女同士入れ替わり

小説の女同士入れ替わり①【7作品】

女同士入れ替わり2

今回は、小説の女同士入れ替わりを7作品紹介していきます。

 

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ハウルの動く城

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『ハウルの動く城』
著者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
訳:西村醇子
姉妹が魔法で姿を入れ替える。 ●徳間書店
『ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔』
●徳間書店
『ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

両親を亡くしたソフィー・レティーマーサの三姉妹は、それぞれ別の家に行くことになった。

レティーとマーサは、行き先がお互いの希望と逆だったため、魔法で姿を入れ替えたのだった。

 

主に入れ替わりの話が出てくるのは、第1章「帽子屋のあととり娘」から第2章「ソフィーの旅立ち」までです。

レティーはもっと勉強をしたいからマーサになりたい、マーサは早く結婚したいから美人のレティーになりたいという理由で入れ替わります。

 

久しぶりにレティーに会ったソフィーは、実はレティーではなくマーサだと告げられてびっくりw

癖の違いで入れ替わりを信じるソフィーが好きですね。

入れ替わりのまじないは少しずつ解けていき、徐々に元の姿に戻るらしい。

 

この後は、マーサになったレティーは入れ替わりがバレて、すぐにレティーの姿に戻りますが、レティーになったマーサはそのまま。

つまり、作中にレティーが二人出てきて、さらに二人のレティーがそれぞれ別の恋人を作るので色々とややこしいことに(笑)

ジブリ映画の方は、マーサが登場せず、入れ替わりの話もありません。

 

13ヵ月と13週と13日と満月の夜

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』
著者:アレックス・シアラー
訳:金原 瑞人
女の子二人が魔女姉妹に身体を奪われる。 求竜堂
『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

ちょっと容姿の悪いカーリー・テイラーは、祖母や親友・姉妹に憧れる12歳の女の子。

ある日、クラスに転校してきたメレディスと仲良くなりたいと思ったカーリーだが、メレディスはやけに大人びていて冷めた性格で断られてしまう。

メレディスの祖母・グレースと仲良くなったカーリーは、グレースから秘密の相談を受けるのだった。

 

最初は、カーリーが転校してきたメレディス(実は中身はグレース)に対して、ちょっと変な子だなと思うところから始まります。

メレディス(実は中身はグレース)がたった一人の家族であるグレース(実は中身はメレディス)をまるでゴミのような扱いをするところが黒くて良かったですね。

 

↓メレディス(実は中身はグレース)はグレース(実は中身はメレディス)を完全に支配下に置いているようです。

その日、おばあちゃんが早く来て、わたしの母さんと校庭でしゃべっているのが教室から見えた。メレディスは、ベルが鳴るとすぐに飛んでいった。
「早すぎる!そんなことするなって言っておいたのに!今度そんなことをしたら――たいへんなことになるわよ」という声が聞こえた。
「ごめんなさい、メレディス」おばあちゃんが弱々しく答えた。
「時間を間違えたみたい。もう二度としないよう気をつけるわ。約束するよ」

ああ、お願いだから、あっちへ行ってちょうだい。お友だちと遊んでいるのが一番よ。メレディスが出てきて、わたしたちが話しているのを見る前にね。見たら、怒るに決まっている。あの子は怒ったらいつもひどい仕打ちをするわ。その相手はたいていわたしなの。早く、今すぐ行ってちょうだい。わたしを困った目にあわせないで。あなた自身も困ることになるわ。あの子の力がわかってないのよ。わたしが何をされたか――何を盗まれたか

 

「まるで子供時代を奪われたかのように、子供たちを羨ましそうに、悲しそうに見つめるグレース(実は中身はメレディス)」に興味を持ったカーリーは、話を聞くことに。

グレースだと思われていた老婆の中身は実はメレディスで、グレース本人に教わった幽体離脱で遊んでいたら、身体を奪われてしまったらしい。

 

↓身体を奪われたメレディス(身体はグレース)の絶望感の描写が良かったです。

第一、わたしの名前はグレースじゃないし、メレディスはわたしの孫じゃない。本当は、わたしがメレディスなの。あなたにも――だれにも――証明はできないけれど。信じてくれることを願うだけ。どうにかして、私を助けてちょうだい。わたしの体と若さ、わたしの人生のすべては盗まれたのよ、カーリー。

メレディスの話の一部は本当のことだけど、ほかは嘘。自分の経験のように語ったことは、本当はわたしの身に起きたことなの。わたしの体を盗んだだけではなく、身の上話まで盗んだわけ。身の上話を盗むのも、同じくらいひどい仕打ちよ。だって、それはその人になりきるということだもの。わたしは、過去の自分も思い出も全部盗まれたの。

 

グレースの正体は、何度も何度も子供を騙して身体を奪い、何百年も生き続けている魔女。

メレディスは、両親を事故で無くしており、身寄りのない孤児だったため、グレースに狙われたようです。

孤児院に預けられたメレディスに、優しそうな笑顔を浮かべて狙いを定めるグレースの描写が良かったですね。

 

↓幽体離脱遊びから帰ってきたメレディスが、「メレディスの身体(中身はグレース)が動く場面」を見るシーンの混乱している様子が好きです。

わたしは必死にあたりを見まわした。どこにいるの?わたしの体はどこへ行ったの?そして見つけた。そう、わたしの体はそこにあった。でも、目を閉じ手を組んでいすに座ってはいなかった。
踊っていた。音楽はなかったが、踊っていた。
何かにとりつかれたように踊っている。
だれかの魂にとりつかれたように踊っている……。

 

若い身体を喜び、年老いた身体を蔑むグレース(身体はメレディス)がひたすら真っ黒です。

メレディス本人は、年老いたグレースを特別馬鹿にしていたわけではなく、むしろ優しくしていたように思いますが、この仕打ちは酷い…

どっちが老いぼれだよ!のろのろした年寄りになるのはだれの番かね、メレディス?お前の番だよ、お嬢さん、そうだろ。愚かで信じやすいとどういう目にあうか、いい教訓になったろう、たぶんね。つえをついて歩き、さえない服を着るのはだれの番かな、おばあちゃん!そう、お前の番さ!入れ歯をはめて、目はよく見えず、あごひげを生やしてる!全部お前のことさ!これがささやかなプレゼントだよ、せいぜい楽しんでおくれ!

お前はもう年寄りになるしかない――今すぐに。なんてわたしは親切なんだろう。成長するなんて面倒なことを省いてやったんだよ!

 

↓メレディスの霊体に、「早くグレースの身体に入らないと死んでしまう」と急かすのも最高。

体に入るか、永久に体のない魂としてさまようか。でもこの体には入れませんよ。この背が高くてほっそりした、若い体にはね。これは先約ずみ。ほかの人が入ってるからね。それにしても、これはとてもいい体だねえ?そう思わないかい?ちょっとまわってみせようか

そこにいるのかい、メレディス?お前の体がお待ちかねだよ。お入り。その体を着るんだ。サイズを試してごらん。ちょっとばかり、そうだね、なんといったらいいか――最初は違和感があるかもしれないね。慣れていないから。少々くたびれていて、あまり調子はよくない。だけど、そのうち慣れるさ。保証するよ。

 

↓仕方なく、メレディスはグレースの身体に入ります。最高。

どうしようもない。その体に入るか、体のない孤独な霊のまま永遠に生きるか。わたしはその体を見つめた。震えが走った。本当にこの体に入らないといけないの?この老いた体に?これに?私は自分がこのおばあさんの体に入っているところを思い描いた。必死に想像した。
「わたしはもう、そこにいる」と考える。「そこにいるの」
そして突然、そのとおりになった。
わたしは絶叫した。

 

「若い身体と老いた身体の等価交換」と話すグレース(身体はメレディス)に対し、メレディス(身体はグレース)は「不公平だ」「自分が一体何をしたのか」と抗議しますが…

グレース(身体はメレディス)は、「ただ面白いからやっただけ」と返します。

 

↓泣くメレディス(身体はグレース)に対し、グレース(身体はメレディス)は力関係を誇示し、若い身体を見せびらかしてメレディスの部屋に戻っていきます。

年老いた身体に苦しむメレディス(身体はグレース)の描写が多くあって良かったです。

二度とその名で呼ぶんじゃないよ。それはもうお前の名前だ。お前がグレースだ、いいね。そしてわたしがメレディス。それを忘れたらその耳をねじってやる。それと、わたしの言うとおりに動くのが身のためだ。見かけは子どもでも、すべてを決めるのはわたしだ。お前より若くて元気で強いからね。わたしを怒らせないように、言われたとおりにするほうがいいよ。わたしは若いだけでなく――心が醜いからねえ。お前が想像もできないような恐ろしいことをやってのける。どんなことかなんて知りたくないだろ、おばあちゃん。

 

メレディス(身体はグレース)は、反抗したら施設に送ると言われ、グレース(身体はメレディス)に反抗できなくなりました。

他にも、グレース(身体はメレディス)がメレディス(身体はグレース)に酷い仕打ちをするシーンが書ききれないほどありますw

町の人からも、老人扱いされるメレディス(身体はグレース)がかわいそうでした。

 

13ヵ月と13週と13日が過ぎるまで、グレース(身体はメレディス)は魔女の力を使うことができないようで、カーリーは秘密裏にメレディス(身体はグレース)と相談して計画を練り、隙をついて入れ替わりの呪文を使うことに。

↓しかし、カーリーも身体を奪われてグレースの身体にされてしまいました。

覚えているのはそれだけ。
目がさめるまでは。
そして目が覚めたとき……。
……わたしはもう、わたしではなくなっていた。

 

カーリーと読者がグレース(身体はメレディス)だと思っていた人物は実はグレースの姉・ブライオニー(身体はメレディス)で、メレディス(身体はグレース)だと思っていた人物は実は入れ替わっていないただのグレース

つまり、本当はメレディスブライオニーカーリーグレースが入れ替わっています。

 

魔女の姉妹は、最初から友達のいないカーリーに狙いを定めていたようです。

「メレディス」が「カーリー」の家で暮らせるように、カーリーの両親にあらかじめ話をつけておいたのも抜かりないw

本物のメレディス(身体はブライオニー)は、老人ホームにいるらしい…

 

↓グレースの身体になったカーリーが、魔女の記憶を少しだけ読み取るシーンがありました。

また、年老いた脳だと、物覚えも悪くなるようです。

どうしてこんな古い歌の断片や、見たはずのない場面や景色が心に浮かんだんだろう?やったこともないことや行ったこともない場所の記憶も、そしてそれは、ほんの短い間心に残っただけで、消えてしまった。でも、わたしが想像で生み出したものじゃない。本物の記憶だ。どうしてわかるのかは聞かないでほしいけど、わかる。

 

↓騙されたカーリー(身体はグレース)を、グレース(身体はカーリー)とブライオニー(身体はメレディス)はこれでもかと馬鹿にします。魔女姉妹が性格悪すぎw

魔女姉妹が新しい身体でカーリー(身体はグレース)に自己紹介をするシーンが好きでした。

「おばあちゃん、おばあちゃん、カーリーおばあちゃん。カーリーは年寄り。氷が冷たいってのと同じくらい、本当のこと。カーリーおばあちゃん」
この失礼な子はだれ?どこかで見たことがある。どこだったっけ?あの顔は見たことがある。あのままではなかったけど。なんというか――そう、左右反対の感じ。そのままじゃなくて。ただ――そう――写真、写真でなら見たことがある。私の知っている人だ。何度も何度も見たことがある。どこででも、毎日、朝は洗面所の鏡で見たし、窓やガラスにも映ってた。お祭りのときに入った鏡の館の部屋で、あの顔が長く細くなったり、突然つぶれて太くなったりして、また元のサイズにもどるのを見たことがある。
それは、わたしだった。わたしは自分自身を見ていたんだ。自分がわたしに向かって舌を突き出しているのを見ていた。自分の声がわたしをあざけり笑うのを聞いていた。

わたしは家に帰らなきゃ。わたしはふたりにそう言った。
「わたし、家に帰らないと。母さんが心配するから」
「カア、カア、カア!」
ふたりはまたかん高い笑い声をあげ始めた。もうやめてよ。
「母さんが心配するんだってさ」
メレディスが言った。わたしのか細い声を真似しながら。
「こいつ、自分の母さんが心配するって思ってるよ」と、あざける。
「そうだね、いいことを教えてあげるよ。お前のことなんか心配したりしないさ。だって、お前はもうただのおばあちゃんだからね。母さんが心配するのは、こっちの女の子のことだよ。お前の体を持った、このカーリーさ。お前じゃないよ」

 

カーリー(身体はグレース)は、愛してくれている両親なら絶対わかってくれると思い、両親にカーリーしか知らない話をしますが、信じてもらえるはずがなく…

頭がおかしいと思われたカーリー(身体はグレース)は、老人ホームへ送られることになってしまいました。

年老いた身体を見てショックを受けるカーリー(身体はグレース)が良かったです。

 

↓グレース(身体はカーリー)とブライオニー(身体はメレディス)が、無害な女の子を演じるところが最高でした。

煽られて怒ったカーリー(身体はグレース)は手を出してしまい、余計におかしいと思われてしまいます。

メレディスは天使のような顔で、にこやかに言った。
「ごめんなさい」
そしてメレディスは、ずうずうしくもわたしのところに来て、心配そうにわたしのおでこに手を当て、熱を確かめてみせた。まるでわたしのことを本当に気づかってでもいるように。
「気分が悪いの、おばあちゃん?」メレディスは言った。
「どこか具合が悪いんだと思う?」
「その手をどけてよ、この性悪の魔女め!」
わたしは叫んでメレディスをたたき、その手を払いのけた。

メレディスが後ずさった。それからずうずうしくも、泣いてみせた!本当に泣いてみせたんだ!
「ああ、おばあちゃん」と泣き声をあげた。
「どうしてぶつの?わたしはただ、具合はどうって聞いただけじゃない。ただ助けてあげたいと思っただけなのに」
「あああああ!どうしてそんなことが――」
わたしはまた怒りの叫び声をあげた。今度は本当に恐ろしい声で。

 

老人ホームに面会に来たグレース(身体はカーリー)とブライオニー(身体はメレディス)は、年老いた身体で思うように動けないカーリー(身体はグレース)をつねって痣だらけにします。酷すぎる…

さらに、カーリーの両親に手紙を書きつづけたカーリー(身体はグレース)は、ストーカーとして?注意を受けてしまいました。

 

そして、メレディス(身体はブライオニー)も、カーリー(身体はグレース)と同じ老人ホームにいることが判明。

メレディス(身体はブライオニー)が、カーリー(身体はグレース)を魔女のグレースだと思って敵意を示すところが好きです。

 

本当の姉妹・親友のように仲良くなった二人は、元の身体を取り戻す計画を立てます。

元の身体に戻るたった一日のチャンスに、二人は苦労して脱走し、魔女姉妹がいる家へ。

カーリーの両親もいたぶろうとしている魔女姉妹がヤバい。

 

最後は、制限時間ギリギリに元に戻ります。

魔女姉妹の肉体は、急速に老いて塵になって消えてしまいました。

本来の身体ではほぼ初対面のカーリーとメレディスが喜びあうシーンが良かったです。

 

アレックス・シアラー

おばあちゃん(世にも奇妙な物語 小説の特別編 悲鳴)

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『世にも奇妙な物語』より
『おばあちゃん』
原作:落合正幸
ノベライズ:加賀あきら
女の子が祖母と身体を入れ替える。 角川書店
『世にも奇妙な物語 小説の特別編 悲鳴』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

両親と一緒に、余命わずかな祖母の見舞いにやってきた小学生の中村美保

生き別れの弟に会いたいという祖母の心の声を聞いた美保は、嫌々ながらも祖母に一日だけ身体を貸すことにしたのだが…

 

二人は落雷で入れ替わったようです。

↓美保が寝たきりで今にも死にそうな祖母の身体になるのを嫌がるシーンが良いですね。

身体を貸すということは、その間、美保自身はこの老婆の身体で過ごすということだ。この、冷たく固く、枯れた老人の身体で。誰にも訴えを聞いてもらえず、うら寂れた部屋で横たわっているほかには、なにもできないのだ。

 

↓最初から戻れないフラグな会話も最高。

もう一度確認するように、美保は、祖母の土気色の顔をじっと見つめた。
「帰ってきてね、ゼッタイ。明日までに」

 

↓自由に動く身体を確かめる祖母(身体は美保)のシーンも最高。

祖母の身体に入った美保は、体中の痛みを感じた後に気を失います。

そんなやりとりを遠くに聞きながら、ゆっくりと美保は立ち上がった。そして、そっと指先を動かしてみる。まるでその身体の感覚のひとつひとつを、確かめるかのように。
……美保の身体であって、美保ではない、少女が。
『……いたい……いたいよぉ、からだが、いたい』
少女の声が、耳元で囁いて聞こえる。老婆の指先が、かすかに動いた。それを、無言で、少女は見つめた。
『おばあちゃん、苦しいよ、苦しい……』

 

病室に置いて行かれる美保(身体は祖母)がこの上なくかわいそうです。

病院からの帰り道、祖母(身体は美保)は、美保の母親が祖母を悪く言っているのを聞いてしまったようです。

 

祖母(身体は美保)は、美保に成りすまして一夜を過ごし、学校に行くふりをして弟…ではなく、祖母が昔好きだった男性の元へ向かいます。

↓祖母(身体は美保)と男性の再会シーンは感動です。

その笑顔を目の当たりにした瞬間、彼女の胸に熱いものがこみあげ、美保はたまらず椀をとりおくと、老人の身体を抱きしめていた。
「私、怒ってないわよ。あなたには、親の決めた相手がいたんだから」
それを、伝えたかった。どうしても。そして……。

 

最後の用事を済ませた祖母(身体は美保)は、美保(身体は祖母)のいる病院へ帰ろうとしますが、警察に捕まってピンチに。

↓祖母(身体は美保)は、美保(身体は祖母)へ早く身体を返さねばと焦ります。

彼女は、まさに今このときも、病室で苦しんでいるだろう孫娘のことを思い、胸を痛ませた。
約束をしたのだ。絶対に、帰るから、と。

 

↓祖母の死にそうな身体に閉じ込められている美保の描写は悲惨です。

身体は、相変わらずぴくりとも動かなかった。日が暮れ始めている気配に、老女の身体の中に閉じ込められたままの美保は、すでに幾度目かわからない悲鳴をあげた。
(……苦しい……どんどん息が苦しくなる。……ママ……パパ!……美保、死んじゃうよ……!)

 

↓祖母(身体は美保)は走れメロスばりに走り、制限時間ギリギリに病室に駆け込みます。

息が苦しく、喉がひりつくように辛い。しかし、今、本当の美保が受けている苦しみに比べれば、そんな痛みはたしたことではないということを、彼女はよく知っていた。
(美保、頑張れよ、頑張るんだ……!)

 

↓美保(身体は祖母)にはお迎えが今にも来そうな感じでしたが、ギリギリで祖母(身体は美保)が病室に駆け込んできます。

これが、お迎えというものなのだろうか。
(いやー!やだよ、あっちへ行って!)
死にたくない。死にたくない。まだ、死にたくなんかない。
自分はまだ小学生なのだ。この魂は、本来この身体にあるものではない。そう美保は訴えたかった。しかし、光はそのような事情は全くおかまいなしに、彼女の身体を包み込もうとするかのように降りてくる。
(いやあああ――っ!)

 

↓祖母(身体は美保)は美保(身体は祖母)にお礼を言い、二人は無事に元に戻ったと思われましたが…

(よかった……よかったね、おばあちゃん)
その言葉だけで、美保はこの身を切られるような苦痛と恐怖が報われる気がした。最後に、大切な祖母のお願いを、叶えてあげられたのだ。
そして、ようやく、もとの身体に戻れる。
美保の心が、ふわりと軽くなった。
『ありがとう……美保』

 

そして30年後、42歳になった美保が美保の母親の葬儀をするシーンに移ります。

二人は元に戻れておらず、祖母は美保として生きていたのでした。

『美保には、すまないことをした。……やっぱり、戻ることはできなかった。』

あの時。彼女は戻らなかったのだ。
そのことには、ついに誰一人気づく人間はいなかった。気づく筈もない。本当の美保は、あの身体では訴えることもできず、そしてもうこの世にはいないのだから。
あの朝、本当に亡くなったのは、十二歳の美保の魂だった。
そして今、ここにいるのは……。
『まだ、やり残したことがあったからね……』

 

↓祖母の肉体死亡時のこの文章も、元に戻ったというミスリードだと思うと恐ろしいです(笑)

この文章が祖母(身体は美保)が語った言葉だとすると、かなりの鬼畜では…(汗)

――そして、おばあちゃんは死んだ。その朝、予め伝えられていた通りに……。

でも、あの苦しみから、おばあちゃんは解放された。あの、ひどい苦しみから……。きっと向こうで、楽しく過ごしているだろう。

 

↓祖母(身体は美保)は、美保の母親にされた仕打ちを復讐するためにあえて?戻らなかったようです。

祖母の身体で死んだ美保に申し訳ないと言いつつ、全く申し訳ないと思っていなさそうな祖母(身体は美保)がダークで良かったです。

その眼差しには、暖かいものはひとかけらも浮かんではいない。
『だって、不公平だろ?あの女も苦しい思いをしなきゃ』
彼女の口元が、冷たい笑みの形に歪められた。
望まない延命措置。山奥の病室への隔離。それら全て、自分があの女にされたことだ。それを同じように味あわせてあげただけのこと。何が悪いというのだ。

 

独占

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『独占』
著者:壁井ユカコ
女子中学生同士が相互変身で入れ替わる。 ●角川書店
『14f症候群』
●角川書店
角川文庫
『14歳限定症候群』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

中学二年生の橘七美青山美憂は、お互いに異常と言えるほど特別な感情を持っている親友同士だった。

ある日、美憂が七美の姿に変身して困っていたが、翌日に七美も美憂の姿に変身して入れ替わり状態になってしまう。

美人の美憂に強い憧れを持っていた七美は、美憂の姿で周囲に反感を持たれるような言動を繰り返し…

 

↓最初に美憂が七美の姿に変身し、本物の七美と二人の七美が存在することになり、七美の家で二重生活を送るシーンもおいしかったです。

明日も明後日も美憂があたしのままだったら?毎回毎回ご飯を中座し、戻ってくるなりおかわりを要求するのでは怪しまれるし、絶賛成長中の十四歳とはいえあたしはどんな大食らいだ。

 

普通の女の子の七美は、美人の美憂に強い憧れを抱いていて、美憂の手下のような生活を送っています。

自身が美人だと知っている美憂も、そんな七美を手下のように扱う生活を送っています。

 

↓七美が美憂のことを盲目的に愛しすぎていて恐怖を感じるレベルです(汗)

美憂が七美のままだったら、永遠に美憂がこの世に存在しなくなる。そうなったらどっちにしてもあたしは生きていけない。美憂がいない世界になどなんの価値もない。美憂がいない世界などあたしには必要ない。

 

ということで、二人の七美が存在したのは一日だけで、翌日には七美も美憂に変身。

↓憧れの美少女・美憂になれた七美は、さっそく鏡で百面相です。

美しくて愛らしくて、誰もが部屋に持って帰って独り占めしたくなるような、美憂はそんな女の子だった。
その美憂が鏡の中にいる。
自分の顔に手を触れてみる。鏡の中の美憂も同じことをした。にっこりと笑ってみる。鏡の中の美憂がそれはもう愛らしく微笑んだ。

 

↓入れ替わりを意識させる描写が異常に多く、かなりおいしいです。

数日前から二人は謎の貧血と関節痛があり、病院で貰った薬が入れ替わりの原因ではないかと考えますが、元に戻る方法もわからないので、二人は仕方なくそのまま学校へ。

七美である美憂がベッドに座り、美憂であるあたしが床に座って、互いに狐につままれたような顔を見あわせた。普段の美憂と七美とは逆の位置関係だ。

 

↓主人と下僕のような関係の二人ですが、入れ替わっているのでおかしなことになっています。

美憂がやれば美しくも恐ろしいその仕草も平凡かつ平坦な七美の顔では迫力がなく、普段よりはあたしを恐れさせなかったが、あたしは恐縮したふりをして床の上で居住まいを正す。うっとうしいものでも見るように美憂はベッドの上からあたしに冷たい視線を浴びせた。

 

↓美憂になりきる自信満々の七美(身体は美憂)が怖くて最高。

髪の毛の質感の違いネタや、好き嫌いネタ、家庭環境の違いネタ、テストネタ、仲の良い友達グループにバレないように成りすますシーンが良かったですね。

あたしは他の誰よりも美憂を見ている。学校の成績について言えば下から数えた方が早いくらいのあたしだが、美憂のことに限っては完璧に克明に記憶している。話し方も仕草も、どんなに些細な表情や癖も。美憂は交友関係が広くないから誰に対してどんな態度で接すればいいかも把握している。そんじょそこいらの他人に対して美憂を演じてみせることなど難しくはない。あたしはうまく美憂をやり遂げることができるはずだ。

 

↓美憂として美憂の家に帰った七美(身体は美憂)は、お風呂場の鏡で美憂の裸を見て我慢できずに生まれて初めての自慰行為

朝はばたばたしていてそんな余裕もないままだったが、あらためてあたしは露わになった美憂の身体と一対一で対面したのだった。いやそれもおかしな表現か。あたしはあたしと対面しているはずなのに、目の前には美憂がいる。

鏡の中で美憂がゆっくりと下着を剥ぎ取っていく。ブラをはずし、素足の下にパンツを踏んで、あたしを見あげる。硬質な印象を受けるその端正な顔を恥じらいでほのかに強張らせつつ、媚びるようなうるんだ瞳であたしを見つめる。
(中略)
そんな至高の存在である美憂が、あたしの前に無防備な姿をさらけだす。

美憂の身体を辱めることにあたしは悦び、快感に震えた。

 

↓事後に罪悪感に苛まれつつも、七美(身体は美憂)はようやく愛していた美憂が完全に手に入ったと喜びます。

あたしは美憂を手に入れたのだ。出会ってからおよそ二年間、あたしはずっと美憂を愛してきた。人形のように美しく愛らしく、女王のように気高く残酷な美憂を、あたしはとうとうあたしだけのものにした。

 

そして完全に入れ替わってから三日目、美憂の身体を手に入れた七美は、「美憂」に告白してきた男子をこっぴどく振り、「美憂」は学年中の非難の対象になってしまいました。

美憂は日頃から顰蹙を買わないように過ごしてきたのと、美憂(身体は七美)が尻拭いをしたおかげで、とりあえず友達グループには嫌われずにすみましたが…

 

↓怒った美憂(身体は七美)が、七美(身体は美憂)を張り倒し、元の美少女である自分を汚す快感を覚えるところが最高です。

このあたりから、七美(身体は美憂)は美憂(身体は七美)に従順ではなくなっていきます。

「七美のくせに、二度とあたしに逆らうな。わかったの?ごめんなさいは?」
「ごめん……なさい」
目尻に涙を滲ませて咳きこみながら、か細い声を絞り出す七美。あたしの背中をぞくぞくしたものが駆け抜けた。あの美しい美憂が、水浸しのタイル張りの床に座り込んで下着を濡らし、黄色い垢がこびりついた便器に顔を突っ伏して苦悶に喘ぎながら謝罪する。その醜態があたしに快感を覚えさせた。

七美はあたしの容姿を愛した。あたしがどんなに暴君として振る舞おうとも、あたしが美しい限りは決して離反しない、あたしの奴隷だ。
思えばこのときにはもう七美の態度は変わっていたのに、愚かにもあたしは気づいていなかった。七美に対してあたしが絶対的に優位にあると疑っていなかった。あたしはもう"美憂"ではないにもかかわらず。

 

↓美憂(身体は七美)が七美の兄・彗に入れ替わりがバレそうになるシーンがドキッとしました。

さりげなく七美を下げ、美憂を上げる美憂(身体は七美)が最高ですね。

「あたしみたいなブス、狙われるわけないよー。あたし、みゆりんみたいにかわいくないもん」
彗の反応は完全にあたしの不意を突いた。
「あんまり七美をこきおろすなよ」
俯いていた顔をすこしあげ、初めてあたしのほうをまともに見て。
「ここんとこ思ってたんだけど……お前誰だ?」
「……え?」

 

↓愛する美憂の身体を手に入れた七美(身体は美憂)は、とうとう美しくなくなった美憂(身体は七美)は必要ないと言い始めます。

入れ替わりによって美憂(身体は七美)の性格にはあまり変化はありませんが、七美(身体は美憂)は大きく変わってしまったようです。

「うちって、あたしのうちなんだから、いつ泊まろうがあたしの自由じゃない」
「でも今はあたしのうちだよ」
「何言ってんの、調子に乗らないで!」
(中略)
顔が綺麗なだけに"美憂"が言うと見くだされているように感じる。それゆえに人と同じことを言っても反感を買ってきたのだと我が身を持って体感した。

いつもだったらあたしに怒鳴られると条件反射で委縮する七美が、今日はおどおどしたふうもなく、不遜なくらいの眼差しであたしを見つめ返してきた。
「調子に乗ってるのは美憂だよ」
信じられない台詞を聞いた。七美の口からこんな台詞が発せられるなんてことがあるはずがない。あたしは本気で一瞬我が耳を疑った。あたしに逆らうはずがない、あたしを崇め畏れる奴隷であるはずの、それだけが存在意義であるはずの七美が。
「まだ状況がわかってないの?案外馬鹿なのね、美憂。美憂はもう美憂じゃない。美憂じゃなくなった美憂なんて、あたしには必要ないんだよ」
(中略)
「な……なみ?」
「あたしは美憂を手に入れた。へりくだらなくたって、こき使われなくたって、美憂をあたしのものにした。あたしはもうあたし一人で完璧なんだよ」
両手で自らの身体を抱きすくめる。愛おしそうに、恋人を抱きしめるように。
「ゆっ、許さないからっ!」

 

↓そして、七美の心が美憂から離れていくことに恐怖した美憂(身体は七美)は、七美(身体は美憂)を何度も平手打ちした後、離れて行かないで欲しいと懇願。

美憂(身体は七美)が元の自分の下着を当然のように身に着けている七美(身体は美憂)に怒る描写に興奮しました。

美憂(身体は七美)は七美(身体は美憂)にキスまでしますが、拒否されてしまいました。

はじめて七美に命令ではなく頼み事をした。
「あたしを見放さないで。七美にいらなくなったらあたしは生きていけない。愛してるの、愛してるの、七美」
七美の背を便座に押しつけ、その頬を両手で挟んで、唇に唇を重ねた。あたしの唇をつたう涙が七美の唇へと滑りこむ。なまぬるい涙で濡れた唇を絡めあう。

 

↓七美(身体は美憂)と決別した美憂(身体は七美)は、アイデンティティが揺らいで、優れた容姿を持たない自分とは…と自身の存在意義を見失ってしまいます。

あたしという不確かなものを維持するために、あたしの容姿は必要どころか最重要事項だったのだ。十四年間"ハンデ"であり続けた容姿に、今このときほどあたしが執着したことはなかったかもしれない。

 

美憂と一つになり完全体となった七美(身体は美憂)は、友達すらも必要なくなり、仲の良い友達グループに暴言を吐いてしまいます。

友達グループが「美憂」の悪口を言い始めますが、七美(身体は美憂)がノーダメージで、美憂(身体は七美)が心を痛めるシーンが最高。

 

七美(身体は美憂)が他のクラスの女子達から集団暴行を受けるシーンもあります。

本物の美憂が取る言動とは真逆の高飛車な言動をする七美(身体は美憂)が言葉では言い表せないほど良いです。

 

二人が住む町では、中学二年生の女の子が連続猟奇殺人に巻き込まれる事件が続いており、今度は美憂(中身は七美)がターゲットになり、連れ去られてしまいます。

七美(身体は美憂)が捕まっている間に、運悪く美憂(身体は七美)は美憂の姿に戻り、一日遅れて七美(身体は美憂)は七美の姿に戻ります

 

七美(身体は美憂)は、顔に暴行を受けながら変身したためか、殺されずには済みましたが、元の七美の顔とは異なる、美憂のパーツが入り混じったいびつで醜い顔になってしまいました。

美憂は泣いて後悔する七美を許し、美憂が七美を一生支配下に置けることを喜んでおしまいです。

 

壁井ユカコ

カリオストロ夫人

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『カリオストロ夫人』
著者:横溝正史
男性の彼女が魔術で夫人と入れ替えられる。 ●角川書店
角川文庫
『山名耕作の不思議な生活』
徳間書店
徳間文庫
『山名耕作の不思議な生活』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

カリオストロ夫人と呼ばれる不気味な女性・志摩夫人と知り合った芸術家の城。

城は志摩夫人をパトロンとして関係を持つようになったのだが、奈美江という彼女ができ、仕事も軌道に乗ってきたので、志摩夫人と関係を絶とうとした。

城が志摩夫人から送られてきた恨みの手紙を読んで不安に思っていたある日、奈美江が志摩夫人の紹介した病院で神保博士の手術を受けた後に、志摩夫人は自殺してしまう。

 

↓志摩夫人は、まるで何十年も生きているかのように人生経験が豊富という描写がされています。

彼女は憲法発布の当日の光景を、自分の目でみたように語ることができたし、尾崎紅葉の印象を、どんな文章よりも、はつらつと述べることができた。と思えばまた、われわれのおよびもつかぬ高貴なかたの日常生活も知悉していたし、そうかと思うとどん底の、卑しい、惨めな女の生活にも通じていた。それはどんな経験家といえどもおよびもつかぬ、彼女自身、その生活の中にいたのでなければ、けっして語られないほどのなまなまとした印象をもって語られるのである。

 

ということで、手術の際に奈美江は志摩夫人と入れ替えられており、志摩夫人の身体になった奈美江はショックで自殺していたのでした。

志摩夫人は肉体が古くなったら、魔術師の神保博士に霊魂を入れ替える魔術で新しい肉体に入れ替えてもらい、既に80年は生きているらしい。

神保博士も、同じようにして300年は生きているようです。

 

↓手術直後の奈美江(中身は志摩夫人)と神保博士の意味深なセリフが好きですね。

「志摩夫人」の遺書には、「奈美江」に「志摩夫人」の全財産を譲ると書いてありました。

「御気分はいかがですか?」
「ええ、おかげさまで……」
「なに、すぐ慣れますよ。向こうのほうはうまくゆきました」

 

入れ替わったことを知らない城は、そのまま奈美江(中身は志摩夫人)と結婚。

新婚旅行で行為した際に、「志摩夫人」と「奈美江」が全く同じ内容のプレイを要求し、さらに「奈美江」が「志摩夫人」しか知らない恨みの手紙の内容を話したことで、城は入れ替わりに気がつきます。

 

↓自身を捨てようとした城に復讐できて笑う志摩夫人(身体は奈美江)が最高です。

入れ替わりのことを告げられた城はショックで自殺し、財産全部が手に入った志摩夫人(身体は奈美江)の一人勝ち…

ふいに、低い、とぎれとぎれな声で、奈美江がそうつぶやいた。その声は奈美江のものであったが、調子はもはや、完全に志摩夫人のものにちがいなかった。

「結局、あなたは私の抱擁から逃れることはできなかったでしょう」
「誰だ!?貴様は!」
「フン、おわかりにならないの。たったいま、あんなに驚いたくせに」
奈美江は城の首から腕を放すと鏡の前へ行った。
「ご覧なさい。奈美江さんの肉体を着た志摩夫人、それが私よ。おわかりになって?」

 

おばあちゃん(世にも奇妙な物語 ドラマノベライズ 逃げられない地獄編)

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『世にも奇妙な物語』より
『おばあちゃん』
原作:落合正幸
女の子が祖母と身体を入れ替える。 集英社
集英社みらい文庫
『世にも奇妙な物語 ドラマノベライズ 逃げられない地獄編』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

両親と一緒に、余命わずかな祖母の見舞いにやってきた小学生の中村美保

生き別れの弟に会いたいという祖母の心の声を聞いた美保は、嫌々ながらも祖母に一日だけ身体を貸すことにしたのだが…

 

↓祖母の寝たきりの身体になることに拒否反応を示す美保が最高です。

「どうしても、どうしてもその人に会っておきたくてね……ミホ、おばあちゃんのお願い、聞いてくれないかい?」
「……なに?」
自分にできることなら、してあげたいと美保は思った。
だけど――
「おばあちゃんに……ミホの体、貸しておくれ」
「!」
おばあちゃんの『お願い』に、美保は思わず息を飲んだ。
包んでいた手を離してあとずさる。
(だって、だって、おばあちゃんは――……)
だけどおばあちゃんは、なおも美保にお願いをした。
「明日中にもどってくるから。それまで絶対死なないから」

 

↓動けない祖母の身体になって苦しむ美保(身体は祖母)のシーンも悲惨で最高。

つぎに意識を取りもどしたとき、全身の渇きと痛みで、美保は信じられない気がした。
視線をむけたいのに体が自由に動かせない。
(い、いたいよ……からだが、いたい)
乾いた指は、どうがんばってもかすかに動くかどうか。
半分だけ開いた目から涙がこぼれた。
(おばあちゃん、苦しいよ……苦しい……)

駆けだしていく小学生の女の子は、美保だった。
自分の体におばあちゃんが入っている。
(待って、苦しいよ……苦しい……パパー!ママー!)
おばあちゃんは、必ず帰ってきてくれると約束をした。信じている。

 

翌日、祖母(身体は美保)は、学校へ行くふりをして弟…ではなく、昔好きだったが別れた男性の元へ。

祖母(身体は美保)のことは文中では「ミホ」と表現されています。

寝たきりの男性に声をかける祖母(身体は美保)のシーンは感動です。

 

その後、祖母(身体は美保)は男性の家族に見つかって警察に捕まり、美保の両親(祖母からみたら息子と嫁)に怒られます。

「祖母」の身体が死ぬタイムリミットが迫っていたので、祖母(身体は美保)は隙を見て逃げ出し、身体を返すために美保(身体は祖母)のいる病院へと急ぎます。

 

↓周囲の会話を聞く美保(身体は祖母)が悲惨で良いです。

そのころ、もう少し先にある病院では、動けないおばあちゃんの体をかこむようにして、先生と看護師が話し合っているところだった。
(中略)
どうせ本人には聞こえていないと思っているからこその会話だ。
けれど、おばあちゃんは――おばあちゃんの中にいる美保には、全部聞こえている。

おばあちゃん(世にも奇妙な物語 ドラマノベライズ 逃げられない地獄編)3

↓祖母(身体は美保)は美保(身体は祖母)が天国に召されるギリギリに戻ってきて、手を取ってお礼を言います。

「すまなかってねえ、ミホ。随分と苦しい思いをさせて。よくがんばってくれたね……」
「おばあちゃん。苦しかった……苦しかったよ……」
おばあちゃんがこんなに苦しい思いをしていたなんて、美保ははじめて知った。
「ごめんね、ミホ。でも、ミホのおかげで、おばあちゃん会うことができたよ。これでおばあちゃん、逝ける。ありがとう」

 

↓元に戻る直前、祖母(身体は美保)は美保(身体は祖母)から手を離します。

おばあちゃんの願いも叶ったとわかって、美保は本当にうれしくなった。
これで美保はもとの体にもどれるし、おばあちゃんも安心して旅立てる。
「よかったね、おばあちゃん」
「ありがとう……ミホ」
天上の光が、よりいっそう眩さを増して、ベッドの上の体を包みこもうとおりてくる。
全部が包まれてしまうその瞬間、ミホの手は、おばあちゃんの手からふいに離れて――

おばあちゃんは死んだ。
その朝、あらかじめ伝えられていた通りに……。

 

↓次の場面は、30年後に美保の母親の葬儀をする美保のシーン。

「もう、お父さんと会えた?お母さん」
そう呼ぶようになって、もうずいぶんと時間がすぎた。

 

↓祖母に冷たく当たっていた美保の母親への仕返しを思いついた祖母(身体は美保)は、あの時美保に身体を返さず、美保は祖母の身体のまま死亡していたのでした。

祖母(身体は美保)は、きっちりと美保の母親に復讐を果たしたようです。

あのとき、――光が全てをおおいつくそうとしたあの瞬間。
美保の体にいたおばあちゃんは、とっさに美保の手を離していた。
きっと美保は、なにが起きたかわからなかったことだろう。
おばあちゃんは、間に合った。
美保との約束を守り、必死で夜の森を駆け、タイムリミットまでに病室にもどった。
でも、……もどることはできなかった。

 

↓祖母(身体は美保)のセリフが鬼畜ですねw

(……あの苦しみから、おばあちゃんは解放された。あの、ひどい苦しみから。きっとむこうで……楽しくすごしていると思う……)

 

↓祖母(身体は美保)は、美保を死なせたわけですが、「少しだけ」胸が痛む程度の罪悪感なようです。

祖母(身体は美保)にとっては、美保の母親に平手打ちされた時の傷を根に持つ気持ちの方が大きかったらしい…

祖母のエゴと入れ替わりの組み合わせがダークで良かったです。

自分の額の傷に軽く当てる。
もう痛みはないけれど、ここにふれる度、少しだけ胸の奥がズキンと痛む。
「ミホには……悪いことをしたね……」
それが唯一の心のこりだ。

額の傷にふれながら、「お母さん」と呼ぶようになって長い女の写真を見る。
「だって、不公平だろ。あの女も苦しい思いをしなきゃ」
ミホの口から冷たい笑みがこぼれた。
(中略)
「お母さん、ミホには会えた?」

 

てんからどどん

作品タイトル/著者 簡単なあらすじ 収録書籍/ソフト
『てんからどどん』
著者:魚住直子
絵:けーしん
女子中学生二人が落雷で入れ替わる。 ポプラ社
ノベルズ・エクスプレス
『てんからどどん』

※本項目の画像は、全て上記作品からの出典です。

 

かわいくて元気だが少々無神経な高倉かりんと、暗くて地味だが勉強ができる今井莉子は、中学の同じクラスでお互いを羨ましいと思っていた。

ある日、二人がエレベーターに乗り合わせたところ、落雷があって二人は入れ替わってしまう。

 

莉子になったかりんは、入れ替わったことに気が付かずにかりんの家に帰ってしまい、弟に注意されてしまいます。

↓鏡を見て入れ替わりに気が付いたかりん(身体は莉子)は、莉子(身体はかりん)と接触しようとしますが、莉子(身体はかりん)はかりんに成りすましてかりんの自室に閉じこもってしまいました。

かりん(身体は莉子)は、莉子の母親に入れ替わったことを話すも、信じてもらえず…

かりんが頭に手をやると、鏡の中の今井さんも頭に手をやった。かりんが口に手をあてると、鏡の中の今井さんも口に手をあてる。
かりんは、おそるおそる自分の足もとを見た。
見おぼえのない、へんなスニーカーをはいている。その上には、デニムをはいた太い足、おなか、腕、胸……。視界のはしにはメガネの赤いフレーム。

今井莉子は胸の鼓動がおさまらなかった。
おそるおそる自分の体をだきしめる。びっくりするほど細い。まるでクモのように腕が背中までまわる。
(中略)
さあこのあと、どうしよう。このままだとどうなるんだろう。
まさか高倉さんとして生きていくことになったりして……。
莉子ははっとした。それはちがう。高倉さんになりたいと思ったが、高倉さんとして永遠に生きたいわけじゃない。

てんからどどん1

↓かりん(身体は莉子)が莉子の身体を重く感じるところや、周りから空気として扱われるところや、忘れ物をしても莉子の姿なら心配されるところや、仲の良い友達の「かりん」の悪口を聞いてしまうところが良かったですね。

莉子(身体はかりん)は、何故か学校を欠席していました。

学校までの十五分の道のりはいつもよりずっと遠かった。身体が重い。まるで水の中を歩いているようだ。足を意識的に右、左、とださないと、前に進まない感じだ。昨日、マンション内を走ったときに気がつかなかったのは、息まいていたせいか。
そのうえ、メガネにもなれない。とくにフレームの外が見えないのが、すごく気になる。かといってメガネをはずすと、一メートル先もよく見えない。

でもふたりは、かりんをまったく見なかった。しゃべりながら、まるで電柱かポストでもさけるように、立ちどまっているかりんを自然によけていった。
それは、ほかの子も同じだった。げた箱でいっしょになった子も、廊下ですれちがった子も、だれもかりんを見ない。無視している感じじゃない。本当に目に入っていないようだ。

 

学校を休んだ莉子(身体はかりん)は、家庭環境の違いにカルチャーショックを受けます。

↓そして、かりん(身体は莉子)も学校を早退し、入れ替わりから一日経ってようやく二人がご対面。

「どわ、自分!」
そういって莉子の体を上から下まで見る。
「で、中身は今井さんだよね?」
「……はい」
莉子は観念してうなずく。
「だよね。昨日はどうして会ってくれなかったの。勝手にわたしの家に入ってさ」

 

↓二人はお互いになりたいと思って入れ替わったとわかりますが、莉子(身体はかりん)が当面は元に戻りたくないと言い始めます。

とりあえず、なりたい相手になれたということで、しばらくこのまま過ごすことに。

「天気はいいけど、ためしにエレベーターにのってみる?」
あわてて莉子は頭をふった。
「いえ、今はいいです」
「なんで」
「それはその、このまま高倉さんとして生きてはいけないと思うんですけど、自分にももどりたくもなくて……」

 

↓かりん(身体は莉子)はさっそく莉子の汚い部屋を片付け、髪にストレートパーマをかけ、コンタクトレンズを作り、ダイエットを始めたら、莉子の母親に喜ばれてしまいました。

莉子の身体の強烈な空腹に耐えるかりんのシーンが良かったです。

この髪の毛、まっすぐにすればいいんじゃないだろうか。ぼわっと広がるこのくせ毛。
ほおの肉を口の中にすいこみ、メガネをはずし、やせた顔をちょっとシュミレーションする。おっ、けっこうかわいい。

てんからどどん2

↓イメチェンした元の自分を見る莉子(身体はかりん)も好きです。

莉子(身体はかりん)は、かりん(身体は莉子)が変えたかった元の自分を変えてくれたので感謝している様子。

かりん(身体は莉子)はせっかくイメチェンしたのに、クラスの皆は戸惑うだけで声をかけてもらえず、落胆します。

一瞬、だれなのかわからなかった。いや、わかるけれど、目で見たものが信じられなかった。
(中略)
「あれ、もしかして、今井さんは前のままがよかった?」
かりんがふと気がついたようにきいた。
「いえ」
莉子は頭を横にふる。
「髪はわたしもすごくこまっていました。コンタクトもしてみたいと思ってました」
(中略)
すごい。莉子がやらなきゃと思っていたこと、ためしてみたいと思っていたことをどんどん実行している。

てんからどどん3

↓莉子(身体はかりん)は入れ替わってから初めて学校へ登校します。

マスク着用で話さなくても良いようにするところや、かりんの友達に話しかけられるところが良いですね。

高倉かりんの制服のスカートは、すごく短い、すうすうして心ぼそい。
それに足もふらふらする。体が軽いせいだろうか。いつも見ている風景も、目線が高くて、それもなんだかこわい。

そうだ、本物のかりんはどうしているんだろう。教室を見まわしたが、いなかった。ずっと入り口を見ていると、チャイムがなってから、すべりこむように教室に入ってきた。
かりんもこちらを見た。一瞬、莉子に目くばせし、それからすぐ知らんふりをして前にむきなおった。
その姿は自分じゃなかった。メガネをはずし、髪が短くなり、まるい顔がよく見える。でも前よりちょっとすっきりとした感じだ。
うしろの席のあやぽんが、莉子の背中をつついた。
「気がついた?かりんが休んでいるあいだのいちばんのびっくりは今井さんだよ。髪を切って、メガネもやめて、スカートも短くしたみたい」

 

この後は、かりん(身体は莉子)が軽率に物事を言う自身を反省したり、莉子(身体はかりん)が苦手なダンスをすることになったり、二人が一緒に莉子の家族とご飯を食べることになったり…

二人とも得意不得意が真逆なので、教え合うところが良いですね。

入れ替わりをきっかけに仲良くなる二人が尊いです。

 

そして、莉子が入れ替わる前に「修学旅行が嫌なので、私を殺しに来てください」と掲示板に書き込んでいたことで、かりん(身体は莉子)が命を狙われることに…

ギリギリで元に戻り、ハッピーエンドです。

 

 

今回は、小説の女同士入れ替わりを7作品紹介しました。

読んでいただいてありがとうございました!

 

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