今回は、小説の男同士入れ替わり回を6作品紹介していきます。
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うちの一階には鬼がいる!
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『うちの一階には鬼がいる!』 著者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 翻訳:原島文世 | 仲の悪い連れ子同士が化学実験セットで入れ替わる。 | ●東京創元社 創元推理文庫 『うちの一階には鬼がいる!』 ●東京創元社 sogen bookland 『うちの一階には鬼がいる!』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
第6章~第8章が男同士入れ替わり。
キャスパーとマルコムは再婚した両親の連れ子同士で、仲が悪かった。
ある日、父親が買ってくれた化学実験セットの粉末交素を一緒に舐めたところ、入れ替わってしまう。
仕方なく二人は、そのまま学校へ行くことになった。
↓入れ替わり直後に、二人で鏡を見るシーンが好きですね。
父親が自分の子供のマルコム(中身はキャスパー)は叱らず、母親の連れ子のキャスパー(中身はマルコム)を叱るシーンも良いです。
薬が切れて元の姿に戻ることを恐れる描写があるので、変身で入れ替わっていると思われます。
そうやって、いつもの体より短く弱い手足で戦いながら、キャスパーは自分の目をのぞきこんだ。予想どおり、それはマルコムのひややかな灰色のひとみだった。その上にはマルコムのなめらかな髪があり、下にはマルコムの鼻ときちょうめんな口がある。そしてとなりでは、キャスパーの黒いボサボサ頭をしたマルコムが、キャスパーの顔にぞっとしたような色を浮かべ、キャスパーの茶色いひとみでこっちを見ていた。
元に戻れないまま、二人は身体の方のクラスへ。
↓表情筋ネタや授業ネタ、弟のジョニーと仲が良いキャスパー(身体はマルコム)が、ぼっちで虐められているマルコムの気持ちを知るところが良かったです。
「ねえ、こっちにおいでよ、キャスパー。みんなが待ってるから」
マルコムは申しわけなさそうな視線を投げると、ジョニーと言ってしまった。現実を思い出すまでの一瞬、キャスパーはそんなふうに置き去りにされたことで、はらわたが煮えくりかえるような怒りをおぼえた。それから、これはまさしく、ふだんジョニーとやっていることだ、と気がついた。
この時点で、そういえば授業中も休み時間も、友だちがまったく近づいてこないと思いあたった。ずっとひとりきりでむっつりとさまよっていたのだ――これまでのマルコムと同じように。そう思うと、いっそうみじめな気分になった。
二人は昼休みに玩具屋へ行き、毒消しを貰おうとしますが、上手く行かず…
↓兄のダグラスの言いつけで、母親と話しがしにくいマルコムが、キャスパーの身体で母親と仲良く話すシーンが良かったですね。
それを見たキャスパー(身体はマルコム)が、嫉妬して怒るところが最高。
台所に入っていくと、夕食の支度を手伝いながら、陽気に母さんとおしゃべりしていたのだ。相手がキャスパーだと信じている母さんは、喜んで会話に応じていた。
キャスパーは戸口につったって、やきもちまじりの怒りと疑惑にさいなまれた。
↓キャスパー(身体はマルコム)が、マルコム(身体はキャスパー)は元に戻りたくないのだろうかと考えるところも最高。
ちなみに、父親の連れ子がダグラスとマルコム、母親の連れ子がキャスパーとジョニーとグウィニーです。複雑…
最悪なのは、マルコムがいかにもうれしそうにしていることだ。毒消しが見つかったとしても、キャスパーとしての生活が楽しすぎて、そのままでいたいと思うのでは、という恐ろしい疑いが浮かんだ。そうなったらこっちはどうなる?
↓暴君の兄・ダグラスに、入れ替わりがバレないように慎重に振る舞うキャスパー(身体はマルコム)ですが、マルコムにしか知らないことを聞かれて怪しまれ、ピンチに…
とはいえ、マルコムの背格好で、ダグラスほど大柄な相手に執念深く追いまわされれば、結果は見えている。つかまったのはちょうどドアの前だった。ダグラスは猛烈な勢いでキャスパーをゆさぶった。
「そら、さっさと吐け。おまえはどいつだ?マルコムをどこにやった?」
{キャスパーだよ」がくがく首がゆれている状態で可能な限り、はっきりと告げる。
↓結局、ダグラスのせいで、他の兄弟にも入れ替わりがバレます。
「もういい、マルコム。芝居はやめろ」ダグラスが言い渡した。
マルコムに視線をむけられ、キャスパーはいまの顔でできるかぎり、万事休すだと知らせようとした。
↓グウィニーが入れ替わった二人を面白がるところが良かったですね。
この後は、ダグラスに命令されて再び粉末交素を飲んで入れ替わって元に戻ります。
「わあい、ほんとのキャスパーだ!」とさけぶ。「話してるとわかるもん。いったいどうしちゃったのかと思ってたの。とくに部屋を片付けはじめたとき」
箱はマのつく水の底!
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『まるマシリーズ』より 『箱はマのつく水の底!』 著者:喬林知 | 有利と村田が階段落ちで入れ替わる。 | 角川書店 角川ビーンズ文庫 『箱はマのつく水の底!』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
「マ王陛下の花嫁は誰だ!?」が男同士入れ替わり。
渋谷有利は、友人の村田健と一緒に歩いていたところ、誤って階段を転げ落ちて入れ替わってしまう。
↓眼鏡ネタや、有利(身体は村田)が村田(身体は有利)を起こすシーンがおいしいです。
なかなか視界がクリアにならなくて、おれは苛ついて両目を擦った。どうしちゃったんだ、頭でも打ったのか?確かに目を開けているのに、ぼんやりとしか周囲が見えない。
「あ、眼鏡ね、眼鏡はここよ。じっとしてて、今かけてあげるから」
女の人に眼鏡をかけてもらうなんて、眼科健診のとき以来だ。いやまてよ、おれは両方とも二・〇だから、生まれて初めての体験じゃないか?
「すいません、何から何までありがとうございま……うわあ、おれっ!おれ大丈夫か!?」
矯正されて曇りの晴れた視線の先には、おれが仰向けに転がっていた。もう一人の若いお姉さんが、ミニスカートからのぞく太腿に頭部を載せてくれている。ほんのちょっとだけ羨ましいぞ。
(中略)
目の前にひっくり返ってるのは、確かに自分自身だった。一六年間鏡で見慣れた渋谷有利だ。バッティング練習時ばかりだったから、ユニフォーム姿しか記憶にないけれど。
「なんで僕が……僕を……覗き込んでるんだろ」
僕?おれの口から僕?ていうか僕って誰!?
「まさか村田!?」
↓その後も眼鏡ネタや身体能力の違いネタや一人称ネタが続いておいしいです。
村田(中身は有利)がツッコミ役に回っているのが良いですねw
村田(身体は有利)は、有名な入れ替わり作品を挙げてよくあることだと言います(笑)
目の前には村田健が座っている。
渋谷有利の姿をした、村田健が。
「すごいな、よく見える。眼鏡もコンタクトもナシでこんなに見えるんだー。へええ新鮮」
「感心してる場合かよ!」
身体がおれで中身が村田の人間は、嬉しそうに周囲を見回してる。なるほど、おれはああいう顔をしてたんだ。
「それに何だか身体も軽いよ」
(中略)
「冷静に言うなー!しかもおれの顔しておれの声で僕、僕って、なんだかすげえ違和感!なんかおれが一気に女々しくなった感じがしてすごく嫌だー!おれの身体なのにおれの声なのに。ホントはおれなのにーっ!」
↓同性同士の入れ替わりで気にしすぎなトイレシーンがヤバくて最高です。
「まてよ村田、おれが今ここで小便をするためには、こ、この手でお前の、つまり村田健の排泄器官を、も、持たなきゃならないってことなんだよな?それも一瞬のことではなく、用を足している間中、他人のブツをだな、ずーっと摘まんでなきゃならないという。うわどうしよう、持ちたくない。激しく持ちたくない!」
おれは隣を覗き込んでまた嘆いた。村田がすでに実行中だったからだ。
「うわ、お前おれの……ぎゃー!見るな!まじまじ見下ろして比べるなッ」
「あのね、何を子供みたいのこと言ってんだよ。誰だってトイレくらい行くんだから。溜めといたら身体に毒なんだから、この際しょうがないだろ?」
(中略)
「うう、おれ村田に握られた……」
「細かいこと気にしすぎ。どうせ指もきみのものじゃないか。ほら、さっさとしちゃいなよ。誰のとか深く考えない!なんだったら介護の練習だと思えばいいよ。お年寄りの手助け。心頭滅却してエイって持っちゃえば、別になんてことないって」
「……そんなことで心頭滅却したくないです」
「じゃあ何だい、僕に手伝えっていうのー?それも嫌なんだろ?」
この後は、二人とも身体の方の家へ帰ることに。
有利の家族は過干渉気味なのに対し、村田の家は放任主義なので、カルチャーショックを受けるシーンが良かったです。
村田(中身は有利)が女の子に告白されそうになる?ところや、有利(身体は村田)が元の自分の評判を聞かされるところも好きですね。
そして、村田(身体は有利)の軽いノリの提案で、再び二人で階段を落ちてみることに。
しかし、無精髭の彼氏と派手な彼女のカップルも一緒に階段から落ちてしまい…
渋谷有利←→派手な彼女
村田健←→無精髭の彼氏
↓若い身体を手に入れたカップルが逃げようとするシーンが最高。
カップルは身体が男性同士になってしまいましたが、気にしないようです。
「駄目みたーい、気が付かなーい。どーしようかー」
若い男が……いや、これは他でもないおれの声だよな。間延びしてはいるが、おれの声だよな。
「しょーがねえな。警察沙汰になんのもイヤだし、このまま逃げちまおうか。」
警察!?
「えーでもあたしこのままじゃ困るよー」
「いいじゃん、七歳くらい若くなったぜ」
「ほんと?若いほうが好き?」
↓派手な彼女の身体になった有利のリアクションも最高。
投げっぱなしエンドです(笑)
慌てて両目を指で擦る。指先が燃えるように真っ赤だった。
「うわ、なんだこれ!?全部の指から大出血してるよ!やばいどうしよう右投げ右打ちなのに……でも全然痛くないんですけど……あーっ!」
それもそのはず、赤いのは女性用のマニキュアだ。何故おれの指が、このような美しさに。
「ちょっとー、普通、血とか言うー?一時間かけた超力作ネールなのにィ」
覗き込んでいた渋谷有利が、いやにカマくさい口調で憤慨した。
「誰っ?ていうか、おれこそ誰ッ!?」
自分の身体から名前も知らない香水の匂いがして、こんなときにもかかわらず鼓動が早くなった。目ははっきり見える。ということは前回の事件のように、村田と入れ替わってしまったわけではなさそうだ。
しゃがんでこちらを見ている渋谷有利の隣に、眼鏡のフレームを歪ませた村田健がいた。「おれたち」は必要以上に身を寄せ合い、しっかりと腕なんか組んでいる。
魔女にタッチ!
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『魔女にタッチ!』 著者:鏡裕之 | 宗人とレオナルドがぶつかって入れ替わる。 | ホビージャパン HJ文庫 『魔女にタッチ!』 第3巻 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
第1章「ボウリングで入れ違い」~第6章「魔法交換」が男同士入れ替わり。
図書室に来ていた豊條宗人は、その場に現れた在原レオナルドとぶつかって入れ替わってしまう。
スケベなレオナルドは、宗人の身体で巨乳のヒロインたちに近づいて…
↓宗人(身体はレオナルド)は、元の自分の身体(中身はレオナルド)が起きるのを見て訝しがります。
姉の真由香は「レオナルド」が嫌いなので、宗人(身体はレオナルド)は敵視されてしまいました。
真由香と静姫が身体を支える。男の顔に、宗人は唖然となった。
その顔は――あろうことか、自分の顔だったのだ。
(ど……どういうこと!?)
(中略)
それにしても、なぜ姉たちは自分のまわりにいないのだろう。もしかして幽体離脱だろうか。
そんなことを考えていると、真由香がきっと宗人を睨んだ。
敵意のこもった憎悪の目だ。
(え?姉ちゃん、なんで……?)
↓ヒロインの清条院静姫、豊條真由香、豊條流奈、黒宮咲耶は、宗人の中身が大嫌いなレオナルドだとも知らずにくっつきます。
宗人(身体はレオナルド)も、レオナルド(身体は宗人)も、何故か喋ることができず、入れ替わったことを伝えることができません。
「お兄ちゃ~~ん!」
隣のベッドに流奈がダイブした。そのまま宗人と同じ顔をした男の首根っこに抱きつく。
男の表情に、にんまりといやらしい笑みが浮かんだ。
(あっ……!)
嫌な予感が走った。
(中略)
男の顔はさらににやけて、崩れている。
(こ、こいつ……!)
おれじゃない、と宗人は直感した。
↓レオナルド(身体は宗人)は、宗人のフリをして帰宅してしまいました。黒いw
宗人(身体はレオナルド)は眺めているだけしかできず、魔堂クローエと一緒に自宅へ帰ることに…
宗人(身体はレオナルド)は、「レオナルド」を心配したクローエに抱き締められます。
真由香と静姫が男の腕をつかんだ。ふくよかなふくらみに腕が触れる。
また男の顔がにやけた。
(まて!おれ!おれはこっちなんだってば!勝手におれを連れていくな!姉ちゃん!静姫先輩!)
流奈も咲耶もついていく。
保健室を出る寸前、男が宗人の方を振り返った。にんまりと笑みを浮かべた。
(あ……あいつ……!)
とっさに宗人は悟っていた。
あれはおれじゃない。レオナルドだ!
だが、声は出なかった。
↓宗人の身体と立場を手に入れたレオナルドは、念願の宗人の家に帰れて喜びます。
静姫、真由香、流奈、咲耶は、レオナルド(身体は宗人)に狙われることに…
宗人の部屋が分からずに、真由香の部屋に入ってしまうところが好きです。
真由香と流奈とのお風呂イベントも美味しかったですね。
しかし、今この豊條家は、レオナルドにとってパラダイスと化していた。リビングには、巨乳美女が勢ぞろいしている。自分を拒否し続けた真由香も、そしてその妹の流奈も、そして咲耶という謎の巨乳中学生も、爆乳生徒会長も、全員が胸に触れさせん勢いでレオナルドに接近している。
(中略)
まさか、こんな美味しい時が我が身に来ようとは……。
(豊條宗人め、毎日こんな楽園で暮らしていたとは、生意気な……)
(しかし、これからは一生このぼくがその幸せを享受するのだ。ムフフフ)
レオナルド(身体は宗人)は、真由香の手料理が壊滅的だと知らずに大変なことに…
「宗人」の様子があまりにもおかしいので、巨乳女子4人組は疑い出します。
そして、うっかり口癖の二重否定が出て入れ替わったことがバレますw
↓帰宅した宗人(身体はレオナルド)は、改めて顔を確認。嫌いな人間になったところが最高です。
ちなみに、声が出ないだけでなく、文字もかけないのでどうしようもありません。
宗人は手に取って自分の顔を映してみた。
そこにあったのは、やはり在原レオナルドだった。自分が邪魔者と思っていた、二重否定の男だ。なりたくないと思っていた男の顔と身体が映っている。
宗人(身体はレオナルド)の方も、クローエとのお風呂イベントがあります。
エッチな出来事が起き、宗人(身体はレオナルド)は絶頂したら喋れるようになりました。
初心な「レオナルド」は、クローエに魔物だと思われてしまいましたが、何とか信じてもらいます。
↓成長した「レオナルド」に嫌われていると不安がるクローエは、中身が宗人のままがいいと言い出して…
「だから、おれはレオナルドじゃなくて……」
「本物のレオナルドよりかわいいもの。今の方がいいわ。ずっとわたしの弟でいない?」
「とにかく、早く宗人を戻して」
「わたしは別にそのままでもいいのよ。あの子、かわいいし、料理も上手だし」
↓入れ替わりを信じてもらった宗人(身体はレオナルド)が、レオナルドの身体で女の子たちと仲良くするシーンが好きですw
クローエの儀式で宗人とレオナルドは元の身体に戻りますが、失敗して宗人が記憶を失ってしまいます。
元に戻ってからも、入れ替わりの話題が出ていました。
レオナルドの姿をした宗人が車から降りると、
「お兄ちゃん?」
「流奈」
「お兄ちゃんだ!」
流奈が抱きついた。
宗人は妹の頭を撫でた。
東京騎士王国(TOKYOナイトキングダム)
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『東京騎士王国(TOKYOナイトキングダム)』シリーズ 著者:南原兼 | 紫と紅が入れ替わる。 | 小学館 パレット文庫 『東京騎士王国 スウィート・ガーデン』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
第3章「ティファレト(美)の薔薇の戯れ★」から第6章「マルクト(王国)の白い残照★」までが男同士入れ替わり。
異空間の東京騎士王国で騎士として戦うことになった高校生の天河兄弟たち。
ある日、竜と戦うことになったメンバーだが、何故か生徒会長の北条紫と番長の東雲紅が入れ替わってしまった。
↓紫と紅はホテルの同室の同じベッドで寝ていたので、目が覚めたら隣に元の自分が寝ているという状況に…(笑)
視力は精神準拠のようで、紫(身体は紅)が紅の身体で紫の眼鏡をかけていて、紅(身体は紫)が裸眼なのが新鮮です。
なぜなら、鏡に映っている顔が、仇敵…北条紫の顔で、かたわらに寝ている男の顔こそが、自分自身…東雲紅の顔だったからだ。
↓他にも、言葉遣いネタだったり、二人が犬猿の仲だったりとおいしいですね。
紅(身体は紫)に言葉遣いを注意された紫(身体は紅)は、仕返しに変な語尾で喋りますw
ぐらつく眼鏡の中心を指で押さえたまま顔をあげると、目の前に見慣れた顔がある。
一瞬鏡を見ているのかと思ったが、自分と同じその顔には、眼鏡がなかった。
「俺にだって、わからねぇよ」
乱暴な口調で答える相手の声こそが、自分自身の声だ。
「なんだ、その言葉使いは!」
紅の声でならまだ許せるが、自分の声でそのような口調は許しがたい。
(中略)
(こっちは、俺の声で、やたら堅苦しい口調でしゃべられて、むずがゆくってたまらないのを、文句も言わずに我慢してるっていうのによっ)
仲の悪い二人はとりあえず喧嘩は休戦し、協力して入れ替わりがバレないように振る舞うことに。
精神の方の武器を持っていたり、口調を隠す気がなかったりとめちゃくちゃですが、敵を欺くための作戦だということで仲間たちを納得させます。
紅(中身は紫)が紫(中身は紅)の身だしなみを整えているところに仲間たちがやってくるシーンがピンチで笑いました。
↓食べ方に関しても全く相手になりきる気がない二人が最高ですw
「マジうめぇっ」
それが紅の台詞なら気にもとめないが、なんと…その言葉が飛び出したのは、ガツガツと骨つき肉に喰らいついていた紫の油まみれの口からだったのである。
(中略)
しかし、その刹那、眼鏡をかけた紅が苛立たしげに紫をにらんでいるのを、偶然目撃してしまう。
「いい加減にしろ。行儀が悪い…」
我慢ならないと言いたげに、紅は紫を低い声で叱りつける。
(なぜ紅さんが紫を?)
逆に、紫が紅を叱責するところなら何度も見てきたが、二人の性格上、逆転はありえない。
そして紅(身体は紫)は、紫の魂を狙う悪魔のフェウレスに襲われてしまいます。
しかし、フェウレスはキスで紅の魂が紫の身体に入っていると知り、紅(身体は紫)を倒そうとして…
紅(身体は紫)がフェウレスと相打ちで死のうとするシーンが熱かったです。
入れ替わりは、未来の操作ミスによるバグだったようで、二人は無事に元に戻るのでした。
↓入れ替わっている間に相手がカスタマイズした制服を直すシーンが好きです。
自分のからだをさわり、相手の服の色をチラと確認した二人は、ホッとしたように同時に吐息をつく。
「返せ…」
紫が、紅から眼鏡を取り戻し、腕まくりをした袖を伸ばし、胸もとを閉じる横で、紅は逆に、自分の証である赤い短ランの胸もとをはだけ、いそいそと腕まくりしている。
↓ドラマCD版はこちら!
STAND BY ME ドラえもん2
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『STAND BY ME ドラえもん2』 原作:藤子・F・不二雄 著者:山崎 貴 | のび太が青年のび太と入れかえロープで入れ替わる。 | 小学館 小学館ジュニア文庫 『小説 STAND BY ME ドラえもん2』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
静香との結婚式を目前に控え、怖じ気づいて失踪してしまった青年のび太。
ドラえもんとのび太は、青年のび太を結婚式に連れ戻すために探すことになった。
のび太は、青年のび太を説得するために、入れかえロープで入れ替わってみることに。
冒頭でのび太とドラえもんが入れかえロープで入れ替わります。
精神の入れ替わりで声は身体の声な描写でした。
↓精神がロープを通って肉体に入る流れに興奮しました(笑)
のび太の視界は急速に縮んでいくと、細いチューブの中を進んでいった。
その視界はロープのねじれに沿ってぐるぐると螺旋状にめぐりながら、ドラえもんが持っているロープの反対側を目指して移動していった。そしてドラえもんの手に到着すると、そこからドラえもんの体の中に吸収されるように広がっていった。
「入れ替え完了しました」
ロープの声で気がつくと、目の前にはなんとびっくりしたようなおもしろがっているような顔をしたのび太自身が立っていた。
「うわあなんだこれ、変なの」
のび太が思わずつぶやいた声はドラえもんの声だった。
目の前ののび太の姿をした者が、のび太の声で、でも話し方はドラえもんそのものの言い方でこう宣言した。
↓のび太とドラえもんの入れ替わりは約4ページと短いですが、お互いの身体を確かめるというお約束を押さえていて、これだけでも見る価値がありますw
特に、ドラえもんの身体を体験するのび太が最高です。
「ぼく、ドラえもんになっちゃった」
のび太はなんだか不思議な感じがした。目の前には自分自身が物珍しそうに手を握ったり開いたりしている。
のび太も今しかできないことをやってみようと考えた。しばらく考えて、のび太はまず尻尾を振ってみることにした。
確かにそれはドラえもんのボディでしかできない体験だ。
やってみると、なんだかおしりのあたりがむずがゆい。不思議な感じだ。
続いてのび太はお腹を見下ろしてみた。そうかドラえもんのお腹は上から見るとこんな感じなんだ。
まん丸の手で机の上にあったボールペンを持ちあげると、それはすいっと磁石のようにくっついた。なんだか楽しい。
↓のび太は、結婚式で不在の青年のび太の代わりにタイムふろしきで青年のび太に変身したばかりだったので、身体が青年のび太に入れ替わっても特に目新しさは感じません(笑)
青年のび太は、子供時代にやり残したことがあるはずと言って、のび太の身体で過去の周囲の人と絡みます。
ただ、目の前に手や体をうれしそうに眺めている自分自身がいるのが不思議な感じがした。
「おおーっこの感じこの感じ!なーつかしい」
どうやら青年のび太にとって、少年のび太の体はノスタルジーを誘うもののようだった。
青年のび太(身体はのび太)は、若いママや、若いジャイアン、若いスネ夫にテンション高く話しかけます。
文中で、のび太(身体は青年のび太)は「少年姿の青年のび太」、青年のび太(身体はのび太)は「青年姿の少年のび太」と書かれていてシュールですw
↓入れかえロープは試供品で、一時間以内に元に戻らないと入れ替わった二人の意識が混濁してしまうようです。
「あのロープはですねぇ。使って一時間もすると、入れ替わった二人の意識が混濁して、記憶を失ってしまう場合がありまして。なんというか、脳に負荷がかかりすぎるというか……」
「使って一時間で二人の意識が混濁?」
「ちょっと、待って……じゃあぼくたちの記憶は?」
青年のび太(身体はのび太)が不良に絡まれているうちに、制限時間は刻一刻と迫っており…
↓元に戻れなくなるところがドキドキしますね。ちなみに、この入れかえロープは喋ります(笑)
しかしロープから音声ガイドが冷たく流れた。
「もう元には戻せません」
ドラえもんがヘナヘナと座り込んだ。事態は最悪の状態に至ってしまったようだ。
↓どこでもドアで「青年のび太」のところに行こうとしたドラえもんが、のび太(身体は青年のび太)のいる場所に着くシーンが好きでした。
「大人って……こののび太くんのことじゃないんだけど。えーーどうしようどうしよう」
ドラえもんは悩んだ。どう言えばどこでもドアは行きたい目的地に開いてくれるのだろう。
「待てよ……ちゃんと正確に言ったら、どうなるんだろう?大人ののび太くんの心が入った……子どもののび太くんのところへ!」
ドラえもんは今度こそと思いながら、再びどこでもドアを開いた。
紅いバラに御用心!!
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『紅いバラに御用心!!』 著者:岡野麻里安 | ダージリンとアール・グレイが呪いで入れ替わる。 | 集英社 集英社スニーカー文庫 『紅いバラに御用心!!』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
第4話「年末年始に御用心!!」が男同士入れ替わり。
ダージリン・ライトは、アール・グレイの護衛官を任されていた。
ある日、暖炉に薪をくべていたところ、薪の一つが薪に擬態した毒狐で、爆発が起こり二人は入れ替わってしまう。
呪いを解いて元に戻るには、妖精の湖に入らないといけないのだが、崖崩れで湖が埋まってしまい…
↓入れ替わり直後の描写がおいしいです。
「こっ……これっ、これっ、これっ!嘘だっ!こんなのっ……!」
美青年は、普段の彼らしくもなく、弱気な目つきで周囲をキョロキョロ見まわしている。
それもそのはず。
(なんで、オレが目の前にいるんだよっ!?)
床に座りこんだダージリンの目の前には、皮肉めいた笑みを浮かべた、灰色の軍服の青年が立っている。
黒髪と、めずらしい紫の瞳。
(オレだ……)
青年は、軍服の胸の前で両腕を組んでいた。
「ダジ君……少し落ち着きたまえ」
黒髪の青年は、静かに言った。
ダージリンの顔と声で。
↓アール・グレイはナルシストで、元の自分を見てうっとりw
振り回されるダージリン(身体はアール・グレイ)がかわいそうで好きです。
ずずずいっと、ダージリンに、日に焼けた顔を近づけてくる。
「な……なんですか、アール・グレイさま?」
「こうして見ると、私は本当に綺麗だね……」
アール・グレイは、自分の顔をまぢかで眺めながら、うっとりとして言う。
(こ……この人は……)
アール・グレイは、日に焼けた両手をのばして、豪華な金髪のあいだにある、ダージリンの白い両頬をつつみこんだ。
「美しい……惚れ惚れするな……」
「ちょっと……アール・グレイさま……っ!何するんですかっ!?」
自分の顔が、どアップで近づいてくるのは、不気味だ。
ダージリンは、アール・グレイの両手首をつかんで、必死に押し戻す。
「やめてくださいっ!」
「いいじゃないか、ダジ君。どうせ本来は、私の体だ。触ろうが、どうしようが、私の勝手だろう」
「オレの体は、大事にしてくれてないみたいじゃないですか!ああっ!やめてくださいっ!神聖な軍服を、そんなふうにあつかうなんてっ!」
「まあまあ、固いことは言いっこなし」
アール・グレイは、ボタンを全部外し、軍服の前をパッと開いた。
そのまま、踊るような仕草で、軍服を右肩から、するりと落としてみせる。
「ああっ!」
「ダジ君、そう興奮しないでくれないかね。自分の体だろう」
「興奮してるんじゃありませんっ!嫌がってるんです!」
アール・グレイは、クスクス笑いながら、上半身裸のまま、いろいろポーズをつけてみせる。
「私には負けるが、君もけっこういい体してるね、ダジ君♡ほーら、肩甲骨がセクシーだよ」
「もう勘弁してくださいよう!自分のストリップなんか、見たくないですぅーっ!」
そこに、アール・グレイの美貌に嫉妬するガンパウダーが襲ってきて…
アール・グレイがダージリンの身体でピンク基調の恥ずかしい服を着るところが最高でしたねw
二人はぬいぐるみの魔法で無事に元に戻りますが、アール・グレイはダージリンの身体で好き勝手していたようで、元に戻ったダージリンは女性トラブルに巻き込まれてしまうのでした。
最後は、入れ替わり体質が癖になってしまい、また入れ替わります(笑)
今回は、小説の男同士入れ替わり回を6作品紹介しました。
読んでいただいてありがとうございました!