論評は避けておいた方がいいだろう。

 

「小梅」の方は、彼氏のケンタ先輩とのデートや、ファーストフード店でのバイトがあります。

理恵子(身体は小梅)は機転が利くタイプではないので、バイトは散々w

↓「小梅」が褒められて嬉しそうにするシーンが好きです。

小梅はバイト先の人たちからも、可愛がられているようだ。そして、この光田さんという彼女も、小梅に対して好意的なのは間違いなかった。
それはつまり、わたしたち両親の育て方が間違っていなかったということなのだろう。思わず涙ぐんでしまうほど嬉しかったが、そういうんじゃなくて、と光田さんが言った。

 

↓大学は入学式の直後なため、あまり怪しまれることなく、理恵子(身体は小梅)は新歓コンパで飲酒など女子大生ライフをエンジョイします。

ケンタ先輩以外の男の子に「今の小梅が好きになった」と告白されたり、クラブで古い曲に合わせてノリノリで踊ってしまったり、おいしいです。

「どうしたのよ、いつもは少しぐらい飲むくせに」
「いつもって?」
「いつもはいつもよ。高校の時とか、カラオケボックスでビール飲んだりしてたじゃん。量はそんなに飲めないのわかってるけど、ウーロン茶ってことはないでしょうに」
いつもは?小梅ときたら、いったい何をしているのやら。親の目を盗んで、高校生のくせにお酒を飲んだりしてたのか。

 

↓特に、理恵子(身体は小梅)がケンタ先輩を小梅の目が追ってしまうシーンが好きです。

彼はわたしの恋人ではない。小梅がつきあっている男の子だ。つまりわたしとは二十歳ほど年齢が離れているわけだから、子供も同然といっていい。
ただ、わたしの心というより、体が反応していた。ケンタ先輩というその男の子の姿を目で追っているうちに、ある意味でわたしは小梅になりきっていた。自分でも驚いたが、これは事実だった。

 

↓大学生の娘と40代の両親がお風呂や寝室で揉めるのが最高ですね(笑)

川原家の力関係は、娘>母親>父親のようですw

冷静に整理してみよう。今、小梅の心が入っている夫の体は、わたしが洗えばいい。わたしと夫は夫婦で、それなりに互いの体も見慣れている。そして精神的には母と娘なのだから、恥ずかしいということもないはずだ。
次に、わたしの心が入っている小梅の体については、単純にわたしが洗うべきだろう。母親が娘の体を洗うのに、それほど抵抗はないのではないか。
最後に、夫の心が入っているわたしの体だけど、夫に洗ってもらってもいいとわたしは考えていた。もっとも、別にしげしげと見てほしいほどの体ではないから、目隠しとまでは言わないけれど、目をつぶるぐらいのことはしてもらいたいと思ってはいたけれど。
ところが、小梅は自分の体について、わたしに洗ってもらうのはそれでいいが、目隠しをしてほしいと要求してきた。母と娘なんだからいいじゃないのと言うと、冗談じゃないわよ、と鼻息が荒くなった。

わたしたちは、それぞれ本来の自分の寝室で眠ることにしていた。小梅の姿をしたわたしは、普段から使っている夫と共用のベッドを使い、夫の姿をした小梅も自分の部屋で眠る。
そしてわたしの姿になっている夫は、玄関脇にある書斎に布団を敷いて寝ることになった。わたしは小梅と一緒でもいいのよ、と言ったのだが、小梅はそれに対しゼッタイ嫌だと言い張った。
小梅に言わせると、いくら中身が自分であるとはいえ、パパの姿形をした自分が、自分の姿をしたわたしと一緒のベッドで寝ることなど考えられない、ということになる。言わんとすることはわからないでもないし、夫の書斎に布団を敷くのは難しいことでもなんでもなかったから、最終的には小梅の主張通りになった。

 

↓入れ替わり的においしい描写が多くて良いです。

小梅はリビングでティーン向けのファッション雑誌を熱心に読んでいた。今さらながら、夫の姿をした娘がCanCamを読みふけっている姿は、どうにも不気味なものだった。
そして娘の姿をしたわたしが夕食を作っているというのも、これはこれでやはり奇妙な光景といえるだろう。外から見れば、不可解な家族に違いない。
(中略)
むしろそれより、顔を上げると向かい側にわたしそっくりの女が座っていることの方が気になった。この奇妙な感覚は、これからもしばらく続くのだと思って、気が重くなった。

 

↓小梅(身体は恭一郎)が恭一郎本人以上に「一家の長」として振る舞うシーンも多くて萌えます。

それからしばらく話し合ったのだけれど、結局お互い少しずつ妥協することになった。平日は毎日入っていたバイトのシフトを、月火水の三日にする、というのがわたしたち二人のぎりぎりのラインだった。
小梅はその手配を自分でした。つまり、川原恭一郎、小梅の父親という立場から店長に連絡を取り、学業に差支えがあると困るので、とりあえずしばらくの間は週三日ということにしていただきたい、と電話で言ったのだ。
聞いていて感心するほど、その芝居は見事なものだった。あれだけ威厳を込めて言われたのでは、店長も納得せざるを得なかっただろう。

 

そして、入れ替わりの原因が桃だとわかった三人は、山で桃探しをしている途中で崖から転落し、元に戻ります。

↓慣れない身体で過酷な山登りをするシーンが良かったです。

無事に元に戻ってハッピーエンドでした。

「ほら、順番に」小梅の姿をした理恵子が指揮を執っていた。「ゆっくり行くしかないの、こんな時は。焦ったらダメよ、滑るから。小梅、あんたが一番危ないんだからね」
「そりゃそうかもしれないけど、とりあえず今はパパの体だから、結構力とかは入るよ」
言われてみて気づいたが、今、私は理恵子の体の中にいる。いつもとは感覚が違うことを改めて肝に銘じた。
いつもの調子で歩いていると、歩幅も違うし、脚力も違う。どうしても思った通りには体が前に進まない。その点でも、私たち三人は四苦八苦していた。
「ゼンゼン、桃の木なんて見えないよ」
ゆっくりと降りながら辺りを見回していた小梅が言った。体力的な意味も含めて、一番余裕があるのは小梅だった。それに引きかえ私ときたら、辺りを見る余裕などなかった。
とにかく、降りるだけで精一杯だ。理恵子もいつの間にか案外歳をとったのだ、と自分の妻のことながら思った。

「ああ、疲れた」理恵子が水筒の水をひと口飲んだ。「小梅の体って、歩きにくいわね」
「それはお互い様だ。みんなそう思ってる」
そう言った私に、そうでもないよ、と小梅が肩を回しながら言った。
「案外、パパの体って動きやすいかも」
「どういう意味だ」
「いや、年齢のわりにはよく動くってこと」
何を言ってる。私だってまだ四十代だ。これぐらいの山登りなら楽にこなせる。

 

↓前作『パパとムスメの7日間』はこちら!

男女入れ替わり2
小説の男女入れ替わり②【10作品】今回は、小説の男女入れ替わりを10作品紹介していきます。 当サイトの情報につきまして、可能な限り正確な情報を掲載するよ...

ソウルトランサー

※この項目には物語に関するネタバレが含まれています。

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『ソウルトランサー』
著者:菱川さかく
主人公が美少女と入れ替わる。 徳間書店
徳間文庫
『ソウルトランサー』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

特別認定犯罪者対策機関に所属するレオは、迷宮街・レイパスタウンで美少女ハッカーのゴーストを追い詰めた。

しかしその時、街中に轟音が鳴り響き、気がついたらレオはゴーストと入れ替わってしまっていた。

刑務所にいる犯罪者たちも住人と入れ替わってしまったようで、レオは元に戻るためにゴーストの身体で迷宮の奥へと向かうことになった。

 

レオは中性的な顔立ちで、よく女の子に間違われてうんざりしているようです。

↓しかし、レオ(身体はゴースト)は入れ替わった直後に元の自分自身を女性だと勘違い(笑)

思っていたよりも元の自分が女っぽいところにショックを受けていて最高でした。

言い放って身体を捻じった俺は、相手の首筋に向けて回し蹴りを繰り出した。
盛大な破壊音を響かせて、眼前の少女がバラバラに弾ける。
いや、これはガラスだ。
(中略)
代わりによれよれのコートを着た黒髪の女が、煤けた赤絨毯に大の字で倒れていた。
「……ん、この女、ゴー……ストじゃねえな。……何者だ?」
(中略)
「……あれ?何で私がそこにいるのでしょう?」
「…………」

 

↓ゴースト(身体はレオ)は天然でおいしいです。

平手打ちして元の自分の身体の心配をするとは…w

「てめっ、いきなり何するんだ」
「あ。軽い平手打ちのつもりだったんですが、力が強いですね。大丈夫ですか?」
「……大丈夫っちゃあ、大丈夫だがよ」
「いえ。あなたじゃなくて私の身体は大丈夫でしょうか?」

「わ、できた!私一度も腕立て伏せできたことがないのです。わぁ、すごい!」

「ふにゃぁっ」
「情けねえ。俺の顔でそんな情けねえ声だすなっ。馬鹿たれがっ」

 

犯罪者のゴーストの身体になってしまったレオは、中身がゴーストとなってしまったレオと共に追われる立場に。

↓町中の人も何人か入れ替わっていて、まずは美少女となったレオ(身体はゴースト)にチンピラ(身体はサラリーマン)が声をかけてきます。

レオ(身体はゴースト)が女の子ボディを嫌がっているのも、女の子ボディで女の子扱いされ「俺は男だ」と言っているのもおいしいです。

このチンピラ(身体はサラリーマン)は、後でオールバックというイメチェンをして登場しますw

「おんやぁ。これはこれは。たまんねえな」
七三分けが、俺を見ながら突然そんな台詞を口にした。
ひ弱な見た目と、下卑た口調のギャップが大きすぎて一瞬目を疑う。だが、まぎれもなく今の言葉は目の前の青白い顔のサラリーマンから発されていた。
「なんだか良くわかんねえが、らっきぃ。いきなりこんな美人と遊べるなんてよぉ」
にやぁと嗤う七三分けの言葉で、瞬時に頭に血が上る。
「いいか、愚か者め。俺は男……」
じゃ、なかった。今は女だ。
「口の悪い女だな。だが、それがたまんねえ」

 

同僚のジャスティン兄妹(エメロとマツリ)に捕まりそうになったレオ(身体はゴースト)とゴースト(身体はレオ)は、その場から逃走して迷宮にあるゴーストの家へ。

↓慣れない身体で戦う描写が良かったです。

「くっ」
暗器は特対の体格や戦闘特性に合わせて作製されている。この身体では、まだ十分に使いこなすことができない。

 

↓レオ(身体はゴースト)とゴースト(身体はレオ)は、入れ替わった状態の方が見た目的にはしっくりくるようです(笑)

ちなみに、ゴーストの本名はソネット。

「なんだか突然びりびりして目が覚めました。あの、どうでもいいですけど、あんまり私の顔で口汚い言葉を吐かないで欲しいのですが。しかも、意外にその暴言が顔の雰囲気に合っていて、余計嫌です」
確かに、ゴーストの凍てつくような美貌にはきつめの言葉がしっくりくるかもしれない。だが、そんなことはどうでもいい。だったらお前も俺の顔で、そんな生っちょろい敬語なんて使うな。それが見た目の印象通りなのが更に忌々しい。

 

↓入れ替わり的においしい描写が多く、書き切れないのが残念です。

「レドさん。あんまり乙女の部屋をじろじろと見まわさないで下さい」
「頼むから俺の顔で乙女とか言うな。それよりテレビはあるか?」
(中略)
自分の顔に説教されるというのはなかなか貴重な体験だが、面倒臭いことに変わりはない。

 

↓レオ(身体はゴースト)がゴーストの貧乳をうっかり触ってしまうシーンもおいしいです。

怒ったゴースト(身体はレオ)は責任を取って欲しいと言い、レオ(身体はゴースト)は結婚することになってしまいましたw

「そ、その手です。一体、どこ触っているんですかっ」
「あぁ?」
言われて見ると、俺の右手は自らの左胸をむんずと掴んでいた。男の時とは異なる、わずかし、ふにり、とした感触が手の平に伝わっている。

「む、胸が無い……豊満な胸が無くなっています」
「大丈夫だ。それは最初から無い」

 

↓お風呂ネタや、元の自分に襲われそうになるネタもありました。

ゴースト(身体はレオ)の方があまり気にしていないのが最高です。

「いや、ちょっと待て。お前シャワー浴びるか?」
「はい」
「はい、じゃねえ。ちょ、ちょっと待ってくれ」
なんというか……自分の身体が見られるのは、少し嫌だ。
男ならまだしも、元のこいつは超のつく美少女だ。トイレならまだお互い下を見ないという協定が結べるかもしれないが、身体を洗うシャワーの場合そうはいかない。
(中略)
「一緒に入るんです。お互いを見ながら洗いっこすれば問題解決です。うふふふふ」
なるほど。確かにそうすれば両者とも元の身体を見るだけで済む。
「いや、待て。それって裸の男女が洗いあう図になるぞ」

「あれぇ……こう見ると、レドさんって本当に綺麗ですねぇ。うふふふぅ」
「お、おい、馬鹿たれっ。そりゃ、お前の身体だ……ちょっ、顔を近づけるなっ」
馬乗り体勢のまま、酒で頬が赤く染まった俺の顔が近づいてくる。しかも、両手は馬の上でがっちりと捕まえられており、身体が動かせない。じたばたと暴れても、女の細腕では鍛え上げた俺の身体は振りほどけそうにない。

 

入れ替わり現象は科学者であるサラの母親・アマンダが起こしたもののようで、レオ(身体はゴースト)たちはアマンダがいる迷宮の最下層へ行くことに。

サラは事故で長らく意識不明だったようですが、アマンダの入れ替わり実験のおかげで目覚めたようです。

 

囚人のイケメン詩人・フェムレスは、不細工な肉屋の親父と入れ替わって二人を襲います。

↓フェムレス(身体は肉屋の親父)が不細工な身体を嫌がっていておいしいです。

「ふふ。修理屋が絶世の美女だという噂があって、早速訊ねてみたんです。実際、なかなか可愛いお嬢さんでしたが……ふふふ。あなたは更にその上を行く美しさだ。その冷水に浸した刃物のように鋭利な美貌はまさに私の理想だ。はぁあ、あなたがどんな声で哭くのか是非聞きたい」
俺は男のダミ声に絶句した。
話し方の気持ち悪さに加え、口調が見た目に全くそぐわないのだ。

「ええ。彼女は私の詩のコレクションに入る価値があります。ふふふ。あの母親には感謝しなければなりません。全く趣味ではありませんが、あの女も解体しなければいけませんね。入れ替えを元に戻すような真似をされると困りますし……こんなに醜い男と入れ替わってしまった憎しみも込めてね」

 

↓レオ(身体はゴースト)が頑張って女言葉を使ってフェムレス(身体は肉屋の親父)を煽るシーンが好きです。

戦いのシーンではゴースト(身体はレオ)は足手まといで、元の自分の身体を失いたくないレオ(身体はゴースト)は苦戦します。

「あははははっ。何それっ?それがあなたの詩?語彙もリズムも情感も新しさも皆無ね。三歳の姪っ子の方がまだまともなこと言うわ。身体が入れ替わっても駄目な人間は駄目。あなた何度生まれ変わっても単なる駄作生産機ね。名前のフェムレスから才能レスに変えればぁ?」
(中略)
ゴーストの氷のような美貌で罵倒されれば、こうなるのは当然だ。しかも女言葉が地味に効く。心が折れなかっただけでも褒めてやりたい。

 

入れ替わった人達は、町で「魂交換者(ソウルトランサー)」と呼ばれているようです。

↓双子のオカマのグリグラも入れ替わっていて、面白いですw

「はっ。お前らはいいよな。実質何も変わらねえじゃねえか」
カウンターに片肘をついて、同じ顔のおネエに毒づいたところ、
「「全然良くないわよっ」」
二人の声が重なった。
「私、こんなにヒゲ濃くないわよ。全く失礼しちゃうわっ」
「まっ。それはこっちの台詞よ。私だってこんなにエラ張ってないわよ」

 

レオ(身体はゴースト)とゴースト(身体はレオ)は、一緒に過ごすうちにお互いに理解を深めていきます。

登場人物は皆悲しい過去がある感じでした。

 

↓レオ(身体はゴースト)は相変わらず女の子として酷い扱いをされます。

セクハラされるのはかわいそうで興奮しますね。

ペロリと舌なめずりをしながら、つかつかとやって来て、俺の腰に手を回す。
――うげ、気持ち悪っ。
背中に虫が這う感覚があるも、それだけならまだ良かった。
「うひひひ…………ん?こりゃあ、何だ?」
ニヤケ男の手がふいに止まり、腰の辺りをごそごそとまさぐられる。

 

そして、レオの元教官で囚人のパイソンも、娼婦のパープルダイアモンド(レミア)と入れ替わって脱獄をしていたと判明。

レミア(身体はパイソン)はマツリのセリフにのみ登場で、愛するパイソン(身体はレミア)を逃がすためにしばらく黙っていたようです。

 

↓静かな性格の悪役が娼婦の身体に入っているのは大変エッチだと思います。

パイソン(身体はレミア)はレミアの身体で次々と人を殺します。

パイソンが俺に対して口を開いた。声こそ女のものになっているが、穏やかでいて、どこか深い闇を帯びているような口調は以前のままだ。

「指のこれが気になっているようだな」
パイソンは自身の指輪に目をやった。
「玉座の中に小さな空間がある。そこに置いたままだったが、残っていたのは幸運だったな。以前は小指につけていたんだが、今の身体では人差し指にぴったりだ」

 

↓入れ替わった片方が死ぬシーンは嘘だとわかっていてもドキドキしますね。

その答えはわからなかった。俺は死ななかったからだ。
代わりに俺の身体が死んだようだ。
ウシガエルのように呻いたソネットが、俺の真下でうつ伏せにこと切れている。

 

↓レオ(身体はゴースト)とパイソン(身体はレミア)の見た目女性同士の戦いがとても熱かったです。

パイソン(身体はレミア)がレミアのことを何とも思っておらず、レミアボディを物扱いするのが堪りません。

元の自分の身体を知らない間にボロボロにされるレミア本人が不憫です。

「どの道……動けんな。落下で足が折れたようだ。なんとも脆い体だ」
横たわる元最強の特対に目を移すと、確かにドレスの裾から覗く左右の足首が妙な方向に曲がっている。

 

ここで、エメロマツリも入れ替わっていたとわかります。

↓エメロとマツリは、入れ替わった直後のレオ(身体はゴースト)が初めて会った時から既に入れ替わっていて、お互いのフリをしていたようです。

エメロ(身体はマツリ)がたどたどしい演技をしているのが伏線でした。他にも口調がおかしい箇所がいくつかあります。

「あれ?背中にいるの先輩じゃないですか、……いや、じゃないっスか!?先輩ひどいです、いや、ひどいっス!私というものがありながらそんな美人と密着するなんてっ!」
エメロの後ろに立っていた女が、なぜかどもりながら頬を膨らませて駆け寄ってきた。

 

エメロ(身体はマツリ)とマツリ(身体はエメロ)は、入れ替わったことを組織に話しておらず、ほぼ完璧に成りすましていたようです。萌えますね。

↓エメロ(身体はマツリ)がマツリの身体でマツリの悪口を言っていてヤバいですw

「別にお前だけを騙していた訳じゃない。このことは組織にも言っていない。この俺が出来損ないの妹と入れ替わったなどと知れたら良い笑い物だからな。仕事にも支障が出る。長期間成り済ますのは難しいが、短期であれば可能だ。その間に全力で原因を突き止めるつもりだった」

 

そして入れ替わり現象の犯人のアマンダは、睡眠薬を飲んで爆弾を抱えており、大大大ピンチ。

何とか皆はギリギリで脱出し、爆弾の処理も終えます。

↓クライマックスでの指輪交換シーンが好きです。

「よくやったぞ、ソネッ……なんで左手の薬指なんだよ」
「それは勿論、婚約者ですから」
元俺が女になった俺の左手薬指に指輪をはめる。しかも、悔しいことにぴったりだ。

 

実は、アマンダも意識不明の娘・サラと入れ替わっていて、自爆させられそうになっていたのはサラ(身体はアマンダ)でした。

アマンダ(身体はサラ)は、「アマンダ」としての過去を消し去るために、サラと入れ替わって新しい人生を歩む予定だったようです。

 

結局アマンダ(身体はサラ)は周囲の説得に応じ、「魂だけを殺す銃」で自殺。サラの魂はサラの身体に戻ります。

レオ(身体はゴースト)もゴースト(身体はレオ)を元の身体に戻してあげようと、その銃を使おうとして…

(最後には時間経過で全員元に戻ってハッピーエンドでした。)

 

ブレイク君コア

※この項目には物語に関するネタバレが含まれています。

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『ブレイク君コア』
著者:小泉陽一朗
男子高生の彼女が交通事故で殺人犯と入れ替わる。 講談社
星海社FICTIONS
『ブレイク君コア』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

高校生の入山優太は、同じ学校に通う飯田いくみに一目惚れし、付き合う一歩手前だった。

そんなある日の帰り道、いくみがトラックにはねられて、殺人犯の武藤ムツムと入れ替わってしまう。

 

物語は、優太視点といくみ視点が交互に描写される方式です。

↓いくみは気がついたら武藤の身体になっていて、目の前には少女の惨殺死体が…

誰かに制服を脱がされてこの服を着せられた?なんのために?事故で服が使い物にならなくなったから?でも私に怪我はない。なのにシャツは血で染まっている。もしかして濡れ衣着せられた!?私があの女の子を殺したことにされそう!?シャツを染めている血は私の血じゃなくてさっきの死体の血!?とりあえず隠れなきゃ。何も悪いことしてないのに。むしろ被害者なのに。

 

↓武藤ボディはかなりのチャラ男です。悲惨です。

この後、いくみ(身体は武藤)は近くにやってきた男性を焦って殺害。

殺人犯の身体だからか、衝動的に殺しちゃったみたいです。

家に電話をかけてじぶんの声色に驚いた。私の声じゃなかった。写メを見て驚いた。私の顔じゃなかった。目は猫みたいな三白眼で大きくてぎょろっとして口も大きい癖のある顔。こんなの私じゃない。髪もだ。触ってみて感触に驚いた。写メを見て血の気が引いた。色素を抜いた金髪だった。金髪で隠れていない耳には銀色のピアスが左右五個ずつ着いていた。軟骨にまで。

 

いくみ(身体は武藤)は、入れ替わりを起こした犯人の墓無沈と共に行動することに。

色々と複雑ですが、武藤に娘を殺された母親が武藤を殺して復讐をするために、色々あって手違いで入れ替わってしまったみたいです。

いくみ(身体は武藤)が武藤だと勘違いされて母親に殺されそうになるシーンはかわいそうでした。

 

↓優太の方は、目を覚ましたいくみ(中身は武藤)の様子がおかしいことに気がつきます。

「うああ、よく寝――はあ!?ここどこだよ!」
(中略)
今まで手を繋いだこともなかったが、僕はとっさに飯田に抱きついた。涙で視界がぼやけた。
「うわちょ、なになに、まだこれ夢なのか!?っていうかお前誰だし!顔近いっつーの!」

 

↓武藤(身体はいくみ)は、自身が記憶喪失だと思い込みます。

武藤は一人称が「俺」で、煙草も吸うようです。

「まずはそっからだよな。その飯田が誰だって話だよ」
「え、自分だよ。君、あなた。……思いだせない?」
「思いだせないっつーか、俺は飯田じゃねーよ」
「いや、君は飯田だよ」
「だって俺は……あれ?だよなあ?俺飯田じゃないよな?」
「飯田だってば」
「だから俺は……ってもしかして本当に飯田?飯田って奴じゃない別の自分の記憶があんだけど」

 

↓武藤(身体はいくみ)は、突然優太にキスをして、ペッティングを始めます。

優太はおかしいと思いつつも、身体の反応には抗えずに流されてしまいます。

飯田は僕の言葉を無視して唇を合わせてくる。
え?
飯田の歯が僕の唇を割って閉じた歯をノックする。
ちょ待ってなになになになに!?
(中略)
「んっはー、はあ、はあ……息ができねー。やっべなんだこれ、すっげー気持ちよかった。もっかいしてもいいか?」

飯田は僕の口の中からゆっくりと舌を抜き、「挿れたい……」と艶っぽく囁く。
(中略)
パジャマみたいな入院服の下を脱がせ、飯田の下着の中に手を入れる。
とろとろに濡れている。
初めて触る感触だ。

 

↓武藤(身体はいくみ)はかなり乱暴な口調で、かなりのインパクトがあります。

武藤(身体はいくみ)は優太に「いくみは優太の彼氏」と嘘を言われたので、エッチなことをするのが普通だと思って襲ったらしい?です。

「男だったら出すもん出したら終わんだろうが。もしかしてお前童貞とか?」冗談を言った後のように飯田が笑う。
「そうだけど……飯田は初めてじゃないの?」
飯田から女の表情が消える。
目をまるくして口を小さくぽっかり開ける。
「待て待て待て、じゃあ俺とするのも初めてってことか?
「そう、なるね。そして初キス」
「え、もしかして俺も初めてとか!?」
「いや、知らないけど」
「付き合ってんだからそういう話すんじゃねーのかよ!」
「そういえば経験ないって言ってたかも」僕はまた嘘をついた。
「うっわまじか!どおりで意味分かんねえくらい気持ちいいと思った。え、ちょ、これはごめんでいいのか?俺はてっきり……。いや、言い訳はいらねえよね。その、マジでごめん」

 

優太はエッチなことをしたせいで、いくみ本人よりも中身が武藤のいくみが好きになってしまいます。

↓優太の感情が正直すぎて、いくみ本人が非常にかわいそうですが…

もしも飯田が言う魂の入れ替わりが本当に起こっているのだとしたら、果たして僕は元の飯田の魂に帰ってきて欲しいだろうか。
自分の胸の内を探ってみるが、そんな感情は見当たらない。むしろ帰って欲しくないかもしれない。

もし本当に『今の飯田』と『今までの飯田』が別人で、『今までの飯田』なんてのが別個に存在するならば、もう僕は『今までの飯田』を好きではない。
だって僕は『今の飯田』が好きなのだ。

 

↓武藤(身体はいくみ)が写真を送るところや、優太に一人称を注意されるところがいいですね。

武藤(身体はいくみ)が優太をラブホに誘うシーンはドキドキしました。

『今送った写メ見たか?』
「見たよ。どうしたの?」
『その顔って俺の顔か?』
「そうだね。飯田の顔だ」
『やっぱりか……。いや、俺好みの顔だから別に問題はないんだけどな』

「そんなんで終わるほど人生って薄っぺらくないと思うけど、まあいいや。そうだ一人称だけど、両親の前では『私』でいた方がいいと思うよ。僕も飯田が自分のこと『俺』って言ってるの聞いて実は結構驚いたから」
『大丈夫、きちんと私ちゃんでいるよ。虫酸が走るけどな』

 

武藤(身体はいくみ)が思い出を作りたいというので、優太はショッピングへ。

↓武藤(身体はいくみ)がかわいいワンピースを着て照れるところが、一人称も「私」を使っていてかわいいです。

優太は微妙に入れ替わりを信じていないので、地の文で武藤(身体はいくみ)のことを「飯田」と肉体名で呼んでいます。

元に戻ったらワンピースは誰のものかと話すシーンが好きですね。

形のきれいな、服単体で完成しているようなワンピース。色は黒で、蝶を模したボタンが胸元に三つ並んでいる。
飯田はそのワンピースを手に取り、様々な角度から眺めたり、ボタンの細部を鑑定するように目を細める。
(中略)
「ちょっと写真撮っていいかな。ブログに載せたいんだけど」
お姉さんのお願いに対して、飯田はもじもじしながら、「私なんかでよければ……」とここに来るまでは想像もつかなかった謙虚さを見せる。一人称も『俺』から『私』に変わっている。まるで事故に遭う前の飯田みたいだ。

 

元の自分が住んでいた「武藤家の自宅」を見てショックを受ける武藤(身体はいくみ)を励まそうと、優太は声をかけます。

↓優太は入れ替わりが戻って欲しくないため、あまり慰めになっていないような言葉ですが…

「僕も実際飯田の家がこの先にある気がしてきたけどさ、それが何だって言うの?だからって何が変わるわけじゃないよ。飯田の家がありました、はい確認終了。それでいいじゃん。もしも本当に今までの飯田と今の飯田が別人で、魂の入れ替わりが起こっていたとしてもしょうがないよ。どうしようもないよ。戻る方法なんて分からないし。感受性豊かなのは素敵だけど、気に病んでもしょうがないことに気に病んでも、それは自分のことを自分で戒めて許してもらおうとしてるだけだよ。罪なんてないのにさ。だから飯田はもしこの先に記憶の家があったとしても、このままの飯田として生活すればいいよ」

 

元の自分の身体を探して元に戻ると言う武藤(身体はいくみ)に対し、優太は「僕の恋人は武藤がいい」と言います。

本音を言えば元に戻りたくない武藤(身体はいくみ)も、これにはさすがに怒ります。常識人で良かった。

 

↓普通の男子高生の優太は、入れ替わり的にはなかなか無能な感じでツッコミどころが満載です。

いくみ(身体は武藤)に会って、入れ替わったと言われるまで入れ替わりは信じません。

優太が知っている情報は極めて少ないのはわかりますが、何も閃かないまま眠りにつくだけなのは…(苦笑)

考えるべきは武藤とこの殺人事件の関連性だ。
(中略)
僕は再びニュースサイトを確認する。事件が起きたのは二日前、飯田と武藤が入れ替わったのも二日前。
この符号は偶然だろうか。いや、武藤はこの事件の報道を見てから失踪したのだ。なにか関連性があるのではないか。
関連性、関連性、関連性……。
僕は何も見つけられないまま眠りについた。

 

そして、三日以内に戻れなければいくみ(身体は武藤)が殺され、戻れれば武藤が殺されることに。

↓優太は、女性だと思っていた武藤(身体はいくみ)が男性だと知り非常に気持ち悪がります。嘔吐してかわいそう。

いくみ(身体は武藤)はそんな優太を見てホモ扱い。

僕は男とあんな卑猥なことをしたのか。
身体は飯田いくみの女性としてのものでも魂は男。
僕は男に惚れていたのか。
そうだそういうことだ。
あはははははははは。
意味が分からない。
いや意味は分かる。
分かりたくない。
信じたくない。
笑えない。
きもちわるい。
(中略)
「っるおええええええええええええええええ!!」
僕は武藤を模した人形の脇に嘔吐して吐瀉物で自分の顔を濡らす。

 

↓しかし優太は、中身が男性のいくみへの気持ち悪さよりも、人殺しをした身体は武藤のいくみへの気持ち悪さが勝り、いくみ(身体は武藤)を裏切ります。

優太の気持ちがコロコロ変わってヤバいです(笑)

ていうかこいつは人殺しなんだよな。
バイトの伊藤裕之さんを殺したんだ。
武藤の顔をした飯田はつまらなそうな表情をしているが、殺人を気に病んでいるようには見えない。
自分の身体じゃないから自分が殺したことにはならないとでも思っているのだろうか。だとしたら馬鹿だ。馬鹿は怖い。何をしでかすか分からない。こいつは人を一人殺したんだ。

僕は武藤の魂が好きなのだ。
武藤の身体、顔、性別、それらの物質性と切り離された武藤の魂が好きなのだ。
武藤は男だけど、この気持ちは確かだ。
同性に抱くこういう感情はなんと呼べばいいのだろう。
恋心と呼ぶのは躊躇がある。
やはり男が恋愛的に好きだというのは自分でも信じたくない。
しかし、飯田の身体に武藤の魂が入ったちぐはぐな女の子、それならば好きだと声を大にして言える。
僕は武藤に、飯田に、自分の本来の身体を取り戻して欲しくないのだ。このままのちぐはぐを継続して欲しいのだ。

 

↓身体はいくみの武藤に惚れている優太は元に戻す協力はせず、いくみ(身体は武藤)に身代わりになれと言います。

もちろんいくみ(身体は武藤)は怒って優太をボコります。

元に戻ったら武藤が殺される!?そんなの協力できるわけないだろ!

「いや意味わかんないんだけど!意味分かんない!なんで武藤ムツムのこと庇うの!?入山君がなんにも知らないわけないじゃない!なんにも役に立たないような情報でも今の私には必要なの!私の命が懸かってるんだよ!?私なんにも悪くないのに、こんなわけ分かんないことに巻き込まれちゃって、男になってるし、おまけにそいつ殺人犯だし、知らないおばさんに殺されかけるし、本当勘弁!お願いだよ!」
そんなこと言われても。
知らねーよ。

 

↓入れ替わっている時間が長くなるにつれて、いくみ(身体は武藤)は武藤の身体に馴染んでいきます。

優太のいくみ(身体は武藤)に対する態度は相変わらず酷いですw

「そんなまどろっこしいことしないで、遠くから撃ち殺しちゃえばいいじゃない」
飯田がしれっと冗談にならないことを言う。お前が死ね。
「依頼人は生け捕りをご所望なんだ。それに武藤ムツムが入っているのはいくみんの身体だろう?いいのかい?殺しちゃって」
「……」飯田の顔から表情が剥げ落ちる。
「そろそろ本当の自分って奴が分からなくなってるんだね。意識が身体に馴染んでしまっている。自分の概念が融解している。傍から見ている分には愉快だけれど。もういっそ、このままでもいい感じかい?」
飯田は自分じゃない自分を自分として認め始めている。ちぐはぐを無意識下で許容し始めている。それでいいんだ。お前はちぐはぐでいるのがいいんだ。

どちらかが佐藤静江さんに殺されなければこの物語は幕を下ろさない。
ならば申し訳ないけれど飯田に死んでもらいたい。
僕がこんな風に思うのは、武藤のことが『好き』で飯田のことが『好きだった』からだけど、ちょっと待てよ。

 

色々あっていくみ(身体は武藤)と武藤(身体はいくみ)がご対面。

↓いくみ(身体は武藤)が元の自分の姿を客観的に見るところが好きです。

私は鏡を介さず直に自分の姿を見る。
入れ替わる以前は後ろで一つに縛っていたけれど、髪を解いた私も中々可愛い。汗で湿った髪に繊細な色気がある。早く元の私に戻りたい。

 

ここで、実は飯田いくみ武藤ムツム(兄)武藤ひかり(妹)の三人での入れ替わりだと判明。

↓いくみ(身体はムツム)はいくみとムツムの入れ替わり、ひかり(身体はいくみ)はいくみ(身体はムツム)を武藤ムツムだと思っているので、すれ違い会話になっています。

「男だよね?」
「女だ」
「でも、これ今私の身体男だし」
「だからそれ俺の身体じゃないって!ムツムのだ!」
「はあ!?」
「だあ!しっつけえな!武藤ムツムは俺の兄貴で、俺は武藤ひかりで妹だ!」

 

ということで、いくみの中身は武藤ムツムではなく、武藤ひかりでした。

男勝りにも程がある性格は、全て男性だと誤認させる叙述トリックでした。

 

↓そして、ラスボスである殺人鬼のムツム(身体はひかり)との対決。

ムツム(身体はひかり)はサイコパスで、音楽を作るために殺人を繰り返し、元の身体を殺してみたいと言っていくみ(身体はムツム)に襲い掛かります。

「久しぶり。その身体俺のだから返してくんねーかな。そんでその後自首してくれよ」
ひかりの声色は虚勢に充ち、その裏の怯えが滲み出ている。
「あり?その感じだとこっちがひかり?てっきりボクはひかりと二人で入れ替わったんだと思ってたけど、三人でトライアングルって感じ?んじゃボクの身体に入ってるのは誰かしら?」

 

↓ムツム(身体はひかり)がひかり(身体はいくみ)の目の前で、いくみ(身体はムツム)にフ○ラしようとするシーンが超倒錯的で興奮しました。

入れ替わりフ○ラに関する意見は、ムツム(身体はひかり)に全面同意です。

私の威嚇を無視して、武藤ムツムは私の穿いてるジーンズに手をかける。ベルトをカチャカチャと外す。
「ちょっ、なにすんの!」
私は身体を捻ってジーンズの前身頃を床に付けて抵抗する。
「よいではない――かっ!」
武藤ムツムが私の身体を乱暴にひっくり返す。
「やめろムツム!」ひかりが叫ぶ。
「冗談じゃんか、いや半ば本気だったけどさ。実の妹に見られながら自分のチンポ妹になってしゃぶるとか、やっぱ倫理的にね。でも逆にそれが背徳感?萌え萌え?やっぱしゃぶっとこうかしら」

 

↓ムツム(身体はひかり)のセリフは所々入れ替わり的においしいです。

「ん?キミは分かったの?さすがボクの脳を使っているだけあるね。ひかりっちは?どう?」

 

↓ムツム(身体はひかり)はサイコパスナルシスト。おいしいです。

「(前略)自分が死ぬ音なんてナイスじゃない?今目の前に、自分の脳と繋がっていない自分の身体が、あ・る・わ・け・だ・が」

「怯えるボクの顔かあいいなー。眼帯してんのも得点高いよね。萌えてブヒブヒ言っちゃうよ。とりあえずマイリス。だいじょぶだいじょぶ心配しないで。ボク憎くない奴の顔は潰さないから。まあこいつはグシャッだけど」

「自分で自分のこと蹴るのって不思議な気分!不思議な気分ですぅ、的な?」

 

↓いくみ(身体はムツム)も、殺されかけて思考がおかしくなっています。

身体は男性なのに、妊娠の心配をしています。

ちなみに、死体の描写や暴力描写がグロめだと思います。

無抵抗に腹を踏まれ胃液を零しながら、あー妊娠できなくなるかも、と的外れなことを思う。妊娠する前にこのままじゃ死ぬっつーの。

 

色々あって、いくみ(身体はムツム)が優太と入れ替わり、いくみ優太ムツムひかりの組み合わせに。

↓いきなり重症のムツムボディに入る優太が大変です。左耳も切り落とされてるし。

上半身を起こそうとして気付く。僕の手首足首も拘束されている。
左耳が熱い。いや違う。熱いのは左耳の付け根で、左耳は千切られたかのように消失している。それに気づくと急に激痛が僕を襲う。

 

↓いくみとムツムの入れ替わりだと思っている優太(身体はムツム)は、凶器を持ったムツム(身体はひかり)を見て、色々と勘違い。

優太の好きな女の子の身体は殺人者ですが…。

もしかしてこの女の子が真犯人?
だとしたら武藤は犯人じゃない!
僕の好きな人は人殺しじゃない!

 

危ない状況ですが、相思相愛の優太(身体はムツム)とひかり(身体はいくみ)がお互いに告白を始めます。

優太が入れ替わりに参戦したとは知らず、ムツム(身体はひかり)は「ボクの妹はレズだったのか」と訝しがります。カオスです。

 

最後に、ムツム(身体はひかり)といくみ(身体は優太)が入れ替わり、優太←→ムツムいくみ←→ひかりの組み合わせになることで解決。

ちゃんと全員元に戻ります。

 

しかし、いくみは元に戻れたものの、他人の身体とはいえ人を一人殺してしまった事実が頭から離れず、苦しむようになります。

いくみは裏切った優太のことは嫌いになったようです。

↓いくみとひかりは仲良くなってハッピーエンド…ですが、いくみはひかりの身体にムツムの精神が入って強行に及んでいたことが忘れられません。

私のノートパソコンでひかりがネットを弄る。
ひかりの身体に入った武藤ムツムのことを思いだすが、ひかりに失礼だし早く記憶から抹消したいのですぐに脳内映像を停止させる。

 

優太は、「美少女のいくみボディに入ったひかり」が好きだっただけで、「身も心も100%ひかり」はそこまで好きではないようです。

あんまりだとは思いますが、良く言えば正直ということで…(苦笑)

一応、優太はひかりとカップルになるエンドでした。

元のひかり、純正のひかりは黒髪ショートが似合っていて可愛いけれど、どうしても飯田と比べてしまう自分がいて、そんな自分は早く死んだほうがいいと切に思う。

 

変身(震える血)

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『変身』
著者:グレアム・マスタートンアメリカ
男性たちが入れ替わり体質の美女ボディに入れ替えられる話。 祥伝社
祥伝社文庫
『震える血』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

ギル・バチェラーは仕事でやってきたホテルで、アンナという女性に一目惚れした。

妻子に罪悪感を覚えたものの、ギルは誘惑に勝てずにアンナと関係を持ってしまい、その後目が覚めるとギルはアンナと入れ替わっていた。

ギルの身体の中身はデヴィッドで、同じように身体を奪われたというのだ。

 

↓アンナの身体の中にいる男性が、ギルの身体を奪おうと女性のフリをしているのが萌えます。

女はカメラのごとく、食いいるようにこちらをじっと見据えた。
「わたしが欲しいのね」と言った。

「わたしはアンナ」
「ただのアンナ、それだけ?」
「ANNAは、どちらから読んでも同じよね。つまり、裏も表もないという意味なの。わたしは、この名前のとおりに生きようとしてるわ」

(前略)あなたはたぶん、わたしが一緒に寝る二人目の男性になるでしょう」
(中略)
アンナみたいなスタイル、肉体、性的魅力をあわせ持つ女性が、いままでの人生で一人の男としか寝たことがないだって?

 

↓入れ替わる前に、ギルの精神が女性化?したような描写がありました。

クリームの載った手を顔に近づけたときに、ようやく髭剃りの必要がないと気づいた。啞然としてから、クリームをすすいで洗面台の湯を抜いた。昨夜、ベッドにはいるまえに髭をあたったにちがいなく、それを忘れていたのだ。一日じゅう、ふたりは大量のワインを飲んでいたからな。トイレにはいり、便器に座ってペニスを出し、すぐに放尿した。排尿し終え、トイレットペーパーで股間のペニスをぬぐっているときに、ようやく自分の異様な行動を自覚した。いままで、座って小便などしたことがなかった。女性じゃないのだから。

 

↓入れ替わり直後のギル(身体はアンナ)のリアクションがおいしいです。

目をこすろうと手を挙げたときになって、自分の身になにかとてつもないことが発生したのだと気づいた。彼の腕が、胸のあたりにある大きくてやわらかな膨らみにひっかかったのだ。圧倒的な身体的恐怖がもたらす冷たい感覚が背筋をつたい、すぐにキルトをはいでみた。自分の全裸の肉体を見て、けたたましい恐怖の悲鳴をあげた。
ギルの胸に乳房ができていた。重厚で丸まるとし、じゅうぶんに発達した乳首を持つふたつの乳房が。両手で掴んでみて、それらが肥大化した腫れものや癌じゃないと確認する。ほんものの女の乳房で、それもかなりの大きさだった。まるでアンナのもののように。
身ぶるいし、右手で全身をまさぐると、細いウエストにへこんだ腹、シルクのような陰毛があった。股間をたしかめるべきだとわかっていたが、気力が萎えていたので、目をつぶったまま夢なら醒めてくれと祈りつつ、一分また一分と確認を遅らせつづけた。しかし結局は指をすべすべした太腿のあいだにのばした。指の一本がヴァギナを探りあてた。
間違いようがない。彼の肉体は、内も外も完全に女性化していた。少なくとも見かけ上は女だ。
「こんなこと、現実のはずがない」と自分に言い聞かせてみるが、声も女性のものだった。ゆっくりとベッドから出ると、アンナと同じように胸が揺れた。部屋を横切り、ドレッシング・テーブルの横にある等身大の鏡に向かいあった。鏡のなかから女がこちらを見ている。美しい裸体の女性、それは彼自身であった。
「こんなこと、現実のはずがない」と、両手で乳房を持ちあげ、鏡の顔を食いいるように見つめながら、繰り返した。瞳はギルのものだった、表情も。鏡のなかにかつての自分、ギルの個性が見て取れる。

 

↓ギル(身体はアンナ)が知らず知らずのうちに女性らしい仕草をしてしまうところが萌えました。

「起きているようだね。すまない。もっと早く帰ってくるつもりだったんだが」
ギルは頭をもたげた。無意識にロングヘアーを顔から払いのけ、相手を見あげた。戸口に男のシルエットがあった。背広を着て、磨かれた靴をはいている。

 

↓ギルの身体を奪った人物はアンナではなくデヴィッド・チルトンで、デヴィッドもアンナの中にいた別人に身体を奪われた被害者でした。

アンナの身体は入れ替わり体質のようです。

ギル(身体はアンナ)が元の自分の身体に手を出せないところが好きですね。

「ホルモンのせいじゃないよ。理由を知っていたら、説明してあげるんだが。ほんとうだよ。でも、ぼくにわかるのは、とにかくこうなるってことだけだ。まえの男からつぎの男へ。ぼくのまえにアンナだった男が――そいつはぼくの肉体を奪っていったんだが――ぼくがいまきみに説明しているように、ぼくにすべてを教えてくれた――きみも、つぎの男をひっかけたら、そいつに同じように語ることになる」

 

↓アンナの身体に入れられたデヴィッドが、妻子を寝取られてショックを受けたと話すところが最高でした。

デヴィッドは男性でいたいタイプの人間で、どんなに良い条件の女性よりも、悪い条件の男性の方がマシらしい…

「アンナのパスポートと預金通帳を発見した――心配しなくていい、ぜんぶきみに残しておくからね。ぼくはニューヨークに飛んで車を借り、コネチカットに向かった。自宅の外に車を止めて、自分そっくりの男が欠伸をして顔をしかめ、娘を遊び、妻にキスする光景を見たよ」

 

↓ギル(身体はアンナ)は家族がすぐに見破ると言いますが、デヴィッド(身体はギル)はギルの記憶も手に入れているため、完敗です。

「でも、マーガレットはきみのことをすぐに見抜くぞ。私にそっくりかもしれないが、きみは私じゃない、違うか?妻はきみが家にはいるなり、あっというまに別人だと気づくあろう。それに、うちの犬もだ」
「ボンディのことかい?」
胸の奥底で不安感が首をもたげた。アンナに、ボンディという名の愛犬の話はしなかったはずだ。
デヴィッド・チルトンが説明をつづけた。
「ぼくが拝借したのは、きみの姿だけじゃないのさ、ギル。記憶も失敬した。自宅にある、きみの机の左袖中段の抽斗には、懐中電灯、クレジットカードの明細書の大半、ホッチキス、さらに、大型折りこみページをやめたときの<プレイボーイ>の記念号がはいっている。きみの父親には、いつも日曜日の午後になるとバスーンを演奏し、母親がそれをやめるように説得したことがあっただろ」

 

↓デヴィッド(身体はギル)は、無情にもギル(身体はアンナ)の前を立ち去り、ギルの家に帰っていきます。

「じゃあな、ハニー。うまくやれよ」
玄関のドアが閉まり、ギルが生まれながらに授かった肉体が、彼の人生から歩み去っていく。

 

↓ギル(身体はアンナ)のエロティックなシーンもあります。

髪の毛の扱いに困りながらシャワーを浴びるシーンと、悩みながらブラジャーを着けるシーン、慣れないハイヒールで足をくじくシーンもありました。

女性の肉体を持ちながら心は男のままでいるというのは、恐ろしいけれど妙にエロティックな気分だった。”アンナ”にしたような手つきで乳房を揉み、指で乳首をころがした。やがて股間に手をのばし、不安感と好奇心につき動かされながら、性器をやさしくなでまわし、かたちを探った。
男がここに実際にペニスを挿入したら、どんなふうに感じるのだろう。男がおおいかぶさって、私のなかでピストン運動をはじめたら。ああいやだ、私は同性愛者じゃないのに。

 

↓ギル(身体はアンナ)が精神的にも変わっていき、焦るような描写が良かったですね。

慣れるしかない。その言葉が頭に打ち込まれた冷たい弾丸のように、ギルの身体を硬直させた。鏡で自分の姿をながめてみる。美しい顔のなかでも、瞳はギルのままだった。憤怒にかられてすすり泣く。自分はすでに、新しい肉体に順応しはじめていた。状況に対応していた。ブラジャーはパンティに気をもみ、スカートのはきかたで悩み、自分がアンナじゃなくギルだということを忘れかかっている。おまえは夫だ。父親だ。男なんだぞ、しっかりしろ!

 

↓全体的に入れ替わり的に美味しい文章が多くて良かったです。

眼前の絨毯に、アンナの身分証明書、社会保障書類、パスポート、クレジットカードなどが置いてあった。アンナ・ハイスマン。その名はいまや、ギルのものになっていた。

 

アンナの身体の犠牲になった男性は、700人を超えるようです。

その中の多くが、アンナの日記を残していました。

↓最古の日記は、1942年のドイツの国防軍将校が書いたもの。他の被害者の記述もあって良かったです。

「彼女の自転車はパンクしていた……とても美しい娘だったので、運転手に車を停めさせ彼女を助け……」

 

↓夕食に出かけたギル(身体はアンナ)は、フレッド・オスケイにナンパされ、不快に思い断ったら酷い言葉を投げかけられてしまいました。

「このクソ女」とフレッドが言った。「売女のくせしやがって」

 

↓ギル(身体はアンナ)は徐々に身体に馴染んでいき、化粧にもヒールにも慣れます。

ギルはアムステルダムのと同じ、黒のベルトつきレインコートに、黒のベレー帽を身に着けていた。いまでは、アンナのハイヒールもはきこなせている。髪はウエーブをつけ、丁寧にブラッシングし、さらに雑誌<ダッチ>の記事を丁寧にまねし、化粧もととのえていた。

 

ギル(身体はアンナ)がデヴィッド(身体はギル)に会いに行くところも好きです。

↓入れ替わり的な寝取りセリフが最高ですね。

デヴィッド(身体はギル)は、ギルの妻にも息子にも怪しまれず、仕事に至ってはギル本人よりも上手くやっているようです。

「幸せにやってるかい?つまり、息子のアランのことだけれど」
「アランは元気さ。あれはいい子だね。きみにそっくりだよ。いや、ぼくにそっくりと言うべきだな」

「妻を”モー”と呼んでいるのか?」
「きみが、そう呼んでたんじゃなかったのか?」

 

ギル(身体はアンナ)は、身体を奪い返そうと、デヴィッド(身体はギル)をナイフで刺し…

全員元に戻らず死亡するバッドエンドでした。

最後はまた悲劇が起こる?のかはよくわかりませんでした。

 

戸口にあらわれたもの

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『戸口にあらわれたもの』
著者:H・P・ラヴクラフト
入れ替わり長寿の人間が新たな身体を狙う話。 東京創元社
創元推理文庫
『ラヴクラフト全集』
第3巻

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

アプトンは、8歳年下のエドワード・ダービィと親友だった。

ダービィは天才ではあったものの、甘やかされて主体性のない性格だった。

ある日、ダービィはアナセスという女性と結婚したのだが、次第にダービィは別人のように振る舞い始め…

 

主人公であるダン・アプトンが、エドワードの様子がおかしい、アナセスは怪しい人間だ、と訝しがるシーンがしばらく続きます。

アナセスの父親・エフレイムは変死しており、アナセスは男性になりたいと話しているようです。

 

↓アナセスが催眠術を使い、性別不明の級友と入れ替わってみせるシーンもありました。

しかしながら、一番異常だったのは、他人に影響がおよぼせるという、十分に証拠のある事例である。アナセスは紛れもなく本物の催眠術師だった。級友を独特の眼差で見つめることによって、その級友に人格が交換されたという異様な感じを与えることがよくあった。それはまるで、被術者が一時的に術者の体のなかに置かれ、むかいあっている自分の本当の体を見ることができるかのような感じで、そのときの被術者の目は断じて被術者のものではない表情をうかべて突出しぎみになり、爛々と輝いているという。

 

↓結婚後、「エドワード」は見違えるように生き生きとして、「アナセス」はどんどんと老け込んでいきます。

「エフレイム」を知る人間は、「エドワード」がエフレイムと重なって見えるようです。

エドワードは入れ替わりのことをアプトンに話そうとしますが、アナセスは精神を操る最強能力を持っているため、全く上手くいきません。

ときとしてエドワードが、いつもの無気力な性格とはまったく矛盾する表情をしたり、行動をとったりするというのだ。たとえば、以前は車を運転することができなかったが、いまではときどき、アナセスの馬力のあるパッカードを駆って、クラウニンシールド荘の私道を猛スピードで出入りするのが見かけられ、以前の性格からはまったく考えられない決断力とハンドルさばきでもって、のろのろ進む車をつぎつぎに追い抜いていくという。
(中略)
奇妙にも、変化は必ずしも快いものではなかった。そういうときのエドワードは、妻のアナセス、というよりもむしろ、老エフレイム自身に酷似しているように見えるというのだ。

しかし立ち去るときに、ふと屋敷に目をむけると、エドワードの書斎の窓の一つに、あわててひこめられる顔がちらっと見えた。その顔は、いいようもないほど胸をうたれる、苦痛、敗北、なすすべもないやるせなさのこもる表情をたたえていた。それは――いつもの横柄さからは信じられない――アナセスの顔だった。

 

↓アナセスは一方的に入れ替えられる最強能力持ちなので、エドワードは振り回されます。

ぼくはあそこにいたんだ。彼女が連れて行かないって約束した場所に――一瞬まえまでぼくは書斎に閉じ込められていたのに、彼女がぼくの体をして行ったところへ行ってしまったんだ――

アナセスはたえずエドワードの体を奪い、エドワードを自分の体にいれたまま二階に閉じこめ、名状しがたい儀式のために名もない土地へ行っている。しかしときとしてもちこたえられなくなり、そんなときエドワードは、どこか遠くの恐ろしい、おそらくは未知の土地で、突如として自分自身の体にもどっているのを知る。ふたたびアナセスがエドワードの体を奪うこともあるが、それができないこともある。エドワードはしばしば、わたしがこの目で見たように、見知らぬ土地で途方にくれることがある。そんなときにはものすごい遠方から家に帰る道を見つけださなければならず、何とか見つかると、人をやとって車を運転してもらう。
最悪なのは、アナセスがエドワードの体を奪っている時間がしだいに長くなってきていることだった。アナセスは男――完全な人間――になりたがっている。そのためにこそエドワードの体を奪っているのだ。アナセスはエドワードが優秀な頭脳と弱い意志の持主であることに感づいていた。いつの日か、アナセスはエドワードを体から追いだし、エドワードの体を奪って姿を消すことだろう――エドワードをおよそ人間とも呼べない女の抜け殻のなかに置き去りにし、父親のような大魔導士になるため、姿を消すことだろう。

 

アナセスは父親のエフレイムと同じ筆跡の字を書くことから、アナセスの中身はエフレイムで、アナセス本人はエフレイムの身体で死んでいたことがわかります。

エフレイムは女の子のアナセスしか都合のいい肉体が見つからず、男性のエドワードの身体を狙っているようです。

 

↓中身がアナセスのエフレイム?の描写は一瞬だけあります。

どうしてギルマン家の者は、老エフレイムが発狂して、アナセスの手でしとね張りの屋根裏部屋に閉じこめられたとき、老エフレイムがおびえきった子供のように悲鳴をあげたことについて、声をひそめていうんだろう。屋根裏部屋には別の者がいたんだよ。閉じこめられたのは老エフレイムの魂だったんだろうか。

 

↓アプトンはエドワードが怯えながら話すのを聞いていましたが、アナセスはエドワードの身体を乗っ取って、何でもないと言って去っていきます。

狼狽してたわごとをまくしたてた後、こんなにも早く冷静になったことが、わたしには不思議でならなかった。
「さっきの発作は忘れてくれないか、アプトン」エドワードはそういった。

 

↓発狂したエドワードは、アナセスを殺して土に埋めますが、死体となったアナセスの身体と入れ替えられてしまいました。

土に埋まった死体と入れ替わるのはかなり珍しいシチュエーションではないでしょうか。

ぼくは首を切ってやったが、やつら――そして他の信者――が何をしでかすかはわかったものじゃない。
ぼくはしばらくこれでもう大丈夫だと思っていたが、そのうち脳がひっぱられるような感じがした。それが何を意味するかがわかった。おぼえていて当然だったのに。アナセスの、いやエフレイムの魂は、なかば分離していて、死んだ後も、体が存在しつづけるかぎり生きつづけるんだ。アナセスはぼくを奪おうとしていた――自分の体とぼくの体を交換させようとしていた――ぼくの体を奪い、ぼくを地下室に埋められたアナセスの体のなかにいれようとしていた。

気がついてみると、ぼくは闇のなかで息がつまっていた――地下室の、ぼくが置いた箱の下で、アナセスの腐れはてる死体のなかに入りこんでいたんだ。
(中略)
ぼくは必死になって、やっとの思いで、土を掻きながら這いだした。
ぼくはもうしゃべることもできない――電話するのも無理だった。しかしまだ書くことはできる。ぼくは何とかしてこの最後の言葉と警告を伝えるつもりだ。もしきみが世界の平安を重んじるなら、あの悪魔を殺してくれ。必ず火葬にしてくれ。

 

エドワード(身体はアナセスの死体)は、メモをアプトンに渡して死亡。

冒頭に戻り、アプトンはエドワード(中身はアナセス)を銃殺したようです。

 

 

今回は、小説の男女集団入れ替わりを6作品紹介しました。

読んでいただいてありがとうございました!

 

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