今回は、小説の女同士入れ替わりを10作品紹介していきます。
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もくじ
ハウルの動く城
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『ハウルの動く城』 著者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:西村醇子 | 姉妹が魔法で姿を入れ替える。 | ●徳間書店 『ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔』 ●徳間書店 『ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
両親を亡くしたソフィー・レティー・マーサの三姉妹は、それぞれ別の家に行くことになった。
レティーとマーサは、行き先がお互いの希望と逆だったため、魔法で姿を入れ替えたのだった。
主に入れ替わりの話が出てくるのは、第1章「帽子屋のあととり娘」から第2章「ソフィーの旅立ち」までです。
レティーはもっと勉強をしたいからマーサになりたい、マーサは早く結婚したいから美人のレティーになりたいという理由で入れ替わります。
久しぶりにレティーに会ったソフィーは、実はレティーではなくマーサだと告げられてびっくりw
癖の違いで入れ替わりを信じるソフィーが好きですね。
入れ替わりのまじないは少しずつ解けていき、徐々に元の姿に戻るらしい。
この後は、マーサになったレティーは入れ替わりがバレて、すぐにレティーの姿に戻りますが、レティーになったマーサはそのまま。
つまり、作中にレティーが二人出てきて、さらに二人のレティーがそれぞれ別の恋人を作るので色々とややこしいことに(笑)
ジブリ映画の方は、マーサが登場せず、入れ替わりの話もありません。
13ヵ月と13週と13日と満月の夜
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』 著者:アレックス・シアラー 訳:金原 瑞人 | 女の子二人が魔女姉妹に身体を奪われる。 | 求竜堂 『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
ちょっと容姿の悪いカーリー・テイラーは、祖母や親友・姉妹に憧れる12歳の女の子。
ある日、クラスに転校してきたメレディスと仲良くなりたいと思ったカーリーだが、メレディスはやけに大人びていて冷めた性格で断られてしまう。
メレディスの祖母・グレースと仲良くなったカーリーは、グレースから秘密の相談を受けるのだった。
最初は、カーリーが転校してきたメレディス(実は中身はグレース)に対して、ちょっと変な子だなと思うところから始まります。
メレディス(実は中身はグレース)がたった一人の家族であるグレース(実は中身はメレディス)をまるでゴミのような扱いをするところが黒くて良かったですね。
↓メレディス(実は中身はグレース)はグレース(実は中身はメレディス)を完全に支配下に置いているようです。
その日、おばあちゃんが早く来て、わたしの母さんと校庭でしゃべっているのが教室から見えた。メレディスは、ベルが鳴るとすぐに飛んでいった。
「早すぎる!そんなことするなって言っておいたのに!今度そんなことをしたら――たいへんなことになるわよ」という声が聞こえた。
「ごめんなさい、メレディス」おばあちゃんが弱々しく答えた。
「時間を間違えたみたい。もう二度としないよう気をつけるわ。約束するよ」
ああ、お願いだから、あっちへ行ってちょうだい。お友だちと遊んでいるのが一番よ。メレディスが出てきて、わたしたちが話しているのを見る前にね。見たら、怒るに決まっている。あの子は怒ったらいつもひどい仕打ちをするわ。その相手はたいていわたしなの。早く、今すぐ行ってちょうだい。わたしを困った目にあわせないで。あなた自身も困ることになるわ。あの子の力がわかってないのよ。わたしが何をされたか――何を盗まれたか
「まるで子供時代を奪われたかのように、子供たちを羨ましそうに、悲しそうに見つめるグレース(実は中身はメレディス)」に興味を持ったカーリーは、話を聞くことに。
グレースだと思われていた老婆の中身は実はメレディスで、グレース本人に教わった幽体離脱で遊んでいたら、身体を奪われてしまったらしい。
↓身体を奪われたメレディス(身体はグレース)の絶望感の描写が良かったです。
第一、わたしの名前はグレースじゃないし、メレディスはわたしの孫じゃない。本当は、わたしがメレディスなの。あなたにも――だれにも――証明はできないけれど。信じてくれることを願うだけ。どうにかして、私を助けてちょうだい。わたしの体と若さ、わたしの人生のすべては盗まれたのよ、カーリー。
メレディスの話の一部は本当のことだけど、ほかは嘘。自分の経験のように語ったことは、本当はわたしの身に起きたことなの。わたしの体を盗んだだけではなく、身の上話まで盗んだわけ。身の上話を盗むのも、同じくらいひどい仕打ちよ。だって、それはその人になりきるということだもの。わたしは、過去の自分も思い出も全部盗まれたの。
グレースの正体は、何度も何度も子供を騙して身体を奪い、何百年も生き続けている魔女。
メレディスは、両親を事故で無くしており、身寄りのない孤児だったため、グレースに狙われたようです。
孤児院に預けられたメレディスに、優しそうな笑顔を浮かべて狙いを定めるグレースの描写が良かったですね。
↓幽体離脱遊びから帰ってきたメレディスが、「メレディスの身体(中身はグレース)が動く場面」を見るシーンの混乱している様子が好きです。
わたしは必死にあたりを見まわした。どこにいるの?わたしの体はどこへ行ったの?そして見つけた。そう、わたしの体はそこにあった。でも、目を閉じ手を組んでいすに座ってはいなかった。
踊っていた。音楽はなかったが、踊っていた。
何かにとりつかれたように踊っている。
だれかの魂にとりつかれたように踊っている……。
↓若い身体を喜び、年老いた身体を蔑むグレース(身体はメレディス)がひたすら真っ黒です。
メレディス本人は、年老いたグレースを特別馬鹿にしていたわけではなく、むしろ優しくしていたように思いますが、この仕打ちは酷い…
どっちが老いぼれだよ!のろのろした年寄りになるのはだれの番かね、メレディス?お前の番だよ、お嬢さん、そうだろ。愚かで信じやすいとどういう目にあうか、いい教訓になったろう、たぶんね。つえをついて歩き、さえない服を着るのはだれの番かな、おばあちゃん!そう、お前の番さ!入れ歯をはめて、目はよく見えず、あごひげを生やしてる!全部お前のことさ!これがささやかなプレゼントだよ、せいぜい楽しんでおくれ!
お前はもう年寄りになるしかない――今すぐに。なんてわたしは親切なんだろう。成長するなんて面倒なことを省いてやったんだよ!
↓メレディスの霊体に、「早くグレースの身体に入らないと死んでしまう」と急かすのも最高。
体に入るか、永久に体のない魂としてさまようか。でもこの体には入れませんよ。この背が高くてほっそりした、若い体にはね。これは先約ずみ。ほかの人が入ってるからね。それにしても、これはとてもいい体だねえ?そう思わないかい?ちょっとまわってみせようか
そこにいるのかい、メレディス?お前の体がお待ちかねだよ。お入り。その体を着るんだ。サイズを試してごらん。ちょっとばかり、そうだね、なんといったらいいか――最初は違和感があるかもしれないね。慣れていないから。少々くたびれていて、あまり調子はよくない。だけど、そのうち慣れるさ。保証するよ。
↓仕方なく、メレディスはグレースの身体に入ります。最高。
どうしようもない。その体に入るか、体のない孤独な霊のまま永遠に生きるか。わたしはその体を見つめた。震えが走った。本当にこの体に入らないといけないの?この老いた体に?これに?私は自分がこのおばあさんの体に入っているところを思い描いた。必死に想像した。
「わたしはもう、そこにいる」と考える。「そこにいるの」
そして突然、そのとおりになった。
わたしは絶叫した。
「若い身体と老いた身体の等価交換」と話すグレース(身体はメレディス)に対し、メレディス(身体はグレース)は「不公平だ」「自分が一体何をしたのか」と抗議しますが…
グレース(身体はメレディス)は、「ただ面白いからやっただけ」と返します。
↓泣くメレディス(身体はグレース)に対し、グレース(身体はメレディス)は力関係を誇示し、若い身体を見せびらかしてメレディスの部屋に戻っていきます。
年老いた身体に苦しむメレディス(身体はグレース)の描写が多くあって良かったです。
二度とその名で呼ぶんじゃないよ。それはもうお前の名前だ。お前がグレースだ、いいね。そしてわたしがメレディス。それを忘れたらその耳をねじってやる。それと、わたしの言うとおりに動くのが身のためだ。見かけは子どもでも、すべてを決めるのはわたしだ。お前より若くて元気で強いからね。わたしを怒らせないように、言われたとおりにするほうがいいよ。わたしは若いだけでなく――心が醜いからねえ。お前が想像もできないような恐ろしいことをやってのける。どんなことかなんて知りたくないだろ、おばあちゃん。
メレディス(身体はグレース)は、反抗したら施設に送ると言われ、グレース(身体はメレディス)に反抗できなくなりました。
他にも、グレース(身体はメレディス)がメレディス(身体はグレース)に酷い仕打ちをするシーンが書ききれないほどありますw
町の人からも、老人扱いされるメレディス(身体はグレース)がかわいそうでした。
13ヵ月と13週と13日が過ぎるまで、グレース(身体はメレディス)は魔女の力を使うことができないようで、カーリーは秘密裏にメレディス(身体はグレース)と相談して計画を練り、隙をついて入れ替わりの呪文を使うことに。
↓しかし、カーリーも身体を奪われてグレースの身体にされてしまいました。
覚えているのはそれだけ。
目がさめるまでは。
そして目が覚めたとき……。
……わたしはもう、わたしではなくなっていた。
カーリーと読者がグレース(身体はメレディス)だと思っていた人物は実はグレースの姉・ブライオニー(身体はメレディス)で、メレディス(身体はグレース)だと思っていた人物は実は入れ替わっていないただのグレース。
つまり、本当はメレディスとブライオニー、カーリーとグレースが入れ替わっています。
魔女の姉妹は、最初から友達のいないカーリーに狙いを定めていたようです。
「メレディス」が「カーリー」の家で暮らせるように、カーリーの両親にあらかじめ話をつけておいたのも抜かりないw
本物のメレディス(身体はブライオニー)は、老人ホームにいるらしい…
↓グレースの身体になったカーリーが、魔女の記憶を少しだけ読み取るシーンがありました。
また、年老いた脳だと、物覚えも悪くなるようです。
どうしてこんな古い歌の断片や、見たはずのない場面や景色が心に浮かんだんだろう?やったこともないことや行ったこともない場所の記憶も、そしてそれは、ほんの短い間心に残っただけで、消えてしまった。でも、わたしが想像で生み出したものじゃない。本物の記憶だ。どうしてわかるのかは聞かないでほしいけど、わかる。
↓騙されたカーリー(身体はグレース)を、グレース(身体はカーリー)とブライオニー(身体はメレディス)はこれでもかと馬鹿にします。魔女姉妹が性格悪すぎw
魔女姉妹が新しい身体でカーリー(身体はグレース)に自己紹介をするシーンが好きでした。
「おばあちゃん、おばあちゃん、カーリーおばあちゃん。カーリーは年寄り。氷が冷たいってのと同じくらい、本当のこと。カーリーおばあちゃん」
この失礼な子はだれ?どこかで見たことがある。どこだったっけ?あの顔は見たことがある。あのままではなかったけど。なんというか――そう、左右反対の感じ。そのままじゃなくて。ただ――そう――写真、写真でなら見たことがある。私の知っている人だ。何度も何度も見たことがある。どこででも、毎日、朝は洗面所の鏡で見たし、窓やガラスにも映ってた。お祭りのときに入った鏡の館の部屋で、あの顔が長く細くなったり、突然つぶれて太くなったりして、また元のサイズにもどるのを見たことがある。
それは、わたしだった。わたしは自分自身を見ていたんだ。自分がわたしに向かって舌を突き出しているのを見ていた。自分の声がわたしをあざけり笑うのを聞いていた。
わたしは家に帰らなきゃ。わたしはふたりにそう言った。
「わたし、家に帰らないと。母さんが心配するから」
「カア、カア、カア!」
ふたりはまたかん高い笑い声をあげ始めた。もうやめてよ。
「母さんが心配するんだってさ」
メレディスが言った。わたしのか細い声を真似しながら。
「こいつ、自分の母さんが心配するって思ってるよ」と、あざける。
「そうだね、いいことを教えてあげるよ。お前のことなんか心配したりしないさ。だって、お前はもうただのおばあちゃんだからね。母さんが心配するのは、こっちの女の子のことだよ。お前の体を持った、このカーリーさ。お前じゃないよ」
カーリー(身体はグレース)は、愛してくれている両親なら絶対わかってくれると思い、両親にカーリーしか知らない話をしますが、信じてもらえるはずがなく…
頭がおかしいと思われたカーリー(身体はグレース)は、老人ホームへ送られることになってしまいました。
年老いた身体を見てショックを受けるカーリー(身体はグレース)が良かったです。
↓グレース(身体はカーリー)とブライオニー(身体はメレディス)が、無害な女の子を演じるところが最高でした。
煽られて怒ったカーリー(身体はグレース)は手を出してしまい、余計におかしいと思われてしまいます。
メレディスは天使のような顔で、にこやかに言った。
「ごめんなさい」
そしてメレディスは、ずうずうしくもわたしのところに来て、心配そうにわたしのおでこに手を当て、熱を確かめてみせた。まるでわたしのことを本当に気づかってでもいるように。
「気分が悪いの、おばあちゃん?」メレディスは言った。
「どこか具合が悪いんだと思う?」
「その手をどけてよ、この性悪の魔女め!」
わたしは叫んでメレディスをたたき、その手を払いのけた。
メレディスが後ずさった。それからずうずうしくも、泣いてみせた!本当に泣いてみせたんだ!
「ああ、おばあちゃん」と泣き声をあげた。
「どうしてぶつの?わたしはただ、具合はどうって聞いただけじゃない。ただ助けてあげたいと思っただけなのに」
「あああああ!どうしてそんなことが――」
わたしはまた怒りの叫び声をあげた。今度は本当に恐ろしい声で。
老人ホームに面会に来たグレース(身体はカーリー)とブライオニー(身体はメレディス)は、年老いた身体で思うように動けないカーリー(身体はグレース)をつねって痣だらけにします。酷すぎる…
さらに、カーリーの両親に手紙を書きつづけたカーリー(身体はグレース)は、ストーカーとして?注意を受けてしまいました。
そして、メレディス(身体はブライオニー)も、カーリー(身体はグレース)と同じ老人ホームにいることが判明。
メレディス(身体はブライオニー)が、カーリー(身体はグレース)を魔女のグレースだと思って敵意を示すところが好きです。
本当の姉妹・親友のように仲良くなった二人は、元の身体を取り戻す計画を立てます。
元の身体に戻るたった一日のチャンスに、二人は苦労して脱走し、魔女姉妹がいる家へ。
カーリーの両親もいたぶろうとしている魔女姉妹がヤバい。
最後は、制限時間ギリギリに元に戻ります。
魔女姉妹の肉体は、急速に老いて塵になって消えてしまいました。
本来の身体ではほぼ初対面のカーリーとメレディスが喜びあうシーンが良かったです。
おばあちゃん(世にも奇妙な物語 小説の特別編 悲鳴)
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『世にも奇妙な物語』より 『おばあちゃん』 原作:落合正幸 ノベライズ:加賀あきら | 女の子が祖母と身体を入れ替える。 | 角川書店 『世にも奇妙な物語 小説の特別編 悲鳴』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
両親と一緒に、余命わずかな祖母の見舞いにやってきた小学生の中村美保。
生き別れの弟に会いたいという祖母の心の声を聞いた美保は、嫌々ながらも祖母に一日だけ身体を貸すことにしたのだが…
二人は落雷で入れ替わったようです。
↓美保が寝たきりで今にも死にそうな祖母の身体になるのを嫌がるシーンが良いですね。
身体を貸すということは、その間、美保自身はこの老婆の身体で過ごすということだ。この、冷たく固く、枯れた老人の身体で。誰にも訴えを聞いてもらえず、うら寂れた部屋で横たわっているほかには、なにもできないのだ。
↓最初から戻れないフラグな会話も最高。
もう一度確認するように、美保は、祖母の土気色の顔をじっと見つめた。
「帰ってきてね、ゼッタイ。明日までに」
↓自由に動く身体を確かめる祖母(身体は美保)のシーンも最高。
祖母の身体に入った美保は、体中の痛みを感じた後に気を失います。
そんなやりとりを遠くに聞きながら、ゆっくりと美保は立ち上がった。そして、そっと指先を動かしてみる。まるでその身体の感覚のひとつひとつを、確かめるかのように。
……美保の身体であって、美保ではない、少女が。
『……いたい……いたいよぉ、からだが、いたい』
少女の声が、耳元で囁いて聞こえる。老婆の指先が、かすかに動いた。それを、無言で、少女は見つめた。
『おばあちゃん、苦しいよ、苦しい……』
病室に置いて行かれる美保(身体は祖母)がこの上なくかわいそうです。
病院からの帰り道、祖母(身体は美保)は、美保の母親が祖母を悪く言っているのを聞いてしまったようです。
祖母(身体は美保)は、美保に成りすまして一夜を過ごし、学校に行くふりをして弟…ではなく、祖母が昔好きだった男性の元へ向かいます。
↓祖母(身体は美保)と男性の再会シーンは感動です。
その笑顔を目の当たりにした瞬間、彼女の胸に熱いものがこみあげ、美保はたまらず椀をとりおくと、老人の身体を抱きしめていた。
「私、怒ってないわよ。あなたには、親の決めた相手がいたんだから」
それを、伝えたかった。どうしても。そして……。
最後の用事を済ませた祖母(身体は美保)は、美保(身体は祖母)のいる病院へ帰ろうとしますが、警察に捕まってピンチに。
↓祖母(身体は美保)は、美保(身体は祖母)へ早く身体を返さねばと焦ります。
彼女は、まさに今このときも、病室で苦しんでいるだろう孫娘のことを思い、胸を痛ませた。
約束をしたのだ。絶対に、帰るから、と。
↓祖母の死にそうな身体に閉じ込められている美保の描写は悲惨です。
身体は、相変わらずぴくりとも動かなかった。日が暮れ始めている気配に、老女の身体の中に閉じ込められたままの美保は、すでに幾度目かわからない悲鳴をあげた。
(……苦しい……どんどん息が苦しくなる。……ママ……パパ!……美保、死んじゃうよ……!)
↓祖母(身体は美保)は走れメロスばりに走り、制限時間ギリギリに病室に駆け込みます。
息が苦しく、喉がひりつくように辛い。しかし、今、本当の美保が受けている苦しみに比べれば、そんな痛みはたしたことではないということを、彼女はよく知っていた。
(美保、頑張れよ、頑張るんだ……!)
↓美保(身体は祖母)にはお迎えが今にも来そうな感じでしたが、ギリギリで祖母(身体は美保)が病室に駆け込んできます。
これが、お迎えというものなのだろうか。
(いやー!やだよ、あっちへ行って!)
死にたくない。死にたくない。まだ、死にたくなんかない。
自分はまだ小学生なのだ。この魂は、本来この身体にあるものではない。そう美保は訴えたかった。しかし、光はそのような事情は全くおかまいなしに、彼女の身体を包み込もうとするかのように降りてくる。
(いやあああ――っ!)
↓祖母(身体は美保)は美保(身体は祖母)にお礼を言い、二人は無事に元に戻ったと思われましたが…
(よかった……よかったね、おばあちゃん)
その言葉だけで、美保はこの身を切られるような苦痛と恐怖が報われる気がした。最後に、大切な祖母のお願いを、叶えてあげられたのだ。
そして、ようやく、もとの身体に戻れる。
美保の心が、ふわりと軽くなった。
『ありがとう……美保』
そして30年後、42歳になった美保が美保の母親の葬儀をするシーンに移ります。
↓二人は元に戻れておらず、祖母は美保として生きていたのでした。
『美保には、すまないことをした。……やっぱり、戻ることはできなかった。』
あの時。彼女は戻らなかったのだ。
そのことには、ついに誰一人気づく人間はいなかった。気づく筈もない。本当の美保は、あの身体では訴えることもできず、そしてもうこの世にはいないのだから。
あの朝、本当に亡くなったのは、十二歳の美保の魂だった。
そして今、ここにいるのは……。
『まだ、やり残したことがあったからね……』
↓祖母の肉体死亡時のこの文章も、元に戻ったというミスリードだと思うと恐ろしいです(笑)
この文章が祖母(身体は美保)が語った言葉だとすると、かなりの鬼畜では…(汗)
――そして、おばあちゃんは死んだ。その朝、予め伝えられていた通りに……。
でも、あの苦しみから、おばあちゃんは解放された。あの、ひどい苦しみから……。きっと向こうで、楽しく過ごしているだろう。
↓祖母(身体は美保)は、美保の母親にされた仕打ちを復讐するためにあえて?戻らなかったようです。
祖母の身体で死んだ美保に申し訳ないと言いつつ、全く申し訳ないと思っていなさそうな祖母(身体は美保)がダークで良かったです。
その眼差しには、暖かいものはひとかけらも浮かんではいない。
『だって、不公平だろ?あの女も苦しい思いをしなきゃ』
彼女の口元が、冷たい笑みの形に歪められた。
望まない延命措置。山奥の病室への隔離。それら全て、自分があの女にされたことだ。それを同じように味あわせてあげただけのこと。何が悪いというのだ。
独占
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『独占』 著者:壁井ユカコ | 女子中学生同士が相互変身で入れ替わる。 | ●角川書店 『14f症候群』 ●角川書店 角川文庫 『14歳限定症候群』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
中学二年生の橘七美と青山美憂は、お互いに異常と言えるほど特別な感情を持っている親友同士だった。
ある日、美憂が七美の姿に変身して困っていたが、翌日に七美も美憂の姿に変身して入れ替わり状態になってしまう。
美人の美憂に強い憧れを持っていた七美は、美憂の姿で周囲に反感を持たれるような言動を繰り返し…
↓最初に美憂が七美の姿に変身し、本物の七美と二人の七美が存在することになり、七美の家で二重生活を送るシーンもおいしかったです。
明日も明後日も美憂があたしのままだったら?毎回毎回ご飯を中座し、戻ってくるなりおかわりを要求するのでは怪しまれるし、絶賛成長中の十四歳とはいえあたしはどんな大食らいだ。
普通の女の子の七美は、美人の美憂に強い憧れを抱いていて、美憂の手下のような生活を送っています。
自身が美人だと知っている美憂も、そんな七美を手下のように扱う生活を送っています。
↓七美が美憂のことを盲目的に愛しすぎていて恐怖を感じるレベルです(汗)
美憂が七美のままだったら、永遠に美憂がこの世に存在しなくなる。そうなったらどっちにしてもあたしは生きていけない。美憂がいない世界になどなんの価値もない。美憂がいない世界などあたしには必要ない。
ということで、二人の七美が存在したのは一日だけで、翌日には七美も美憂に変身。
↓憧れの美少女・美憂になれた七美は、さっそく鏡で百面相です。
美しくて愛らしくて、誰もが部屋に持って帰って独り占めしたくなるような、美憂はそんな女の子だった。
その美憂が鏡の中にいる。
自分の顔に手を触れてみる。鏡の中の美憂も同じことをした。にっこりと笑ってみる。鏡の中の美憂がそれはもう愛らしく微笑んだ。
↓入れ替わりを意識させる描写が異常に多く、かなりおいしいです。
数日前から二人は謎の貧血と関節痛があり、病院で貰った薬が入れ替わりの原因ではないかと考えますが、元に戻る方法もわからないので、二人は仕方なくそのまま学校へ。
七美である美憂がベッドに座り、美憂であるあたしが床に座って、互いに狐につままれたような顔を見あわせた。普段の美憂と七美とは逆の位置関係だ。
↓主人と下僕のような関係の二人ですが、入れ替わっているのでおかしなことになっています。
美憂がやれば美しくも恐ろしいその仕草も平凡かつ平坦な七美の顔では迫力がなく、普段よりはあたしを恐れさせなかったが、あたしは恐縮したふりをして床の上で居住まいを正す。うっとうしいものでも見るように美憂はベッドの上からあたしに冷たい視線を浴びせた。
↓美憂になりきる自信満々の七美(身体は美憂)が怖くて最高。
髪の毛の質感の違いネタや、好き嫌いネタ、家庭環境の違いネタ、テストネタ、仲の良い友達グループにバレないように成りすますシーンが良かったですね。
あたしは他の誰よりも美憂を見ている。学校の成績について言えば下から数えた方が早いくらいのあたしだが、美憂のことに限っては完璧に克明に記憶している。話し方も仕草も、どんなに些細な表情や癖も。美憂は交友関係が広くないから誰に対してどんな態度で接すればいいかも把握している。そんじょそこいらの他人に対して美憂を演じてみせることなど難しくはない。あたしはうまく美憂をやり遂げることができるはずだ。
↓美憂として美憂の家に帰った七美(身体は美憂)は、お風呂場の鏡で美憂の裸を見て我慢できずに生まれて初めての自慰行為。
朝はばたばたしていてそんな余裕もないままだったが、あらためてあたしは露わになった美憂の身体と一対一で対面したのだった。いやそれもおかしな表現か。あたしはあたしと対面しているはずなのに、目の前には美憂がいる。
鏡の中で美憂がゆっくりと下着を剥ぎ取っていく。ブラをはずし、素足の下にパンツを踏んで、あたしを見あげる。硬質な印象を受けるその端正な顔を恥じらいでほのかに強張らせつつ、媚びるようなうるんだ瞳であたしを見つめる。
(中略)
そんな至高の存在である美憂が、あたしの前に無防備な姿をさらけだす。
美憂の身体を辱めることにあたしは悦び、快感に震えた。
↓事後に罪悪感に苛まれつつも、七美(身体は美憂)はようやく愛していた美憂が完全に手に入ったと喜びます。
あたしは美憂を手に入れたのだ。出会ってからおよそ二年間、あたしはずっと美憂を愛してきた。人形のように美しく愛らしく、女王のように気高く残酷な美憂を、あたしはとうとうあたしだけのものにした。
そして完全に入れ替わってから三日目、美憂の身体を手に入れた七美は、「美憂」に告白してきた男子をこっぴどく振り、「美憂」は学年中の非難の対象になってしまいました。
美憂は日頃から顰蹙を買わないように過ごしてきたのと、美憂(身体は七美)が尻拭いをしたおかげで、とりあえず友達グループには嫌われずにすみましたが…
↓怒った美憂(身体は七美)が、七美(身体は美憂)を張り倒し、元の美少女である自分を汚す快感を覚えるところが最高です。
このあたりから、七美(身体は美憂)は美憂(身体は七美)に従順ではなくなっていきます。
「七美のくせに、二度とあたしに逆らうな。わかったの?ごめんなさいは?」
「ごめん……なさい」
目尻に涙を滲ませて咳きこみながら、か細い声を絞り出す七美。あたしの背中をぞくぞくしたものが駆け抜けた。あの美しい美憂が、水浸しのタイル張りの床に座り込んで下着を濡らし、黄色い垢がこびりついた便器に顔を突っ伏して苦悶に喘ぎながら謝罪する。その醜態があたしに快感を覚えさせた。
七美はあたしの容姿を愛した。あたしがどんなに暴君として振る舞おうとも、あたしが美しい限りは決して離反しない、あたしの奴隷だ。
思えばこのときにはもう七美の態度は変わっていたのに、愚かにもあたしは気づいていなかった。七美に対してあたしが絶対的に優位にあると疑っていなかった。あたしはもう"美憂"ではないにもかかわらず。
↓美憂(身体は七美)が七美の兄・彗に入れ替わりがバレそうになるシーンがドキッとしました。
さりげなく七美を下げ、美憂を上げる美憂(身体は七美)が最高ですね。
「あたしみたいなブス、狙われるわけないよー。あたし、みゆりんみたいにかわいくないもん」
彗の反応は完全にあたしの不意を突いた。
「あんまり七美をこきおろすなよ」
俯いていた顔をすこしあげ、初めてあたしのほうをまともに見て。
「ここんとこ思ってたんだけど……お前誰だ?」
「……え?」
↓愛する美憂の身体を手に入れた七美(身体は美憂)は、とうとう美しくなくなった美憂(身体は七美)は必要ないと言い始めます。
入れ替わりによって美憂(身体は七美)の性格にはあまり変化はありませんが、七美(身体は美憂)は大きく変わってしまったようです。
「うちって、あたしのうちなんだから、いつ泊まろうがあたしの自由じゃない」
「でも今はあたしのうちだよ」
「何言ってんの、調子に乗らないで!」
(中略)
顔が綺麗なだけに"美憂"が言うと見くだされているように感じる。それゆえに人と同じことを言っても反感を買ってきたのだと我が身を持って体感した。
いつもだったらあたしに怒鳴られると条件反射で委縮する七美が、今日はおどおどしたふうもなく、不遜なくらいの眼差しであたしを見つめ返してきた。
「調子に乗ってるのは美憂だよ」
信じられない台詞を聞いた。七美の口からこんな台詞が発せられるなんてことがあるはずがない。あたしは本気で一瞬我が耳を疑った。あたしに逆らうはずがない、あたしを崇め畏れる奴隷であるはずの、それだけが存在意義であるはずの七美が。
「まだ状況がわかってないの?案外馬鹿なのね、美憂。美憂はもう美憂じゃない。美憂じゃなくなった美憂なんて、あたしには必要ないんだよ」
(中略)
「な……なみ?」
「あたしは美憂を手に入れた。へりくだらなくたって、こき使われなくたって、美憂をあたしのものにした。あたしはもうあたし一人で完璧なんだよ」
両手で自らの身体を抱きすくめる。愛おしそうに、恋人を抱きしめるように。
「ゆっ、許さないからっ!」
↓そして、七美の心が美憂から離れていくことに恐怖した美憂(身体は七美)は、七美(身体は美憂)を何度も平手打ちした後、離れて行かないで欲しいと懇願。
美憂(身体は七美)が元の自分の下着を当然のように身に着けている七美(身体は美憂)に怒る描写に興奮しました。
美憂(身体は七美)は七美(身体は美憂)にキスまでしますが、拒否されてしまいました。
はじめて七美に命令ではなく頼み事をした。
「あたしを見放さないで。七美にいらなくなったらあたしは生きていけない。愛してるの、愛してるの、七美」
七美の背を便座に押しつけ、その頬を両手で挟んで、唇に唇を重ねた。あたしの唇をつたう涙が七美の唇へと滑りこむ。なまぬるい涙で濡れた唇を絡めあう。
↓七美(身体は美憂)と決別した美憂(身体は七美)は、アイデンティティが揺らいで、優れた容姿を持たない自分とは…と自身の存在意義を見失ってしまいます。
あたしという不確かなものを維持するために、あたしの容姿は必要どころか最重要事項だったのだ。十四年間"ハンデ"であり続けた容姿に、今このときほどあたしが執着したことはなかったかもしれない。
美憂と一つになり完全体となった七美(身体は美憂)は、友達すらも必要なくなり、仲の良い友達グループに暴言を吐いてしまいます。
友達グループが「美憂」の悪口を言い始めますが、七美(身体は美憂)がノーダメージで、美憂(身体は七美)が心を痛めるシーンが最高。
七美(身体は美憂)が他のクラスの女子達から集団暴行を受けるシーンもあります。
本物の美憂が取る言動とは真逆の高飛車な言動をする七美(身体は美憂)が言葉では言い表せないほど良いです。
二人が住む町では、中学二年生の女の子が連続猟奇殺人に巻き込まれる事件が続いており、今度は美憂(中身は七美)がターゲットになり、連れ去られてしまいます。
七美(身体は美憂)が捕まっている間に、運悪く美憂(身体は七美)は美憂の姿に戻り、一日遅れて七美(身体は美憂)は七美の姿に戻ります。
七美(身体は美憂)は、顔に暴行を受けながら変身したためか、殺されずには済みましたが、元の七美の顔とは異なる、美憂のパーツが入り混じったいびつで醜い顔になってしまいました。
美憂は泣いて後悔する七美を許し、美憂が七美を一生支配下に置けることを喜んでおしまいです。
カリオストロ夫人
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『カリオストロ夫人』 著者:横溝正史 | 男性の彼女が魔術で夫人と入れ替えられる。 | ●角川書店 角川文庫 『山名耕作の不思議な生活』 ●徳間書店 徳間文庫 『山名耕作の不思議な生活』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
カリオストロ夫人と呼ばれる不気味な女性・志摩夫人と知り合った芸術家の城。
城は志摩夫人をパトロンとして関係を持つようになったのだが、奈美江という彼女ができ、仕事も軌道に乗ってきたので、志摩夫人と関係を絶とうとした。
城が志摩夫人から送られてきた恨みの手紙を読んで不安に思っていたある日、奈美江が志摩夫人の紹介した病院で神保博士の手術を受けた後に、志摩夫人は自殺してしまう。
↓志摩夫人は、まるで何十年も生きているかのように人生経験が豊富という描写がされています。
彼女は憲法発布の当日の光景を、自分の目でみたように語ることができたし、尾崎紅葉の印象を、どんな文章よりも、はつらつと述べることができた。と思えばまた、われわれのおよびもつかぬ高貴なかたの日常生活も知悉していたし、そうかと思うとどん底の、卑しい、惨めな女の生活にも通じていた。それはどんな経験家といえどもおよびもつかぬ、彼女自身、その生活の中にいたのでなければ、けっして語られないほどのなまなまとした印象をもって語られるのである。
ということで、手術の際に奈美江は志摩夫人と入れ替えられており、志摩夫人の身体になった奈美江はショックで自殺していたのでした。
志摩夫人は肉体が古くなったら、魔術師の神保博士に霊魂を入れ替える魔術で新しい肉体に入れ替えてもらい、既に80年は生きているらしい。
神保博士も、同じようにして300年は生きているようです。
↓手術直後の奈美江(中身は志摩夫人)と神保博士の意味深なセリフが好きですね。
「志摩夫人」の遺書には、「奈美江」に「志摩夫人」の全財産を譲ると書いてありました。
「御気分はいかがですか?」
「ええ、おかげさまで……」
「なに、すぐ慣れますよ。向こうのほうはうまくゆきました」
入れ替わったことを知らない城は、そのまま奈美江(中身は志摩夫人)と結婚。
新婚旅行で行為した際に、「志摩夫人」と「奈美江」が全く同じ内容のプレイを要求し、さらに「奈美江」が「志摩夫人」しか知らない恨みの手紙の内容を話したことで、城は入れ替わりに気がつきます。
↓自身を捨てようとした城に復讐できて笑う志摩夫人(身体は奈美江)が最高です。
入れ替わりのことを告げられた城はショックで自殺し、財産全部が手に入った志摩夫人(身体は奈美江)の一人勝ち…
ふいに、低い、とぎれとぎれな声で、奈美江がそうつぶやいた。その声は奈美江のものであったが、調子はもはや、完全に志摩夫人のものにちがいなかった。
「結局、あなたは私の抱擁から逃れることはできなかったでしょう」
「誰だ!?貴様は!」
「フン、おわかりにならないの。たったいま、あんなに驚いたくせに」
奈美江は城の首から腕を放すと鏡の前へ行った。
「ご覧なさい。奈美江さんの肉体を着た志摩夫人、それが私よ。おわかりになって?」
おばあちゃん(世にも奇妙な物語 ドラマノベライズ 逃げられない地獄編)
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『世にも奇妙な物語』より 『おばあちゃん』 原作:落合正幸 | 女の子が祖母と身体を入れ替える。 | 集英社 集英社みらい文庫 『世にも奇妙な物語 ドラマノベライズ 逃げられない地獄編』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
両親と一緒に、余命わずかな祖母の見舞いにやってきた小学生の中村美保。
生き別れの弟に会いたいという祖母の心の声を聞いた美保は、嫌々ながらも祖母に一日だけ身体を貸すことにしたのだが…
↓祖母の寝たきりの身体になることに拒否反応を示す美保が最高です。
「どうしても、どうしてもその人に会っておきたくてね……ミホ、おばあちゃんのお願い、聞いてくれないかい?」
「……なに?」
自分にできることなら、してあげたいと美保は思った。
だけど――
「おばあちゃんに……ミホの体、貸しておくれ」
「!」
おばあちゃんの『お願い』に、美保は思わず息を飲んだ。
包んでいた手を離してあとずさる。
(だって、だって、おばあちゃんは――……)
だけどおばあちゃんは、なおも美保にお願いをした。
「明日中にもどってくるから。それまで絶対死なないから」
↓動けない祖母の身体になって苦しむ美保(身体は祖母)のシーンも悲惨で最高。
つぎに意識を取りもどしたとき、全身の渇きと痛みで、美保は信じられない気がした。
視線をむけたいのに体が自由に動かせない。
(い、いたいよ……からだが、いたい)
乾いた指は、どうがんばってもかすかに動くかどうか。
半分だけ開いた目から涙がこぼれた。
(おばあちゃん、苦しいよ……苦しい……)
駆けだしていく小学生の女の子は、美保だった。
自分の体におばあちゃんが入っている。
(待って、苦しいよ……苦しい……パパー!ママー!)
おばあちゃんは、必ず帰ってきてくれると約束をした。信じている。
翌日、祖母(身体は美保)は、学校へ行くふりをして弟…ではなく、昔好きだったが別れた男性の元へ。
祖母(身体は美保)のことは文中では「ミホ」と表現されています。
寝たきりの男性に声をかける祖母(身体は美保)のシーンは感動です。
その後、祖母(身体は美保)は男性の家族に見つかって警察に捕まり、美保の両親(祖母からみたら息子と嫁)に怒られます。
「祖母」の身体が死ぬタイムリミットが迫っていたので、祖母(身体は美保)は隙を見て逃げ出し、身体を返すために美保(身体は祖母)のいる病院へと急ぎます。
↓周囲の会話を聞く美保(身体は祖母)が悲惨で良いです。
そのころ、もう少し先にある病院では、動けないおばあちゃんの体をかこむようにして、先生と看護師が話し合っているところだった。
(中略)
どうせ本人には聞こえていないと思っているからこその会話だ。
けれど、おばあちゃんは――おばあちゃんの中にいる美保には、全部聞こえている。

↓祖母(身体は美保)は美保(身体は祖母)が天国に召されるギリギリに戻ってきて、手を取ってお礼を言います。
「すまなかってねえ、ミホ。随分と苦しい思いをさせて。よくがんばってくれたね……」
「おばあちゃん。苦しかった……苦しかったよ……」
おばあちゃんがこんなに苦しい思いをしていたなんて、美保ははじめて知った。
「ごめんね、ミホ。でも、ミホのおかげで、おばあちゃん会うことができたよ。これでおばあちゃん、逝ける。ありがとう」
↓元に戻る直前、祖母(身体は美保)は美保(身体は祖母)から手を離します。
おばあちゃんの願いも叶ったとわかって、美保は本当にうれしくなった。
これで美保はもとの体にもどれるし、おばあちゃんも安心して旅立てる。
「よかったね、おばあちゃん」
「ありがとう……ミホ」
天上の光が、よりいっそう眩さを増して、ベッドの上の体を包みこもうとおりてくる。
全部が包まれてしまうその瞬間、ミホの手は、おばあちゃんの手からふいに離れて――おばあちゃんは死んだ。
その朝、あらかじめ伝えられていた通りに……。
↓次の場面は、30年後に美保の母親の葬儀をする美保のシーン。
「もう、お父さんと会えた?お母さん」
そう呼ぶようになって、もうずいぶんと時間がすぎた。
↓祖母に冷たく当たっていた美保の母親への仕返しを思いついた祖母(身体は美保)は、あの時美保に身体を返さず、美保は祖母の身体のまま死亡していたのでした。
祖母(身体は美保)は、きっちりと美保の母親に復讐を果たしたようです。
あのとき、――光が全てをおおいつくそうとしたあの瞬間。
美保の体にいたおばあちゃんは、とっさに美保の手を離していた。
きっと美保は、なにが起きたかわからなかったことだろう。
おばあちゃんは、間に合った。
美保との約束を守り、必死で夜の森を駆け、タイムリミットまでに病室にもどった。
でも、……もどることはできなかった。
↓祖母(身体は美保)のセリフが鬼畜ですねw
(……あの苦しみから、おばあちゃんは解放された。あの、ひどい苦しみから。きっとむこうで……楽しくすごしていると思う……)
↓祖母(身体は美保)は、美保を死なせたわけですが、「少しだけ」胸が痛む程度の罪悪感なようです。
祖母(身体は美保)にとっては、美保の母親に平手打ちされた時の傷を根に持つ気持ちの方が大きかったらしい…
祖母のエゴと入れ替わりの組み合わせがダークで良かったです。
自分の額の傷に軽く当てる。
もう痛みはないけれど、ここにふれる度、少しだけ胸の奥がズキンと痛む。
「ミホには……悪いことをしたね……」
それが唯一の心のこりだ。
額の傷にふれながら、「お母さん」と呼ぶようになって長い女の写真を見る。
「だって、不公平だろ。あの女も苦しい思いをしなきゃ」
ミホの口から冷たい笑みがこぼれた。
(中略)
「お母さん、ミホには会えた?」
てんからどどん
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『てんからどどん』 著者:魚住直子 絵:けーしん | 女子中学生二人が落雷で入れ替わる。 | ポプラ社 ノベルズ・エクスプレス 『てんからどどん』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
かわいくて元気だが少々無神経な高倉かりんと、暗くて地味だが勉強ができる今井莉子は、中学の同じクラスでお互いを羨ましいと思っていた。
ある日、二人がエレベーターに乗り合わせたところ、落雷があって二人は入れ替わってしまう。
莉子になったかりんは、入れ替わったことに気が付かずにかりんの家に帰ってしまい、弟に注意されてしまいます。
↓鏡を見て入れ替わりに気が付いたかりん(身体は莉子)は、莉子(身体はかりん)と接触しようとしますが、莉子(身体はかりん)はかりんに成りすましてかりんの自室に閉じこもってしまいました。
かりん(身体は莉子)は、莉子の母親に入れ替わったことを話すも、信じてもらえず…
かりんが頭に手をやると、鏡の中の今井さんも頭に手をやった。かりんが口に手をあてると、鏡の中の今井さんも口に手をあてる。
かりんは、おそるおそる自分の足もとを見た。
見おぼえのない、へんなスニーカーをはいている。その上には、デニムをはいた太い足、おなか、腕、胸……。視界のはしにはメガネの赤いフレーム。
今井莉子は胸の鼓動がおさまらなかった。
おそるおそる自分の体をだきしめる。びっくりするほど細い。まるでクモのように腕が背中までまわる。
(中略)
さあこのあと、どうしよう。このままだとどうなるんだろう。
まさか高倉さんとして生きていくことになったりして……。
莉子ははっとした。それはちがう。高倉さんになりたいと思ったが、高倉さんとして永遠に生きたいわけじゃない。

↓かりん(身体は莉子)が莉子の身体を重く感じるところや、周りから空気として扱われるところや、忘れ物をしても莉子の姿なら心配されるところや、仲の良い友達の「かりん」の悪口を聞いてしまうところが良かったですね。
莉子(身体はかりん)は、何故か学校を欠席していました。
学校までの十五分の道のりはいつもよりずっと遠かった。身体が重い。まるで水の中を歩いているようだ。足を意識的に右、左、とださないと、前に進まない感じだ。昨日、マンション内を走ったときに気がつかなかったのは、息まいていたせいか。
そのうえ、メガネにもなれない。とくにフレームの外が見えないのが、すごく気になる。かといってメガネをはずすと、一メートル先もよく見えない。
でもふたりは、かりんをまったく見なかった。しゃべりながら、まるで電柱かポストでもさけるように、立ちどまっているかりんを自然によけていった。
それは、ほかの子も同じだった。げた箱でいっしょになった子も、廊下ですれちがった子も、だれもかりんを見ない。無視している感じじゃない。本当に目に入っていないようだ。
学校を休んだ莉子(身体はかりん)は、家庭環境の違いにカルチャーショックを受けます。
↓そして、かりん(身体は莉子)も学校を早退し、入れ替わりから一日経ってようやく二人がご対面。
「どわ、自分!」
そういって莉子の体を上から下まで見る。
「で、中身は今井さんだよね?」
「……はい」
莉子は観念してうなずく。
「だよね。昨日はどうして会ってくれなかったの。勝手にわたしの家に入ってさ」
↓二人はお互いになりたいと思って入れ替わったとわかりますが、莉子(身体はかりん)が当面は元に戻りたくないと言い始めます。
とりあえず、なりたい相手になれたということで、しばらくこのまま過ごすことに。
「天気はいいけど、ためしにエレベーターにのってみる?」
あわてて莉子は頭をふった。
「いえ、今はいいです」
「なんで」
「それはその、このまま高倉さんとして生きてはいけないと思うんですけど、自分にももどりたくもなくて……」
↓かりん(身体は莉子)はさっそく莉子の汚い部屋を片付け、髪にストレートパーマをかけ、コンタクトレンズを作り、ダイエットを始めたら、莉子の母親に喜ばれてしまいました。
莉子の身体の強烈な空腹に耐えるかりんのシーンが良かったです。
この髪の毛、まっすぐにすればいいんじゃないだろうか。ぼわっと広がるこのくせ毛。
ほおの肉を口の中にすいこみ、メガネをはずし、やせた顔をちょっとシュミレーションする。おっ、けっこうかわいい。

↓イメチェンした元の自分を見る莉子(身体はかりん)も好きです。
莉子(身体はかりん)は、かりん(身体は莉子)が変えたかった元の自分を変えてくれたので感謝している様子。
かりん(身体は莉子)はせっかくイメチェンしたのに、クラスの皆は戸惑うだけで声をかけてもらえず、落胆します。
一瞬、だれなのかわからなかった。いや、わかるけれど、目で見たものが信じられなかった。
(中略)
「あれ、もしかして、今井さんは前のままがよかった?」
かりんがふと気がついたようにきいた。
「いえ」
莉子は頭を横にふる。
「髪はわたしもすごくこまっていました。コンタクトもしてみたいと思ってました」
(中略)
すごい。莉子がやらなきゃと思っていたこと、ためしてみたいと思っていたことをどんどん実行している。

↓莉子(身体はかりん)は入れ替わってから初めて学校へ登校します。
マスク着用で話さなくても良いようにするところや、かりんの友達に話しかけられるところが良いですね。
高倉かりんの制服のスカートは、すごく短い、すうすうして心ぼそい。
それに足もふらふらする。体が軽いせいだろうか。いつも見ている風景も、目線が高くて、それもなんだかこわい。
そうだ、本物のかりんはどうしているんだろう。教室を見まわしたが、いなかった。ずっと入り口を見ていると、チャイムがなってから、すべりこむように教室に入ってきた。
かりんもこちらを見た。一瞬、莉子に目くばせし、それからすぐ知らんふりをして前にむきなおった。
その姿は自分じゃなかった。メガネをはずし、髪が短くなり、まるい顔がよく見える。でも前よりちょっとすっきりとした感じだ。
うしろの席のあやぽんが、莉子の背中をつついた。
「気がついた?かりんが休んでいるあいだのいちばんのびっくりは今井さんだよ。髪を切って、メガネもやめて、スカートも短くしたみたい」
この後は、かりん(身体は莉子)が軽率に物事を言う自身を反省したり、莉子(身体はかりん)が苦手なダンスをすることになったり、二人が一緒に莉子の家族とご飯を食べることになったり…
二人とも得意不得意が真逆なので、教え合うところが良いですね。
入れ替わりをきっかけに仲良くなる二人が尊いです。
そして、莉子が入れ替わる前に「修学旅行が嫌なので、私を殺しに来てください」と掲示板に書き込んでいたことで、かりん(身体は莉子)が命を狙われることに…
ギリギリで元に戻り、ハッピーエンドです。
俺の彼女はロリでBBAで吸血鬼!?
※Kindle版は成人指定です。
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『俺の彼女はロリでBBAで吸血鬼!?』 著者:島津出水 | 彼女が彼女の母親と入れ替わる。 | 海王社 えちかわ文庫 『俺の彼女はロリでBBAで吸血鬼!?』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

同居している従姉の美奈と付き合うことになった経真。
初体験を迎えた翌朝、美奈は母親のローラと入れ替わってしまっていた。
「み、美奈!?どうした美奈!お前、何か変だぞ!?」
「何を言うておるか?お主の方こそ、何やら妙じゃな、ワシのことを美奈呼ばわりするとは――」
(中略)
(この振る舞い、そしてこの時代がかった口調……これって、どう考えても……!)
信じられないことであったが、経真は確信を持って、名を呼んだ。
――美奈の母親の名を。
「……マジ!?もしかして、ローラさん!?」
経真は、ひょんなことから美奈とローラと同居することになったようです。
ローラはかなり豪胆な性格で、喋り方もかなり独特。
↓初体験の翌朝に入れ替わっていたので、ローラ(身体は美奈)は全裸です。
「なにゆえっ!?何故に、ワシと美奈の中身が入れ替わってしもうとるんじゃああっ!?」
ローラさんの口調で、美奈の金切り声がほとばしる。
(中略)
ローラさんは美奈の姿――しかもすっぽんぽんの姿のままで、ベッドの上にあぐらをかき、腕組みをしてうなり声を上げた。

↓経真と美奈が行為したことがバレますが、ローラ(身体は美奈)は怒るどころか楽しんで経真を襲いますw
ローラ(身体は美奈)が美奈のフリをするところが最高ですね。
ここでは挿入はありませんが、そういう描写はあります。
「何じゃ?……イカ臭いの」
(ぎくぅッ!?)
「それに、何やら妙に身体が火照っておるの。風邪でも引いておるのか……おっ♪」
俺が瞬時に顔を引きつらせる前で、ローラさんは美奈(じぶん)の股間に手を伸ばし、指で何かを掬い、鼻先に近づけた。
「…………ヤリおったの♪」
「申し訳ございませんんんんんん!!」
「つくづく細かい男よのう。見た目は美奈なのじゃから、不平を申すな」
妙な理屈を口にしつつ、その手で俺の股間をさすり始めるローラさん。
(中略)
「まずいって、ローラさん!こーゆーのはマズイって!」
「何を怖じ気づいておるのじゃ、この程度で……ワシも、何十年ぶりかにザーメンの臭いを嗅いだら、ちとそっちのスイッチが入ってしまったようでの♪」
(中略)
「コイツは、そーゆー無節操な器官なのっ!アンタ、分かってて言ってんでしょ?」
「『えー?美奈、何のことだか分かんな~い』」
「そ、そこで美奈のモノマネは卑怯でしょうよ!」
(中略)
美奈の顔で、美奈の声で――だけどローラさんの口振りでからかわれる。
それは、現実離れした光景だった。
初めて異変に気づいた瞬間は、美奈がローラさんの真似をしている可能性もちょっとだけ疑ったが――今や、そんな疑いは欠片も残っていない。
(だって……表情が全然違う!)
(中略)
「フフ……何を呆気にとられた顔をしておる?ただでさえ幼く見える美奈の身体で、ワシのようなオバサンがこういうことをすると、なかなかクルものがあるのではないか?」
(中略)
「見ての通り、身体の奥底から火が着いてしもうた状態での……このまま、ワシの疼きをほったらかしにするほど、お主も殺生な男ではあるまい?」
「でで、でも……その、身体は……ローラさんのじゃなくて、美奈の……」
↓経真とローラ(身体は美奈)が揉み合っているところに、美奈(身体はローラ)が登場。
美奈(身体はローラ)はもちろん、ローラ(身体は美奈)を止めに入ります。
入れ替わり的においしい描写やセリフが多くて良いですね。
「(バンッ)経真くん!私の身体が、ママの身体になっちゃった――えっ?」
「…………えっ?」
「おっ?」
気がつくと、俺の見慣れた長い黒髪の美女が、開け放ったドアのそばで、立ち尽くしていた。
(中略)
「ちょ……ちょ……ちょっとママー!私の身体で、何しようとしてたのよーっ!?」
出会ってから2年近く――俺が初めて見る、美奈が本気で怒鳴り声を挙げる瞬間だった。
(中略)
「…………」
「…………」
そんなローラさんを、同じくシャワーを浴びた俺は、美奈と一緒に睨みつけていた。
しかし、母娘の中身が入れ替わっているので、見た目には『正座している美奈を、俺とローラさんが睨んでいる』という光景に見えるのが、何ともややこしい。
(中略)
「大人はローラさんひとりなのに、そのローラさんがハメを外して、どうするのさ」
「そんなことを言うても……今の身なりは、ワシが一番幼いではないか……」
↓入れ替わった原因がわからないので、とりあえずローラ(身体は美奈)が美奈として学校へ行くことに。
ローラ(身体は美奈)の美奈のフリは、微妙にぎこちない感じです。
普段とは違う「美奈」や、経真と「美奈」の変な会話に、幼馴染の恬子は訝しがります。
「ローラさん、そろそろ頼むよ」
「おお、美奈のフリじゃな。まあ、任せておけ」
ローラさんは、美奈の小さな胸をドンと叩いてみせ、ついでに軽く顔をしかめる。
「ゲホッ……乳のサイズが変わったことを忘れて、強く叩きすぎたわ」

ローラ(身体は美奈)は、学校で経真を襲ってセ○クス。今回は挿入も有ります。
何故か、「美奈の身体」は処女ではないようで…
数日経っても元に戻らず、入れ替わり生活は続きます。
↓未だに慣れない美奈(身体はローラ)がかわいいですね。
「(コンコン)美奈ー、朝だよー。そろそろ起きようかー」
「…………あれっ?おっぱい!?えっ、どういうこと!?」
「……そろそろ、それにも慣れようかー」
「えっ……あ、ああ、ママの部屋だ……」
(中略)
『ローラさん』――の姿をした美奈に見送られて、『美奈』――の姿をしたローラさんと登校する。
↓美奈のフリに慣れたローラ(身体は美奈)に萌えます。
美奈(身体はローラ)は、ローラとして店番をしているようです。
美奈の精神が入ったローラは、天然のお姉さんという雰囲気らしい。
「おはよー、久美ちゃん。明日香ちゃん、褒め言葉に『ロリ』はいらないよぉ」
教室に入り、クラスメートと和やかに会話を交わす『美奈』。いつの間にか、ぎこちない感じはすっかり鳴りを潜めていた。よく見ると、微妙に本物と仕草が違うけど、よほど注意して見ないと気づかない誤差にすぎない。大した化けっぷりである。

「美奈」と付き合っていることになっている経真ですが、さすがにローラの身体の美奈と行為はできないと悩みます。
↓しかし、ローラ(身体は美奈)があっさりと許可を出したため、経真は美奈(身体はローラ)とセ○クスすることに…
本当にとんでもない母親です(笑)
「ワシの完熟ボディー、存分に堪能するが良いわ♪」
「……よくもまあ、簡単に言うな、この人は……」
(中略)
「ところで美奈よ、かくかくしかじかで、今日は頑張って経真とまぐわうのじゃ♪」
「えええーっ!?だ、だけどこの身体、ママのだよ!?」
美奈(身体はローラ)は、本来の貧乳での身体ではできないことだと言って、ローラの巨乳で経真にパ○ズリしてあげます。
↓挿入までありますが、何故か「ローラの身体」は処女のようで…
「興奮、かあ……えへへ、私もエッチな女の子なのかな」
「……そ、そうだと俺は嬉しいかも……」
不覚にも、ドキリとした。
俺を見上げての『ローラさん』の照れ笑いが、反則級に可愛い。
もともと見た目よりはずっとしっかり者だった美奈が、こうして『大人の女性の器』に入ると、こうも魅力的に映るのか。
(ここが……『ローラさん』のアソコか……ごわごわしてるのは……陰毛かな?)
女性器の実物など、『美奈』のものしか知らない俺である。だから、こうして女性の陰毛に触れることも、これが初めてだった。俺にだって当然生えてる、ごく普通の体毛は、しかし新たな興奮を呼び覚ました。
「なあ……最初、美奈も驚いたんじゃないか?自分のアソコに毛が生えてるって……」
「う、うん……不思議だったの……あと、急に大人になったような気がして……あン!」
↓そしてローラが吸血鬼だと判明し、さらにローラと美奈は入れ替わった状態が本来の身体という衝撃の事実が…
つまり、本物のローラは吸血鬼で長寿のロリボディ、本物の美奈は吸血鬼と人間のハーフの熟女ボディということに…
ロリボディが母親で、熟女ボディが子供と、二重のギャップで最高でした。
「そうじゃ……その身体こそが本物の美奈じゃ」
「……これが、本物の私の身体……」
美奈は、それまでママ(ローラさん)だと思っていた自分の身体を、下を向いてマジマジと見つめた。
「……この大きなおっぱいも?」
「左様。よかったのう、経真。この前は『ワシの完熟ボディ』と言うたが、本当は美奈の完熟ボディなのじゃよ♪」
ローラと美奈は、色々と事情があって身体を入れ替えて生活をしていたようです。
ちなみに、美奈は入れ替わった記憶は消されていた様子。
この後は、経真と恬子が行為をしたり、経真が美奈と恬子の両方を選んでローラも交えて4Pしたり、ローラに亡くなった夫を憑依させたりとカオスでした。
70年分の夏を君に捧ぐ
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『70年分の夏を君に捧ぐ』 著者:櫻井千姫 | 現代の女子高生と戦時中の少女が入れ替わり体質になる。 | スターツ出版 スターツ出版文庫 『70年分の夏を君に捧ぐ』 |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
2015年の東京で生きる普通の女子高生の柴本百合香は、ある朝目覚めると終戦直前(1945年)の広島に住む少女・栗栖千寿と入れ替わっていた。
その日から二人は一日おきに入れ替わるようになり、ノートでやりとりをしながら何とか入れ替わり生活をこなしていた。
広島に原爆が落とされる日に百合香が千寿の身体に入るとわかった二人は…
二人が入れ替わる時、戻る時には毎回謎の空間が現れます。
入れ替わりは夜中の12時に強制的に起こり、起きていても突然気を失う仕様です。
入れ替わるのは約1か月。百合香の身体の百合香の場面、千寿の身体の千寿の場面、千寿の身体の百合香の場面、百合香の身体の千寿の場面が順番に描写される感じでした。
千寿の身体パートでは、戦時中の衣食住や思想などの描写が丁寧に書かれていて良かったです。
千寿の家は、足の悪い父親が戦争に行けず、しかも父親が戦争に反対していて非国民扱いされているという超ハードモード…(汗)
百合香(身体は千寿)は、女子挺身隊として工場で働いたり、空襲警報が鳴ったら防空壕に逃げたり、千寿の婚約者(ハーフ)のゲイリーと仲を深めたり…
↓千寿の身体の方が百合香よりも胸が大きいようですw
昭和生まれの子のくせに、栄養状態が悪いくせに、なぜかあたしより胸があることに気がついてため息が出そうになる。
百合香の身体になった千寿も、戦時中から現代にやってきた際の生活や価値観のギャップが多く描かれていて良かったです。
例えば、現代の美味しい食べ物を思う存分味わったり、学校に通って勉強したり、スマホを使いこなしたり…
↓千寿から見ると、平和に学校生活を送る高校生や、平気で食べ物を残す子供が甘えて見えるようで、つい百合香の身体で説教してしまいます。
「おどれら頭がおかしいんじゃ、狂っとるんじゃ!!何物にも感謝せんでこんな幸せな時代を生きて、不満ばっか作りだして!!贅沢病もここまで来ると末期症状じゃ!!」
「な、何なのよその変な言葉……」
↓洋式便器を始めて見るシーンが新鮮で好き。全体的に東京と広島の方言ネタが多いのも良いです。
「寝ぼけてるの?トイレ、目の前よ?」
真向いの扉を指さされ、一目散にお便所に走る。そこで今度は生まれて初めて見る形の便器の使い方がわからず、ものすごく戸惑ったことは割愛。
入れ替わり生活に慣れてきた千寿は舌が肥えて戦時中の食べ物を食べられなくなったり、百合香は現代の平和な高校生が下らなく思えたりします。
図書館で広島の原爆について調べようと百合香が図書委員に本の在処を聞き、翌日に百合香の身体になった千寿が広島の過去を調べようと再び図書委員に本の在処を聞いて訝しがられるシーンが一番興奮しました。
二人は、百合香のノートを使って情報を交換しますが、肝心なことを相手に伝えないのでハラハラしました(笑)
入れ替わりは特に百合香にデメリットがあり、千寿の身体では憲兵にヤキを入れられて怪我を負い、百合香の身体では千寿の戦時中の恋愛観から百合香の友達に絶交されたり、百合香の彼氏にフラれたりと散々です。
千寿が勝手に百合香の身体で戦争反対運動に参加し、百合香が百合香の両親に泣かれるのも悲惨でした。
広島に原爆が投下される日、百合香が千寿の身体に入るとわかった二人は、百合香(身体は千寿)と千寿の家族を助けるために動くことに。
↓千寿(身体は百合香)が広島平和記念資料館に行き、原爆死没者名簿で自分の名前を検索するシーンが熱いですね。
千寿(身体は百合香)が、生き残って被爆体験を語る87歳となった親友の菜穂子に再会するシーンもあります。
画面に向かいあって、指が止まった。深呼吸してなんとか気持ちを落ちつけようとしても、無駄だ。答えを出すのが、やっぱり怖い。
震える手を画面に伸ばす。まずは私から。
栗栖千寿、と打ち込むと一件出てきた。
国民学校時代だろう、今よりも少しだけ幼い私の写真がこっちを見ていた。
しかし、ゲイリーは百合香の曽祖父で、千寿が生き残ってしまうと百合香の存在が消えてしまうことが判明。
つまり、百合香は曽祖父の原爆で亡くなった初恋の女性と入れ替わっていたということに。
色々と重すぎて選べない百合香は、そのことを千寿に伝えられないまま、原爆投下の日を迎えてしまい…
何とか百合香(身体は千寿)は千寿の家族に入れ替わりと原爆投下を信じてもらい、とりあえず1945年8月6日は生き延びることに成功。
千寿(身体は百合香)も、2015年8月6日に危篤となったゲイリーと再会し、別れを告げます。
その夜、元に戻る際に謎の空間で話した二人は、ゲイリーの思いが入れ替わりを引き起こしたのではないかと考え、その後入れ替わりが起きることはありませんでした。
『70年分の夏を君に捧ぐ』のタイトル回収と、千寿と百合香のどちらかしか生き残れないタイムパラドックス問題の解決方法が良くできていたと思います。
生意気なお嬢様を従順にする方法
作品タイトル/著者 | 簡単なあらすじ | 収録書籍/ソフト |
『生意気なお嬢様を従順にする方法』 著者:田口 一 | 女子高生がAIと落雷で入れ替わる。 | KADOKAWA MF文庫J 『生意気なお嬢様を従順にする方法』 (※電子書籍版は限定特典付き) |
※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。
バーチャル美少女が大好きな後阪広十は、先行販売されたAR装置で従順なAI美少女・リーナを入手した。
しかし、インストール中に落雷があり、リーナはクラスのお嬢様・永羽星璃々七と入れ替わってしまう。

↓璃々七は、ブレインリンクのモニターとして、人間がAIにアクセスするテストをしていたようです。
璃々七がリーナに乗り移ったことを知らない広十は、管理者権限の設定を弄ってしまい、璃々七とリーナは入れ替わり、さらに元に戻れなくなってしまいました。
リアルの女性が嫌いな広十は、従順なAIのリーナが好きでしたが、そのリーナの中身が仲の悪く高飛車な璃々七になって嘆きます。
「すごい!わたし広十君の部屋にいるっ!こんな、こんなこと、信じられないっ!!」
「あれ?リーナ、少し口調おかしくない?」
「わたしのこと?そんなにおかしいかな!?なんだかドキドキしちゃって、ちょっと変になってるのかも!」
↓璃々七(身体はリーナ)は、初めは元に戻れると思い、リーナになってはしゃいでいましたが…元に戻れないと分かって焦りますw
「あの、璃々七さん?まだ帰らないのか?」
「……帰れない」
「はい?」
「元に戻れないのよ!どうして!?どうして元の体に戻らないのっ!?」
↓璃々七(身体はリーナ)は璃々七ボディが空だと思って、広十を連れて璃々七の部屋へ行くと、そこにはリーナ(身体は璃々七)が…
広十のことが大好きで従順な性格に設定されているリーナ(身体は璃々七)は、璃々七の身体で広十に積極的にアピールします。
璃々七本人と広十は仲が悪いのに、リーナが璃々七の身体でデレデレするのが最高です。
「……今の、誰?どうしてわたしが部屋にいるの?」
(中略)
「広十様!ううっ、やっと再会できたんですね!ずっと独りぼっちで、リーナ、とっても寂しかったです……」
「今、なんて言った?り……りーな……?」
仕方なく、事情を知っている広十が、リーナ(身体は璃々七)の世話をすることに。
広十は、リーナ(身体は璃々七)を「りーな」、璃々七(身体はリーナ)を「りりな」と呼びます。

↓まずはお風呂イベントで、人間の服に慣れないリーナ(身体は璃々七)が美味しいです。
気絶から目を覚ました璃々七(身体はリーナ)は、裸の広十を見て悲鳴w
広十は、リアル女性の裸には興味がなく、どうこうしようという気はない様子。
そしてすぐ前で、璃々七さんは俺の服を脱がそうとしていた。あの生意気お嬢様が俺の胸元に顔を近づけ、慣れない手つきでシャツのボタンを外している。
(中略)
「見てください広十様!りーな、広十様のボタンを外せました!」
上着の一番上のボタンを外し、りーなは嬉しそうに笑った。
このままだと俺は、彼女に全部脱がされてしまう!
いいのか?それでいいのか?目の前の彼女は、見た目は確実に璃々七さんなのに!
↓リーナ(身体は璃々七)は、ロボットらしい無知さで大好きな広十に奉仕。
璃々七(身体はリーナ)は証拠画像を撮影しようとしますが、どう見ても「璃々七が広十に奉仕をしている図」なので断念(笑)
リーナ(身体は璃々七)は、慣れない人間ボディで疲れたのか、すぐに寝てしまいました。
「どうですか、広十様。気持ちいいですか?」
タオルで流すということを知らないらしい。リーナは素手のまま、上から下へ、右から左へ、円を描くように俺の背中をなでまわす。
「き、気持ち……いいよ……。ぞくぞくするほどだ……」
「絶頂しちゃいそうですか?いいんですよ、広十様。りーなで絶頂してください!」
「うあああっ!?」

↓入れ替わり状態に慣れてきた広十は、生意気な璃々七の中身が純真なリーナになり、しかもかいがいしく世話を焼いてくれるので満更でもないようです。
もちろん璃々七(身体はリーナ)は嫌がって止めに入るものの、広十に「俺に謝れば考え直す」と言われて断念w
璃々七(身体はリーナ)はスマホの中にいて実体を持たないため、何もできないのが最高です。
りーなは両手を胸元で重ね、キュンとした笑顔を浮かべる。
かわいい……。
リアルなのに、かわいい……。
あの性悪璃々七さんがここまでかわいい笑顔になるなんて、りーなはそれほど純粋で汚れの無い存在なんだ。
りーなが、かわいいりーなが、俺を着替えさせてくれるだって……?
昨日のバスルームでは突然のことに動揺したけど、落ち着いて考えれば、これは理想的なシチュエーションじゃないか?
体は璃々七さんでも、中身はリーナ。バーチャル美少女に着替えさせてもらうなんて、いまだかつて実現したことのない人類の夢だ。
さすがの璃々七(身体はリーナ)もやられてばかりではなく、無知なリーナ(身体は璃々七)に間違ったことを教え、広十に女子制服を着せようとします(笑)
その日の学校は、広十は璃々七(身体はリーナ)と一緒に行き、リーナ(身体は璃々七)はお留守番。
↓管理者の広十がアプリ内の璃々七(身体はリーナ)に命令すると、璃々七(身体はリーナ)は逆らえないらしく、勝手に身体が動いてしまうようです。
璃々七(身体はリーナ)がAIとしての機能を便利に使うシーンが好き。疲れない&お腹も空かないAI生活を気に入るのも最高。
「じゃあ自分で調べるから地図アプリを出してくれないか」
「広十君、頼み事のマナーがなってないようね。わたしに頼み事をするときは、地面にひれ伏して『お願いします璃々七様、哀れな広十の頼みを聞いてくださいませ~』って泣いて土下座をするの。そうしたら考えてあげないことも無くもないわ」
「どっちだよっ!いいから、地図アプリを出してくれってば」
「そんな態度では言うことなんか聞いてあげませ……あ、あら?体が勝手に……」
COGiTフォンの上のリリナが、両手を足下に伸ばした。
何かをつかむ仕草をして「よいしょっ」と巨大な物体を持ちあげる。
地球だ。ミニリリナの倍以上もある地球儀を両手で抱え持っている。ホログラフィックの立体地図が見られる、COGiTマップというアプリらしい。
「ちょっと、どういうこと!?体が勝手に動くのだけど!?」
「どうやら管理者である俺の命令には、逆らえないみたいだな」
「冗談でしょう!?なんであなたの命令を聞かなければならないのっ!?」
俺は「ふふ~ん」と余裕の笑みで、ちっちゃなリリナを見下ろした。
「それじゃリリナさん。俺のために誠心誠意、ご近所の地図を出してくれたまえ」
「くうっ……偉そうに……」
悔しそうに奥歯を噛みしめながら、リリナは地球儀を回してズームアップさせた。
↓トイレすら知らないリーナ(身体は璃々七)の尿意イベントが最高です。
危ないところで元に戻り、尿意が限界の璃々七の身体に戻った璃々七は、何とかトイレを済ませます。
「ふぇ……?『おしっこをする』とは、どのような行為なのでしょうか?む、無知なメイドで、申し訳ありません……」
「ちちち、ちょっと、わたしの体なのよ!こんなところで漏らさないで!!」
リリナが焦った声で叫ぶ。
「いいかい、りーな。おしっこというのは、体内の余計な水分を外に排出することだ。それをするために、トイレへ行く必要があるんだ」
「そうだったのですね!と、トイレはどこにあるのでしょう?」
「俺がトイレに連れて行くから、あとちょっと、我慢するんだ」
「が、我慢ですか……。ど、どうすれば、おしっこ、我慢できるのでしょう……?」
「それは、まずお腹にきゅっと力を入れてだな」
「はううううううっ、りーな、何かが出ちゃいそうですうう~っ!!」
しかし、また翌朝起きたら二人は入れ替わっていました。
二人が同時に望んだ時に入れ替わり、二人が同時に望んだ時に元に戻るようです。
璃々七はある理由があって、深層心理でリーナになりたいと思ったらしい…
今回は、リーナ(身体は璃々七)はトイレを教えてもらい、広十と一緒に学校へ。
リーナ(身体は璃々七)は教室内で広十にイチャイチャするので、クラスメイトに色々と誤解されてしまいました。
この後は、リーナ(身体は璃々七)と璃々七(身体はリーナ)が広十を取り合って、デート対決に。
↓入れ替わっていることを忘れているかのような二人の発言が好きですw
バーチャルボディの璃々七(身体はリーナ)は、実体の人間には触れませんが、同じくバーチャルボディのモンスターには触れられるようでした。
「そんなデフォルメ姿で自信が持てるなんて、りーな、うらやましいですう」
またまた睨み合うリリナとりーなだ。いや本来はりーながミニキャラのはずなんだけど。
「いいから、わたしを思いっきりギューッて抱き寄せなさい!」
リリナは怒った顔で俺の前に立ち、両手を広げて抱きついた。
しかし彼女の体はホログラフィック。勢いよく俺をすり抜けてしまう。
「ふふっ。抱きつくこともできないんですね。リリナさんって、かわいそう」
「くうぅっ……。わ、わたしはベタベタするなんて、品のない行為はしないのよ!」
「それじゃあ、りーなはもっと品の無いこと、しちゃいますね」
りーなは俺の左腕を取り、両腕で抱きしめた。
や、柔らかい……。俺の二の腕がりーなの胸に触れているんだ。
(中略)
憎々しげな視線におそるおそる振り返ると、リリナが鬼の形相で睨んでいた。
「た、大層な自信ですことね、りーな。そんな貧相な胸で何が気持ちよくなるの?硬くて痛いだけだわ。笑わせないでほしいわね。あっはっは!」
「いやいや、本来はリリナさんの体だから……。ほら、こうして胸で挟まれると俺ですらドキドキしちゃうし、そこまで卑下しなくていいと思うけどなあ」

広十だけでは学校でのフォローが追い付かないので、弐分木先輩に入れ替わりを話して協力してもらいます。
弐分木先輩がリーナ(身体は璃々七)をかわいがり、それを見た璃々七(身体はリーナ)が恥ずかしがるのが好きです。
↓危険や無茶の線引きが難しいリーナ(身体は璃々七)は、広十の言葉を真に受けて横暴な副理事長に対して…
「むむむ……っ。難しいですね……。どうしたら危険なことや無茶なことだと判断できるのでしょうか」
「そうだなあ。まずは自分の直感を信じるんだ。相手が間違ってると感じたら、はっきり正しいと思うことを主張すればいい」
↓徐々にリーナ(身体は璃々七)は人間化、璃々七(身体はリーナ)はロボット化が進んでいきます。
「なのに自分でも止められないんです!りーなは、りーなは知ってしまったんです!好きな人のそばにいると胸がドキドキして、好きな人に近づくと両足が浮き浮きして、好きな人のことを考えると、嬉しさと恥ずかしさで、体中が熱くなってしまうんです!」
俺は何も言えないまま、りーなの激情を聞いていた。
「こんな感覚、バーチャルだったときには、感じませんでした。でもリアルの体を持って、広十様のことを考えるだけで体中が変なふうになって、いても立ってもいられず、自分でも止められなくて……。これが恋なんだって、知ってしまったんです」
感情をほとばしらせる彼女の姿は、とてもバーチャルのAIだなんて思えない。
そこにいるのは、一人の少女だ。
↓ロボット化が進み、感情が無くなっていく璃々七(身体はリーナ)が熱いです。
璃々七(身体はリーナ)は、以前なら嫌がっていたであろう広十にキスをする提案まで受け入れようとしてしまいます。
二人が元に戻らないと望めば、元に戻れなくなってしまうらしく、焦った広十は…
バーチャルスクリーンのウェブサイトが、目にも留まらぬ速度で次々に切り替わっていく。これが今のリリナの思考速度なんだろうか。
彼女の横顔を見つめながら、胸の奥から違和感がわき上がるのを押さえられない。
リリナの口調は今までどおりの憎まれ口だ。でもどこか形式的というか、感情がともなってないというか。
(中略)
「ほんと、広十君って変なことを気にするのね。わたしは広十君のバーチャルアテンダントよ。広十君の役に立つことが当然でしょう?」
にっこりとほほ笑むリリナの表情には、意地悪さのかけらも感じられない。
(中略)
「もう、わたしをもてあそんだのね。あなたって最低な人。それじゃあ、わたしはデートコースを検索するから待っててね」
ほおを膨らませて怒り、すぐ笑顔に戻ってバーチャルスクリーンに向かう。
まるで機械のような切り替わりの速さで。
今回は、小説の女同士入れ替わりを10作品紹介しました。
読んでいただいてありがとうございました!

