女同士入れ替わり

小説の女同士入れ替わり③【3作品】

女同士入れ替わり2

今回は、小説の女同士入れ替わりを3作品紹介していきます。

 

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ぶつかった女

※この項目には作品に関するネタバレが含まれています。

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『ぶつかった女』
著者:新津きよみ
殺人犯の女性二人がぶつかって入れ替わる。 廣済堂出版
廣済堂文庫
『異形コレクション9 グランドホテル』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

ようやく殺人事件の時効を迎えた高梨充子だが、昨日殺人事件を起こしたばかりの加藤美佳とぶつかって入れ替わってしまう。

捕まりたくない充子(身体は美佳)は、何とか記憶喪失になった美佳(身体は充子)に接触して、元に戻ろうとするが…

 

  • 二人の視点が交互に書かれている
  • 二人は似たような喋り方
  • 二人とも偽名を使っている
  • 二人とも肉体名呼び、精神名呼びを使い分ける
  • 片方が記憶喪失
  • 入れ替わったと判明するのは終盤

上記の理由などから、最初に読んだ時にはかなり混乱しました(笑)

非常にややこしい叙述トリックが面白かったです。

 

ということで、冒頭は充子が時効を迎える日にグランドホテルへ向かうシーン。

初見では美佳のシーンに思えますが、充子です。モブ女性たちの会話が入れ替わり的に良かったです。

充子が本名を「鈴木陽子」に変えているのも混乱させるミスリードでした。

しかし、充子は美佳とぶつかって、気を失ってしまいます。

 

↓次の場面は、記憶喪失になった美佳(身体は充子)が慌てるシーン。

ここまでに美佳の人物像は一切出てきておらず、「充子」が記憶喪失になったように思えましたが、美佳(身体は充子)の視点です。

どこへ行こうとしているのか、ここがどこなのか、まるでわからない。
自分がなぜここにいて、何をしようとしているのか。それどころか……自分が誰かも、やはりまるでわからない。

 

↓美佳(身体は充子)が自分自身を「鈴木陽子(充子の偽名)」だと思い込むのがヤバかったですね。

鈴木陽子様 あなたの人生、僕が引き受けます。市村
――鈴木陽子?
それが、わたしの名前だろうか。鈴木陽子、と小さく声に出してみても、ぴんとこない。市村のほうも同じだ。
何かにぶつかって転倒し、後頭部にこぶをもらったかわりに、自分に関する記憶を喪失した。その事実はもう疑いようがなかった。「鈴木陽子」という自分が、「市村」という恋愛関係にある男に会いに行くところなのだろうか、と想像してみた。

 

↓充子の身体は、警察を恐れているようです。

本当は、充子の身体も美佳の精神も警察を恐れているのですがw

御守りに書かれた番号をプッシュし始めたら、後ろを自転車が通る気配がした。顔を振り向ける。途端に凍りついた。指が震える。心臓がおかしなほど高鳴った。
自転車で通り過ぎたのは、制服姿の警察官だった。いわゆる巡回中のおまわりさんだ。
わたしは、はっきりと悟った。自分の名前も年齢も職業もわからないが、ただ一つ身体でわかっていること。それは、<わたしは警察を恐れているらしい>ということだった。

 

充子(身体は美佳)は、グランドホテルにチェックインした美佳(身体は充子)に接触。

↓充子(身体は美佳)は美佳(身体は充子)を肉体名呼びで「鈴木陽子」と呼んでいるため、ここもどちらの視点かわかりにくいものの、語り手は充子(身体は美佳)です。

直前まで充子(身体は美佳)の視点で、場面が繋がっているので余計に混乱します(笑)

よく考えると充子(身体は美佳)は記憶喪失のため、現れた女が「鈴木陽子」だとわかるはずがないのですが。

身体を温めるためにホット・コーヒーが飲みたくなった。ルーム・サービスで頼めるだろうか。立ち上がった瞬間、部屋のチャイムが鳴った。心臓が跳ね上がった。

4
ドアから現れた女の顔を見て、わたしは息を呑んだ。そこには、魂を抜かれたような表情の「鈴木陽子」の蒼白な顔があった。

 

充子(身体は美佳)は、美佳(身体は充子)に「自分はあなたのセラピストで、山本だ」と嘘をつき、何とか誘導して元に戻ろうとします。

↓しかし、テレビに映った「殺人犯の加藤美佳」の顔を見た記憶喪失の美佳(身体は充子)は、充子(身体は美佳)を殺人犯だと怖がります。倒錯の極みですw

ここは美佳(身体は充子)の視点です。充子(身体は美佳)の「あなたの(今使っている身体の)本当の名前は、高梨充子なのよ」と、肉体的な正体を教えるセリフが色々と大事な部分が抜けているのが混乱ポイント。

画面には、被害者である男性と、容疑者と目される女――加藤美佳、二十八歳の顔が映し出された。
「あっ」
わたしが声を上げたのと、バス・ルームから出て来た山本さんが声を上げたのと、同時だった。一瞬、あたりの空気が張りつめた。
「山本だなんて……うそだったんですね」
「ち、違うのよ」
山本さん――いや、もう山本ではない。殺人犯だ――は、うわずった声で言った。
「あなたも鈴木陽子じゃないのよ」
――わたしが鈴木陽子じゃない?どういうことだろう。
頭が混乱した。
「あなたの本当の名前は、高梨充子なのよ」
「タカナシ……ミツコ?」
何の感慨も呼び起こさない名前だ。

 

外に飛び出した美佳(身体は充子)は、また転んで記憶を取り戻します。

↓最後のシーンは、充子(身体は美佳)視点。充子(身体は美佳)が美佳が殺人犯だと知ってショックを受けていたのが萌えますね。

充子(身体は美佳)が美佳(身体は充子)に「本当のあなたは、殺人者の加藤美佳」と、今度は精神的な正体を教えていて最高です。

「じゃあ、こんな格好をしたわたしは」
彼女は、そこで言葉を切った。
――そう、本当のあなたは、殺人者の加藤美佳。
内心で、わたしはその先を続けた。テレビでそれを知ったときのショックと言ったら……。

 

↓記憶を取り戻し、時効を迎えた安全な身体に入ったと理解した美佳(身体は充子)が、充子(身体は美佳)に罪をなすりつけるバッドエンドでした。

美佳(身体は充子)が充子(身体は美佳)に頭のおかしい人扱いをされるところが堪りません。

ここも「(高梨充子の身体になっている)加藤美佳の口からは」と精神名呼びになっていてわけがわからないです(笑)

いきなりわたしの顔と肉体を持った女――加藤美佳が立ち上がり、彼らのほうへ「助けてください」と両手を差し出し、救いを求めた。
あっけにとられているわたしをよそに、加藤美佳の口からは予想もつかぬ言葉が飛び出した。
「この人、昨日、東京で同居している男を殺したんです。わたしが目撃したと思って、口を封じるために追いかけて来たんです。わたし、殺されます。助けて!」
「う、うそです」
わたしは、必死に否定した。「彼女、ちょっと頭が変なんです。記憶が混濁していて。あの……話せばわかります。見かけはこうですけど、実際はわたしのほうが彼女で、彼女のほうがわたしなんです」
男女は、気味悪そうに顔を見合わせた。
「ほら、おかしいのはこの女のほうでしょう?」
加藤美佳が、きっとわたしを指さした。

 

冒頭のグランドホテルの話も、オチでちゃんと入れ替わり的な意味でも持ってきており、良かったです。

混乱させる描写が入れ替わり的に最高に面白いのでオススメの作品でした。

 

男装騎士、ただいま王女も兼任中!

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『男装騎士、ただいま王女も兼任中!』
著者:六つ花えいこ
男装騎士が王女に入れ替えられる。 星雲社 アルファポリス
レジーナブックス
『男装騎士、ただいま王女も兼任中!』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

男装騎士、ただいま王女も兼任中!

エレノア・オースティンは、性別を偽って一目惚れした王女・ベアトリーチェの近衛騎士となった。

ある日、エレノアはローレンツ王子とのお見合いを嫌がったベアトリーチェに駆け落ちを頼まれ、実は男装している女性だと伝えたところ、怒ったベアトリーチェに不思議な鏡で入れ替えられてしまう。

ベアトリーチェはエレノアの身体で逃亡してしまい、エレノアはベアトリーチェとしてお見合いを強いられることになった。

 

エレノアは騎士だった祖父に育てられ、ムキムキの脳筋キャラです。

↓冒頭が入れ替わった状態でのお見合いで、入れ替わったことをしばらく読者に隠している描写が良かったです。

「生まれた時に両親から授かった名前とは、違う名前で呼ばれる。」「正真正銘ベアトリーチェの体でありながら、心は泣き叫んでいた。」あたりのセリフが特に刺さりました。

「ベアトリーチェ様を退屈させぬよう、精進致します」
生まれた時に両親から授かった名前とは、違う名前で呼ばれる。
手の甲に、そっと口づけを落とされた。
(振り払いたい)
絶望した心でそう思った。普段の自分ならば、絶対にこんなことさせはしない。
むしろ、どちらかといえばする方である。
真っ直ぐ射貫いてくる瞳を見ていられず、笑みを深めるふりをして目を細めた。
侍女が背後から厳しい視線を送ってくるが、王女は全てを黙殺する。
(――だって、もう無理!これ以上は絶対ボロが出る!だって私……姫様じゃないし!)
正真正銘ベアトリーチェの体でありながら、心は泣き叫んでいた。
エレノア・オースティン――王宮騎士である彼女は不運なことに、王女ベアトリーチェと精神が入れ替わってしまっていたのだ。

 

エレノアはノア・リアーノの偽名でベアトリーチェに接しています。

ベアトリーチェに駆け落ちを頼まれたエレノアは、男性ではないことを伝えたら、怒ったベアトリーチェに入れ替えられてしまいました。

急に怒り出すベアトリーチェが恐怖ですねw

 

↓ベアトリーチェは、エレノアに自身を縛り上げさせ、入れ替わった時にエレノアが身動きが取れないようにします。

エレノアが縄を端まで巻き付けると、ベアトリーチェは両手両足を動かし、抜け出せないことを確認する。そして、顎をしゃくってエレノアに命令した。
「エレノア、そこに立ちなさい。わたくしの真正面に」

 

↓超一方的に入れ替えて去っていくベアトリーチェ(身体はエレノア)が最高ですw

エレノアボディで「わたくし」というベアトリーチェが美味しいです。

――キン
鈴が弾けるような高い音がした。目眩を感じたエレノアは、倒れて国宝を落とさぬよう、足に力を入れる――が、何かがおかしい。いつの間にか俯けていた顔を上げて……エレノアは驚愕する。
「上手くいったようね」
そこに満足げに立っているのは、紛れもないエレノア自身だった。
「なんだか違和感があるけど……まぁしょうがないわ。慣れないうちはこのようなものでしょう」
何故か身動きのとれない自分と違い、目の前のエレノアは自由気ままに動いている。
「さぁエレノア――いえ、ベアトリーチェ。お見合い、頑張ってね。大丈夫。お前は今までずっとわたくしのそばにいたのだから、わたくしになりきることくらい簡単でしょう」

 

↓ベアトリーチェ(身体はエレノア)は、慣れない身体で走りにくいようです。

追いかけるエレノア(身体はベアトリーチェ)の方も、慣れないドレスに足を取られて転びます。

走り慣れないせいかリズムのおかしい足音を、呆然と聞いていたベアトリーチェだが……

 

ベアトリーチェ(身体はエレノア)を捕まえることはできず、エレノアはベアトリーチェとして過ごすことに。

侍女のネージュも入れ替わり現場にいたため、エレノア(身体はベアトリーチェ)に協力してくれます。

↓ネージュはエレノア(身体はベアトリーチェ)のことを「ベアトリーチェ様」と呼びます。

「リアーノ卿……いえ、ベアトリーチェ様」
ネージュがエレノアのことを初めて「ベアトリーチェ様」と呼んだことで冷静さを取り戻す。

 

↓男性として育てられてきたエレノア(身体はベアトリーチェ)が、いきなり王女としての振る舞いを強要されるのが最高ですね。

ローレンツ王子との見合いはネージュが背後から指揮を執ってくれますが、エレノア(身体はベアトリーチェ)は散々な言動をしてしまいます。

「眉根は寄せず、お手は膝の上。お足を開くなんて以ての外です。両膝を揃え、角度は垂直をキープ、もしくは視線の方向に流してくださいまし。ドレスに隠れているからといって油断なさいませぬよう。踵もつま先もできる限り揃えること。背筋は伸ばし、座面の手前に軽く腰掛けるのです」
エレノアはネージュの言葉に目を見開く。今の自分は、まるで正反対のことをしていたからだ。

 

↓エレノアが体力の無いベアトリーチェの身体に苦労するシーンも良かったですね。

エレノア(身体はベアトリーチェ)は、ダンスの男性パートを踊ろうとしたり、歌を強要されて剣舞を踊ったり、襲ってきた猪を倒したりと面白いです(笑)

ベアトリーチェ本人は変人の王女で、多少変な行動をしてもおかしくないのも面白いですw

これが自分の身体ならいざ知らず。フォークより重いものを持ったことのない王女の体は、ほんの少し無理をするだけで疲弊する。今も全身の筋肉がプルプルプルと情けなく震えていた。
エレノアは疲れ切った頭でネージュの言葉を反芻し、理想のポージングを保つ。
「……騎士団の訓練よりもきつい」
「では、これも鍛錬と思い、決して怠けられませぬよう」

 

↓ローレンツ王子と従者のセスは、名前と立場を交換して過ごしています。

ローレンツ王子だと思っていた黒髪の人物はセスで、セスだと思っていた金髪の人物はローレンツ王子です。

「知ってるぞ、セス。お前ダンスのとき、足踏まれてただろ」
セスと呼ばれた黒髪の青年は、問答無用でもう一人を室内に放り込む。
続いて自分も中に入ると、ドアを閉め、にこりと微笑んだ。
「誰が聞いているかもわからぬところで、みだりにその名を呼ぶのは感心しませんね、ローレンツ殿下」
「あー……えっと、セスさん?なんか怒ってね?」
二人は、日頃人前で名乗っているものとは反対の名で呼び合う。
普段は従者のふりをしている金髪の青年ローレンツ、逆に王子のふりをしている黒髪の青年をセスと。

 

↓「成り代わり」をしているローレンツとセスの会話が面白いです。

ローレンツとセスは、エレノア(身体はベアトリーチェ)とネージュが「入れ替わり」について話しているのを自分たちのことだと勘違いするところが最高でしたねw

本当に精神が入れ替わっている人物がいるとも知らずに…(笑)

「お、なんだ?自分の嫁にしたくなったか?」
にやにやと下品な笑みを浮かべる主に、セスは微笑む。
「ならば、東の果ての国で見た呪法を使って、貴女の体を乗っ取るしかありませんね。王女を妻に迎えるには、私の身分では不足ですから」

 

↓この後は、エレノア(身体はベアトリーチェ)が「ローレンツ王子(本当はセス)」を本当に好きになってしまい、叶わぬ恋に苦しむというストーリーです。

一応、ベアトリーチェ(身体はエレノア)は戻ってくる意志はあるようなので、余計にエレノア(身体はベアトリーチェ)は悩みます。

「絵本の中の王子様と、お姫様みたいじゃないか……」
力なく呟いた言葉。
けれど、これ以上ないほどしっくりときていた。
(そうだ。「みたい」なんじゃない)
ローレンツは正真正銘の王子様だ。そして、この体の主であるベアトリーチェも王女様だ。
そんな二人は、どこからどう見てもお似合いだったに違いない。あれだけベアトリーチェを目の敵にしていた令嬢達でさえ、呆けたように見上げていたのが、その証拠だろう。
絵本の中のお姫様と王子様のように、お似合いの二人。
(――でもお姫様は、私じゃない)
ドレスも似合わないエレノアは、舞台に上がることすらできない。

 

↓入れ替わり的においしい描写が所々にあって良かったです。

エレノアも何度か会話したことのある年嵩の宮廷医が、王女の体を診察する。
自分がベアトリーチェの体に入っていることは、こうして第三者と接した時に一番強く実感するのだった。

ベアトリーチェの体とエレノアの体では、酒の許容量が違うらしい。

 

↓豊穣祭の日に、ベアトリーチェ(身体はエレノア)が現れます。

ベアトリーチェは、男装ばかりしてきたエレノアの身体で、町娘のような格好をしています。

ベアトリーチェ(身体はエレノア)が男装を辞めたせいで、エレノアを女性だと知らない追手は今まで捕まえることができなかったようです。

観衆の隙間に見えるベアトリーチェは、ごく普通の町娘のような格好をしていた。
誰かに借りたのか、豊穣祭の日に村娘達がこぞって身につける、花で飾られたボンネットを被っている。マントを羽織っているが、その下も町娘らしいワンピースだろう。筋肉質なエレノアの体でも不気味に見えない着こなしは、さすがとしか言えない。

 

エレノア(身体はベアトリーチェ)が女性ものの服を身に着けた元の自分自身を「女装している」と表現するのがおかしいです(笑)

↓ベアトリーチェ(身体はエレノア)のエレノア(身体はベアトリーチェ)に対する言動が好きですw

彼女の方も、エレノアが自分を見ていることに気付いたのだろう。勝ち誇ったような笑みを浮かべると「んべ」と舌を小さく出した。

 

豊穣祭の途中、ベアトリーチェ(身体はエレノア)が何者かに連れ去られてしまい…

入れ替わりを知らないローレンツ王子(実はセス)が、ベアトリーチェ(身体はエレノア)の言葉を自分たちの成り代わりについて話したものだと勘違いするところが最高でしたw

 

好きになったローレンツ王子が実はセスで、エレノア(身体はベアトリーチェ)は結ばれることができると知ります。

↓ベアトリーチェ(身体はエレノア)の方は、「エレノア」と名乗り、セス(実はローレンツ王子)といつの間にか恋仲になっていたようです。

色々と状況が複雑でややこしいですw

「結局、その程度で脱落する王子じゃ王にはなれないっつーことなんだよな。俺は王位継承なんかどうでもいいけど――エレノアと、自分の命を諦めたつもりはない」
ローレンツの迫力籠もった瞳を見てもらえず、エレノアはそっと顔を逸らした。
(やめてくれー!キリッとした顔で、そんな風に私の名前を呼ばないでくれ!むずむずする!正直、ぞわぞわする!)
真面目なシーンだということはわかっているのだが、どうしても耐えられない。
もう何年もまともに呼ばれていないとはいえ、やはり「エレノア」という名前を口にされると居心地が悪い。

 

↓エレノア(身体はベアトリーチェ)とベアトリーチェ(身体はエレノア)のやりとりが美味しかったです。

姫ボディが従者ボディを助けに行くシチュが最高でした。

「……捨てられた犬のような声ね。情けない。わたしは無事です。泣くのはやめなさい。わたしの顔で泣くことは許しません」

「姫様っ、失礼しま――」
彼女を抱き上げて移動しようとしたが、すぐに膝をついてしまう。ベアトリーチェの腕では、エレノアの体を持ち上げることができなかったのだ。
「自分で歩けます」
ベアトリーチェは自力で立ち上がり、ぱっぱと簡単に服の誇りを払った。エレノアが舞台上から見たときと同じ服装だ。多少着崩れてはいるものの、乱れているというほどではない。
「……お前の体を危ない目にあわせて、悪かったわね」
後悔にまみれた声だった。エレノアは彼女の前に立ち、その両腕を摑む。
「姫様。あいこでございます」
エレノアの方こそ、ベアトリーチェの体で好き勝手している。その気持ちが伝わったのだろう。ベアトリーチェはくしゃりと笑った。
しかし、一瞬の後には真顔に戻る。
「――わたくしのことはノアと呼ぶように。わかりましたね、
「ひゃ、ひゃい」
(きちんと呼べるだろうか……そう思うと、セス殿とローレンツ殿下は、やはりすごい……)
二人は完璧にお互いの名を呼び合えていた。二人の演技力に改めて舌を巻く。

 

その後、第7章でエレノアとベアトリーチェは元の身体に戻ります。

↓ベアトリーチェは、入れ替わっていた間にエレノアとネージュが仲良くなっていたことに嫉妬?します。尊いです。

エレノアは顔を触り、手を開いて閉じ、くるっと回って、自分の体であることを確認する。
正しく、二十一年間慣れ親しんだ自分の体である!
「あぁ、ベアトリーチェ様……おかえりなさいまし。エレノアさんも、ご無事でようございました……!」
両手を上げて喜んでいるエレノアとネージュを、ベアトリーチェは白い目で見ていた。
「私がいない間に、随分と仲良くなったようじゃない」
(ええ、そりゃあまあ、姫様からの強烈な無茶ぶりを、なんとか二人でこなしてきましたから!)
声に出さずとも、エレノアとネージュの心は一つだったに違いない。そんな二人が面白くなかったのか、ベアトリーチェは腰に巻いてある帯を解きながらふんと鼻を鳴らす。

 

エレノアは、ベアトリーチェに自堕落な生活を送られて思い通りに動かない身体に不満を覚えつつも、楽な格好に涙して喜びます。

↓入れ替わっていたことを知らない上司にたるんでいると起こられるエレノアが理不尽で好きですねw

「二百八十、二百八十一……リアーノ!体がたるんでるぞ!随分と休暇を楽しんだようだな……スクワット、一からやり直し!」
鬼上司ジェラルドの命令が訓練場に響き渡る。エレノアは息の上がりきった体に鞭打ち、敬礼した。
――そう。エレノアは無事、自分の体に戻っていた。
入れ替わっていた間、ベアトリーチェはよほど自堕落な生活をしていたのだろう。思うとおりに動かない自分の体に苛立ちつつも、懐かしさと喜びを感じる。世界一の美女ではなくなったが、エレノアは長年鍛え上げた自分の体を好いていた。
「服が、靴が、髪が、死ぬほど楽だ……!」
しこたま怒られているというのに、感極まって泣き出してしまいそうになるくらいには。

 

セス(実はローレンツ王子)を好きになったベアトリーチェは、エレノアが見合いを成立させてしまったローレンツ王子(実はセス)との結婚を嫌がります。

エレノアはベアトリーチェに、ローレンツ王子とセスは成り代わっていたため、ベアトリーチェが本当に好きなのはローレンツ王子だと伝えます。

 

しかし、ベアトリーチェは入れ替わっていた事実を本物のローレンツ王子に伝えたがらず…

エレノアの方も、本物のセスに元に戻ったことを気付いてもらえず…

 

↓入れ替わっていたことを知らない本物のローレンツ王子が、元に戻ったエレノアに塩対応されるところはかわいそうでしたね。

入れ替わり状態で知りあって親交を深めた人物と元に戻ってからの絡みも好きなので刺さりました。

親し気な笑みを向けてくる彼に、エレノアはすげなく返す。
「私のことは、どうかノアとお呼びください」
「冷たいなぁ。俺が王子だってバレてから、ずっとこれだよ。どう思う?ベアトリーチェ様。はああ……ノアだけはそんな女じゃないと思ってたのにさ」
(「そんな女」も何もない。元の自分に戻っただけです)
とはいえ、ローレンツやセスが戸惑うのも致し方ないだろう。当のエレノアでさえ、まだ感覚が全て元通りになったわけではない。

「俺なんて、ノアには会う度に殴られていたからなあ」
「……そ、そんなに殴っていましたか?」
エレノアが思わずベアトリーチェを見ると、彼女は赤らめた顔をさっと逸らす。
「さ、三回に一回程度でしょう。ねえ、ローレンツ様」
「三回に五回の間違いだろう?」
「そんなに殴っていません!」
ベアトリーチェが自分のことのように断言するものだから、ローレンツは驚いて彼女を見ていた。エレノアは慌ててフォローに入る。
「姫様は私を庇ってくださっているのです。ご容赦ください」

 

↓最後はちゃんと入れ替わりを見抜いてもらえ、エレノアはセスと、ベアトリーチェはローレンツ王子と結ばれてハッピーエンドでした。

「その表情は、どんな顔であってもそのままなんですね」
「え?」

 

婚約破棄されて闇に落ちた令嬢と入れ替わって新しい人生始めてます。

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『婚約破棄されて闇に落ちた令嬢と入れ替わって新しい人生始めてます。』
著者:やきいもほくほく
現代の女性と異世界の公爵令嬢が幼少期の相手と入れ替わる。 アルファポリス
レジーナブックス
『婚約破棄されて闇に落ちた令嬢と入れ替わって新しい人生始めてます。』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

事故死した苦学生の野薔薇は、同時期に異世界で策略に嵌まって死亡した公爵令嬢のローズレイと入れ替わることになった。

数年前の時間軸のローズレイに逆行転生した野薔薇は、死の運命を回避しようと行動するが…

 

↓幼いローズレイの身体で目覚めた野薔薇のシーンから始まります。

頭がひどく重たく感じて額を押さえようと手をのばして、彼女は手の小ささに驚き、そのまま固まってしまった。
(本当に『あの子』の……ローズレイの体だ……)
陶器のように白い肌……美しい白銀の髪が頬を撫でた。
少女は目覚める前のとある『出会い』により今の状況を頭では理解しているが、妙な感覚だった。

 

↓野薔薇(身体はローズレイ)は、死ぬまでの野薔薇の記憶を持っていて、さらに死ぬまでのローズレイの記憶も持っています。

不思議と彼らの名前は思い出すように理解できた。
ローズレイの両親……父親のビスク・ヒューレッドと母親のリズレイだ。

(実の兄に突き落とされるなんて……)
ローズレイの記憶は全て引き継いでいる。
とはいっても記憶はローズレイが”以前”歩んできた人生の記憶だ。
以前のローズレイはパルファンの言う通りに、足を滑らせた事にして、何も言う事はなかった。
この頃のローズレイはすでに人生を諦めていた。
流れに身を任せて漂う海月のように、全てを投げ出していたのだ。
(ここからは私次第…………そして私の人生だ)

 

入れ替わる前に、死んだ野薔薇とローズレイが会話するシーンがありました。

裏切られたショックで世界を崩壊させてしまったローズレイが、人生をやり直したいと言うので、野薔薇は入れ替わることになりました。

ローズレイは悲惨な人生を送っていましたが、野薔薇も両親を亡くして悲惨な人生だったようです。

 

ローズレイ(身体は野薔薇)の登場はなく、野薔薇(身体はローズレイ)がローズレイの運命を変えるために頑張るストーリーとなります。

ローズレイと仲の悪い兄のパルファンとの関係を改善したり、ランダルトと婚約者にならないように冷たく当たったり…

 

一周目とは違い、周囲も温かく接してくれるようになり、安心するものの…やはりラスボスが近付いて来てピンチに。ラスボスも転生者のようでした。

ちなみに、野薔薇(身体はローズレイ)は地の文で「ローズレイ」と呼ばれていました。

結末は、元に戻らないままハッピーエンドです。

 

KPさん
KPさん
【アルファポリス】に後日談とローズレイ(身体は野薔薇)側のストーリーがあります。

 

今回は、小説の女同士入れ替わりを2作品紹介しました。

読んでいただいてありがとうございました!

 

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